『届かないラブレター』
もしも、人を好きになってしまったら、あなたはどうする?誰かに
相談してみる?それとも、当たって砕けろの気持ちで告白する?
彼女は、とりあえず相談することに決めたようだ。
金「そんなの決まってるかしらぁ~!特攻あるのみ、かしらぁ」
雛「うゆ~。でも、でも、もしもふられたらどうするのぉ?」
金「その時は、このカナリアが、そいつを成敗するかしらぁ!」
雛「…やっぱり、カナリアに聞くのは間違いだったのぉ…」
金「なっ、なんでかしらぁ!?」
いつも元気な雛苺も、ため息ぐらいはつく。全ての原因は、ジュンだ。
雛苺は、ジュンのことが、好きで好きで×100ぐらい好きになってしまった。
この気持ちを伝えるには、どうすれば良いのだろう…。
雛「うゆ~みんなの意見は参考にならないのぉ~」
みんなの意見はこんな感じ。
真「そんなの決まってるでしょ?夜中こっそり忍び込んで、キスしなさい」
翠「おバカ苺、そんなの簡単ですぅ。愛のこもった手料理が一番ですぅ」
水「そうねぇ…ごめんなさい、私もこういうの苦手でわかんなぁい」
薔薇「……VIPで安価スレ立てれば良い……」
意見を聞いていないのは、蒼星石だけだった。雛苺は、蒼星石のいる
教室に入っていった。
最後の一人、蒼星石に自分の恋の相談をしてみる雛苺。蒼星石は、
冷静に考えてから言った。
蒼「う~ん…。呼び出して告白するのが出来ないなら、やっぱり手紙かなぁ」
雛「てがみ?それって、ラブレター?」
蒼「うん、そうだよ。手紙に自分の気持ちを書いて、その人に渡す。これなら出来るでしょ?」
雛「それなら…雛でも出来るかも…。面と向かって渡さなくても良さそうだし。でも、手紙
なんて雛書いたことないのぉ~」
蒼「う~ん、じゃあ、一緒に書いてみようか?」
雛「そうして欲しいのぉ~(やっぱり蒼星石は頼りになるのぉ~)」
二人は、日が暮れるまでラブレターを書いた。思いの一つ一つが、紙一枚に
凝縮されていく。二時間近くかけて出来たラブレターは、かなり上出来だった。
蒼「ふぅ~。完成したね」
雛「うん!これを渡したら、きっと雛の思いが伝わるのぉ~」
蒼「僕も、成功を祈ってるよ。がんばってね、雛苺」
雛「うん!蒼星石、ありがとうなのぉ~」
雛苺は、バタバタと走って出て行った。
蒼「雛苺、走ると危ないよ!?」
雛「大丈夫なのぉ~!早くラブレター渡すのぉ~」
思いを早く届けたい。彼女は意気揚々と、靴箱に向かっていった。
どかっ!!走っていたせいか、前を見ていなかった。
女1「痛いなぁ…。誰よ?」
女2「あっ、こいつ梅岡のクラスの雛苺じゃん。何してんのよ」
雛「…え?う~と…う~と」
女1「何持ってんの?それ。もしかして、ラブレター?」
女2「はあ?何それ?気持ち悪ぅい。大体、ラブレターなんて今時流行んないよ」
雛「そっ…そんなことないもん!雛が一生懸命書いたんだもん!」
女二人組みは、雛苺のラブレターを奪った。
女1「なになにぃ?私は、桜田ジュンが好きです?ぎゃははは!」
雛「かっ…返してなのぉ!読まないで欲しいのぉ…」
女2「あなたの事を考えると、眠れません…。よくこんな恥ずかしいこと書けるわねぇ!?」
雛「止めて…お願い…返してなのぉ…」
女1「良いわよ、ほら、返してあげる」
そう言うと、女1は、ラブレターをビリビリに破いて、雛苺の顔に投げつけた。
女1「どうせふられるんだし、別に良いでしょ?」
女2「はぁ…笑い疲れた。もう行こう」
女二人が去った後、ビリビリに破かれた自分のラブレターを見る雛苺。
悔しくて、悲しくて、涙が出てくる…。
雛「一生懸命書いたのに……。ひどいのぉ…ひぐっ…うぐぅ…」
破れたラブレターを見ると、自分の思いまで破られたような気持ちになった。
もう、このラブレターは届かないのだろうか。
涙が止まらない雛苺の前に、ジュンがやって来た。
ジュン「どうしたんだ?雛苺…」
雛「うぐっ……ひぐっ…ジュ~ン…」
ジュン「なんだ!?泣いてるのか?どうした、何があったんだ?」
ジュンは、床に落ちている破れた紙切れを見る。
雛「……手紙を…ビリビリに…破かれたの…」
ジュン「一体誰がそんなこと…」
ジュンは、泣く雛苺にハンカチを渡し、一緒にビリビリになった手紙を拾った。
ジュン「まったく、こんな事するなんてひどい奴がいるな」
雛「…もう良いのぉ」
ジュン「ところで、この手紙誰に送るつもりだったんだ?」
雛「え!?そ、それは秘密…なのぉ」
ジュン「ふ~ん。あれ?なんか『好き』って文字があるけど」
雛「うわぁぁぁ!さ、さっさと片付けるの!読まなくて良いの!」
ジュン「?まあ、良いか」
雛「(鈍感なのぉ~…。でも、もっとジュンが好きになったのぉ)」
手紙は破られてしまったけど、その思いは破れはしない。
ちなみに、手紙を破った女二人は次の日、薔薇×水コンビに
半殺しにされました。
完。
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