『僕の目覚まし時計』
学校に行かないと…でも眠い。ああ、もしも薔薇乙女が
起こしに来てくれたら、どんなに素晴らしいだろう。
水「起きなさぁい…遅刻しちゃうわよぉ?」
ジュン「…もう少し…寝かせて」
水「…早く起きないと、キスしちゃうわよぉ?」
ジュン「…うそばっかり…」
水「うそだと思ってるのぉ?…ちゅっ」
ジュン「う、うわっ本気ですんなよ!」
水「あらぁ、ごめんなさぁい。でも本当は、嬉しいんでしょぉ?」
もしも、翠星石なら、短気だから電気あんまで起こしてくれたりして…。
翠「起きやがれです!早く起きないと、こうですよ?」
ジュン「や、止めろって…うわぁぁ!」
グリグリ
翠「どうですかぁ?目は覚めたんですかぁ?」
ジュン「ま、まだ眠いです」
翠「グリグリが足りないみたいですね!早く起きるです!」
グリグリグリグリ……。
ジュン「…妄想しただけで、鼻血が…」
…完。
それはある冬の風景――。
「ふぁ~。今日も一日チビ人間の相手で疲れたのです。明日も早いですしもう寝るのです。」
欠伸をかみ殺しながら部屋でごそごそ布団に入る翠星石。
「良い夢が……見れると良いで……すぅ……zzz」
…………
………
……
…
「翠星石?翠星石……ほら、起きなよ?もう朝だぞ?」
「ぅー…眠いのです。寒いのです。別に学校なんて行かなくて良いのです。」
「そんなこと言ってないで、ほら!」
がばっ!布団を引っぺがされ外気に晒された翠星石はフルフルと震えながら目を開けた。
「もー、蒼星石は乱暴すぎるです。もうちょっと優しい起こし方出来ないんですか?」
目をこしこし擦りながら欠伸混じりにぶつくさ言い続ける翠星石
「悪かったな、でもお前が起きないのが悪いんだろ?」
「だって眠いです。――って蒼星石?」
そこで初めて違和感を感じる。何かおかしい。自分の妹ははたしてこんな口調だったであろうか?
「良いから早く着替えろって、下で待ってるからさ。」
ギ ギ ギ ギ ギ
そんな音でも出そうなほどゆっくりと振り向き、たった今部屋から出て行こうとした後ろ姿をハッキリと視認した瞬間――
「――あqうぇsrdtfyぐmj!!!!!」
声にならない声を上げながら思わず足下にあった枕を投げつけた
投げつけた枕は部屋から出て行こうとしたジュンの頭にクリティカルヒット!
「何するんだよ!?」
「其れはこっちの台詞なのです!乙女の寝起きを覗くなんて万死に値するのです!」
「いや、別に覗いてたワケじゃっ――」
「良いからとっとと出てけええええええええええですぅ!」
目覚ましやら筆箱やら手当たり次第に投げつけてくる翠星石に流石に身の危険を感じたか転がるように部屋から出て行くジュン。
「ぜーはーぜーはー。まったく、何考えてやがるですか。」
もそもそと蒼のネグリジェを脱ぎながら制服に袖を通す。
その最中に顔が多少赤いのはおそらく気のせいだろう。
所変わって居間。
「蒼星石、流石に僕が起こしに行くのは拙かったと思うんだけど。」
「はは、ゴメンね。でもほら…姉さんの寝顔、みれたでしょ?」
湯飲みに出された緑茶を啜りながらやっちまった的な表情を浮かべるジュンに対し小悪魔的な表情を浮かべる蒼星石。
「確かに、見れたけど……(あれは健全な男子には反則だろ)」
湯飲みを置いて俯きながら先ほどの翠星石の寝顔が頭の中に浮かんでくる
「ふふッ、どうしたの?姉さんの寝顔見て、変な気分でもなっちゃった?」
気が付くと蒼星石が意地の悪い笑みを浮かべながら下から覗き込んでいた。
「ねぇ、ジュン君――?同じ顔の僕じゃ、ダメかな――?」
「蒼……星…せ…」
二人の顔がゆっくりと近づいていく――吐息が互いに感じられるほどに……。
「何やってやがるですか――ッ!?」
突如響き渡る怒声。そして二人の間に割り込んでくる翠星石の姿。
「このチビ人間ッ!翠星石の寝起きを覗いただけでなく、蒼星石までキズモノにしようとしてくれやがったですかっ!?」
憤怒の表情を浮かべる翠星石。
「いや、これは!その――蒼星石がっ!」
慌てるジュンがちらりと蒼星石の方を見ると
「――えへ♪」
満面の笑みでペロリと舌を出していた。
(は、ハメられたああああああああああ!?)
漸く気付いたジュン、しかし時既に遅し。
「さぁて、どうなるか想像は出来てやがりますね?」
もはや話を聞く気もないらしい翠星石。
「あ……ぅ、はい。ゴメンナサイ。」
観念したらしく、ジュンが項垂れる。
(てゆーかなんで僕はこんな目に遭ってるんだ……)
そんなジュンに見下ろすような視線を向けながら翠星石は
「反省してるようだし、仕方ねーから今回だけは――」
「許して、くれるのか?」
その日は珍しく晴れて、連日続いた雪の寒さも無くすようだった
雛苺が雪玉を投げてスネーク先生に怒られている。
翠星石は冷たくなった窓に、対照的に火照った額をくっつけた
「あれ?翠星石居たんだ?」
後方からの声に驚いてふり返ると真紅とジュンが居た
”よかった。彼女ではない”
不思議と安著する自分に嫌気が差す
「い…居ちゃ悪ぃですか。お前らこそなんで部活もないのに居るです」
「雪かきとか手伝わされたのだわ!貴方も居たなら手伝ってもらいたかった!」
「そういやお前今から帰るのか?蒼星石が待ってたぞ?」
今、私の顔は赤くなってないだろうか?
「別に約束はしてないです。それに翠星石は遅くなるから、真紅達と一緒に帰るように言ってくれますか?」
「いいけど…」
「何かあるですか?」
「いいえ…貴方が予定が合うのに蒼星石と帰らないのは珍しいと思って」
「じゃーな性悪!!」
核心をつかれた疑問にドキリとしたのも僅か、ノー天気な調子にかき消される
ジュンの嫌味をこれ程ありがたく思ったことはなかった
「うっせーチビ!!です。さよならです!!」
「…さよなら」
また静まりかえる教室に、自分の心音だけが聞こえる。
言い出したのは妹の方だった。
それを冗談だと流さなかった自分は、実は以前から同じ事を考えていたからであって…
それでも口にしなかったのは、それが”おかしい”と思っていたから
「なにやってんだか…」
ため息をつくと、窓に映る自分の顔が曇る。
怪訝そうにしかめたそれが、(当たり前だが)妹に似ていて驚いた
(す…翠星石は…)
「翠星石?」
「うわ!!」
ふり返ると意中の人物が居る。
翠星石は急速に顔が熱くなっていくのを感じ、窓の外を見る振りをした
「か…帰ったんじゃなかったですか?」
「いや…お弁当箱忘れちゃって…」
「またですかもう!忘れたら自分で洗わせるところです」
ふと視線を流すと真面目な顔で蒼星石がこちらを見ている
「そ…」
「昨日のことどう思ってるの?」
本題をいきなり持ち出され言葉に詰まる
「わかってると思うけど冗談じゃないから」
”むしろ冗談の方がよかった”
心の20%を締めた台詞をかき消し、相手が近づいてくるのを察知して振り返った
途端抱きしめられ何も言えなくなってしまう。
嬉しさと道徳が戦っている脳内に、昨日の台詞のリピートがかかるのを感じた
「翠星石」
やだ。
「僕は」
言わないで。一線を蝕む呪文めいたその言葉。
顔を伏せたまま片手で制する
「ここは、学校、です」
「だから?」
振り絞った声は掠れていて、これ異常ないほど情けない。
でも、ここでは言って欲しくなかった
「は、背徳行為は自制するです!!」
本当に怖いのは真面目な妹のはず。
拒否すれば傷つくのは彼女なのに。
臆病な私に妹は優しいメゾソプラノで囁いた
「帰ろうか」
犯してはいけない領域に先に踏み込んだのは私の方
それでも平行線を描こうとするのは違反ですか?先生
「蒼星石」
帰路で無言だった空気にまた、言いようのない緊張が走る
「何?」
「私は 」
嬉しそうに私を抱きしめた彼女は、耳元で、
私の声が語った甘い言葉より甘く、夢見るように歌った
日常の一線を越えたこの場所で、私は儚い夢を見る
ある日ジュンと真紅は翠星石と蒼星石の家に遊びに来ていた。
翠「じゅ、ジュン!これやるです!」
J「あ?なんだこの花…」
翠「えと…その…家にあった花が余ったからくれてやるです。」
J「いや、別に僕はいらな…」
真紅「あら、紫のライラックねなかなか素敵な花を選んだのだわ。」
翠「う…ぁ…その深い意味は…(///)」
何故か翠星石の顔は真っ赤になり始める。
真紅「ジュン、それを育ててあげなさい。」
J「え、僕が?」
真紅「貴方が貰ったのだから当然なのだわ。」
J「ま、いいか。じゃあ貰ってくな。」
翠「………(///)」
J「つってもなぁ…花の世話なんてしたことないしなぁ…」
暫くジュンとライラックは睨めっこをしていた。
どうして翠星石はわざわざ他人には触らせない自分の花を渡したのか?
そればっかりを考えていた。
J「まぁ適当に水でもやってればいいだろう。」
それからジュンはずっとライラックに水をやっていた。
三日後…
J「うわ…これはヤバイ…」
植木鉢にはもはや貰ったものとは全然違うものがあった。
完全に枯れてしまっている。
J「う~ん…ちょっと蒼星石にでも見せるかな…。」
流石に翠星石本人に見せるのは気がすすまない。
翌日ジュンはライラックのことを蒼星石に話した。
蒼「ふむ…じゃあ今日家に来てくれるかな?」
J「いいけど…翠星石はいない時間が出来ればいいんだが…」
蒼「?別にいいけど…どうかしたの?」
ジュンはいっそのこと蒼星石に翠星石からのもらい物だと言うことを打ち明けようかと思った。
けれども蒼星石に話したら翠星石に聞かれるかもしれないと思ったので誤魔化す。
J「いや、特に深い意味はないんだけどさ…あ、その、別に変なこと考えてる訳じゃなくて…」
後から思い出してみたけど翠星石がいないってことは蒼星石と二人っきりだ。
焦ってないように取り繕うが逆にギクシャクしてしまう。
蒼「ふふふ、別にいいよ、ジュン君なら変なことしようなんて思わないと思うし。」
そしてジュンは蒼星石と翠星石の家に行く。
ジュンは今で蒼星石に例のライラックを見て貰っていた。
蒼「う~ん、これは単純に水のやり過ぎだね。」
J「え、水をやり過ぎても枯れるのか…」
蒼「けど紫のライラックか…これジュン君が買ったの?」
訝しい顔で蒼星石は聞いてくる。ひょっとして勘付かれたのか?
J「あ、ああ、僕が自分で買ったんだ。」
蒼「そうなんだ、これ誰かにあげるの?」
J「え?なんでそうなるんだよ?」
蒼「だってこの花言葉は………」
次の瞬間、今のドアが開け放たれ其処には鏡で移った蒼星石が其処にいた。
いや、違う其処にいたのは…
J「す、翠星石………」
翠「な…んで、ジュンが蒼星石と一緒に…それにその植木鉢……」
翠星石は植木鉢とジュンと蒼星石を交互に見てそれから駆け出した。
それをジュンは呆けて見ていた。
蒼「まさか…これ、翠星石から貰ったの!?」
J「え、ああ…そうなんだ、このあいだ翠星石に貰って……」
蒼「バカ!なんでちゃんと言わないのさ!?」
J「ば、バカって…」
蒼「少しは花のこと調べたらどうなの!?紫のライラックの花言葉は…」
ジュンはその花言葉を聞いて驚いた。
J「クソ…僕はなんてバカだったんだ!!」
蒼「行ってあげて、翠星石のこと頼んだよ。」
ジュンは家を飛び出し翠星石の後を追った。
家を出ると周りにはもう翠星石の姿は何処にもない。
ジュンは兎に角翠星石が行きそうな場所を回った。しかし中々見つからない。
J「残るのは…此処だけか…」
薔薇学園、其処には翠星石と蒼星石がこっそりと育てている薔薇園があった。
前にも弁当を食べさせて貰ったときも此処で一人で泣いていたのを思い出す。
頼むから居てくれ…そう思いジュンは薔薇園へと足を運んだ。
視界に真っ赤な薔薇が入る、その薔薇たちに囲まれているように一人の女の子が座り込んでいた。
J「翠星石!」
翠「ジュン…な、何しに来やがったですか!チビ人間は蒼星石と一緒にお花でも育ててるです!」
J「違うんだ翠星石!あれは…」
翠「何も違わないです!どうして真っ先に翠星石に話してくれなかったですか!?
そんなに翠星石は頼りないのですか!?」
J「え………お前、僕が枯らせたのを怒ってるんじゃないのか?」
翠「別に…枯らせてしまったものはしょーがねぇです…けど、どうして私から貰ったものを蒼星石に相談するですか!?」
J「ごめん…」
翠「口だけじゃなんとでも言えるです。」
翠星石はそっぽを向く、これは完全に拗ねているらしい。
ジュンは戸惑ったがそっぽを向き続ける翠星石を後ろから抱きしめて囁いた。
翠「な、何を行き成りしでかすですか!?(///)」
J「……初恋。」
翠「え…(///)」
J「紫のライラックの花言葉……『初恋』…なんだろ?」
翠「あぅ………(///)」
恥ずかしさが頂点に達したのか翠星石は変な声を出している。
もう耳まで真っ赤になっていた。
J「あの、さ…気持は物凄く嬉しかった。僕も、その…翠星石のことがさ…」
翠「え…?(///)」
ジュンは翠星石のピンク色をした唇に自分のそれを重ねた。
J「こ、こーゆー訳だからさ…(///)」
翠「じゅ、ジュン………(///)」
茹蛸状態になった翠星石は俯く。
暫く二人はそのままの状態で薔薇園にいた…。
後日…
ジュンと翠星石は付き合うことになった。
早速朝からジュンに弁当を作りに翠星石は張り切っていたりもした。
そして放課後…
J「あのさ、今日家に来てくれないか?」
翠「ジュンが其処まで言うなら行ってやってもいいですよ。」
ジュンの部屋で翠星石はあるものを見て驚いた。
翠「こ、これって…」
J「あ、ああ…買ってみたんだ…お前にあげたくて…」
ジュンは花の咲いた植木鉢を翠星石に渡す。
その花は白のライラック、花言葉は『愛の芽生え』…
翠星石はその貰ったライラックをずっと大切に育てた。
The End
危険なふたり!薔薇学園はねむれない 『神聖編』 主演 翠星石
JUM「みんな。おはよう。」 JUMが教室に入ってきます。
翠「チビ人間、おはようです。」
蒼「おはようJUM君。」 駆け寄る二人。
JUM「おはよう。二人とも。」
翠「あ・・・・・・・。」
二人に挨拶をするJUMですが、視線は蒼星石に向いています。
蒼「JUM君。お弁当作ってきたから、お昼一緒に食べようよ。」
JUM「ありがとう蒼星石。」 JUMは蒼星石の申し出に嬉しそうです。
翠「うう・・・・・・・です。」 潤んだ目で二人を見る翠星石。
上手く行っていない様に見えますが、実はこの双子、とっても仲がいいんです。
翠「何で蒼星石ばかり・・・・・・。」 涙目の翠星石が蒼星石に問い詰めます。
蒼「ごめんね。」 蒼星石は申し訳なさそうな顔をします。
翠「もう蒼星石なんか知らないです!」 授業も放り出して駆け出す翠星石。
蒼「ま、待ってよ!」 慌てて蒼星石が翠星石を追いかけます。
蒼「うっ・・・・見失った・・・・。」 蒼星石は廊下に出ましたが、既に翠星石は居ませんでした。
蒼「必ず見つけるよ。翠星石!」 蒼星石は駆け出しました。
その頃の翠星石。
翠「ぐすん・・・・・・。」翠星石はJUMの写真を片手に、部室に閉じ篭っていました。
翠「翠星石だって、JUMのことが大好きなのに!」 翠星石がJUMへの想いを思わず口にします。
蒼「翠星石。そこなのかい?」 翠星石の声を蒼星石が辿ります。
バタン! 翠星石は部室の鍵を閉めていませんでした。
部室の扉が開くと、翠星石と蒼星石が目を合わせます。
蒼「翠星石。君は・・・・・・。」 翠星石は涙目になりました。
翠「だって、翠星石はJUMのことが大好きなんです!
蒼星石とJUMが付き合っているって知ってるのに・・・・・。」
翠「こんな翠星石を、蒼星石は嫌いになるですか?」
蒼星石が答えます。
蒼「好きだよ。翠星石もJUM君も、どっちも同じだけ好きだよ。」
涙目の翠星石が答えます。 翠「翠星石も、蒼星石とJUMを同じだけ大好きです!」
キスと熱い抱擁を交わす二人。
翠「翠星石は3人で幸せに暮らしたいです。」
蒼「JUM君の目がもっと翠星石に向けばいいんだけどね。」
翠「だったら、どうすればいいです?蒼星石。」 翠星石が必死に問いかけます。
蒼「それなら・・・・・・目立てばいいんだ!」
翠「でも、どうすればいいですか・・・?」 JUMで頭が一杯な翠星石には、もう何も考えられません。
蒼「テレビを使ってみよう。テレビ局に乗り込むんだよ。」
翠「翠星石じゃ無理ですよ。」 翠星石がうつむきます。
蒼「翠星石は可愛いんだから大丈夫だよ。」
翠「本当ですか?」 まだ不安が消えない翠星石。
蒼「翠星石の可愛らしさは、僕が保障するよ!」
可愛いと二度も言われた翠星石はもう真っ赤です。
翠「そ、蒼星石がそこまで言うなら付き合ってやるです!」
翠星石は必死に照れを隠そうとします。
蒼「はいはい。」 翠星石は蒼星石に手を引かれると学校を後にしました。
次の日の放課後。
蒼「JUM君に見せたい物があるんだけど。これから時間あるかな?」
JUM「ああ、大丈夫だよ。」 JUMが答えます。
蒼「実は、翠星石がテレビCMに出るんだよ。それの録画を持ってきたんだ。」
JUM「すごいな翠星石。」
翠「そんなことねーですよ!」 プイと横を向く翠星石。
翠「見せてやるんだから、ありがたく思うですよチビ人間!」
蒼「という訳で、これから三人で鑑賞会いいかな?」
JUM「もちろん。それじゃ行こうぜ。」
翠「蒼星石。」翠星石が小声で蒼星石に話しかけます。
蒼「何だい、翠星石?」蒼星石も小声で返します。
翠「ありがとうです。」
蒼星石が笑顔を返すと、二人は手をつないで視聴覚室に向かいました。
視聴覚室。三人がビデオの用意をし終わりました。
JUM「楽しみだな。」真剣な目でJUMが画面を見つめます。
蒼「ビデオスタート!」ビデオが始まりました。
そこに写るのは緑一色、森林です。
翠「伸びやかに~。」
綺麗な装飾が施された金色の如雨露を片手に持つ翠星石。
翠「健やかに~。」
くるくると翠星石が回りだすと如雨露から水が流れます。
次に真上から翠星石を見る視点になります。
翠星石は回っているので遠心力に引かれ、その長い髪は次第に広がります。
如雨露から流れる水となびく髪。二つの広がりは、まるで咲く花を見ているようです。
最後に視点が戻ると翠星石が回るのを止め、こちらを笑顔で一瞥します。
すると次第に翠星石の姿が消え、
『最後に緑を大切に』というテロップが表示されました。
蒼「翠星石、綺麗だったね。」
JUM「ああ・・・・・・・。」上の空で答えるJUM。
蒼「翠星石。こんなに可愛いと色々危ないよね。」
蒼「誰かに取られちゃうとか。しっかり捕まえていないと危ないね。」
JUM「そうだな。」 JUMは、まだ上の空です。
蒼「さあ、JUM君に想いを伝えるなら今だよ。」
蒼星石が翠星石に小声で言います。
翠「ち、チビ人間!」意を決して翠星石が口を開きます。
翠「翠星石は・・・・・・翠星石は・・・・・・。」
なかなか翠星石は踏み出せません。
蒼「頑張って翠星石!」
翠「JUMのことが好きです!」 JUM「え・・・・・?」
翠「何が『え?』ですか!?翠星石が付き合ってやるって言っているです!」
JUM「僕で・・・・いいのか・・・・・?」
翠「そうです!だから、そう言ってるです!!」JUMが蒼星石の方を見る。
JUM「蒼星石はいいのか?」
蒼「勿論だよ。三人で幸せになろうね。」蒼星石は笑顔を返します。
翠星石が二人に飛びつく。
翠「JUMも蒼星石も、みんな大好きです!」
心を繋いだ三人が抱きしめ合います。
三人は笑顔に包まれていました。
めでたしめでたし。
危険なふたり!薔薇学園はねむれない 神聖編 fin
今日薔薇学園は遠足に来ていた。
遠足の内容は登山組とハイキング組と別れておりジュンと翠星石とベジータと蒼星石は登山組になった。
J「結構山の道って歩くの辛いな…」
翠「全くです、学校は何考えてやがるですか。」
蒼「登山組を選んだのは僕達自身なんだけどね…」
べ(うはwww蒼嬢と同じ班wwwテラウレシスwwwwww)
疲れ顔の三人とニヤニヤしたベジータは先導の教員とそれに着いて行く生徒の列の最後列だった。
すると山の天気は変わり易いというがどんどん暗雲が立ち込めてきた。
霧も出てきて視界が余り見えない。
J「おい、三人ともこんなところではぐれるなよ?」
心配になってジュンは翠星石と蒼星石とベジータに呼びかける。
翠「ったりめーです!こんなところで遭難だなんて冗談じゃねぇーですよ。」
蒼「何とかジュン君のことは見えてるよ。」
ちゃんと二人は返事をする。確りしているなぁ…
しかし何かが足りない気がする…
J「ところで…ベジータは?」
翠&蒼「へ?」
二人は後ろを振り返る、だが其処にはあの特徴的なM字デコはいない。
三人は青褪めた。
J「せ、先生!ベジータが…」
ジュンは前を振り返るがなんと着いて来ていた生徒も含めて先導の教員は霧の彼方に消えてしまっていた。
翠「じょ、冗談じゃねぇです!これって完全に…」
蒼「遭難…だね…」
重い沈黙が霧とともに辺りに立ちこめ不安が濃くなる。
一方ベジータは…
べ「うはwwwみんないねぇwwwwww」
J「あのバカ…勝手に何処か行きやがって…しかも誰もいないし…」
翠「どうするです、このままじゃひょっとして翠星石たちは…」
翠星石の脳裏に最悪の事態が鮮明に浮かび上がる。
自然と自分の体が震えているのがわかる。
蒼「大丈夫だよ、取り合えず此処を動かなければ僕達が着いて来ていないことに
気付いた先生が元来た道を戻って探してくれるかもしれないから、ね。」
蒼星石はそれお察してか翠星石に微笑みかける。
それを聞いただけで翠星石の気分は大分軽くなった。
しかしそう上手くことが運ぶのだろうか?
そう考えていると翠星石の足元で何かが動いた。
翠「な、何かいるです!?」
J「え?コイツは…」
翠星石は思わずジュンの後ろに隠れる。
見てみるとそれはイノシシの子供だった。
J「イノシシの子供…?ま、まさか……」
次に何と親のイノシシがやって来た。なんと此方に突進して来ている。
ジュン達は仕方なく山の中をイノシシに追われながら走り回った。
一方ベジータは…
べ「お、キノコ発見…」
イノシシに追われ続けてジュン達は走り続ける。
暫く走っていると崖があり三人は方向をかえようとするが翠星石がつまづいた。
翠「キャアーーーー!!」
J「翠星石!!」
座り込んだ翠星石をジュンは庇うが二人ともイノシシの突進を食らい吹っ飛ばされる。
蒼「翠星石!!ジュン君!!」
二人は崖を転げ落ちて行ってしまう。
一方ベジータは…
べ「このキノコ食ったら気分がよくなったのニャー…」
ジュンは目がさめた。何か柔らかいものが後頭部に当たっている気がする…
目の前には空と泣いている翠星石の顔があった。
涙が雨みたいにジュンの顔に滴る…ジュンは翠星石の涙を拭おうと右手を動かそうとしたが激痛が走った。
J「イテテ…」
翠「ジュン!ジュン!!よかったですぅ…大丈夫ですか!?」
J「ハハハ…なんか、右肩が折れてるかもしれないや…」
翠「そんな…ごめんなさいです!翠星石の所為でジュンの腕が…ッ」
再び翠星石の涙が溢れ出してる、ずっと泣いていたのだろうか目が腫れている。
今頃気がついたのだがジュンは翠星石の膝の上に頭を乗せていたのだ。
J「泣くなよ…あんな崖から落ちたのに生きてるだけでも凄いじゃないか。」
翠「でも…ッ」
泣き止まない翠星石にジュンは自分の不甲斐なさに腹立たしさを覚えた。
この腕が動けば翠星石の涙を拭えるのに、翠星石を優しく抱きしめてやれるのに…
J「あのさ、帰ったらこんな腕だからお前の作ったご飯食べさせてくれよ。」
翠「え…」
J「それで今回はおあいこってことにしようぜ。」
翠「ジュン…(///)」
目の前にあった翠星石の顔が近付く。
気がつけば翠星石の唇が僕の額に軽くふれた。
翠「あ、ありがとうです…ジュン…(///)」
一方ベジータは…
べ「ぐぉぉぉ!?は、腹が…腹が痛いぞカカロットォォォォ!!」
暫く二人はずっとそのままでいた。
その間に何か会話をしたわけではないが
ジュンは翠星石の膝の温かさを、翠星石はジュンの後頭部の温もりを感じていた。
だが近付く気配を感じる。二人はまたイノシシかと身構えたのだが…
真紅「あ、貴方たち…一体何してるの?」
翠&J「「え?」」
其処にいたのはハイキング組である真紅と雛苺と水銀燈と薔薇水晶と金糸雀がいた。
J「お前らこそどうして此処に…」
真紅「私達は普通に歩いていたのだわ。」
翠「ということは…」
金「此処はハイキングコースかしら。」
すると今度は山の方から蒼星石と登山組がやって来た。
蒼「翠星石!ジュン君!よかった…二人とも心配したんだよ!?」
J「あ、あはは…よかったな、翠星石。」
翠「はいですぅ。」
二人は笑い合っていた。
周りの皆は不思議がってそんな二人を見ていた。
一方ベジータは…
べ「はぅあ!?こ、今度は体が痺れて……ッカ、カロ…ット…(ガクッ」
後日談…
あれからジュンとベジータは病院は違うが即入院した。
ジュンの右腕は折れていたが逆にポッキリ折れていて治りが早いという。
暫くすればすぐに退院できるとのことだった。
翠「ジュン~今日も来てやったですよ~。」
J「悪いな、いつもいつも。」
病室にお弁当の入った鞄を持って翠星石がやって来る。
ジュンと翠星石は病室で食べるのも陰鬱になるので外に出た。
外には一応庭のようなものがあり其処で二人でお弁当を食べるのが日課になっている。
翠「しょ、しょーがねぇですから、ホレ、あーんするです(///)」
J「別に僕はまだ何も言ってないけどな(汗」
ジュンは口を開けて翠星石に食べさせて貰う。
やがて食べ終わったジュンと翠星石は学校の話を始めた。
J「はやく学校に行きたいなぁ。」
翠「だったらちゃんと休んでいっぱい食べて早く元気になるです。
だから、その…こっち来るです(///)」
翠星石は自分の膝を叩いてジュンを促す。ジュンは何も言わずに膝に頭を乗せた。
J「あのときはそれどころじゃなかったけど…膝枕ってのもいいな。」
翠「な、何言ってるですかジュンは、スケベです…(///)」
J「いや、だってお前が泣いてるもんだから…」
翠「あ、あれは泣いてたのではなくて…雨が降ってただけです!!(///)」
空は快晴、そして彼女の表情は空の青さとは対照的にやけに赤い…
一方ベジータは食べたキノコが毒キノコと判明し半年以上は入院になってしまった。
べ「ここからが本当の地獄だ…ッ」
TheEND
ジュンが咳き込んでいるです。風邪でしょうか?心配です。
「チビ人間、風邪ですか?」
「違うんだけど咳が止まらなくてゲホゲホッ」
一人暮らしのジュンがとても心配です。
「今日だけしゃねぇですからジュンの部屋に行って面倒みてやるです」
「えっ、ありがとう。」
少し気になる事もあったです。だから部屋へ行く事にしたです。
部屋に着く。やはり予想通りだったです。
「ジュン・・・掃除してないのですか?」
「一人暮らしだとつい」
「これだからダメダメなんです!!翠星石が掃除してやるです!!」
「えっいいよ。悪いよ!!」
「ダメです!こんな生活だから咳が出るです!換気もしないとです!
1、2時間ほどジュンは近くの喫茶店でも行って来るです!!」
追い出した後、早速部屋の掃除開始です。
まったくダメダメ人間の面倒は翠星石が見てやるです。
一生見てやるから覚悟しやがれですぅ♪(//////)
美しく実稲穂
数年前から翠星石に手伝ってもらいながら育てた
「やったー」
「それにしても、何で稲穂なんです?」
聞かれたか……別に理由なんて無いのに……
「あっあれだよ、稲穂って何か暖かい感じだから」
「……そうですね」
あれ? こんなんでOK?
「それにしても……」
「はい?」
「今までありがとうな」
「何ですか、急に」
「ここまで育ったのはお前のおかげだよ」
「別に翠星石は稲穂は育てたことが無かったからやってみただけです」
「そっか……」
今まで……ですか
こんな風に過ごせるのもあと少しですか
「そろそろ受験だもんな、いい思い出になったよ」
受験……
多分それが終わったらもう会わないだろう
「……綺麗だ」
「えっ? えっ!?(///)」
「頑張って育てたかいがあったよ」
「そっそうですね」
こんな日々があと少しで終わる
そう考えたら今の気持ちに答えが出た気がする
今更気が付くなんて
こんな夢のような日々が終わりを告げるというのに
「そろそろ戻ろうか、日も落ちてきたし」
ジュンは背を向けて戻ろうとした
「待って……です」
急いでジュンの元へと駆け出していた
「何だ?」
ジュンが振り向くと同時に抱きついた
「どうしたんだ翠星石?」
「もう少し……ここに……いたいです」
涙が流れていた
「何か……あったのか?」
「……はい」
「俺で良かったら相談にのるぞ」
「……ちまったです」
「何?」
ジュンは泣いた子供をあやすような
優しい笑顔で聞き返してきた
「好きに……なっちまったんです」
「……誰を?」
ここまで言ったのにまだ気付いてくれない
私には気が無いのかもしれない
でも……
「ジュンです」
強く言ってやった
夕陽と秋風
それらに見守られながら
「俺!?」
「はぁ~相変わらずジュンは鈍感ですね」
「何だよそれ、ってお前今初めて名前で呼んでくれたな!!」
「あっ(///)……悪いですか?」
「別に」
「じゃなくて!! 私はジュンが好きなんです」
「あっ……ごめん」
やっぱり駄目……か
「そう…………ですか」
「いやっそうじゃなくて、お前が真面目なのにお茶を濁しちゃって」
「えっ! じゃあ返事は?」
まさか!?
「もう少し待ってくれないかな?」
「そうですよね」
先伸ばし……か、時間が無いっていうのに
でも、私が真剣だから彼も真剣に考えるのだろう
そんな彼を想像したら……
「ふふっ」
「どうした?」
「何でもねーですよ」
夕焼けが私たちを染めていた
いつか……
いつか私もそんな風に彼の心を私で染めてみたい