隠し架空説、そして伝説へ・・・


長々と隠しについて語ってきたわけであるが、
「本当の隠し」というものがどれだけ多くの影響を喧嘩界に与えたか、
ということについてはご理解いただけたかと思う。
未だに謎は多いものの、それだけ本当の隠しは強く、喧嘩師たちにとって魅力的であったのだ。

しかし。

時代が移るに連れて、喧嘩師たちの認識は一変したと言わざるを得ない。
2005年の半ば頃からすでに変化の兆候を見せ始めていたが、
新時代以降、「本当の隠し」との交流が完全に途絶えた後には、
その気持ちの変化はより顕著に、そして確固たるものになっていた。

「憧れ」から「疑惑」への変化。

当然と言えば当然である。
いかに少量の接触をこなしたとはいえ、一般喧嘩界において「隠し」の全貌を把握した者は誰一人としていなかったのだから。
(一般喧嘩サイトから本当の隠しに勧誘された人物は何人かいるが、彼らが本物かどうか確かめる術はなく、また接触もできなかった)

加えて、喧嘩師たちの疑念は、その凄まじき「質の高さ」にも向けられた。
一体どこからそれ程の数の強豪を勧誘したのか?
ロリィタ殺人娯楽最盛期の常連数は、およそ150人を超えている。
そこから更なる質向上のため、大幅な人員削減を行ったようであるが、
それでも通常の喧嘩サイトでは考えられないほどの莫大な人口である。
他の隠しサイトも、平均して30~60人以上の常連喧嘩師を抱えていたと噂される。
勿論人数を揃えるだけだったら、一般喧嘩サイトにもできないわけではない。
尋常でないのは、彼らの誰もが、喧嘩師として優秀たる実力を兼ね備えていたことである。
他にも隠しと一般サイトを分かつ、異常とまで言えるほどのセキュリティ・技能。

一体どうやって・・・?

隠しとの交流があった内はまだいい。
しかし、交流断絶により、徐々に隠しへの「興味」は薄れ、やがて否定的な意見が喧嘩師たちを支配していったのだ。

両間の隔たりはあまりに大きく、どれだけ望んでも届くことはない。

答えられることのない疑問は溜まりゆき、
ふとした切欠で生まれた疑念は、止まることなく深まっていった。
その中で、喧嘩師たちはある一つの結論に達する。

「何故隠しの全貌は一向に見えないのか?」
「何故隠しはそこまで質が高く、またそれを維持できるのか?」

このような数々の疑問を自ら解消する上で、最も無理がなく、かつ説得性があったのが、
この項目の名称にもなっている

「隠し架空説」

なのである。

「本当の隠しが存在するという確固たる証拠」がないのだから、その全てを架空としてしまえば話は早い。
今までの交流は、裏で糸を引いていた黒幕の自作自演。
こんなにも謎に満ちているのも、質が高いのも、全ては虚構。
相手側からの反論もない。
寧ろサイト強化の都合上、「死亡説」や「架空説」が流れることは
勧誘を希望するうるさい蝿が減って好ましい、と喜んでいたほどである。

「本当の隠し」はその質の高さと謎の多さ故に喧嘩師の興味を引き付けたが、
またそれ故に、喧嘩師から疑惑の眼差しを向けられることになったのだ。

かくして、交流断絶の後、「隠し架空説」は喧嘩界に浸透する運びとなった。
古参喧嘩師の活動力は低下、彼らの多くが引退し、新時代以降「本当の隠し」の存在すら知らない新参が大量に流入した。

「本当の隠し」は忘却の彼方に追いやられ、やがて歴史の遺物となり・・・

―――そして現在に至る―――。


筆者は。
「本当の隠し」が実在したのか、はたまた今でも実在しているのか、
やはり架空だったのか、これらの選択肢の内、どれが正しいのかを知らない。
これから知ることも、最早ないだろう。

だが、情けない火山では、「本当の隠しは架空である」とだけは、断言しない。
彼らの本意ではないとしても、喧嘩界へ与えた影響と彼らの功績を讃え、感謝したいし、
何より隠しに熱狂した一人の喧嘩師として、その存在を信じ続けたい。
もしも彼らがいなかったなら、今の自分はここにはいないだろう。
「隠し」は俺にとっての夢そのものだった。
「もしかしたら・・・」という一縷の望みを捨て切れないことも、また本心なのだ。

喧嘩界の表と裏で暗躍し、やがて姿を消していった隠したち。
その謎はあまりに大きく、解明する術を持たない。
真相が闇に葬られた今、彼の存在の有無を推し量るのは、これを読んでいるあなた方一人一人だ。

では問いましょう。

「あなたは、"隠し"が存在すると思いますか―――?」





















焼け石「ねーよ(ワラ」
最終更新:2014年12月29日 20:20