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週刊誌特集記事

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●週刊誌で特集された近未来通信に関する記事

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週刊東洋経済2006年10月21日特大号より
大丈夫?近未来通信周辺で相次ぐ“異変”

http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/2006/1021/index.html

近未来通信の様子が変だ。支払遅延が発生、社長の個人会社が破産を準備、申告漏れも発覚した。不透明経営の行き着く先は。

 有名な女優を使った新聞広告など、派手な宣伝で注目を集めてきた近未来通信(東京都中央区)。IP電話事業を推進するため、「中継局オーナー制度」と称して、一般投資家から広く資金を募る独特の経営手法でも知られる。


 同社によれば、右肩上がりを続ける売上高は2006年7月期に245億円に達したという。が、それとは裏腹に周辺ではこのところ異変が相次いでいる。

 「9月末日支払いに関しましても・・・・・お時間を頂戴致し度く考えております」

 近未来通信は9月28日付で、取引先に対して支払い遅延の要請文を差し入れた。同様の要請は8月末に続いて2度目だ。売り上げの低迷がその理由とされている。

 中継局オーナーに対しては通信事業で得た収益の一部を毎月還元する仕組みだが、こちらの支払いも一部で遅れている。同社によれば「10月10日の支払いを27日まで待っていただけないかと、一部の方に話をしている」という。

周辺企業群の謎

 本体の資金繰りとは別に気掛かりな動きもある。
 10月初旬。東京・日本橋小伝馬町にある雑居ビルのドアに、1枚の通知文が張り出された。 「トッププレイヤー」なる会社が、営業を停止して破産準備に入ったというのだ。負債額は数億円。インターネットカフェ事業などを展開していた同社は、3年前までは社名を「近未来システムサービス」といい、近未来通信の販売代理店をしていた。近未来通信の石井優社長や、日置茂専務らが経営陣に名前を連ねてもいた。
 こうした過去の社名や事業内容、人間関係からすると、近未来通信の関連企業のようにも見えるが、資本関係はまったくない。約半数の株式を保有するのは石井氏で、あくまで個人的な会社。今回の破産準備について近未来通信に問いただすと「2年ほど前から会社としてはノータッチ」のため影響はないとの返答だ。

 それでも大きな問題がある。近未来通信の関係者が株主や役員になっている周辺企業が、トッププレイヤーに限らず都内に数多く存在し、それらとの関係が不透明な点である。

 

 石井社長はほかに「グッドウェーブ」というやはりインターネットカフェの会社で唯一の取締役となっている。近未来通信の子会社「近未来ビデオコム」の取締役でもあった古閑双氏は在任中に、「ユウキャピタルマネジメント」なる投資顧問会社を個人出資で設立、代表取締役に就いた。

 

 関与企業が多いのは日置氏だ。注目すべきは「アイピーン」や「クリス」といった会社だ。この2社はインターネットを利用した電話サービスが主目的。となれば、IP電話事業を生業とする近未来通信との間で競合関係となるおそれがある。日置氏の行動は利益相反行為ともとられかねない。信用調査会社の資料によると、03年6月設立のアイピーンは当初、近未来通信に対するコンサルティング業務を柱としていた。そうした取引関係が適切かは注意を要するところだ。

 実際、周辺企業との不透明な関係の中で最近、噴き出したのが申告漏れの問題である。近未来通信は昨年、「ルーデ」という会社に市場調査を依頼、3億円を支払った。ルーデはかつての社名を「近未来テクノス」といい、石井氏や日置氏が現在でも取締役に名を連ねている。
 同社の目的は暖房器具に使用する発熱体やセラミックス半導体の販売など。そんな会社に調査を依頼すること自体が不思議な話だが、あろうことか支払額の半分以上がキックバックともいえる形で近未来通信に還流していたのである。それらを理由に、近未来通信は重加算税も含め約2億5000万円を東京国税局から追徴課税された。実は、近未来通信が支払い遅延の直接の要因として打ち明けるのが、この追徴税納付だ。

 そうした周辺企業とは逆の不可解な例もある。近未来通信はホームページで前述の近未来ビデオコムなど8社を関連会社に挙げているが、その中に香港の現地法人がある。ところが、登記情報を見たところ、株主欄にあるのは近未来通信ではなく、石井、日置両氏ら個人なのである。

いまだ外部監査なし

 近未来通信について、本誌は05年10月29日号でその不明朗さを指摘した。派手な宣伝戦略で幅広い個人から資金を募っているにもかかわらず、財務諸表が公開されていないなど、問題があると判断したためだ。

 会社側によれば、本社・支社に直接来た中継局オーナーには決算書を見せるように対応を変更したそうだが、いかにも不十分。850人以上から相当額を集めているのに、いまだに決算は監査法人のチェックを受けていない。

 近未来通信は売り上げ低迷の理由を散発的に続く批判報道に求めている。だが、それを招いているのは自身の不透明な経営にほかならない。

(縮小写真にて掲載された支払遅延要請文)

近未来通信が取引先に配った要請文
支払い遅延は8月末に続き2回目

                             

                                          平成18年9月28日

お取引先各位

                                   株式会社近未來通信

                                   代表取締役社長 石井 優



拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
平素から当社事業にご高配を賜り、まことにありがとうございます。
さて、皆様もご承知の通り最近当社は一部マスコミ等による誹謗中傷記事によって、当社は甚大な被害を被っております。
皆様にご心配をお掛け致しておりますが、当社はそのマスコミ等に対しまして事実無根の報道の訂正を求め現在厳重抗議を致しております。
このマスコミ等の事実無根の報道により現在の当社の被害は、正当な営業活動を大幅に制限され本来であれば売上に計上出来る通信費等がまったく計上出来ない状態であります。
お取引各位には本年8月末日にお支払いすべく金額を延ばしていただきまして、非常に感謝しております。
また、前述させていただきました通り現在の当社の営業売上は非常に厳しく、本年9月末日支払に関しましても幾許かのお時間を頂戴致し度く考えております。
出来るだけ早急にお取引先各位に対するご迷惑を最小限に止め、早急なる支払いを現在検討しております。
お取引先各位には大変なご迷惑をお掛けしており申し訳ございませんが、今しばらく当社の営業活動にご協力を賜り度くお願い申し上げます。 

                                               

                                                   敬具

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週刊朝日 2006年9月15日号より
「所得隠し」近未來通信に投資家が「配当遅延」と激怒

http://opendoors.asahi.com/data/detail/7581.shtml

  

 東京国税局から所得隠しなどで約6億8千万円の申告漏れを指摘され、約2億3千万円の追徴課税を受けたIP電話会社の「近未來通信」(東京都中央区)に、個人投資家を巻き込んだ”疑惑”が浮上している。


 同社は一般の電話回線とインターネット網をつなぐ「中継局」を独自に開発。97年からIP電話サービス「スーパーネット」を展開している。ユーザー同士の通話が無料というだけでなく、「国内は一律、3分17円。アメリカは1分14円。韓国は18円」と、国内外の一般電話にかける際の料金も業界最安値を誇る。
 8年前は約7億円にすぎなかった売上高は、06年7月期には約245億円まで急成長。その内情を、同社の関係者はこう明かす。
「利用者が急増したからではなく、『中継局』がバカ売れしているからですよ」


 この「中継局」を買ったのは、主に一般の個人投資家たちである。同社は、「約1100万円の投資で毎月60万円程度の収入が得られ、投資した資金は2、3年で回収できます」と説明会でうたい、個人投資家を集めていたのだ。
 
投資額は中継局の性能と場所によって異なるが、1100万円~2700万円程度。内訳は加盟金と設備費用で、設備を同社から購入する契約になっている。オーナー=中継局の購入者というわけだ。

 前出の関係者によると、中継局は2千以上。つまり、220億円以上が近未來通信に流れた計算になるのだ。しかも中継局の運営費用として、オーナーは毎月約30万円を同社に支払っているという。

 04年にオーナーになった男性は、こう憤る。「最初は赤字でも約半年後には黒字になり、1年後には赤字分が帳消しになるという話でした。でも、ひと月の収支が黒字になったのは約10ヵ月後。結局、200万円強しか回収できていません」

 契約期間は2年間。更新すればずっと配当を受け取れる仕組みというのだが、「オーナーが更新し続けたら、会社は採算割れですよ。そもそもオーナーの数だけ中継局がそろっているかもわからない。実態は、新規オーナーのお金を既存の人の配当に回す”自転車操業”ではないか」(前出の関係者)

 これに対し近未來通信は、「中継局の数はそろっている。きちんと収益を還元しているが、説明会で話しているのは最大収益。金額は経済環境などで変化する」と本誌の取材に答えた。

 通信業界をめぐる投資話としては、昨年10月に平成電電が490億円も集めながら破綻したトラブルが話題になったばかり。この問題、まだまだ尾を引きそうだ。

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AERA 2006年9月11日号より
IP電話の近未来通信が隠す ”怪しい「過去」と「近未来」”

http://opendoors.asahi.com/data/detail/7580.shtml

①《派手なCMでも有名だったIP電話の急成長企業。
国税当局から所得隠しを指摘されたが、そもそもはどういう会社? 社長は何者?》

 相次ぐスターの登場で盛り上がる女子プロゴルフ界は今シーズン、新たに3試合増えた。3月に鹿児島高牧カントリークラブで開かれた近未来通信クイーンズオープンもその一つ。地元出身の横峯さくらも登場し、大いに沸いた。
 このトーナメントを主催した株式会社近未来通信(東京都中央区)は、1997年の創業。インターネット技術を利用したIP(インターネット・プロコトル)電話事業で「急成長」を遂げている、とされる企業である。とよた真帆や大地真央といった有名女優を起用した派手なコマーシャルに、見覚えのある人も多いだろう。
 この近未来通信が、東京国税局の税務調査を受け、2005年7月期の1年間で1億7500万円の所得隠しを指摘された。それだけではない。一般投資家から事業資金募る手法にも、疑問の声が上がり始めているのだ。


 同社が創業した90年代後半は、日本でインターネットの普及が進み、IP電話事業に各社の参入が相次いでいた時期だ。だが、近未来通信のビジネス形態は、多くの通信他社と比べ、かなり特殊だ。
 投資家には、独自に設ける中継局の設備を販売し、「オーナー」になってもらう。オーナーには、中継局の運営費用を負担してもらう代わり、一般ユーザーの電話の利用料などの売り上げから配当を受ける、というのが事業の基本的な仕組みだ。


②《本当に利益が出るのか》

 会社側の説明では、オーナーが当初負担する額は、加盟金や設備費などの名目で最低1100万円強と、かなりの高額だ。このシステムでは、会社側はほとんどリスクがないことになる。一方、投資家側からすれば、リターンが大きくなければ割に合わない。
 果たして本当に利益が出るのか。IP電話を巡っては、今年経営破綻した平成電電でも、出資者とのトラブルが表面化している。

 昨年12月に東京都内で開かれた「中継局オーナー事業説明会」に参加したときの担当営業マンの説明は、次のようなものだった。「投資家にはリスクはつきものだが、IP電話ビジネスは成長を続けており、過去のオーナーさんのなかには、月60万円の収益を上げている方もいらっしゃいます」
 強引な押し込み販売スタイルとは異なり、説明会の後もしつこい勧誘電話などはなかった。こちらから連絡を入れて説明を聞きに出向いたときも、担当営業マンは無理な投資の進め方はせず、「投資にはリスクがあるので、余裕ある資金で参加してほしい」と強調していた。

 とはいえ、近未来通信のビジネス形態がオーナーに利益を生むのかは、なお大きな疑問が残る。近未来通信が使っているIP電話サービスは、発信側、着信側ともにNTTの一般回線を使うものだ。このタイプは発信側、着信側とも普通の電話機で使える一方で、電話をかけるたびにNTT通話料金が発信、着信側両方でかかるため、国内の通話料金が下がったいまは、さほど割安感はない。


 実は近未来通信型のIP電話会社は、ソフトバンクBBの「BBフォン」やKDDIの「おとくライン」などの通信大手に押される形で、現在はほとんど撤退してしまっている。
 というのも、大手のサービスがユーザー宅まで自社のIP回線を引くことと、スケールメリットを生かし、より低料金を実現してしまったためだ。残った会社も、国際電話に特化したプリペイドカード型と呼ばれるサービスに、軸足が移りつつある。国際電話業界に詳しい関係者は、「国際電話のヘビーユーザーは法人のビジネスユーザーと外国人。外国人は、一般電話で契約する人はほとんでいないため、プリペイドカードで携帯電話や公衆電話から使えるようにしないと、そもそもビジネスとして成り立たない」と指摘する。

③《疑問多い「中継局」》

 近未来通信でも、事業を国際電話にシフトさせ、プリペイドカード型サービスも用意。カードは都内のチケットショップなどで販売されている。ところが、その事業シフトとは裏腹に、説明会で配ったオーナーの収益モデルでは、アダプターユーザーと呼ばれる月決めの利用者から入る料金が中心で、プリペイドカードが使われた分については含まれていない。

 テレビCMで盛んに宣伝していた関係会社「近未来ビデオコム」のテレビ電話については、その使用料がどうオーナーに配当されるのか、明らかになっていない。
 さらに、利益の配当は中継局ごとに計算されるため、外国人が少ない地域の中継局では、当然プリペイドカードが使われることも少なく、利益が見込めないはずだ。

 会社側の説明では、中継局は全国各地に80ヶ所以上も設置されているというが、なかには国際電話と縁のなさそうな地域も数多く含まれている。さきの関係者は、「格安の国際電話サービスでは、ユーザーが多そうな地域だけに基地局を配置するのが一般的。これだけ全国に中継局を設置したとしても、東京や浜松など外国人が多い地域はともかく、地方の中継局にペイできるほど通話があるとは思えない」と首をひねる。
 加えて問題なのは、電話の利用者数や収入の額など、財務に関しての詳細を同社がオーナーたちに明かにしていない点だ。

 ある消費者団体によると、「控えももらえないままに契約書にサインしてしまい、期日までに2千万円を振り込んでほしいと言われた」など、近未来通信に関する相談が昨年ごろから相次いでいるという。
 消費者問題に詳しい悪徳商法被害者対策委員会の堺次夫会長は、「近未来通信のやり方は、将来性が不確実なのに、確実に売れるからと『独占販売権』を与えて投資家を募った過去のフランチャイズ事業に似ている。末端の利用者数の数や、そこから上がる利益の額を投資家には公開するべきではないか」と指摘する。


 アエラでは、近未来通信に対して、05年度で約180億円とされる売り上げの細かい内訳や、オーナーへの還元額の見通し、中継局ごとの売り上げなどについて、文書で同社に尋ねたが、「急な取材のため回答までの時間が少なく、答えられない」として、締め切りまでには回答は得られなかった。

④《前身は毛皮、宝石、霊園》

 有名女優を起用した派手なCM戦略の一方で、会社の実態がはっきりしない近未来通信とは、そもそもどんな会社だったのか。会社案内や広告によると、社長を務める石井優氏は、中央大学商学部を卒業した後、製薬会社に入社。その後数年で独立し、貿易関係の仕事に就くかたわら、コンサルティング業などを手がけたという。

 97年12月に会社を設立した後、ただちに東京、大阪、名古屋、福岡でテスト通話を始めたといい、「IP電話をその開拓期から手掛けてきたベンチャー企業」というふれこみだ。
 だが法人登記簿や信用調査会社によれば、設立当初の会社の目的は宝石や毛皮、浄水機器の販売などで、会社側のいう「ITベンチャー」の印象とはほど遠い。社名も現在とは違い、「有限会社エクセルジャパン」。石井氏が当時住んでいた川崎市多摩区のマンションの一室が、登記上の本店になっていた。


 創業当時のことを知る関係者の一人は、こう話す。「はじめは首都圏のホテルの宴会場やホールを借りて、展示会と称して宝石や毛皮などを売っていたんです。従業員はほとんどいなくて、イベントごとに多い日で数十人のアルバイトを雇いました。通信関係のビジネスを始めたのは、日置さん(茂・専務)が以前、通信関係の代理店を募るビジネスを手がけていたという話で、石井社長ははじめは通信ビジネスについては素人だったはずです」

⑤《マスターズリーグにも》

 設立初期の登記簿には、ほかにも墓石の加工や販売、霊園の開発や造成、さらには墓地の永代使用権の管理といった業務もうたわれているが、先の関係者は、「企画は持ち上がったが、先の見通しが立たないということで、結局、霊園に関する事業は何もやらずじまいでした」
 98年8月に新日本通信と社名を変え、さらに99年1月に現在の社名になった。
 事業が急拡大するにつれて、派手な宣伝も目立ち始め、02年からはプロ野球OBでつくるマスターズリーグで、札幌アンビシャスのチームスポンサーを務めている。関係者によると、スポンサー料は年間3000万円という。


 さらに登記簿によれば、石井社長や日置専務は、近未来通信以外にも、複数の有限会社をそれぞれ設立している。インターネットを利用した電話サービスといった本業に近い事業をうたう会社のほかに、バーやキャバレーの経営をうたった銀座に本店を置く会社もある。それらの会社は、有限会社から株式会社への組織変更や本店の移転を頻繁に繰り返している。

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週刊東洋経済 2005年10月29日特大号より
-新聞に大量広告-
近未来通信への投資はホントに儲かる? 説明会に潜入!

http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/2005/w1029.html

 

 「IP電話中継局オーナーをご存知ですか」
受話器を片手に、にっこり微笑む女優の脇に「事業説明会開催中」との大々的な告知。どうやら読者に対して、共同事業への投資を呼びかけているようだ。

 日本経済新聞や朝日新聞といった全国紙で、そんな広告を見ない日はない。広告主の名は近未来通信。東京都中央区に本社を置く非上場会社で、言ってみれば通信ベンチャーといったところか。下手な大企業より露出度の高い”有名企業”だが、なぜか経済ジャーナリズムの世界ではこれまで”ノーマーク”だ。
 ならば、くだんの「中継局オーナー事業説明会」に参加してみようということで、潜入取材を試みた。


 9月某日、事前予約のうえ、大阪市内の近未来通信関西支店に赴く。エレベーターの扉が開くと、いきなり社員数人の出迎え。受付を済ますと、男性社員がすり寄ってきた。
「担当の○○です」と差し出された名刺には「営業部係長」とある。なにも始まらないうちから担当者をつけるきめ細かな営業姿勢がこの会社の特徴らしい。
 会場は定員30人ほどの会議室で、この日は平日の昼間にもかかわらず20人余りがいた。サラリーマン風や若い男性、熟年夫婦と顔ぶれはさまざま。午後1時、いよいよ説明会が始まる。撮影・録音は禁止だ。

 石井優社長の側近との紹介で、最初に登場したのは営業推進部の幹部。説明内容はインターネットを利用した電話の仕組みなどで、まあ、これは広く知られた話。

 次に登場は南村薫常務。同社が扱うプリペイド式の国際電話カードやテレビ電話などの紹介が冗談を交えながら続く。さらに日置茂専務が登場。いんぎんな調子でIP電話の将来性などが語られた。

 ここまででおぼろげにわかってきたのは、同社は割安に国際通話ができる「グローバルカード」を販売しており、それを主な収入源に売り上げが急増しているらしいこと。

 会社案内によれば、2004年度は前年比58%増の126億円(利益額は不明)。そして、その収入増に対応するため、「スーパーネット」と名付けたIP電話網を拡大する必要に迫られていること。ただ、ベンチャーなので銀行からの資金調達は難しい。そこで、一般投資家に中継局の設備を購入してもらい、その回線利用状況に応じて配当を還元するオーナーシステムを導入していること。


 「うちは営業には自信があります」と南村常務は太鼓判を押す。「グローバルカード」を売りまくる営業力はあるが、IP電話網構築の資金手当てがネックというわけだ。終了予定時刻の3時半を回ったころ、ようやく本題であるオーナーシステムの具体的説明が始まった。ただ、主な配布資料は2枚だけ。それを抜粋したのが、両ページに掲げた表である。

 8回線分の場合、初期費用は1132万円。毎月の費用が30万円。回線利用は徐々に増加、最大で月に110万円が見込めるという。配布資料の収支予測では1年目に累計収支がプラスとなり、2年目に投資額が回収となる。その後の配当はまるまる利益という仕組みだ。ただ、これは予測であり、「実際には回収まで2年半から3年くらい見といてください」とのこと。何だか大ざっぱだ。

 最後に南村常務が「エエ話ありますよ」と語りかけた。「実はこんど台湾に中継局40台つくります。加盟金200万円が余分にかかりますが、いいタイミングでご案内できます」という。ただ、説明はそこで終わり。ここまで15分ほど。投資予定額などを聞くアンケートに記入させたうえで、あとは優良投資家を”一本釣り”するようだ。記者は最低ラインの投資予定300万円未満にマルを打ったせいか、今日に至るまで営業担当者からの連絡はない。

 さて、急成長中との触れ込みの近未来通信だが、信用調査会社でも詳しい財務諸表
は把握していない。法人登録によれば、官報に決算を公告することになっているが、見つからなかった。登記簿をさかのぼったところ、1997年12月の設立時、同社の社名は「有限会社エクセルジャパン」で、本店は川崎市多摩区の石井優社長の自宅マンション。目的欄を見ると、宝石・貴金属・浄水器の販売や霊園開発と、現在からはおよそかけ離れた内容だ。それが98年8月に新日本通信へと社名変更、さらに99年1月に現社名へと変遷した。
 一般第2種電気通信事業者であることを国のお墨付きを得ているとばかりに、広告でさりげなくアピールしているが、これは総務省に届け出て、書類の不備がなければ誰でもとれるもの。今年8月現在、全国に1万3098もの業者が存在する。


 不思議なのは、中継局オーナーの募集広告はよく見るものの、収入源である「グローバルカード」がどこで販売されているかは、まったく宣伝していないことだ。問い合わせると、大阪市内なら大阪駅前ビル地下のチケットショップにあるという。のぞいたところ、確かにあった。ところが定価1000円のものが半値近い580円で売られている。よほど人気がないのだろうか。
 やはり、ここは会社に直接取材を申し込むしかない。が、広報担当者は「1ヶ月前の申し込みしか受け付けない」との返事。やむなく、決算やオーナーシステムの投資実績など基本的な事柄を書面で問い合わせた。この間、同社は広告代理店を使って記者の動向をに探りを入れてきたが、(10月)16日現在、回答はない。

 つい先ごろ、やはり通信ベンチャーの平成電電が突然倒産した。同社はインフラ構築を目的に、親密会社が運営する匿名組合を通じて一般投資家2万人近くから490億円を集めていた。近未来通信も広告で大々的に投資家を募っている以上、マスコミが積極的な情報開示を望むのは、決して無理な注文ではないと思うのだが。

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週刊ダイヤモンド 2005年10月22日号より
平成電電破綻で露呈した「高利回り投資」の危うさ

http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=20244102205

 通信ベンチャーの平成電電が民事再生法を申請したことをめぐり、非難の声が巻き起こっている。同社が個人投資家から集めた490億円ものカネが弁済されない可能性が高まっているためだ。

 平成電電に限らず、最近では高配当をうたって出資を募る通信事業者のトラブルが相次いでいる。団塊世代の退職ラッシュが目前の今、被害はさらに拡大しそうだ。設備投資資金を個人投資家から集める通信会社は、平成電電だけではない。

 「パソコン・通信の知識や営業活動などは全く必要ありません」 こんなうたい文句で出資を募るのは、IP電話事業を行なう「近未来通信」だ。

 設立当初は毛皮のコートや宝石等を販売していたという、通信業界では異色のベンチャー企業である。

 中身はこうだ。個人が加盟金、サーバ代など約1100万円(8回線の場合)を投資し、IP電話の中継局オーナーになる。営業は近未来通信が行なうので、「3年後には毎月平均60万円の収入を持続的に見込める」(近未来通信)。すでに「中継局オーナーは数百人規模」(同)に上っているという。

 ただし、近未来通信は「最低収入は保証しておらず、万が一、当社の事業継続が困難となった場合は投資家の自己責任」(同)と釘を刺すことも忘れない。同社の売上高(H18年7月期)は前年同期比44%増の181億円と急成長しているが、同社に限らず、これらの高利回り投資にはリスクも伴なうということだ。


 実際、すでに多額の被害者が出ている会社もある。東京・赤坂に事務所を構える「スリーディ・コム社」は、3年ほど前から「基本料込み月額3000円で使い放題」というIP携帯電話計画をぶち上げて出資者を募っていた。

 約300万円を払って中継局オーナーになれば、年間360万円を5年間にわたって受け取ることができる。そのうえに、IP携帯電話一台当たり300円の販売マージンが得られるという触れ込みだ。IP携帯電話の販売代理契約だけなら約60万円の出資ですむこともあり、集まった出資者は「2000人以上」(関係者)に上がると見られる。だがサービスはいっこうに始まらず、同事業は今も停止状態。出資者の多くが解約を申し出たが、スリーディ社は一部の契約者を除いて返金には応じず、だんまりを決め込んでいる。

 スリーディ社では株式公開計画をちらつかせて未公開株の購入も勧めた。福岡県在住のAさんは3年前、「来年には上場する」と言われて2口(2000株)を500万円で購入。「今や紙切れ同然になってしまったが、家族にはとても言えない」と深刻そうに打ち明ける。

 H15年3月期には13億6000万円あった同社の売上高は、H18年3月期には4000万円にまで縮小している。「会社が破綻するのは時間の問題」と被害者の一人は諦め顔。結局、泣き寝入りするしかない。

 

こうした格安電話をうたった詐欺的商法の源泉をたどっていくと、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)の「MTCI」に行き着く。

 1996年に設立されたMTCIはISPとしては後発ながら、投資家に設備投資を負担させることで、接続拠点と会員数を急速に伸ばした。投資家は1500万円で同社からサーバを購入し、同時にサーバの置き場所も提供する。

 これに対してMTCIは毎月40万円の賃料を払う。その一方で、99年10月には全国紙などに広告を打ち、個人投資家に未公開株を購入させた。ネットバブルが盛り上がるなか、付けた値段は1株256万円。同社は合計約24億円を手にしたものの、2000年10月にはサービスを停止。出資者の金は「泡」と消えた。

 これから団塊世代の退職ラッシュを迎える。老後の不安が高まるなかで、こうした高利回りをうたう詐欺的商法が増殖する公算は大きい。甘い話には用心すべきだ。

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