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淡色薔薇(美少女)

(投稿者:店長)


高級娼館の内部はルルアが想像していたモノとは些かの違いが見受けれた。
破廉恥なまでに露出しているであろう娼婦の格好は、今ルルアが身につけているような品の良いドレスであった。
決して不快感を与えない程度の香水の爽やかな香りに、本人の魅力を引き立たせる程度の化粧。
その雰囲気が、エルフィファーレの普段の様子とどこか似通っていた。
彼女はここで実際に働いていたことがあったのかもしれない、だとしたら何となしにらしいなと思う。

「いらっしゃいませ」

娼婦の一人がやってくる。
普通に考えれば、女連れでここにやってくることは珍しいはずだが、彼女の表情はそれを一切伺わせない。
ルルアが知らないだけで、こういった客がやってくることが多いのだろうか?

「予約を入れていた者だ」
「……少々お待ちを」

マクスウェルとルルアは、彼女の眉が少し形状変化したのを見逃さない。
互いに目線を一瞬だけ合わせる。
周りの空気もどこか重さを増してきている……裏の顔が、少し露になりつつあるのを体感する。
今頃は人を経由してワイズマンに二人がやってきたことを伝えているはずだ。
何かしらのリアクションが、行動の機転となる。
1分にも満たない時間が経過し、最初に対話した娼婦が戻ってくる。

「失礼ですが、ご指名は?」
「──エルフィファーレを」

マクスウェルのキッパリとした答えを受け、周囲の警戒心が一段と強くなっていく気配がした。
招かれざる客として二人を認識するのか、客として招かれるかの勝負であった。
出来ることなら、殺生沙汰にならないようにと二人は祈る。

「──わかりました、此方に」

娼婦が踵を返し、二人を先導していく。
ひとまずすぐさま手を出してくる様子はない……それとも、何時でも抹殺できるという余裕なのだろうか、
そこまでは隻眼の女は図りかねていた。

奥へと続く扉に案内され、その奥にある地下への階段を下った。
底より漂うその陰湿な空気は、ルルアはおろかマクスウェルにとっても不快さを超えて生理的な拒絶感が襲い掛かって来て、
知らず知らずの内に、二人の肌には冷や汗がうっすらと浮き上がっている。
まるで巨大な生物の胃袋に自ら躍り込むような幻視をしている思いだ。

「この奥でございます」

地下を降りた先に、薄暗い電灯を照明としている通路にでた。
床は固い材質でできており、どんなにゆっくりと歩いても乾いた音が鳴り響いた。
おそらく、侵入者を察知するための工夫のひとつなのだろう。

「ありがとう」

乾いた声で儀礼的に挨拶をする。彼女は幽霊のようにその床で音を立てずに上の階へと戻っていく。
彼女の履いていたのはハイヒールだったはずだ。
いったいどのような歩き方をすれば、この廊下を音を立てずに歩けるのだろう?

「──背筋が凍る」
「ええ、彼女は人間なのでしょうか?」
「メードだったかもな」

笑えない冗談を告げたマクスウェルはこほん、と咳払いをする。
本当に彼女がメードであったなら、いつでも彼らを殺せたという意味に他ならない。
ここまでは何もなかった。だがここからはそうであるとはいえないのが現実だ。
下手すればこのまま二人が闇の中で抹殺されてしまう恐れもあったのだ。
ここはすでに、『ワイズマンの魔窟』なのだから。

「往くぞ」
「はい」

一番奥の木製の扉をノックする。
きっちりと3回目の後、一拍を置いてから響く声は予想より若々しい声だった。

「入りたまえ……クラーク・マクスウェル中佐、そしてルルア君」

いよいよ、賢人との対面の時であった。


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