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大分県の小学校教員採用汚職事件で、元県教委参事、矢野哲郎容疑者(52)夫妻=贈賄容疑で再逮捕=の長女(23)が23日、同県佐伯市内の小学校教諭を退職した。涙をぬぐいながら校長に退職を願い出たという。一方、贈賄罪で起訴された元小学校校長、浅利幾美被告(52)の長男、長女は励ましと批判が交錯する中で教壇に立っている。
関係者によると、元県教委参事、江藤勝由容疑者(52)は07年度の採用試験で矢野容疑者の長女、08年度では浅利被告の長男の成績をそれぞれ加点・改ざんし合格させたとされる。
23日、会見した武田隆博・佐伯市教育長によると、矢野容疑者の長女は17日、校長に退職願を提出。23日に神妙な表情で退職の辞令を受け取ったという。県教委によると、長女は「自分がまったく知らなかったとはいえ、責任の一端を感じる」と話していたという。
長女は昨年4月から佐伯市内の小学校に勤務、今春から低学年のクラスの担任。校長によると、事件発覚直後から、「ニュースを聞いたとき、もう仕事をやめないといけないのかなと思った」と悩み続けていたという。校長は「普段落ち着いている彼女が、涙をぬぐいながら退職を願い出た」と沈痛な表情で語った。
一方、浅利被告の長男は、今春から大分市内の小学校に勤務。校長によると、高学年のクラス担任を任され、保護者の評判も上々だという。校長が「こういうことになったけど、目の前のことを一生懸命にやって」と言うと、「はい」と答えた。7月上旬にクラスの保護者会で本人が謝罪。「不正を知らなかった」と話し、仕事は続ける意向を示したという。
浅利被告の長女の採用試験の成績は優秀で改ざんすることなく合格したとされる。現在、佐伯市内の小学校に勤務。「子どもと一緒に歩むことのできる先生」(校長)と評価され、新規採用ながら高学年のクラスの担任を任された。事件発覚直後2週間ほど休んだが、教師を続けていきたいという意向を持っているという。
県教委は、不正による採用が確認されれば、採用を取り消す方針だ。しかし、大分市内の小学校長は「不正採用は氷山の一角。さりとてばんばんと辞めさせられたら現場は大混乱する」と悩ましげだ。
一方、長女が小学校教諭を辞職したのを知った、矢野哲郎容疑者は、「娘の人生を狂わせてしまった。申し訳ない」と関係者に話しているという。
【島田信幸、小畑英介、村尾哲】
毎日新聞 2008年7月24日 10時33分(最終更新 7月24日 13時15分)