「《魔法少女》レディ・プロウド&アーチャー」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

《魔法少女》レディ・プロウド&アーチャー」(2016/04/28 (木) 23:03:26) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*《魔法少女》レディ・プロウド&アーチャー ◆Jnb5qDKD06  サーヴァントはあらゆる時代、あらゆる世界から呼び出される。  故にこういうこともあるだろう。    *   *   *  ────魔王パムが死んだ。  彼女が臨んだ最後の任務にて捕縛・滅殺対象の暗殺者に不覚を取った。  魔王パムの死により外交部門は武力を背景にした外交をすることができなくなるだろう。  だって、そうだろう。最強の魔法少女ですら暗殺が可能なのだ。他の魔法少女も可能だろう。  つまり腕っぷしの強い魔法少女が何人集まろうが以前のような脅しは通らず、力を失った外交部門は文字通り衰退する。  そして、その先に待つのは外交部門の終焉だ。  外交部門の上役達はこの世の終わりのような顔をしながら魔王パムの葬儀に参列していた。  魔王パムの魔法少女養成所『魔王塾』の塾生・卒業生達は偉大なる師の死に涙を流している。  その光景を外交部門の魔法少女レディ・プロウドは冷ややかに見ていた。 「魔王パムがいなくなっただけで外交部門は終わりか。  随分と舐められたものだ」 「でも実際そうじゃない」  相棒のアンブレンが無感動な瞳でレディ・プロウドへ呟く。 「アンブレン。魔王パムの後釜は確かにいない。奴は優秀すぎた」  いかなるj危機的状況にも対応可能で政治も護衛もできる経験豊富な魔法少女はレディ・プロウドの知る限り存在し得なかった。  しかし、こうも思う。 「ならば我々に残された道は衰退だけか。  なあ、アンブレン。我々がやってきたことはパムが死んだ程度で無視されるレベルのものか?」  今の今まで魔王塾卒業者じゃないというだけでレディ・プロウドは舐められてきた。  そして魔王パムが死ねば、連座で私達も終わりだと?  なんだそれは。ふざけるな。我慢ならん。  魔王塾関係者じゃないからダメなのか?  あそこで泣いているだけの腑抜け共に劣ると? 「それはヤダ」 「そうだな」  思い知らせなくてはならない。  他人の死は喜ぶべきではないが、このチャンスを逃せば次はない。 「でも手柄ってどうやって立てるの?」 「アテはある」  レディ・プロウドの魔法の端末のメール。  そこには人造魔法少女計画の情報があった。    *   *   *  ────汝の願いを叶えよう。  レディ・プロウドの憤懣を聞き届けた神がいた。  開門される窮極の門。  その先に広がる白痴と狂気の宇宙こそ汝が主役となれる惨劇の舞台。  総てを凌駕する最果ての絶対領域。  猛毒の如き悪意が循環するヨグ=ソトースの第二宇宙。  そこから啓示される言葉こそ全ての証明。全ての元凶。  汝、ここに最凶を証明せよ──── 336 :《魔法少女》レディ・プロウド&アーチャー ◆Jnb5qDKD06:2015/04/29(水) 23:02:34 ID:3nTOISWM0    *   *   * 「何だコレは」  レディ・プロウドは件のタレコミがあった情報によりS市内で捜索を始め、血の匂いを追ってとある廃工場にいた。  どうやらここが人造魔法少女研究所の入り口らしい。  それらしきものがなく、入り口を探して工場の給湯室に入れば、銀色に輝く鍵があった。  薔薇と蝙蝠の意匠を凝らした年代物だと推測できるが、何故こんなものがこんなところにある。 「もしや入り口を開く鍵か?」  こんな所に置きっぱなしにする理由も思いつかないが、かといって無関係とも思えない。  これが鍵ならば鍵に合う鍵穴があるはずだ。 「む、これか」  銀色の鍵を拾うと鍵の下に確かに鍵穴が存在した。  鍵を差し込んで回す。  回してしまう。  回してしまった。  瞬間、空間が泡立ち、或いは罅割れ、或いは捻れた。  名状しがたい吐き気と浮遊感がレディ・プロウドを襲う。 「ぐ、あ、わ、罠か」  突如、耳朶を打つ下劣な太鼓の狂おしき連打と呪われたフルートの音。  一体、どこから聞こえてくるかすら気にする余裕のないままレディ・プロウドの意識は暗黒に呑まれた。    *   *   *  そして急に現実に醒める。  自分はとある会社の秘書で、廃棄された工場を取り潰す下見をしに来ていた───などと訳の分からない偽の記憶から解放された。  いる場所は昏倒前と変わらぬ給湯室だった。  しかし、雰囲気が変わっている。コンセントや給湯器、その他の備品が尽く錆びつき、朽ち果てていた。    一体何年経っている?── 寂れ具合から少なくても10年近く。  外交部門はどうなった!?──そんなもの、考えるまでもないだろう  いや、それよりも!! 「───アンブレンッ!!」  給湯室から駆け出し、やはり昏倒前よりも朽ち果てていた工場の内部にアンブレンの姿はなかった。  代わりにいたのは───魔王パムだった。 「なん……だと……」  馬鹿な、死んだはずだと頭では拒絶しても目の前の現実がそれを許さない。  奈落の如き双眸、闇を塗り固めたような四枚の羽、ほぼ暖簾としかいいようがないほど露出度が高い衣装。  そして全身から放たれる暴威の波動。魔王の風格。それでいて氷河を思わせる停滞感。  感じる全てが魔王パムだと告げている。 「貴女が私のマスターですか」  柔和な笑みを浮かべて魔王パムがレディ・プロウドを問い質す。  その問いをトリガーに脳に直接流れ込む聖杯戦争の知識。  ──聖杯、アーカム、サーヴァント、神秘、マスター、令呪、銀の鍵、秘匿者、令呪──    聖杯、聖杯、聖杯だと?  ああ、なんて素晴らしい。人造魔法少女なんて目じゃない代物じゃないか。 「ああ、そうだ。私がお前のマスターだ」  レディ・プロウドは現状を全て理解した。魔王パムが己のサーヴァントとしていることも。  だが、その前に聞かなくてはなるまい。 「アンブレンはどうした」 「ここにはいません。銀の鍵を持っていない者はアーカムへこれません」  アンブレンはまだあの工場にいるというわけか。  早く他のマスターを倒して帰らねばならないな。  可能であれば彼女も連れてきたかった。  強力な護衛としても精神的支柱としても私にはアンブレンは必要だ。  少なくとも目の前のサーヴァントよりは信頼できる。 「死んだばかりなのに英霊扱いとはな」  嫉妬を抑えられずレディ・プロウドは冷笑を浴びせる。  自分達を散々引っ掻き回した当の本人が英霊として崇められ昇華されているのだ。  腹立たしくて仕方がない。    しかし、プロウドも恥は知っている。口にした直後、自分の行いが恥ずかしくてすぐに言ったことを後悔した。  肝心のパムはというと優しい笑みを浮かべたままパムは回答する。 「いえ、英霊とは時空を超越して座より呼び出されるものです。今回の召喚も毛色が少し異なりますが、その大原則は変わっていません。  未来で英霊になった自分と戦った、なんて事例があったらしいですから  自分の知り合いが英霊として召喚されるなんて決してあり得ないということはないです」  レディ・プロウドは他にも様々な質問をした。  サーヴァントのステータス、スキルの詳細、帰還方法、そして魔王パムが聖杯に何を願うのか。 「私の願いはただ一つ。『納得のいく結末に変えたい』。ただそれだけです」 「それはつまり死んだことをなかったことにしたいということか?」 「いえ、暗殺されたのではなく、戦いで敗れた結末に変えたいのです」  それこそが魔王パムの、戦闘者としての未練。  暗殺、謀殺としてではなく戦いで己を上回る者と戦い、そして死んだ。  その過程のみを書き換えたい。なぜならば 「見ていたでしょう。私の眷属(こども)たちが私が死んでどうなったか」  最強は否定され、討つべき仇はもはやなく、故に嘆くしかない者たち。  総じて──魔王パムが生前否定した弱者そのものであった。  敗北は敗北だ。パムが任務に失敗して敗死した事実は認めねばなるまい。  しかし、己の後に続く者達は生きている。だから強くなってほしい。 『いつまで死者(わたし)に縋っているつもりだ。  前を向け。胸を張れ。生者(おまえたち)はまだ先へ行けるのだぞ』  それが魔王パムの最後の教えである。 「マスターの願いはなんでしょうか」  パムが聞き返す。  聖杯戦争においてマスターとサーヴァントの願いが相反する場合、サーヴァントとマスターの関係が崩れる。  どこかの聖杯戦争では戦争開始前にサーヴァントと信頼関係を失い、サーヴァントに殺されたマスターがいるとか。  その大前提も知識として入ってきている。  しかし、敢えて言わねば、言ってやらねばなるまい。 「決まっている。魔法の国へ聖杯を持ち帰り、お前の後釜へ……いや、お前を超えるポストに付く」  英霊相手に不遜極まりない宣告。  そしてレディ・プロウドの喝破はそれだけでは終わらない。  さらに──── 「踏み台にさせてもらうぞ魔王パム。  お前の死こそ私達にとって最大の好機なのだから。  お前の屍を越えていく!!」  あろうことかお前が死んでよかったと口にする。  こんな物言いではサーヴァントどころか誰に言っても怒りを買うだろう。  即殺されても文句を言えない発言に、されど魔王パムは微笑んで 「はい。楽しみにしております」  と本当に嬉しそうに返したのだ。    *   *   * 「最後に一つ質問なんだが」 「はい、なんでしょうか」 「なんで敬語なんだ?」 「私は同輩以上が相手なら上司も同僚も同じように話しますから」  丁寧かつ相手を不快にさせない口調は魔王というよりも柔和な老淑女を思わせる……が露出の多い格好が全てを台無しにしていた。  ともかく服を買ってやらねばなるまいと《イーストタウン》の寂れた工場を後にした。 【サーヴァント】 【クラス】アーチャー 【真名】魔王パム@魔法少女育成計画 limited 【属性】秩序・中庸 【パラメーター】 筋力:A 耐久:A 敏捷:A 魔力:A+ 幸運:D 宝具:A+ 【クラススキル】 単独行動:C  アーチャーのクラス別スキル。  マスターからの魔力供給を断っても自立行動が可能。  またマスターを失っても1日まで現界可能。 対魔力:E  神秘の薄い時代に生まれたため無効化は出来ない。  ダメージ数値を多少削減する程度。 【保有スキル】 心眼(真):A  魔法少女として数多の修羅場をくぐったことで得た洞察力。  いかなる窮地においても戦況から活路を見出す。 魔法少女:EX  魔法少女の中でも最古参で最高の能力を持つ。  彼女のステータスの高さもその一端である。  また思念によってステータスを一時的に上昇させられることができる。 魔王:B  生前のイメージによって過去の在り方を捻じ曲げられた怪物。能力・姿が変貌する。  アーチャーの場合は本人が名乗っているので任意にこのスキルを発動・解除ができる。  ただし、生前名乗った称号がスキルに昇華したことから、このスキルを発動するには真名を暴露する必要がある。  名乗った理由が織田信長と異なり、『万魔を統べる最強の魔法少女』という称号だったため、  筋・耐・敏のステータスの平均がA未満の者は畏怖のあまり全ステータスを1ランク下げる。  ただし、狂人もしくは同ランク以上の精神防壁を持つ者にはこの効果は適用されない。  また伝承から彼女を討伐した者、手傷を負わせた者はEランクの『神性』を獲得すると同時に、  どれだけ無名、もしくは正体を隠蔽してもいくつかの情報が暴露される。  生前、アーチャーに傷を負わせた音楽家は後に暴威と審判の神格化、魔王を暗殺した虹は魔王殺しという最凶最低の称号で広く知られた。  ヨグ=ソトースの智啓から召喚された事とこのスキルにより宝具の名前が代わっている。 カリスマ:B  カリスマ性の高さを示すスキル。自軍の能力を向上させる。  Bランクならば国家クラスの軍勢を率いることが可能。 【宝具】 『名状しがたき凶気に蠢く不定形にして混沌の羽』 (よんまいのくろくておおきなはねでたたかうよ)  ランク:C → A+ 種別:対人、対軍、対城、対国、対文明、対界 レンジ:1~地球文明圏内 最大捕捉:1~地球上全て  魔王パムの使う唯一にして万能の魔法。  本来であればこのような真名の宝具では無いが、『魔王』という属性と本人の気質により変容した。  宝具の能力自体に変化はない。完全にノリである。  羽の構成物質を変えてあらゆる生物・無生物・物理現象を生み出す。  羽は四枚しかないが、別の羽を分裂させることで四枚に戻すことができる。  あまりに破壊規模が広いため地球の文明圏内での全力解放を封じられていた伝承から  全力が封印されており、周りの被害を気にする必要がないほど解放されて威力と規模が上がっていく。  固有結界の中に入れちゃダメ、絶対。 『遥かなる時空の彼方に座する沸騰する深淵の中核』 (まおうじゅく) ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:10 最大捕捉:1人  生前の魔王パムが生み出した魔法少女の共同体『魔王塾』に関わった者を時空の彼方より呼び出す。  本来であればこのような真名の宝具では無いが、『魔王』という属性と本人の気質により変容した。完全にノリである。  宝具の能力自体に変化はない。  呼び出される者は完全にランダムで、魔王塾から放逐された者や見学者もこれに含まれる。 【weapon】 なし。宝具の羽と彼女の全身が武器である。 【人物背景】  かつて魔法の国の外交部門に所属していた魔法少女。  『最強』、『究極』、『最終兵器』、『大量破壊可能な魔法少女』、『外交部門の決戦兵器』と数多の通り名を持つ。  事実として彼女は最強の名に相応しい暴力とそれを抑える克己心を持つ優秀な魔法少女だった。  しかし最後の任務にて暗殺され、その伝説に幕を下ろす。  彼女の命を奪った原因は自身が問題視していた人を見る目らしい。 【サーヴァントとしての願い】  自分の最期を納得のいく結果に変えたい。 【マスター】  レディ・プロウド@魔法少女育成計画 JOKERS 【マスターとしての願い】  パムを越えたい 【能力・技能】 魔法少女:C  魔法少女として高い素質を持つ。  超人の魔法少女の中でも比較的に強いが、武闘派サーヴァントを打倒するほどではない。  『自分の血液をどんな液体にも変化させられる』魔法が使える。  また思念によってステータスを一時的に上昇させられることができる。 【人物背景】  魔法の国の外交部門に所属している魔法少女。  相棒の魔法少女・アンブレンはレディ・プロウドにとってかけがえのない相棒で、同時に精神的支柱である。  アンブレンのいないレディ・プロウドはひどく揺さぶられやすい。  魔王パムと同じく小隊長クラスの実力と経験があるが『魔王塾』出身でないことから評価が低い。  そのせいでパムに対しては嫉妬しかないが、反面パムの有能さも認めている。  マスターとサーヴァントが同じ世界、同じ時代を生きたという奇異なケースであるが、  とある聖杯戦争では未来に英霊となった自分に会うというケースがある以上、こういったことも起きうるのだ。 【方針】  聖杯、もしくはその一部を魔法の国に持ち帰り手柄にする。
*《魔法少女》レディ・プロウド&アーチャー ◆Jnb5qDKD06  サーヴァントはあらゆる時代、あらゆる世界から呼び出される。  故にこういうこともあるだろう。    *   *   *  ────魔王パムが死んだ。  彼女が臨んだ最後の任務にて捕縛・滅殺対象の暗殺者に不覚を取った。  魔王パムの死により外交部門は武力を背景にした外交をすることができなくなるだろう。  だって、そうだろう。最強の魔法少女ですら暗殺が可能なのだ。他の魔法少女も可能だろう。  つまり腕っぷしの強い魔法少女が何人集まろうが以前のような脅しは通らず、力を失った外交部門は文字通り衰退する。  そして、その先に待つのは外交部門の終焉だ。  外交部門の上役達はこの世の終わりのような顔をしながら魔王パムの葬儀に参列していた。  魔王パムの魔法少女養成所『魔王塾』の塾生・卒業生達は偉大なる師の死に涙を流している。  その光景を外交部門の魔法少女レディ・プロウドは冷ややかに見ていた。 「魔王パムがいなくなっただけで外交部門は終わりか。  随分と舐められたものだ」 「でも実際そうじゃない」  相棒のアンブレンが無感動な瞳でレディ・プロウドへ呟く。 「アンブレン。魔王パムの後釜は確かにいない。奴は優秀すぎた」  いかなるj危機的状況にも対応可能で政治も護衛もできる経験豊富な魔法少女はレディ・プロウドの知る限り存在し得なかった。  しかし、こうも思う。 「ならば我々に残された道は衰退だけか。  なあ、アンブレン。我々がやってきたことはパムが死んだ程度で無視されるレベルのものか?」  今の今まで魔王塾卒業者じゃないというだけでレディ・プロウドは舐められてきた。  そして魔王パムが死ねば、連座で私達も終わりだと?  なんだそれは。ふざけるな。我慢ならん。  魔王塾関係者じゃないからダメなのか?  あそこで泣いているだけの腑抜け共に劣ると? 「それはヤダ」 「そうだな」  思い知らせなくてはならない。  他人の死は喜ぶべきではないが、このチャンスを逃せば次はない。 「でも手柄ってどうやって立てるの?」 「アテはある」  レディ・プロウドの魔法の端末のメール。  そこには人造魔法少女計画の情報があった。    *   *   *  ────汝の願いを叶えよう。  レディ・プロウドの憤懣を聞き届けた神がいた。  開門される窮極の門。  その先に広がる白痴と狂気の宇宙こそ汝が主役となれる惨劇の舞台。  総てを凌駕する最果ての絶対領域。  猛毒の如き悪意が循環するヨグ=ソトースの第二宇宙。  そこから啓示される言葉こそ全ての証明。全ての元凶。  汝、ここに最凶を証明せよ────    *   *   * 「何だコレは」  レディ・プロウドは件のタレコミがあった情報によりS市内で捜索を始め、血の匂いを追ってとある廃工場にいた。  どうやらここが人造魔法少女研究所の入り口らしい。  それらしきものがなく、入り口を探して工場の給湯室に入れば、銀色に輝く鍵があった。  薔薇と蝙蝠の意匠を凝らした年代物だと推測できるが、何故こんなものがこんなところにある。 「もしや入り口を開く鍵か?」  こんな所に置きっぱなしにする理由も思いつかないが、かといって無関係とも思えない。  これが鍵ならば鍵に合う鍵穴があるはずだ。 「む、これか」  銀色の鍵を拾うと鍵の下に確かに鍵穴が存在した。  鍵を差し込んで回す。  回してしまう。  回してしまった。  瞬間、空間が泡立ち、或いは罅割れ、或いは捻れた。  名状しがたい吐き気と浮遊感がレディ・プロウドを襲う。 「ぐ、あ、わ、罠か」  突如、耳朶を打つ下劣な太鼓の狂おしき連打と呪われたフルートの音。  一体、どこから聞こえてくるかすら気にする余裕のないままレディ・プロウドの意識は暗黒に呑まれた。    *   *   *  そして急に現実に醒める。  自分はとある会社の秘書で、廃棄された工場を取り潰す下見をしに来ていた───などと訳の分からない偽の記憶から解放された。  いる場所は昏倒前と変わらぬ給湯室だった。  しかし、雰囲気が変わっている。コンセントや給湯器、その他の備品が尽く錆びつき、朽ち果てていた。    一体何年経っている?── 寂れ具合から少なくても10年近く。  外交部門はどうなった!?──そんなもの、考えるまでもないだろう  いや、それよりも!! 「───アンブレンッ!!」  給湯室から駆け出し、やはり昏倒前よりも朽ち果てていた工場の内部にアンブレンの姿はなかった。  代わりにいたのは───魔王パムだった。 「なん……だと……」  馬鹿な、死んだはずだと頭では拒絶しても目の前の現実がそれを許さない。  奈落の如き双眸、闇を塗り固めたような四枚の羽、ほぼ暖簾としかいいようがないほど露出度が高い衣装。  そして全身から放たれる暴威の波動。魔王の風格。それでいて氷河を思わせる停滞感。  感じる全てが魔王パムだと告げている。 「貴女が私のマスターですか」  柔和な笑みを浮かべて魔王パムがレディ・プロウドを問い質す。  その問いをトリガーに脳に直接流れ込む聖杯戦争の知識。  ──聖杯、アーカム、サーヴァント、神秘、マスター、令呪、銀の鍵、秘匿者、令呪──    聖杯、聖杯、聖杯だと?  ああ、なんて素晴らしい。人造魔法少女なんて目じゃない代物じゃないか。 「ああ、そうだ。私がお前のマスターだ」  レディ・プロウドは現状を全て理解した。魔王パムが己のサーヴァントとしていることも。  だが、その前に聞かなくてはなるまい。 「アンブレンはどうした」 「ここにはいません。銀の鍵を持っていない者はアーカムへこれません」  アンブレンはまだあの工場にいるというわけか。  早く他のマスターを倒して帰らねばならないな。  可能であれば彼女も連れてきたかった。  強力な護衛としても精神的支柱としても私にはアンブレンは必要だ。  少なくとも目の前のサーヴァントよりは信頼できる。 「死んだばかりなのに英霊扱いとはな」  嫉妬を抑えられずレディ・プロウドは冷笑を浴びせる。  自分達を散々引っ掻き回した当の本人が英霊として崇められ昇華されているのだ。  腹立たしくて仕方がない。    しかし、プロウドも恥は知っている。口にした直後、自分の行いが恥ずかしくてすぐに言ったことを後悔した。  肝心のパムはというと優しい笑みを浮かべたままパムは回答する。 「いえ、英霊とは時空を超越して座より呼び出されるものです。今回の召喚も毛色が少し異なりますが、その大原則は変わっていません。  未来で英霊になった自分と戦った、なんて事例があったらしいですから  自分の知り合いが英霊として召喚されるなんて決してあり得ないということはないです」  レディ・プロウドは他にも様々な質問をした。  サーヴァントのステータス、スキルの詳細、帰還方法、そして魔王パムが聖杯に何を願うのか。 「私の願いはただ一つ。『納得のいく結末に変えたい』。ただそれだけです」 「それはつまり死んだことをなかったことにしたいということか?」 「いえ、暗殺されたのではなく、戦いで敗れた結末に変えたいのです」  それこそが魔王パムの、戦闘者としての未練。  暗殺、謀殺としてではなく戦いで己を上回る者と戦い、そして死んだ。  その過程のみを書き換えたい。なぜならば 「見ていたでしょう。私の眷属(こども)たちが私が死んでどうなったか」  最強は否定され、討つべき仇はもはやなく、故に嘆くしかない者たち。  総じて──魔王パムが生前否定した弱者そのものであった。  敗北は敗北だ。パムが任務に失敗して敗死した事実は認めねばなるまい。  しかし、己の後に続く者達は生きている。だから強くなってほしい。 『いつまで死者(わたし)に縋っているつもりだ。  前を向け。胸を張れ。生者(おまえたち)はまだ先へ行けるのだぞ』  それが魔王パムの最後の教えである。 「マスターの願いはなんでしょうか」  パムが聞き返す。  聖杯戦争においてマスターとサーヴァントの願いが相反する場合、サーヴァントとマスターの関係が崩れる。  どこかの聖杯戦争では戦争開始前にサーヴァントと信頼関係を失い、サーヴァントに殺されたマスターがいるとか。  その大前提も知識として入ってきている。  しかし、敢えて言わねば、言ってやらねばなるまい。 「決まっている。魔法の国へ聖杯を持ち帰り、お前の後釜へ……いや、お前を超えるポストに付く」  英霊相手に不遜極まりない宣告。  そしてレディ・プロウドの喝破はそれだけでは終わらない。  さらに──── 「踏み台にさせてもらうぞ魔王パム。  お前の死こそ私達にとって最大の好機なのだから。  お前の屍を越えていく!!」  あろうことかお前が死んでよかったと口にする。  こんな物言いではサーヴァントどころか誰に言っても怒りを買うだろう。  即殺されても文句を言えない発言に、されど魔王パムは微笑んで 「はい。楽しみにしております」  と本当に嬉しそうに返したのだ。    *   *   * 「最後に一つ質問なんだが」 「はい、なんでしょうか」 「なんで敬語なんだ?」 「私は同輩以上が相手なら上司も同僚も同じように話しますから」  丁寧かつ相手を不快にさせない口調は魔王というよりも柔和な老淑女を思わせる……が露出の多い格好が全てを台無しにしていた。  ともかく服を買ってやらねばなるまいと《イーストタウン》の寂れた工場を後にした。 【サーヴァント】 【クラス】アーチャー 【真名】魔王パム@魔法少女育成計画 limited 【属性】秩序・中庸 【パラメーター】 筋力:A 耐久:A 敏捷:A 魔力:A+ 幸運:D 宝具:A+ 【クラススキル】 単独行動:C  アーチャーのクラス別スキル。  マスターからの魔力供給を断っても自立行動が可能。  またマスターを失っても1日まで現界可能。 対魔力:E  神秘の薄い時代に生まれたため無効化は出来ない。  ダメージ数値を多少削減する程度。 【保有スキル】 心眼(真):A  魔法少女として数多の修羅場をくぐったことで得た洞察力。  いかなる窮地においても戦況から活路を見出す。 魔法少女:EX  魔法少女の中でも最古参で最高の能力を持つ。  彼女のステータスの高さもその一端である。  また思念によってステータスを一時的に上昇させられることができる。 魔王:B  生前のイメージによって過去の在り方を捻じ曲げられた怪物。能力・姿が変貌する。  アーチャーの場合は本人が名乗っているので任意にこのスキルを発動・解除ができる。  ただし、生前名乗った称号がスキルに昇華したことから、このスキルを発動するには真名を暴露する必要がある。  名乗った理由が織田信長と異なり、『万魔を統べる最強の魔法少女』という称号だったため、  筋・耐・敏のステータスの平均がA未満の者は畏怖のあまり全ステータスを1ランク下げる。  ただし、狂人もしくは同ランク以上の精神防壁を持つ者にはこの効果は適用されない。  また伝承から彼女を討伐した者、手傷を負わせた者はEランクの『神性』を獲得すると同時に、  どれだけ無名、もしくは正体を隠蔽してもいくつかの情報が暴露される。  生前、アーチャーに傷を負わせた音楽家は後に暴威と審判の神格化、魔王を暗殺した虹は魔王殺しという最凶最低の称号で広く知られた。  ヨグ=ソトースの智啓から召喚された事とこのスキルにより宝具の名前が代わっている。 カリスマ:B  カリスマ性の高さを示すスキル。自軍の能力を向上させる。  Bランクならば国家クラスの軍勢を率いることが可能。 【宝具】 『名状しがたき凶気に蠢く不定形にして混沌の羽』 (よんまいのくろくておおきなはねでたたかうよ)  ランク:C → A+ 種別:対人、対軍、対城、対国、対文明、対界 レンジ:1~地球文明圏内 最大捕捉:1~地球上全て  魔王パムの使う唯一にして万能の魔法。  本来であればこのような真名の宝具では無いが、『魔王』という属性と本人の気質により変容した。  宝具の能力自体に変化はない。完全にノリである。  羽の構成物質を変えてあらゆる生物・無生物・物理現象を生み出す。  羽は四枚しかないが、別の羽を分裂させることで四枚に戻すことができる。  あまりに破壊規模が広いため地球の文明圏内での全力解放を封じられていた伝承から  全力が封印されており、周りの被害を気にする必要がないほど解放されて威力と規模が上がっていく。  固有結界の中に入れちゃダメ、絶対。 『遥かなる時空の彼方に座する沸騰する深淵の中核』 (まおうじゅく) ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:10 最大捕捉:1人  生前の魔王パムが生み出した魔法少女の共同体『魔王塾』に関わった者を時空の彼方より呼び出す。  本来であればこのような真名の宝具では無いが、『魔王』という属性と本人の気質により変容した。完全にノリである。  宝具の能力自体に変化はない。  呼び出される者は完全にランダムで、魔王塾から放逐された者や見学者もこれに含まれる。 【weapon】 なし。宝具の羽と彼女の全身が武器である。 【人物背景】  かつて魔法の国の外交部門に所属していた魔法少女。  『最強』、『究極』、『最終兵器』、『大量破壊可能な魔法少女』、『外交部門の決戦兵器』と数多の通り名を持つ。  事実として彼女は最強の名に相応しい暴力とそれを抑える克己心を持つ優秀な魔法少女だった。  しかし最後の任務にて暗殺され、その伝説に幕を下ろす。  彼女の命を奪った原因は自身が問題視していた人を見る目らしい。 【サーヴァントとしての願い】  自分の最期を納得のいく結果に変えたい。 【マスター】  レディ・プロウド@魔法少女育成計画 JOKERS 【マスターとしての願い】  パムを越えたい 【能力・技能】 魔法少女:C  魔法少女として高い素質を持つ。  超人の魔法少女の中でも比較的に強いが、武闘派サーヴァントを打倒するほどではない。  『自分の血液をどんな液体にも変化させられる』魔法が使える。  また思念によってステータスを一時的に上昇させられることができる。 【人物背景】  魔法の国の外交部門に所属している魔法少女。  相棒の魔法少女・アンブレンはレディ・プロウドにとってかけがえのない相棒で、同時に精神的支柱である。  アンブレンのいないレディ・プロウドはひどく揺さぶられやすい。  魔王パムと同じく小隊長クラスの実力と経験があるが『魔王塾』出身でないことから評価が低い。  そのせいでパムに対しては嫉妬しかないが、反面パムの有能さも認めている。  マスターとサーヴァントが同じ世界、同じ時代を生きたという奇異なケースであるが、  とある聖杯戦争では未来に英霊となった自分に会うというケースがある以上、こういったことも起きうるのだ。 【方針】  聖杯、もしくはその一部を魔法の国に持ち帰り手柄にする。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: