「Pigeon Blood」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

Pigeon Blood」(2018/03/10 (土) 19:50:25) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*Pigeon Blood ◆HOMU.DM5Ns 前日より変わらぬ人の喧騒。 正午に入ったアーカムダウンタウン地区の街並みは平穏そのものだ。 ガス漏れなどではあり得ない、各地区での大量の衰弱死。 早朝ミスカトニック大学で発見された不自然な首吊り死体。 ロウワー・サウスサイドで起きた、無数のホームレスを巻き込んだ爆発。 そして『白髪の喰屍鬼(グール)』。 この連日にアーカムで立て続けに起きた怪事件にも、街の様子は変わりない。 平和の象徴。天下の警察署のお膝元という安心感が、行き交う人々に余裕を生み、緊張を失わせていた。 連日バッシングの的となりマスコミの飯の種にされているイメージのつきまとう警察だが、公的権力というバックボーンは街全体に根付いている。 大抵の人間の中には頼るべき組織という共通認識があり、気づかぬうちにそこによりかかる事で治安は保たれているのだ。 あるいは、それとも―――。 アーカムという土地が、この地に住まう人が、異常な事態に順応してしまっているのか。 いかなる怪異を受容してしまう受け皿が形成されてしまっているのではないか。 狂気を望み、悪意を喜びのうちに招き入れる、おぞましき邪教の宗団のように。 家が崩れ、人が死ぬ。そんなものはこの街にはよくある事。 第一ダウンタウンにも都市伝説のひとつ『包帯男』が出没している。警察の権力など既に形骸化しているに等しい。 全ては贄。都市の住人は皆すべからく、アーカムという魔女の鍋に放り込まれる具材に過ぎない 無知なまま煮殺されるか、真実を知り絶望の中で細切れにされるか。違いなどその程度の差でしかない。 ではその悪辣なる異界で。知られてはならぬ邪神の潜むアーカムで。 ダウンタウン街道を出歩く住民達がにわかにざわつきめいているのにはいかなる事件の前触れなのか。 休憩中に昼食を取るサラリーマン、衰弱事件による休校にかこつけて遊びに繰り出している学生達の視線を掴んで離さないものとは何なのか。 『包帯男』か?『白髪の喰屍鬼』か?居並ぶ都市伝説は枚挙に暇がない。人の恐怖と不安のカタチだけ怪異は家の影に潜んでいる。 ただし此度に限っては―――そのどれでもなかった。 森林の奥地に潜む湖に住まう妖精のようだった。 あるいは、神の園より降りてきた天使のよう。 身を守るように人の集まる街道をそぞろ歩く少女の姿は、もうそれ以外に表現する他ない。 横を通り過ぎた影を目で追い、その非現実的光景に咄嗟に振り返って見直して、誰もが一様にそう思った。 日の眩しさと日頃の疲れが生んだ幻覚かと、目頭を押さえ現実を認識する者さえいる。 天からの光を浴び、透き通って煌びやかに輝く銀の髪。 それが風や体の動きで浮き上がって、さながらこの世と隔絶した別世界との境目となる深秘のヴェールにも見せている。 フリルをあしらった白のワンピースの下から覗く疵を知らないまっさらな肌。 神の恩寵を受けたが如く、珠玉の生地は陽の光を己を際立たせる輝きとして支配している。 ショーウィンドウに飾られた服を興味津々に眺め、かと思えば店頭で調理を実演している焼き菓子の匂いにふらふらと釣られてしまう。 迷い込んだ都会で初めてばかりの体験に戸惑う、世間知らずな深窓の令嬢そのものだ。 そして新しい発見をするたびに 、生涯に渡って残したい宝物を手にしたように、無垢な表情を綻ばせ大輪の笑顔を咲かすのだ。 調子を良くした店員が焼き立ての菓子入り袋をサービスしてしまうのもやむなしといったところだろう。 社会機構の運営が崩壊するまでには至ってないが、頻度を増す異変で住民の精神は日に日に疲労していっていた。 なまじ仕事が不可能なほど悲惨な状況ではないが為、堂々と休む事も出来ない。 中にはいい機会だとして有給で羽休めする者もいるが、そのしわ寄せは残る社員にのしかかるものだ。 悪循環する歯車の役目を負った者達にとって、目の前で踊る妖精がごとき少女は、淀んだ精神を浄うほんの少しばかりの癒やしの効果をもたらしていた。 その魅力を理解してないのは、羨望の眼差しを一身に受けている当人。 聖杯戦争に加わるマスターとして孤児院の外より出たアイアン・メイデン・ジャンヌのみであった。 「ローズマリー、その、やはり私の格好は変なのでしょうか?周りからずっと視線を感じるのですが……」 ジャンヌとしてはわざわざマスターであると宣伝する必要もないので、漫然と道なりに歩いて街に溶け込んでいるつもりでいた。 しかしいかんせん、ジャンヌという人物はマスター云々を抜きにしても目立つ格好でいる。異国人が住まうのもそう珍しくないアーカムであっても。 自覚できていない本人には不思議で仕方ないといった様子だが。 「そんなことないわ、むしろ逆よ。ジャンヌがあんまりにも可愛いからみんな見惚れちゃってるだけよ」 「そ、そうなのでしょうか」 そしてジャンヌを街に連れ出し可憐な服に着替えさせた張本人であるローズマリーは、悪戯っぽい笑顔でジャンヌをからかった。 素のままでも目を引く美人であるジャンヌに、更に魅力を引き立たせるドレスアップをさせたのは他ならぬローズマリーの趣味である。 元の世界で外出時の服装は目付け役のマルコに一任していたジャンヌに、自分の好みで選ぶという経験はない。 服の趣向もマルコが見立てたものと大差ないので気に留めなかったが、そもそもその服が今以上に全身フリルのメイド服だ。 X-LAWSの歪んで偏った教育の弊害は、ファッションセンスのおかしさにまで及んでいた。 (しかし……) 大樹のように屹立するコンクリートのビルの群れ。 人とものでごった返した道路。 百人単位での話し声、車の鳴らすクラクション、店内やビルの大型ディスプレイから流れるBGM…… 街というものがこれほど騒がしく活気に満ちた場所であると、上辺の知識だけだったジャンヌは実感を以て理解した。 シャーマンファイトでの予選試験は日本の東京都市内で行われたが、ジャンヌは東京の街というのをほとんど見ていない。 拷問器具(アイアンメイデン)の中で日常的に肉体を痛めつけ巫力を高めるのみで、外への関心を向ける機会など無かった。 アメリカでのパッチ族の集落、本戦で改めて向かった日本の孤島でもそう。 代々シャーマンファイトを取り仕切るネイティブアメリカンやトーナメント戦の為の舞台に、都市といえるだけの文明が築かれるはずもない。 だから鉄の処女の中に篭っていた聖・少・女は、ここで初めて外の世界を知ったのかもしれない。 今が聖杯戦争の最中で、ジャンヌは他のマスターを狙い狙われる側という自覚は忘れない。 ことに自分のサーヴァントはあの傲岸不遜の結晶のような男だ。迂闊に気の緩んだところを見せるわけにはいかない。 ライダーに情報収集を求めても当てにはならない。能力的にはうってつけでも性格的には全く諜報向けではないのだから。 ジャンヌ自身が直に出向き接触の機会を掴むのが、最も確実な手段であり安全な方法であると理解していた。 「ほらジャンヌ、また難しい顔をしてる」 ぴっ、と伸ばした人差し指が思考に耽るジャンヌの眉間を軽くつついた。 「友達と一緒にいるのに他の事を考えるなんて失礼よ。せっかく孤児院から抜け出したんだから思いっきり羽根を伸ばしましょう?  それとも、私といるのは嫌?」 目の前でこちらを窺うローズマリーの表情に寂しさの色が見える。 そうだ。彼女は父親に無理を言ってまで自分が外出する便宜を図ってくれた。 ジャンヌにとってはマスターの調査の名目でも、ローズマリーには久方ぶりの友人との語らいの場であるのだ。 友人というものを、ジャンヌは生まれてこの方得ていない。 LAWSのメンバーは支援者あるいは部下であり、向こうにとっても自分は信仰対象。 アーカムに来る以前、即ち死の直前の車内で期せずして麻倉家の玉村たまおと交友を深められたが、その結びもすぐに断たれた。 ローズマリーもそうだ。あくまで舞台上での役割。与えられた友人というロール。偽りの関係。 それでも自分を友人と慕ってくれている。笑顔を向けて手を取ってくれる。 真実を知らぬとしても、そこにあるのは偽らざる愛ではないか。 胸に生まれる、好いと思える感情。十の法を遵守するX-LAWSのリーダーとして、ただの孤児のジャンヌとして。 その思いを裏切る行為はなるべくしたくは、ない。 「……いえ、そんなことはありません。あなたと共に過ごせるのは祈りを捧げるのと同じくらい大切な時間です。  ありがとう、ローズマリー。今日は良い思い出を作りましょう」 答えに満足がいって顔を綻ばせるローズマリー。 時間がくればローズマリーは家に帰りジャンヌは孤児院に戻る。 ローズマリーの方はいつかまた自分に会いに行く計画を立てるだろう。しかしその時は訪れない。決して。 この逢瀬で二人は永遠に別れる運命だ。聖杯戦争に身を投じるなら余計に彼女を近づけてはいけない。 だからこの時は。この瞬間だけは。 どうか世界が平和でありますようにと、今まで以上に心の中で深く願った。 正午で賑わうダウンタウンの衆目の興味は銀の少女に一極している。 一緒に連れ歩く金髪の少女と護衛らしき数人の男女が視界に入っても、誰もそちらの方に意識を向けたりはしなかった。 せいぜいが絵画の風景や調度品と同程度の扱いでしかない。際立つ美を前にすれば、それより劣る美はくすんで見えてしまうものだ。 ……きり、という微かな歯ぎしりの音は、雑踏の喧騒に揉まれて聞かれる事なく消えていた。  ◆ 「ローズマリー、あのお店はなんというのでしょうか?」 「やだジャンヌったら、クレープも知らないの?」 なんてみっともなくはしゃいでいるだろう。 まるで盛りのついた猿だ。張り付けた笑顔を決して剥がさないまま、ローズマリー・アップルフィールドは包み隠した内心でのみ嘲笑した。 孤児院の院長を説き伏せてジャンヌを連れ出したローズマリーは、当初の予定通りのダウンタウン地区にまで来ていた。 当然、ここに来たのはジャンヌとウィンドウショッピングに興じる為ではない。 全てはローズマリーの夢見る城に続く橋の建設、聖杯戦争で勝利する戦術の為だ。 父となった男とは既に警察署の前で別れている。そこで警察署長の男と顔を合わせる段取りは既についている。 無論そこには最も忠実な家臣であるセイバー、グリフィスも伴っている。そこで署長を宝具『鷹の団』の一員に加える手筈だ。 フレンチヒルの名士である男を警察は無下に出来まい。そして一般人ではグリフィスの魔性のカリスマを目にすればひとたまりもない。 いつの時代でも、権力者を自陣に引き込む事は様々な側面で有利を取れるものだ。 無論、取り込む対象の地位は高いほどいい。 如何にグリフィスの魅力が抗いがたいものといえど、それには直接対面する事が必要条件となる。 末端のヒラ全員に順に顔を覚えさせられる機会は中々ないし何より手間だ。 諸々の問題を一段飛ばしで解消するには、頭を押さえるに限る。 司令系統を奪えば組織の動きを大まかになら差配できるものだ。 警察人員を動かせる地位にあり、アーカム内で起こる事件の情報を一度に収集できる立場。 その男を『鷹の団』に引き込めば実質上、署長の座をグリフィスと挿げ替えるのに等しい。 この一挙で警察という組織は、グリフィスとローズマリーのアーカム全域に伸びた監視の目とあり、充実した装備を公的に保有できる大軍団と化す。 そして鷹の翼の広がりはそこのみに留まらない。 各地に顔の効く名士を餌にして、専門的、特権的階級の有力者を釣り上げる。そうなればあとは芋づる式だ。 いずれはアーカムの行政に干渉する権限を持った者の全てが『鷹の団』になる。 長たるグリフィスに心臓を捧げるほどの忠義を誓い、その姫たるローズマリーに聖杯を献上すべくその手を躊躇いなく汚す、プリンセスの理想の騎士団が組織されるのだ。 「ごめんなさい。知識としては知ってるのだけれど、実際に食べた経験はなくて……」 「うふふ、ジャンヌは世間知らずさんなのね。まるでどこかの国のお姫様みたい」 「そ、そんなことはないのです、けれど」 「いいわ、じゃあ頼んでみましょう。ジャンヌの初めてだもの、クリームとフルーツがたっぷりなとっても甘い思い出にしなきゃ!」 「ですがローズマリー、私には手持ちが」 「それくらい私が払ってあげるわ。友達でしょ?」 ジャンヌの花も恥じらう照れ顔が癇に障る。 自分がマスターという飢えた獣をおびき寄せる生贄とも知らずに。 貸し与えたドレスも餌を引き立たせる飾りであるとも知らずに気に入っている。 道行く人は一度二度とジャンヌを見返し名残惜しそうに後にしている。 ジャンヌという小石を投げ込まれたダウンタウンは、人の波の流れに変化をもたらしている。 そこに纏う濃厚な"神秘"―――魔術に触れた者でなければ気づけない気配は、聖杯戦争の参加者にとってみればまたとない標的だ。 まさに想定通りに展開だ。 後は哀れな餌に釣られた無様なサーヴァントかマスターが出て来るのを待つのみだ。 現在ローズマリーの傍にセイバーはいない。 この状況でサーヴァントとの接敵を望むというのは本来なら有り得ない策だ。 護衛でついている十数人の『鷹の団』も所詮は人間。サーヴァント相手にはものの役にも立たない。 しかしこの場合問題はない。戦いになった時に矢面に立つのはジャンヌ、あるいはそのサーヴァントだからだ。 自分はあくまで巻き込まれた一般人。『友達』のジャンヌにとっては庇護するべき対象。 いざという事態、ローズマリーの身に危険が及べば身を挺して庇ってくれるだろう。 慢心はない。ジャンヌは自分に対して心の大部分を許しているのが実感できる。 そして心に食い込んだ存在を無碍にもできない。余程のお人好しなのか、それとも何か気がとがめる経験でもあるのか。 ローズマリーを救うのに、その身に隠した力をひけらかす事を躊躇しないだろう。 なんて愚かさ。なんてお馬鹿な娘。疑うことを知らないのか。 純心さなんて、生きる上でなんの役に立つのか。 慈愛を振りまき、誰もに好かれ、蝶よ花よと愛でられて、神の恩寵すら貰って、そうすれば幸せに生きられると。 人に愛をあげれば、その人も同じだけ愛をくれるのだと、本気で思っているのか。 「これが……クレープですか。ええと、頭からかじるのですよね?」 「ええ、口を大きく開けないとこぼれてしまうからはじめは気をつけて―――」 「…………はむ」 「あら」 ああ。その輝くばかりの銀髪が気に入らない。 荒れた事など一度もない肌が恨めしい。 施してもらうばかりの平和に緩みきった面に虫酸が走る。 ローズマリーが捨てたものを持ったまま、恵まれた境遇にいる事が許せなくて仕方がない。 今すぐにでも、その無防備な背中にナイフを突き入れてやりたい。 与えられている加護を奪い取って、裸になって放り出される姿を嘲笑いたい衝動を必死になって抑える。 「これは―――とても、甘いのですね。いちごのショートケーキよりもずっと濃くて、とろけるような味で……」 「ふ、ふふふ……ふふふふふふ……!」 「ローズマリー?」 「やだ、ジャンヌ……!口にクリーム、ついて、おひげみたい……!」 「――――――!?」 そうだ、そもそもが邪魔なのだ。 マスターであろうがなかろうが、そんなものは関係ない。そんなものと評すほどに、どうでもいい。 ジャンヌはローズマリーを日陰に追いやる極光だ。プリンセスという鏡に映る幸福を打ち砕くべく投じられた石だ。 あの女がいる限り、自分の夢は翳り、色褪せる。そんな確信がある。 何故ならジャンヌはローズマリーの『親友』だからだ。そしてローズマリーの親友はいつも自分を裏切ってきた。 だから許せない。だから認めない。 わざわざ自分の傍で富める者の余裕を見せつける存在を、ローズマリーは排除しなければならない。 「うふ、うふふふ……!」 「ロ、ローズマリー、そんなに笑わないでください……もう……ふふ、」 「だ、だって、ふふふ……!」 蓄積されていく負の想念。十三の少女の身には到底収まりきらぬ程の黒い塊が形成していく。 心の内に潜む闇。それは邪神のような凶災をもたらすわけではない。 都市伝説のように人から人に伝わり、タタリという実体を得て殺戮を繰り広げもしない。 たかだか一人の惨めな少女の激情。だがおぞましさでいえばむしろ同等であった。 嫉妬に狂いし怨鬼は少しずつ爪牙を研いでいく。 いつかその爪で引き裂く皮膚の感触を恍惚に夢見ながら。 牙で噛み切った肉から溢れる血で唇に艶やかな紅の化粧を施す時を待ち望みながら。 「あはははははははははははははははははは!」 ローズマリーは笑った。腹の底からこみ上げるおかしさに同調して。 ……どこかで、赤い塊がブルリと笑うように震えた。  ◆ 変わって、ダウンタウン上空。 近辺で一番の高層ビルのその天頂で、雷神のライダー、エネルは天下の全てを睥睨していた。 見下ろす眼差しは、その位置こそが当然というように傲岸で、尊大であった 「随分とまあ、緩んだ様子だな。これでは聖・少・女ではなくただの少・女のようではないか」 誰もいない屋上で虚空に胡座をかき、エネルは遊興するジャンヌを遥か遠方から見下ろす。 地上にいるジャンヌと数ブロック離れたビル屋上にいるエネルとはゆうに数百メートルは離れている。 サーヴァントでもすぐに駆けつけられる距離ではないが、これでもマスターの命令通り「いつでも駆けつけられる」距離にいるのだ。 この瞬間ジャンヌに聞きが及ぼうとも、瞬き一つの間があればエネルはあの場に到着してみせる。 お守りなど趣味ではないが、ここで命令に逆らってマスターの気を損ねるのも面倒だ。 それに、いまジャンヌの付近を監視する事は、エネルにとって興味の持てる行為でもある。 「ざっと十人。やはりぴったり張り付いているな」 心網(マントラ)で透視した、魔術による暗示や洗脳によるものではない「統一された意思」の集団。 エネルの興味を引いた人間達は今、ダウンタウンに繰り出したジャンヌに着いて離れずにいる。 その数はおおそ十数人。読み取れる精神はやはり互いに同調してるが如く一つの方向を向いていた。 「全員孤児院の連中ではないな。マスターを連れ出した女とその連れか」 孤児院の人間の顔など当然覚えていないエネルだが、状況やタイミングからいって、例の集団が潜り込んだのは資産家らしい男が訪ねた時であるというのには予測がついた。 「ほう、あの女だけは心が通常の動きだ。マスターの可能性が一番あるのは奴だが……」 エネルの雷の視線は、遠くジャンヌと笑い合うローズマリーと呼ばれた少女を射抜いた。 ジャンヌのほぼ同年代の年の頃、見るだけでは何ということもないただの一般人に映る。 しかしそれがマスターであるジャンヌを街に誘い、只の一般人とは思えない一団の一人となれば話は別だ。 年端もいかぬ少女のローズマリー。果たしてあれは笑顔の裏に研がれた殺意の糸を張りジャンヌを絡め取ろうとする奸物なのか、 それともさらに裏に潜むマスターの布石でしかない、哀れな捨て駒なのか。 「……ふむ」 正体を看破するだけならば、簡単だ。エネルが直接出向けばいい。 実体化した至近距離での心網なら、宝具である雷の力と併用してその者の感情の働きを詳細に知る事ができる。 その際英霊の神秘を目の当たりにした人間は気が触れるだろうが、些細なことだ。むしろマスターの判別には手っ取り早い。 あの連中は明らかに聖杯戦争に関わりがある。令呪の効果範囲はともかくマスターに咎められる謂われもない。 対処は速やかに済む。 結果は即刻詳らかになる。 故にエネルは、 「ヤハハハ、いいだろう、せいぜい今は余裕に羽根を伸ばすがいい。  折角の神を楽しませる催しなのだ、宴の準備ぐらいは待ってやらねばな」 やはり放置を継続するのだった。 マスターの危機を見せ物を眺める気分でせせら笑うサーヴァント。 ジャンヌほどのシャーマンの実力なら大抵の奸計は力づくでもねじ伏せられるとはいえ。その信頼からによる対応でないのは明らかだ。 木っ端が何をしようとも、どの道己が手を出せば全てはご破算になる。ならばその瞬間まであがきを見てやろうというだけのこと。 刺客が今すぐマスターを殺さないのも見当はつく。大方、膨大な巫力に寄せられて仕掛けてくる他のサーヴァントの情報収集が狙いだろう。 ジャンヌもまたその腹積りでいる。そしてエネルも、まだ見ぬ英霊との邂逅には少なからず興味を持つ。 しかして、それを覗き見る不貞の輩がいると前もって知っていてそれを許すというのは、いささか不興なのも事実。 聖・少・女のあの緩みっぷりでは獲物がかかるものまだ先だろう。しばらくは退屈が継続しそうだ。 さて、どうするか。聖杯戦争などつかの間の余興とする身にとって、ただ待つだけの暇とは苦痛である。 戦いに勝つ戦術ではなく、あくまでどうこの宴を楽しむかに思考を巡らすエネルに――――不意に得も言われぬ感覚が駆け巡った。 「……む?」 その時自分の中で生じた感覚が何であるか、エネルはこの場で理解しなかった。 仮にその正体に至ったとしても、この神を僭称する傲岸な性根の男が認める事は断じてないだろうが。 浮いたまま姿勢を立たせ、心網が捉えた方角に意識を尖らせる。 見据える先は先程までジャンヌもいた川向こう南西、孤児院の立つフレンチヒルとは逆の位置だ。 超常の探知機能を持つエネルでなく、通常のサーヴァント、のみならずただの人の身であってもそこで起きた異変には気づいただろう。 火の手の証。地上から曇天の空へ黒い煙が立ち上っている。 しかし舞い上がっているのはそれだけではない。エネル独自の鋭敏な探査能力があるとはいえ、川を隔てたこの距離まで届くほどの濃厚な神秘の気配……。 「―――――ほう」 退屈に冷めていた神の目に、それ以外の色が宿った。 燻った程度の小火では到底満足のいかない、盛大な花火の打ち上げを求めるような妖しい愉悦の色を。 【ダウンタウン/1日目 午前】 【アイアンメイデン・ジャンヌ@シャーマンキング】 [状態]健康 [精神]正常 [令呪]残り2画 [装備]持霊(シャマシュ) [道具]オーバーソウル媒介(アイアンメイデン顔面部、ネジ等) [所持金]ほとんど持っていない [思考・状況] 基本行動方針:まずは情報収集。 1.ローズマリー達と共にダウンタウンで過ごしながら情報収集 2.エネルを警戒。必要ならば令呪の使用も辞さない。 [備考]  ※エネルとは長距離の念話が可能です。  ※持霊シャマシュの霊格の高さゆえ、サーヴァントにはある程度近付かれれば捕捉される可能性があります。 【ライダー(エネル)@ONE PIECE】 [状態]健康 [精神]正常 [装備]「のの様棒」 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を大いに楽しみ、勝利する 0.川向こうでの火に興味。さて、どう楽しむか? 1.ジャンヌとは距離を取り、敵が現れた場合は気が向いたら戦う 2.「心網(マントラ)」により情報収集(全てをジャンヌに伝えるつもりはない) 3.謎の集団(『鷹の団』)のからくりに興味 [備考] ※令呪によって「聖杯戦争と無関係な人間の殺傷」が禁じられています。 ※ジャンヌの場にすぐに駆けつけられる程度(数百m)の距離にいます。 ※「心網(マントラ)」により、商業地区周辺でのランサー(カルナ)の炎の魔力を感じ取りました。 【ローズマリー・アップルフィールド@明日のナージャ】 [状態]健康 [精神]正常 [装備]なし [道具]なし [所持金]裕福 [思考・状況] 基本行動方針:打算と演技で他のマスターを出し抜く 1.場所を変えながら獲物がかかるのを待つ。 2.ジャンヌに対しては親身に接し、餌として利用する。 [備考] ※10人前後の『鷹の団』団員と行動を共にしています。  その中にはローズマリー自身の父親役も含まれています。  ◆ 寿司屋を出た後亜門鋼太郎は警察署内へと舞い戻り、行方不明者の捜索願いの届けと、署や病院で保護している人物のリストを検索した。 短時間にしろ調べられる範囲で見てもやはり日本人、それも燕尾色のケープという目立つ服の少女の情報は載っていなかった。 これ以上調べようと思うなら、市内の探偵事務所などを当たっていかねばならなくなるだろう。 作業を一段落した亜門はそこで、何故そこまで性急に捜索に当たろうとしているのか自分に疑問を持った。 事件の捜査に順位の優劣などつけはしないが、それでも亜門は聖杯戦争という極位の災害に対し率先して対策を施さなければいけない立場だ。 そもそも依頼主からはその少女の名前すら聞いていない。簡易的な外見だけを事務的に、心配する様子を微塵も見せず伝えてきた。 頭髪から足先までが黒ずくめで包まれた、黒という色の概念を人の形に落とし込んだような少年。 店に入ってから出るまでのたった十数分足らずで、名前も知らぬ男は亜門の心象に強く焼き付いていた。 いうなれば手足の自由を奪われ為す術もなく海の底に引きずり込まれる大渦の中心部。 この世界に在るはずのない、存在としての違和感をもたらす姿を、知らず知らずのうちに意識してしまっていたのか。 なんにせよ、すぐに見つけるには情報が不足している。 職務を放棄する気はない。刑事課の同僚に連絡をくれるよう伝え、改めて外へ向かおうとする亜門を、聞き慣れた大声が再度呼び止めた。 「おお亜門君!戻っていたか!」 警察署長は現れるなり亜門の肩を景気良く叩いた。 朗らかな笑顔を浮かばせた顔はいつも以上にエネルギッシュで、なんというか覇気に満ちていた。よほど上機嫌になる事があったらしい。 「はい署長。ですが、資料の確認をしていただけなのですぐに調査に戻ります」 「まあ焦らずこっちの話も聞いてくれ。今調べてるのはロウワーの方だろう?  喰屍鬼(グール)騒ぎといい大学の件といい、アーカムはよほど我々をタダ飯ぐらいにしたくはないらしい」 「例のミスカトニックでの首縊りですか。まだ若い少女でしたね……」 「ああ。こうもあたら若い命が摘まれいっては私の食も細くなるばかりだ。私の懐も察してくれるとは気配りのできる鬼どもだよ」 ミスカトニック大学での首吊り事件の報は既に亜門も聞き及んでいる。 広場に植えられた桜の木で足場がなければ届かない高さの枝にかけられた縄に首を通した応用化学部の女生徒。 発見時刻は登校時間のはじめ。ちょうど亜門とランサーがタタリとの戦いを終えた頃だ。 「大学内は独自の規律が作られていてよそからの干渉を快く持ってない者が多い。なにせミスカトニックはアーカムの名物、学会に名だたる者も多く在籍してる。  人里離れた田舎町じみて我々への協力も渋っているのが現状さ」 「国家権力も街の立役者には形無しというわけですか」 「ああ。しかしこの事件、私はこれに確かな陰謀の匂いを感じるのだよ」 「その根拠は?」 「勘だ」 閉口する亜門を見て署長は待っていたとばかりに大笑した。 「HAHAHA!ジョークだ!一度言ってみたかったんだなこれ!  ああかけているのは勘のほうで根拠はきちんとあるぞ!」 ひとしきり笑って満足したのか、声を一段落として真剣味を帯びた様子で署長は話を進めた。 「……たった今遺体の検死の結果が出た。まず彼女は自殺ではない。死んだ後何者かが吊り上げたものだ」 「見せかけ……いえ、発見現場が足場のない木の枝ですから偽装の意図もないという事ですか。  それで、その死因が私の事件と何か関連性が?」 「うむ鋭いな、流石は亜門君。どこぞのいまどき舞踏会でも見られない趣味の悪い仮面をつけた男にも見習って欲しいものだ!」 周囲に署員に聞き耳を立てられない為に声をひそめていただろうに、すぐさま元の声量に戻ってしまった。 おもに、やけに挑発的な物言いになっていた後半の部分が。 「それで死因の方なのだが、これも奇妙な報告でな。胸元に鋭利な刃物による刺し傷があったからこれが死因かと思われたのだが出血が少なすぎる、むしろまったくないのだという。  他に目立った外傷もなく肉体的には異常なし。医者の見立てでは、「急激な体力低下による衰弱死」だそうだ」 「それは―――っ」 言わんとしているところの意味に気づいた亜門は騒然とする。 数日前まで担当していた、市内で起きた連続衰弱死事件。亜門はその裏の真実を知っている。 魂を抜き取り釜に投げ入れる魔女の鍋。何も知らぬ無知なる者を精神の髄までしゃぶり尽くす蛮行。 英霊に力を蓄えさせる魂食い。それ同様の症状の被害者が大学で現れた。 自身の受け持つ仕事をこなす傍らでもまさかと訝しんでいた亜門だがこれで確信する。 大学内に、あるいは大学を標的としているマスターが存在する……。 「この情報はまだ現場にも伝わってない、最新のものだ。  無論食屍鬼事件も重大な案件だが、衰弱死事件との関わりが判明した以上、担当だった君に一報いれておこうと思ってね」 「ありがとうございます。わざわざ連絡をくださって」 ロウワーのみならず他のサーヴァントに関わる情報を得られたのは亜門にとっても朗報だ。 「なに、君の人徳だよ!昨日今日来たばかりのよそ者とは日頃の積み重ねが違うのだからね!」 「……マスク捜査官のことですか?」 先程からしきりに口を突いて出る誰かに向けた届くはずのない雑言に、流石に亜門も眉をしかめる。 警察署の人間か厄介扱いし、しかも仮面という特徴的な単語が当てはまる人物といえば、FBIから出向してきたという捜査官にほかならない。 「そう、それだよ!まったく彼ときたら事件の匂いを嗅ぎつけて出しゃばってきて困ったものだよ。  まあミスカトニックの偏屈な連中も、クソダサいセンスのマスクマンよりか日系のクールジャパンの方が受けがよかろう!あそこは日系の教授も何人かいるしな。  明らかにティーンにしか見えないレディーといいアジアは神秘の宝庫だな!」 「はぁ」 言外に発される『手柄を横取りさせるな』というメッセージに適当に相槌を打ってごまかす。 権力や功績争いは眼中にないが、それとは別にマスクという男については思うところはある。 ロウワーに大学という、亜門が知る限り聖杯戦争絡みの場所を自分に先駆けて動き回る仮面の男。 これがただ犯人を先に掴み上げる欲をかいた行動でなく、自分と同じ目線に立った上での調査だとすれば。 直接顔を合わせて真偽をはっきりさせておくべきか。次の被害を未然に防ぐにも向かう価値はあるだろう。 ―――今度こそ署を後にしようとした亜門の目に、ふと留まるものだあった。 署長の上着につけられた金細工。少なくとも今朝会った時にはつけてなかったものだ。 「署長、その飾りは?」 「おお気づいたかね?どうだカッコイイだろう!しかし残念だが亜門君でもこれは譲れんよ。なにせこの印を与えられるには特別な許可がいるからな!」 警察のバッジでもなければ記憶にある勲章の形でもないが、殊更考える必要もない事項だ。 この豪放磊落な男の事だし、どこかの懸賞や大会で当てたレアな賞品を見せびらかしにきたというのもあり得る。 鳥の羽をあしらった印象を記憶からさっぱり消して、日の下を出た直後ランサーへ念話で単刀直入に切り出した。 『君の意見を聞きたい』 『明らかな撒き餌、誘い、挑発、見え透いた罠だね。被害者のその子がマスターかは、実際に遺体を見てみないと判別できないけれど』 寿司をかっ食らっていた時とは面影すら残さない張り詰めた冷静さでランサーは所感を述べる。 完璧な調律が施された弦楽器の如く雑音の消えた、数多の魔術師と対峙した清廉なる騎士としての姿に立ち戻っていた。 『下衆な奴らだ。マスターがいるとすれば大学の研究所のどこかか』 『魔術師の張る陣地は魔窟も同然だ。そこに単身足を踏み入れる行為の意味を正しく理解しているかい?』 姿なき敵に憤りを見せる亜門に落ち着きを促すような忠告を与えたが、対する男の答えはなんとも簡素なものだった。 『独りではないだろう。君もいる』 『―――うん、それもそうだね』 それで十分だと言わんばかりに言葉を打ち切り歩き出した。ランサーもわざわざ追求する事なく随伴する。 命を懸けるという諫言を受けて止まるようならこの男は今ここにはいない。 それに逸っているようで、腹の底では冷静さを保っている。良き師に出会えたのだろう。 しかしこの聖杯戦争で、人の精神など容易く割れる薄氷に過ぎない。 タタリでの戦いで亜門がその根幹を揺さぶられたように、時には肉体より先に精神を保つ方が困難となる。 越えてはいけない最後の一線。その境界線の最後の砦となるのがリーズバイフェの役割だ。 魔を弾く城塞、音の聖盾ガマリエルを担う者として、今度こそ――――傍らの相棒を守護り抜いてみせる。 そしてその最果てに――――――かつての己の罪に、杭を突き立てるのだ。 「火事か」 けたたましいサイレンを鳴らす消防車の行き先を目で追う。 川を超えた辺りで昇る煙は商業地区の周辺からのものだ。店の倉庫で火が点いたか。 鈍色の空にくゆる狼煙は、アーカムを覆う暗雲を掴もうとするやせ衰えた腕のようだった。 【ダウンタウン・警察署/1日目 午前】 【亜門鋼太朗@東京喰種】 [状態]正常 [精神]落ち着いてきた [令呪]残り3画 [装備]クラ(ウォッチャーによる神秘付与) [道具] 警察バッチ、拳銃、事件の調査資料、警察の無線、ロザリオ [所持金]500$とクレジットカード [思考・状況] 基本行動方針:アーカム市民を守る 1.他のマスターとの把握。ひとまずミスカトニック大学へ向かってみる。 2.魂喰いしている主従の討伐 3.白髪の喰屍鬼の調査 [備考] ※調査資料1.ギャングの事務所襲撃事件に関する情報 ※調査資料2.バネ足ジョップリンと名乗る人物による電波ジャック、および新聞記事の改竄事件に関する情報。 ※神秘による発狂ルールを理解しました。 ※魔術師ではないため近距離での念話しかできません。 ※警察無線で事件が起きた場合、ある程度の情報をその場で得られます ※シルバーカラス、空目恭一を目撃しましたがマスターだと断定はしていません。 ※空目恭一の電話番号とあやめに対する情報を得ました。あやめを保護した場合、彼に連絡します。 ※警察署から商業地区での火事を目撃しました(魔力は感じていません)。 【ランサー(リーズバイフェ・ストリンドヴァリ)@MELTY BLOOD Actress Again】 [状態]健康 [精神] [装備]正式外典「ガマリエル」 [道具]なし [所持金]無一文 [思考・状況] 基本行動方針:マスターと同様 1.タタリを討伐する 2.キーパーの正体を探る [備考] ※女性です。女性なんです。 ※秘匿者のスキルによりMELTY BLOOD Actress Againの記憶が虫食い状態になっています(OPより) ※『固有結界タタリ』を認識しましたがサーヴァントに確信を持てません。 ※空目恭一に警戒を抱いています ※商業地区での火事には、距離の関係上魔力を感じられてません。  ◆ 羽撃け、鷹の翼。 広がれ、王の兵。 陰気香るアーカムを大いなる両翼で覆い隠せ。 その羽根の一枚一枚、鷹の目となりて王に届けよ。 全ては贄。 王と姫に捧ぐ饗膳。 血の宝石を生み出す儀に捧ぐ肉に過ぎぬ。 驕れる者、怯える者、■■さえも。 心せよ。王は既に、貴様らの腹の中にいる。 【???】 【グリフィス@ベルセルク】 [状態]健康 [精神]正常 [装備]サーベル [道具]『深紅に染まった卵は戻らない(ベヘリット)』 [所持金]実体化して行動するに十分な金額 [思考・状況] 基本行動方針:――ただ、その時を待つ。 1.霊体化してローズマリーに随行。 2.鷹の団の団員を増やす。最優先はアーカム市警、ついで市の有力者。 3.ジャンヌは餌として利用する一方、マスターである可能性を警戒。 [備考] 【全体の備考】 警察署長が『鷹の団』の団員となりました |BACK||NEXT| |020:[[今は鉛毒の時間]]|投下順|022:[[吊るしビトのマクガフィン]]| |020:[[今は鉛毒の時間]]|時系列順|22:[[吊るしビトのマクガフィン]]| |006:[[God bless the child]]|[[ローズマリー・アップルフィールド]]&セイバー([[グリフィス]])|:[[ ]]| |~|[[アイアンメイデン・ジャンヌ]]&ライダー([[エネル]])|025:[[Shining effect]]| |017:[[それぞれのブランチ]]|[[亜門鋼太朗]]&ランサー([[リーズバイフェ・ストリンドヴァリ]])|:[[ ]]|
*Pigeon Blood ◆HOMU.DM5Ns 前日より変わらぬ人の喧騒。 正午に入ったアーカムダウンタウン地区の街並みは平穏そのものだ。 ガス漏れなどではあり得ない、各地区での大量の衰弱死。 早朝ミスカトニック大学で発見された不自然な首吊り死体。 ロウワー・サウスサイドで起きた、無数のホームレスを巻き込んだ爆発。 そして『白髪の喰屍鬼(グール)』。 この連日にアーカムで立て続けに起きた怪事件にも、街の様子は変わりない。 平和の象徴。天下の警察署のお膝元という安心感が、行き交う人々に余裕を生み、緊張を失わせていた。 連日バッシングの的となりマスコミの飯の種にされているイメージのつきまとう警察だが、公的権力というバックボーンは街全体に根付いている。 大抵の人間の中には頼るべき組織という共通認識があり、気づかぬうちにそこによりかかる事で治安は保たれているのだ。 あるいは、それとも―――。 アーカムという土地が、この地に住まう人が、異常な事態に順応してしまっているのか。 いかなる怪異を受容してしまう受け皿が形成されてしまっているのではないか。 狂気を望み、悪意を喜びのうちに招き入れる、おぞましき邪教の宗団のように。 家が崩れ、人が死ぬ。そんなものはこの街にはよくある事。 第一ダウンタウンにも都市伝説のひとつ『包帯男』が出没している。警察の権力など既に形骸化しているに等しい。 全ては贄。都市の住人は皆すべからく、アーカムという魔女の鍋に放り込まれる具材に過ぎない 無知なまま煮殺されるか、真実を知り絶望の中で細切れにされるか。違いなどその程度の差でしかない。 ではその悪辣なる異界で。知られてはならぬ邪神の潜むアーカムで。 ダウンタウン街道を出歩く住民達がにわかにざわつきめいているのにはいかなる事件の前触れなのか。 休憩中に昼食を取るサラリーマン、衰弱事件による休校にかこつけて遊びに繰り出している学生達の視線を掴んで離さないものとは何なのか。 『包帯男』か?『白髪の喰屍鬼』か?居並ぶ都市伝説は枚挙に暇がない。人の恐怖と不安のカタチだけ怪異は家の影に潜んでいる。 ただし此度に限っては―――そのどれでもなかった。 森林の奥地に潜む湖に住まう妖精のようだった。 あるいは、神の園より降りてきた天使のよう。 身を守るように人の集まる街道をそぞろ歩く少女の姿は、もうそれ以外に表現する他ない。 横を通り過ぎた影を目で追い、その非現実的光景に咄嗟に振り返って見直して、誰もが一様にそう思った。 日の眩しさと日頃の疲れが生んだ幻覚かと、目頭を押さえ現実を認識する者さえいる。 天からの光を浴び、透き通って煌びやかに輝く銀の髪。 それが風や体の動きで浮き上がって、さながらこの世と隔絶した別世界との境目となる深秘のヴェールにも見せている。 フリルをあしらった白のワンピースの下から覗く疵を知らないまっさらな肌。 神の恩寵を受けたが如く、珠玉の生地は陽の光を己を際立たせる輝きとして支配している。 ショーウィンドウに飾られた服を興味津々に眺め、かと思えば店頭で調理を実演している焼き菓子の匂いにふらふらと釣られてしまう。 迷い込んだ都会で初めてばかりの体験に戸惑う、世間知らずな深窓の令嬢そのものだ。 そして新しい発見をするたびに 、生涯に渡って残したい宝物を手にしたように、無垢な表情を綻ばせ大輪の笑顔を咲かすのだ。 調子を良くした店員が焼き立ての菓子入り袋をサービスしてしまうのもやむなしといったところだろう。 社会機構の運営が崩壊するまでには至ってないが、頻度を増す異変で住民の精神は日に日に疲労していっていた。 なまじ仕事が不可能なほど悲惨な状況ではないが為、堂々と休む事も出来ない。 中にはいい機会だとして有給で羽休めする者もいるが、そのしわ寄せは残る社員にのしかかるものだ。 悪循環する歯車の役目を負った者達にとって、目の前で踊る妖精がごとき少女は、淀んだ精神を浄うほんの少しばかりの癒やしの効果をもたらしていた。 その魅力を理解してないのは、羨望の眼差しを一身に受けている当人。 聖杯戦争に加わるマスターとして孤児院の外より出たアイアン・メイデン・ジャンヌのみであった。 「ローズマリー、その、やはり私の格好は変なのでしょうか?周りからずっと視線を感じるのですが……」 ジャンヌとしてはわざわざマスターであると宣伝する必要もないので、漫然と道なりに歩いて街に溶け込んでいるつもりでいた。 しかしいかんせん、ジャンヌという人物はマスター云々を抜きにしても目立つ格好でいる。異国人が住まうのもそう珍しくないアーカムであっても。 自覚できていない本人には不思議で仕方ないといった様子だが。 「そんなことないわ、むしろ逆よ。ジャンヌがあんまりにも可愛いからみんな見惚れちゃってるだけよ」 「そ、そうなのでしょうか」 そしてジャンヌを街に連れ出し可憐な服に着替えさせた張本人であるローズマリーは、悪戯っぽい笑顔でジャンヌをからかった。 素のままでも目を引く美人であるジャンヌに、更に魅力を引き立たせるドレスアップをさせたのは他ならぬローズマリーの趣味である。 元の世界で外出時の服装は目付け役のマルコに一任していたジャンヌに、自分の好みで選ぶという経験はない。 服の趣向もマルコが見立てたものと大差ないので気に留めなかったが、そもそもその服が今以上に全身フリルのメイド服だ。 X-LAWSの歪んで偏った教育の弊害は、ファッションセンスのおかしさにまで及んでいた。 (しかし……) 大樹のように屹立するコンクリートのビルの群れ。 人とものでごった返した道路。 百人単位での話し声、車の鳴らすクラクション、店内やビルの大型ディスプレイから流れるBGM…… 街というものがこれほど騒がしく活気に満ちた場所であると、上辺の知識だけだったジャンヌは実感を以て理解した。 シャーマンファイトでの予選試験は日本の東京都市内で行われたが、ジャンヌは東京の街というのをほとんど見ていない。 拷問器具(アイアンメイデン)の中で日常的に肉体を痛めつけ巫力を高めるのみで、外への関心を向ける機会など無かった。 アメリカでのパッチ族の集落、本戦で改めて向かった日本の孤島でもそう。 代々シャーマンファイトを取り仕切るネイティブアメリカンやトーナメント戦の為の舞台に、都市といえるだけの文明が築かれるはずもない。 だから鉄の処女の中に篭っていた聖・少・女は、ここで初めて外の世界を知ったのかもしれない。 今が聖杯戦争の最中で、ジャンヌは他のマスターを狙い狙われる側という自覚は忘れない。 ことに自分のサーヴァントはあの傲岸不遜の結晶のような男だ。迂闊に気の緩んだところを見せるわけにはいかない。 ライダーに情報収集を求めても当てにはならない。能力的にはうってつけでも性格的には全く諜報向けではないのだから。 ジャンヌ自身が直に出向き接触の機会を掴むのが、最も確実な手段であり安全な方法であると理解していた。 「ほらジャンヌ、また難しい顔をしてる」 ぴっ、と伸ばした人差し指が思考に耽るジャンヌの眉間を軽くつついた。 「友達と一緒にいるのに他の事を考えるなんて失礼よ。せっかく孤児院から抜け出したんだから思いっきり羽根を伸ばしましょう?  それとも、私といるのは嫌?」 目の前でこちらを窺うローズマリーの表情に寂しさの色が見える。 そうだ。彼女は父親に無理を言ってまで自分が外出する便宜を図ってくれた。 ジャンヌにとってはマスターの調査の名目でも、ローズマリーには久方ぶりの友人との語らいの場であるのだ。 友人というものを、ジャンヌは生まれてこの方得ていない。 LAWSのメンバーは支援者あるいは部下であり、向こうにとっても自分は信仰対象。 アーカムに来る以前、即ち死の直前の車内で期せずして麻倉家の玉村たまおと交友を深められたが、その結びもすぐに断たれた。 ローズマリーもそうだ。あくまで舞台上での役割。与えられた友人というロール。偽りの関係。 それでも自分を友人と慕ってくれている。笑顔を向けて手を取ってくれる。 真実を知らぬとしても、そこにあるのは偽らざる愛ではないか。 胸に生まれる、好いと思える感情。十の法を遵守するX-LAWSのリーダーとして、ただの孤児のジャンヌとして。 その思いを裏切る行為はなるべくしたくは、ない。 「……いえ、そんなことはありません。あなたと共に過ごせるのは祈りを捧げるのと同じくらい大切な時間です。  ありがとう、ローズマリー。今日は良い思い出を作りましょう」 答えに満足がいって顔を綻ばせるローズマリー。 時間がくればローズマリーは家に帰りジャンヌは孤児院に戻る。 ローズマリーの方はいつかまた自分に会いに行く計画を立てるだろう。しかしその時は訪れない。決して。 この逢瀬で二人は永遠に別れる運命だ。聖杯戦争に身を投じるなら余計に彼女を近づけてはいけない。 だからこの時は。この瞬間だけは。 どうか世界が平和でありますようにと、今まで以上に心の中で深く願った。 正午で賑わうダウンタウンの衆目の興味は銀の少女に一極している。 一緒に連れ歩く金髪の少女と護衛らしき数人の男女が視界に入っても、誰もそちらの方に意識を向けたりはしなかった。 せいぜいが絵画の風景や調度品と同程度の扱いでしかない。際立つ美を前にすれば、それより劣る美はくすんで見えてしまうものだ。 ……きり、という微かな歯ぎしりの音は、雑踏の喧騒に揉まれて聞かれる事なく消えていた。  ◆ 「ローズマリー、あのお店はなんというのでしょうか?」 「やだジャンヌったら、クレープも知らないの?」 なんてみっともなくはしゃいでいるだろう。 まるで盛りのついた猿だ。張り付けた笑顔を決して剥がさないまま、ローズマリー・アップルフィールドは包み隠した内心でのみ嘲笑した。 孤児院の院長を説き伏せてジャンヌを連れ出したローズマリーは、当初の予定通りのダウンタウン地区にまで来ていた。 当然、ここに来たのはジャンヌとウィンドウショッピングに興じる為ではない。 全てはローズマリーの夢見る城に続く橋の建設、聖杯戦争で勝利する戦術の為だ。 父となった男とは既に警察署の前で別れている。そこで警察署長の男と顔を合わせる段取りは既についている。 無論そこには最も忠実な家臣であるセイバー、グリフィスも伴っている。そこで署長を宝具『鷹の団』の一員に加える手筈だ。 フレンチヒルの名士である男を警察は無下に出来まい。そして一般人ではグリフィスの魔性のカリスマを目にすればひとたまりもない。 いつの時代でも、権力者を自陣に引き込む事は様々な側面で有利を取れるものだ。 無論、取り込む対象の地位は高いほどいい。 如何にグリフィスの魅力が抗いがたいものといえど、それには直接対面する事が必要条件となる。 末端のヒラ全員に順に顔を覚えさせられる機会は中々ないし何より手間だ。 諸々の問題を一段飛ばしで解消するには、頭を押さえるに限る。 司令系統を奪えば組織の動きを大まかになら差配できるものだ。 警察人員を動かせる地位にあり、アーカム内で起こる事件の情報を一度に収集できる立場。 その男を『鷹の団』に引き込めば実質上、署長の座をグリフィスと挿げ替えるのに等しい。 この一挙で警察という組織は、グリフィスとローズマリーのアーカム全域に伸びた監視の目とあり、充実した装備を公的に保有できる大軍団と化す。 そして鷹の翼の広がりはそこのみに留まらない。 各地に顔の効く名士を餌にして、専門的、特権的階級の有力者を釣り上げる。そうなればあとは芋づる式だ。 いずれはアーカムの行政に干渉する権限を持った者の全てが『鷹の団』になる。 長たるグリフィスに心臓を捧げるほどの忠義を誓い、その姫たるローズマリーに聖杯を献上すべくその手を躊躇いなく汚す、プリンセスの理想の騎士団が組織されるのだ。 「ごめんなさい。知識としては知ってるのだけれど、実際に食べた経験はなくて……」 「うふふ、ジャンヌは世間知らずさんなのね。まるでどこかの国のお姫様みたい」 「そ、そんなことはないのです、けれど」 「いいわ、じゃあ頼んでみましょう。ジャンヌの初めてだもの、クリームとフルーツがたっぷりなとっても甘い思い出にしなきゃ!」 「ですがローズマリー、私には手持ちが」 「それくらい私が払ってあげるわ。友達でしょ?」 ジャンヌの花も恥じらう照れ顔が癇に障る。 自分がマスターという飢えた獣をおびき寄せる生贄とも知らずに。 貸し与えたドレスも餌を引き立たせる飾りであるとも知らずに気に入っている。 道行く人は一度二度とジャンヌを見返し名残惜しそうに後にしている。 ジャンヌという小石を投げ込まれたダウンタウンは、人の波の流れに変化をもたらしている。 そこに纏う濃厚な"神秘"―――魔術に触れた者でなければ気づけない気配は、聖杯戦争の参加者にとってみればまたとない標的だ。 まさに想定通りに展開だ。 後は哀れな餌に釣られた無様なサーヴァントかマスターが出て来るのを待つのみだ。 現在ローズマリーの傍にセイバーはいない。 この状況でサーヴァントとの接敵を望むというのは本来なら有り得ない策だ。 護衛でついている十数人の『鷹の団』も所詮は人間。サーヴァント相手にはものの役にも立たない。 しかしこの場合問題はない。戦いになった時に矢面に立つのはジャンヌ、あるいはそのサーヴァントだからだ。 自分はあくまで巻き込まれた一般人。『友達』のジャンヌにとっては庇護するべき対象。 いざという事態、ローズマリーの身に危険が及べば身を挺して庇ってくれるだろう。 慢心はない。ジャンヌは自分に対して心の大部分を許しているのが実感できる。 そして心に食い込んだ存在を無碍にもできない。余程のお人好しなのか、それとも何か気がとがめる経験でもあるのか。 ローズマリーを救うのに、その身に隠した力をひけらかす事を躊躇しないだろう。 なんて愚かさ。なんてお馬鹿な娘。疑うことを知らないのか。 純心さなんて、生きる上でなんの役に立つのか。 慈愛を振りまき、誰もに好かれ、蝶よ花よと愛でられて、神の恩寵すら貰って、そうすれば幸せに生きられると。 人に愛をあげれば、その人も同じだけ愛をくれるのだと、本気で思っているのか。 「これが……クレープですか。ええと、頭からかじるのですよね?」 「ええ、口を大きく開けないとこぼれてしまうからはじめは気をつけて―――」 「…………はむ」 「あら」 ああ。その輝くばかりの銀髪が気に入らない。 荒れた事など一度もない肌が恨めしい。 施してもらうばかりの平和に緩みきった面に虫酸が走る。 ローズマリーが捨てたものを持ったまま、恵まれた境遇にいる事が許せなくて仕方がない。 今すぐにでも、その無防備な背中にナイフを突き入れてやりたい。 与えられている加護を奪い取って、裸になって放り出される姿を嘲笑いたい衝動を必死になって抑える。 「これは―――とても、甘いのですね。いちごのショートケーキよりもずっと濃くて、とろけるような味で……」 「ふ、ふふふ……ふふふふふふ……!」 「ローズマリー?」 「やだ、ジャンヌ……!口にクリーム、ついて、おひげみたい……!」 「――――――!?」 そうだ、そもそもが邪魔なのだ。 マスターであろうがなかろうが、そんなものは関係ない。そんなものと評すほどに、どうでもいい。 ジャンヌはローズマリーを日陰に追いやる極光だ。プリンセスという鏡に映る幸福を打ち砕くべく投じられた石だ。 あの女がいる限り、自分の夢は翳り、色褪せる。そんな確信がある。 何故ならジャンヌはローズマリーの『親友』だからだ。そしてローズマリーの親友はいつも自分を裏切ってきた。 だから許せない。だから認めない。 わざわざ自分の傍で富める者の余裕を見せつける存在を、ローズマリーは排除しなければならない。 「うふ、うふふふ……!」 「ロ、ローズマリー、そんなに笑わないでください……もう……ふふ、」 「だ、だって、ふふふ……!」 蓄積されていく負の想念。十三の少女の身には到底収まりきらぬ程の黒い塊が形成していく。 心の内に潜む闇。それは邪神のような凶災をもたらすわけではない。 都市伝説のように人から人に伝わり、タタリという実体を得て殺戮を繰り広げもしない。 たかだか一人の惨めな少女の激情。だがおぞましさでいえばむしろ同等であった。 嫉妬に狂いし怨鬼は少しずつ爪牙を研いでいく。 いつかその爪で引き裂く皮膚の感触を恍惚に夢見ながら。 牙で噛み切った肉から溢れる血で唇に艶やかな紅の化粧を施す時を待ち望みながら。 「あはははははははははははははははははは!」 ローズマリーは笑った。腹の底からこみ上げるおかしさに同調して。 ……どこかで、赤い塊がブルリと笑うように震えた。  ◆ 変わって、ダウンタウン上空。 近辺で一番の高層ビルのその天頂で、雷神のライダー、エネルは天下の全てを睥睨していた。 見下ろす眼差しは、その位置こそが当然というように傲岸で、尊大であった 「随分とまあ、緩んだ様子だな。これでは聖・少・女ではなくただの少・女のようではないか」 誰もいない屋上で虚空に胡座をかき、エネルは遊興するジャンヌを遥か遠方から見下ろす。 地上にいるジャンヌと数ブロック離れたビル屋上にいるエネルとはゆうに数百メートルは離れている。 サーヴァントでもすぐに駆けつけられる距離ではないが、これでもマスターの命令通り「いつでも駆けつけられる」距離にいるのだ。 この瞬間ジャンヌに聞きが及ぼうとも、瞬き一つの間があればエネルはあの場に到着してみせる。 お守りなど趣味ではないが、ここで命令に逆らってマスターの気を損ねるのも面倒だ。 それに、いまジャンヌの付近を監視する事は、エネルにとって興味の持てる行為でもある。 「ざっと十人。やはりぴったり張り付いているな」 心網(マントラ)で透視した、魔術による暗示や洗脳によるものではない「統一された意思」の集団。 エネルの興味を引いた人間達は今、ダウンタウンに繰り出したジャンヌに着いて離れずにいる。 その数はおおそ十数人。読み取れる精神はやはり互いに同調してるが如く一つの方向を向いていた。 「全員孤児院の連中ではないな。マスターを連れ出した女とその連れか」 孤児院の人間の顔など当然覚えていないエネルだが、状況やタイミングからいって、例の集団が潜り込んだのは資産家らしい男が訪ねた時であるというのには予測がついた。 「ほう、あの女だけは心が通常の動きだ。マスターの可能性が一番あるのは奴だが……」 エネルの雷の視線は、遠くジャンヌと笑い合うローズマリーと呼ばれた少女を射抜いた。 ジャンヌのほぼ同年代の年の頃、見るだけでは何ということもないただの一般人に映る。 しかしそれがマスターであるジャンヌを街に誘い、只の一般人とは思えない一団の一人となれば話は別だ。 年端もいかぬ少女のローズマリー。果たしてあれは笑顔の裏に研がれた殺意の糸を張りジャンヌを絡め取ろうとする奸物なのか、 それともさらに裏に潜むマスターの布石でしかない、哀れな捨て駒なのか。 「……ふむ」 正体を看破するだけならば、簡単だ。エネルが直接出向けばいい。 実体化した至近距離での心網なら、宝具である雷の力と併用してその者の感情の働きを詳細に知る事ができる。 その際英霊の神秘を目の当たりにした人間は気が触れるだろうが、些細なことだ。むしろマスターの判別には手っ取り早い。 あの連中は明らかに聖杯戦争に関わりがある。令呪の効果範囲はともかくマスターに咎められる謂われもない。 対処は速やかに済む。 結果は即刻詳らかになる。 故にエネルは、 「ヤハハハ、いいだろう、せいぜい今は余裕に羽根を伸ばすがいい。  折角の神を楽しませる催しなのだ、宴の準備ぐらいは待ってやらねばな」 やはり放置を継続するのだった。 マスターの危機を見せ物を眺める気分でせせら笑うサーヴァント。 ジャンヌほどのシャーマンの実力なら大抵の奸計は力づくでもねじ伏せられるとはいえ。その信頼からによる対応でないのは明らかだ。 木っ端が何をしようとも、どの道己が手を出せば全てはご破算になる。ならばその瞬間まであがきを見てやろうというだけのこと。 刺客が今すぐマスターを殺さないのも見当はつく。大方、膨大な巫力に寄せられて仕掛けてくる他のサーヴァントの情報収集が狙いだろう。 ジャンヌもまたその腹積りでいる。そしてエネルも、まだ見ぬ英霊との邂逅には少なからず興味を持つ。 しかして、それを覗き見る不貞の輩がいると前もって知っていてそれを許すというのは、いささか不興なのも事実。 聖・少・女のあの緩みっぷりでは獲物がかかるものまだ先だろう。しばらくは退屈が継続しそうだ。 さて、どうするか。聖杯戦争などつかの間の余興とする身にとって、ただ待つだけの暇とは苦痛である。 戦いに勝つ戦術ではなく、あくまでどうこの宴を楽しむかに思考を巡らすエネルに――――不意に得も言われぬ感覚が駆け巡った。 「……む?」 その時自分の中で生じた感覚が何であるか、エネルはこの場で理解しなかった。 仮にその正体に至ったとしても、この神を僭称する傲岸な性根の男が認める事は断じてないだろうが。 浮いたまま姿勢を立たせ、心網が捉えた方角に意識を尖らせる。 見据える先は先程までジャンヌもいた川向こう南西、孤児院の立つフレンチヒルとは逆の位置だ。 超常の探知機能を持つエネルでなく、通常のサーヴァント、のみならずただの人の身であってもそこで起きた異変には気づいただろう。 火の手の証。地上から曇天の空へ黒い煙が立ち上っている。 しかし舞い上がっているのはそれだけではない。エネル独自の鋭敏な探査能力があるとはいえ、川を隔てたこの距離まで届くほどの濃厚な神秘の気配……。 「―――――ほう」 退屈に冷めていた神の目に、それ以外の色が宿った。 燻った程度の小火では到底満足のいかない、盛大な花火の打ち上げを求めるような妖しい愉悦の色を。 【ダウンタウン/1日目 午前】 【アイアンメイデン・ジャンヌ@シャーマンキング】 [状態]健康 [精神]正常 [令呪]残り2画 [装備]持霊(シャマシュ) [道具]オーバーソウル媒介(アイアンメイデン顔面部、ネジ等) [所持金]ほとんど持っていない [思考・状況] 基本行動方針:まずは情報収集。 1.ローズマリー達と共にダウンタウンで過ごしながら情報収集 2.エネルを警戒。必要ならば令呪の使用も辞さない。 [備考]  ※エネルとは長距離の念話が可能です。  ※持霊シャマシュの霊格の高さゆえ、サーヴァントにはある程度近付かれれば捕捉される可能性があります。 【ライダー(エネル)@ONE PIECE】 [状態]健康 [精神]正常 [装備]「のの様棒」 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を大いに楽しみ、勝利する 0.川向こうでの火に興味。さて、どう楽しむか? 1.ジャンヌとは距離を取り、敵が現れた場合は気が向いたら戦う 2.「心網(マントラ)」により情報収集(全てをジャンヌに伝えるつもりはない) 3.謎の集団(『鷹の団』)のからくりに興味 [備考] ※令呪によって「聖杯戦争と無関係な人間の殺傷」が禁じられています。 ※ジャンヌの場にすぐに駆けつけられる程度(数百m)の距離にいます。 ※「心網(マントラ)」により、商業地区周辺でのランサー(カルナ)の炎の魔力を感じ取りました。 【ローズマリー・アップルフィールド@明日のナージャ】 [状態]健康 [精神]正常 [装備]なし [道具]なし [所持金]裕福 [思考・状況] 基本行動方針:打算と演技で他のマスターを出し抜く 1.場所を変えながら獲物がかかるのを待つ。 2.ジャンヌに対しては親身に接し、餌として利用する。 [備考] ※10人前後の『鷹の団』団員と行動を共にしています。  その中にはローズマリー自身の父親役も含まれています。  ◆ 寿司屋を出た後亜門鋼太郎は警察署内へと舞い戻り、行方不明者の捜索願いの届けと、署や病院で保護している人物のリストを検索した。 短時間にしろ調べられる範囲で見てもやはり日本人、それも燕尾色のケープという目立つ服の少女の情報は載っていなかった。 これ以上調べようと思うなら、市内の探偵事務所などを当たっていかねばならなくなるだろう。 作業を一段落した亜門はそこで、何故そこまで性急に捜索に当たろうとしているのか自分に疑問を持った。 事件の捜査に順位の優劣などつけはしないが、それでも亜門は聖杯戦争という極位の災害に対し率先して対策を施さなければいけない立場だ。 そもそも依頼主からはその少女の名前すら聞いていない。簡易的な外見だけを事務的に、心配する様子を微塵も見せず伝えてきた。 頭髪から足先までが黒ずくめで包まれた、黒という色の概念を人の形に落とし込んだような少年。 店に入ってから出るまでのたった十数分足らずで、名前も知らぬ男は亜門の心象に強く焼き付いていた。 いうなれば手足の自由を奪われ為す術もなく海の底に引きずり込まれる大渦の中心部。 この世界に在るはずのない、存在としての違和感をもたらす姿を、知らず知らずのうちに意識してしまっていたのか。 なんにせよ、すぐに見つけるには情報が不足している。 職務を放棄する気はない。刑事課の同僚に連絡をくれるよう伝え、改めて外へ向かおうとする亜門を、聞き慣れた大声が再度呼び止めた。 「おお亜門君!戻っていたか!」 警察署長は現れるなり亜門の肩を景気良く叩いた。 朗らかな笑顔を浮かばせた顔はいつも以上にエネルギッシュで、なんというか覇気に満ちていた。よほど上機嫌になる事があったらしい。 「はい署長。ですが、資料の確認をしていただけなのですぐに調査に戻ります」 「まあ焦らずこっちの話も聞いてくれ。今調べてるのはロウワーの方だろう?  喰屍鬼(グール)騒ぎといい大学の件といい、アーカムはよほど我々をタダ飯ぐらいにしたくはないらしい」 「例のミスカトニックでの首縊りですか。まだ若い少女でしたね……」 「ああ。こうもあたら若い命が摘まれいっては私の食も細くなるばかりだ。私の懐も察してくれるとは気配りのできる鬼どもだよ」 ミスカトニック大学での首吊り事件の報は既に亜門も聞き及んでいる。 広場に植えられた桜の木で足場がなければ届かない高さの枝にかけられた縄に首を通した応用化学部の女生徒。 発見時刻は登校時間のはじめ。ちょうど亜門とランサーがタタリとの戦いを終えた頃だ。 「大学内は独自の規律が作られていてよそからの干渉を快く持ってない者が多い。なにせミスカトニックはアーカムの名物、学会に名だたる者も多く在籍してる。  人里離れた田舎町じみて我々への協力も渋っているのが現状さ」 「国家権力も街の立役者には形無しというわけですか」 「ああ。しかしこの事件、私はこれに確かな陰謀の匂いを感じるのだよ」 「その根拠は?」 「勘だ」 閉口する亜門を見て署長は待っていたとばかりに大笑した。 「HAHAHA!ジョークだ!一度言ってみたかったんだなこれ!  ああかけているのは勘のほうで根拠はきちんとあるぞ!」 ひとしきり笑って満足したのか、声を一段落として真剣味を帯びた様子で署長は話を進めた。 「……たった今遺体の検死の結果が出た。まず彼女は自殺ではない。死んだ後何者かが吊り上げたものだ」 「見せかけ……いえ、発見現場が足場のない木の枝ですから偽装の意図もないという事ですか。  それで、その死因が私の事件と何か関連性が?」 「うむ鋭いな、流石は亜門君。どこぞのいまどき舞踏会でも見られない趣味の悪い仮面をつけた男にも見習って欲しいものだ!」 周囲に署員に聞き耳を立てられない為に声をひそめていただろうに、すぐさま元の声量に戻ってしまった。 おもに、やけに挑発的な物言いになっていた後半の部分が。 「それで死因の方なのだが、これも奇妙な報告でな。胸元に鋭利な刃物による刺し傷があったからこれが死因かと思われたのだが出血が少なすぎる、むしろまったくないのだという。  他に目立った外傷もなく肉体的には異常なし。医者の見立てでは、「急激な体力低下による衰弱死」だそうだ」 「それは―――っ」 言わんとしているところの意味に気づいた亜門は騒然とする。 数日前まで担当していた、市内で起きた連続衰弱死事件。亜門はその裏の真実を知っている。 魂を抜き取り釜に投げ入れる魔女の鍋。何も知らぬ無知なる者を精神の髄までしゃぶり尽くす蛮行。 英霊に力を蓄えさせる魂食い。それ同様の症状の被害者が大学で現れた。 自身の受け持つ仕事をこなす傍らでもまさかと訝しんでいた亜門だがこれで確信する。 大学内に、あるいは大学を標的としているマスターが存在する……。 「この情報はまだ現場にも伝わってない、最新のものだ。  無論食屍鬼事件も重大な案件だが、衰弱死事件との関わりが判明した以上、担当だった君に一報いれておこうと思ってね」 「ありがとうございます。わざわざ連絡をくださって」 ロウワーのみならず他のサーヴァントに関わる情報を得られたのは亜門にとっても朗報だ。 「なに、君の人徳だよ!昨日今日来たばかりのよそ者とは日頃の積み重ねが違うのだからね!」 「……マスク捜査官のことですか?」 先程からしきりに口を突いて出る誰かに向けた届くはずのない雑言に、流石に亜門も眉をしかめる。 警察署の人間か厄介扱いし、しかも仮面という特徴的な単語が当てはまる人物といえば、FBIから出向してきたという捜査官にほかならない。 「そう、それだよ!まったく彼ときたら事件の匂いを嗅ぎつけて出しゃばってきて困ったものだよ。  まあミスカトニックの偏屈な連中も、クソダサいセンスのマスクマンよりか日系のクールジャパンの方が受けがよかろう!あそこは日系の教授も何人かいるしな。  明らかにティーンにしか見えないレディーといいアジアは神秘の宝庫だな!」 「はぁ」 言外に発される『手柄を横取りさせるな』というメッセージに適当に相槌を打ってごまかす。 権力や功績争いは眼中にないが、それとは別にマスクという男については思うところはある。 ロウワーに大学という、亜門が知る限り聖杯戦争絡みの場所を自分に先駆けて動き回る仮面の男。 これがただ犯人を先に掴み上げる欲をかいた行動でなく、自分と同じ目線に立った上での調査だとすれば。 直接顔を合わせて真偽をはっきりさせておくべきか。次の被害を未然に防ぐにも向かう価値はあるだろう。 ―――今度こそ署を後にしようとした亜門の目に、ふと留まるものだあった。 署長の上着につけられた金細工。少なくとも今朝会った時にはつけてなかったものだ。 「署長、その飾りは?」 「おお気づいたかね?どうだカッコイイだろう!しかし残念だが亜門君でもこれは譲れんよ。なにせこの印を与えられるには特別な許可がいるからな!」 警察のバッジでもなければ記憶にある勲章の形でもないが、殊更考える必要もない事項だ。 この豪放磊落な男の事だし、どこかの懸賞や大会で当てたレアな賞品を見せびらかしにきたというのもあり得る。 鳥の羽をあしらった印象を記憶からさっぱり消して、日の下を出た直後ランサーへ念話で単刀直入に切り出した。 『君の意見を聞きたい』 『明らかな撒き餌、誘い、挑発、見え透いた罠だね。被害者のその子がマスターかは、実際に遺体を見てみないと判別できないけれど』 寿司をかっ食らっていた時とは面影すら残さない張り詰めた冷静さでランサーは所感を述べる。 完璧な調律が施された弦楽器の如く雑音の消えた、数多の魔術師と対峙した清廉なる騎士としての姿に立ち戻っていた。 『下衆な奴らだ。マスターがいるとすれば大学の研究所のどこかか』 『魔術師の張る陣地は魔窟も同然だ。そこに単身足を踏み入れる行為の意味を正しく理解しているかい?』 姿なき敵に憤りを見せる亜門に落ち着きを促すような忠告を与えたが、対する男の答えはなんとも簡素なものだった。 『独りではないだろう。君もいる』 『―――うん、それもそうだね』 それで十分だと言わんばかりに言葉を打ち切り歩き出した。ランサーもわざわざ追求する事なく随伴する。 命を懸けるという諫言を受けて止まるようならこの男は今ここにはいない。 それに逸っているようで、腹の底では冷静さを保っている。良き師に出会えたのだろう。 しかしこの聖杯戦争で、人の精神など容易く割れる薄氷に過ぎない。 タタリでの戦いで亜門がその根幹を揺さぶられたように、時には肉体より先に精神を保つ方が困難となる。 越えてはいけない最後の一線。その境界線の最後の砦となるのがリーズバイフェの役割だ。 魔を弾く城塞、音の聖盾ガマリエルを担う者として、今度こそ――――傍らの相棒を守護り抜いてみせる。 そしてその最果てに――――――かつての己の罪に、杭を突き立てるのだ。 「火事か」 けたたましいサイレンを鳴らす消防車の行き先を目で追う。 川を超えた辺りで昇る煙は商業地区の周辺からのものだ。店の倉庫で火が点いたか。 鈍色の空にくゆる狼煙は、アーカムを覆う暗雲を掴もうとするやせ衰えた腕のようだった。 【ダウンタウン・警察署/1日目 午前】 【亜門鋼太朗@東京喰種】 [状態]正常 [精神]落ち着いてきた [令呪]残り3画 [装備]クラ(ウォッチャーによる神秘付与) [道具] 警察バッチ、拳銃、事件の調査資料、警察の無線、ロザリオ [所持金]500$とクレジットカード [思考・状況] 基本行動方針:アーカム市民を守る 1.他のマスターとの把握。ひとまずミスカトニック大学へ向かってみる。 2.魂喰いしている主従の討伐 3.白髪の喰屍鬼の調査 [備考] ※調査資料1.ギャングの事務所襲撃事件に関する情報 ※調査資料2.バネ足ジョップリンと名乗る人物による電波ジャック、および新聞記事の改竄事件に関する情報。 ※神秘による発狂ルールを理解しました。 ※魔術師ではないため近距離での念話しかできません。 ※警察無線で事件が起きた場合、ある程度の情報をその場で得られます ※シルバーカラス、空目恭一を目撃しましたがマスターだと断定はしていません。 ※空目恭一の電話番号とあやめに対する情報を得ました。あやめを保護した場合、彼に連絡します。 ※警察署から商業地区での火事を目撃しました(魔力は感じていません)。 【ランサー(リーズバイフェ・ストリンドヴァリ)@MELTY BLOOD Actress Again】 [状態]健康 [精神] [装備]正式外典「ガマリエル」 [道具]なし [所持金]無一文 [思考・状況] 基本行動方針:マスターと同様 1.タタリを討伐する 2.キーパーの正体を探る [備考] ※女性です。女性なんです。 ※秘匿者のスキルによりMELTY BLOOD Actress Againの記憶が虫食い状態になっています(OPより) ※『固有結界タタリ』を認識しましたがサーヴァントに確信を持てません。 ※空目恭一に警戒を抱いています ※商業地区での火事には、距離の関係上魔力を感じられてません。  ◆ 羽撃け、鷹の翼。 広がれ、王の兵。 陰気香るアーカムを大いなる両翼で覆い隠せ。 その羽根の一枚一枚、鷹の目となりて王に届けよ。 全ては贄。 王と姫に捧ぐ饗膳。 血の宝石を生み出す儀に捧ぐ肉に過ぎぬ。 驕れる者、怯える者、■■さえも。 心せよ。王は既に、貴様らの腹の中にいる。 【???】 【グリフィス@ベルセルク】 [状態]健康 [精神]正常 [装備]サーベル [道具]『深紅に染まった卵は戻らない(ベヘリット)』 [所持金]実体化して行動するに十分な金額 [思考・状況] 基本行動方針:――ただ、その時を待つ。 1.霊体化してローズマリーに随行。 2.鷹の団の団員を増やす。最優先はアーカム市警、ついで市の有力者。 3.ジャンヌは餌として利用する一方、マスターである可能性を警戒。 [備考] 【全体の備考】 警察署長が『鷹の団』の団員となりました |BACK||NEXT| |020:[[今は鉛毒の時間]]|投下順|022:[[吊るしビトのマクガフィン]]| |020:[[今は鉛毒の時間]]|時系列順|22:[[吊るしビトのマクガフィン]]| |006:[[God bless the child]]|[[ローズマリー・アップルフィールド]]&セイバー([[グリフィス]])|:[[ ]]| |~|[[アイアンメイデン・ジャンヌ]]|027:[[Rising sun(後編)]]| |~|ライダー([[エネル]])|025:[[Shining effect]]| |017:[[それぞれのブランチ]]|[[亜門鋼太朗]]&ランサー([[リーズバイフェ・ストリンドヴァリ]])|:[[ ]]|

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: