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*蒼い空◆MQZCGutBfo 「――ディバイディングドライバー?」 日課である早朝のランニングから帰ってきて、シャワーを浴びてタンクトップに着替え終わり。 今日の行動を考えるため、凱とテーブルで打ち合わせをしていた最中。 ……幽霊相手に覗かれるだの覗かれないだの言っても仕方ない気もするけど、当然事前に厳重に注意しておいたわよ。 「そうだ。夏凜が見たガイガーよりも、ガオガイガーは更に大きい。  だからその状態で戦えば、街に大きな被害が出てしまう。  それを防ぐために、このディバイディングドライバーが必要なんだ」 紙に図を描いて教えてくれる凱。 空間湾曲によって敵周辺の地域を収縮移動させて、広範囲の戦闘領域を作り出す……と説明してくれる。 「んー。要は街に被害を与えず、敵だけを残した大きなひろーい穴みたいなのが出来るってこと?」 「ああ、その認識で構わない」 「なんだか魔法みたいね……」 「……だが。ディバイディングドライバーを使用するには、大量の魔力が必要なんだ」 魔力……。 私は右を向いて、自分の肩を見る。 満開ゲージのちょうど反対側にあたる場所。 そこに、花びらを模した紋様が直接肌に刻まれていた。 令呪。 サーヴァントに対する三つの絶対命令権。 その一画一画が膨大な魔力を持つらしく、これを魔力として使うこともできるのだという。 ……外に出る時は、袖のある服を着るようになった。 「分かったわ。敵の主従と戦う際に、市民は巻き込みたくないって言うんでしょ。  私も同感。これは大事に使うわ」 敵の主従も、私のようにきっと切羽詰まった願いを持った連中だろう。 この前戦った、あの女魔術師の必死の形相を思い出す。 ―――私には相手を倒す覚悟がいるし、その相手もまた、その覚悟を持っているはずだ。 だからこそ、そうではない巻き込まれた街の人には、極力被害を出したくない。 「ああ……助かる、夏凜」 「べ、べつにかまわないけど。  そもそも、そのガオガイガー、ってのを呼ぶにも相当量の魔力が必要って話だったわよね」 「ああ、そうだ。そして何より、勇気の心を共鳴させる必要がある」 今度は左肩を見る。 そこには今は何もないけれど。勇者装束時には5枚の花びらの印が施される。 満開。 神樹様の膨大な魔力を譲り受ける力。 勇者に変身できている以上、きっと、満開もできるのだろう。 ―――そして使えば、再び代償が発生する。 「勇気、ね……」 満開で身体の機能を失った時の恐怖を押し殺し。 テレビで見たアメリカ人風に肩を竦めて溜息をついてみる。 「たっく。ホンットばか食いよね、ウチの勇者様は」 「いや、その……何というか、本当に申し訳ない」 真面目な顔して頭を下げる凱。 「じょーだんよ。別にアンタ自身のせいじゃないでしょ」 奇跡は、きっと何度も起こらない。 次に失えば、もう二度と身体は元に戻らないと思っておいた方がいい。 じっと凱の身体を見る。 街に出た時、基本は霊体化してもらうが、いつ実体化しても良いように、買ってきた私服を着させている。 彼はサイボーグだったのだと言う。 身体が自分のものではないという感覚。どんな気持ちだったのだろう。 「……? どうかしたか、夏凜」 「なっ、なんでもないわよ!!  ……コホン。  で。今度はこっちのスマホを見て」 テーブルにスマホを置いて、アーカム市の地図を開く。 「飛行機……えっと、ステルスガオー? で街を飛んだ時にチェックした場所に印を打ったわ。  各エリアでの広い土地、あのギャレオンって子を呼んでも戦えそうな場所ね」 「なるほど、これは分かりやすいな。  街で戦う時は、極力そこに誘導して欲しい。  いざという時は、やはりギャレオンの力がいる」 日本と違い、アメリカは土地を広く使っている。 ビル街の中にも大きめの広場はあったし、各所にある公園も広い。 もちろん人目を気にしなければ、だけど。 「ええ、移動のときは出来るだけ広場に近い道を通るようにするわ。  それで、今日の方針だけど……」 先の集団衰弱事件はようやく発生が収まってきたけれど、今日もリバータウン一帯のスクールは休校。 夏凜の通うジュニア・ハイも同様に休校との連絡メールがあった。 「……そうね、今日はボランティア活動をしつつ、各エリアでサーヴァントの情報がないか探してみましょ。  このボランティア証明証があれば、色々情報の聞き込みできるでしょうし」 アメリカはボランティア活動が盛んで、私はリバータウンのジュニア・ハイスクールの学生であると同時に、 アーカム市営のボランティア団体にも所属している。 休校であることを話せば、平日でも各地区のボランティア事務所で、街の清掃や孤児院の訪問など、何らかの作業を貰えるだろう。 正直言って、私は人見知りだった。 あまり他人と会話することもなかったし、初めて会う人にいきなり情報を聞くなんてのも苦手分野だ。 それでも、勇者部は地域のために、風が引っ張って色々な活動をしていた。 老人ホームや保育園に行ったこともあるし、いきなり一人で違う運動部の助っ人に出されることもあった。 その経験が、ここで活きることになりそうだ。 「じゃ、袖のある服に着替えてくるから、そうしたら出発しましょうか」 「待て夏凜! 朝食を取っていないぞ!」 いきなり凱が声を上げて私を止める。 「あっと……そうね。にぼしとサプリでささっと済ませちゃうから、ちょっと待ってて」 「待て!! そんなんじゃ体力でないぞ!  夏凜の場合、体力はそのまま魔力にも繋がっている。  食事はきちんと取った方がいい」 「う……。そう言われちゃうと痛いわね。  と言っても材料なんかないし……。  ……そうね。どこかお店で軽く食べてから出かけましょうか」 「ああ、それならば問題ない!」 凱は満足そうに頷いた。 ◆ ======================================= ―――叫んでいた。 左目から涙のような青い光を発する少女に、フードを被り巨大な手を持った少女が挑みかかる。 狂気の表情で笑い声を上げながら、全力で殴り続ける。 ―――それじゃ駄目だと。叫んでいた。 血が噴き出し、傷ついても傷ついても、少女は笑うことをやめない。 その巨大な手の指先から、自己の鬱屈を発散させるかのように銃弾を撃ち込む。 何発も何発も。 雨のように。 血のように。 このままでは。 大切な人――トモダチ――を、助けられないから。 本当は、消えたくなんてない。 辛くて。厳しい。 でも。 とても素敵な世界。 無くしたくない。 消えたくない。 それでも ―――大好きだから。 大きな穴に、身を投げた――― ======================================= ◇ どこか薄暗い雰囲気を持つこのアーカム。 この街にも陽が昇りはじめ。 蒼い空が、姿を現し始めた。 その空の下。 喫茶店の前を掃除しながら、夢を思い出していた。 あの巨大な手を持った少女。 あれは、アーチャーだった。 今隣で霊体化している少女の穏やかな顔と、夢での狂気に満ちた形相はまるで一致しない。 叫んでいた少女の声。 そちらの方が、今のアーチャーなんじゃないかと、感じた。 ―――それでも、やはり分からなかった。 あれが例えアーチャーの過去だったとしても。 一方的に過去を覗き見たくらいで、他人を理解できたことにはならない。 知るということ。理解するということ。 このふたつは、また違うものなのだから。 『……なあ、アーチャー』 『ん。どうしたの、一騎』 ならば理解する努力をしてみようと思い、彼女に話しかけようとしたとき。 こちらに歩いてきた少女と、目が合った。 その少女は髪を二つに結び、凛とした佇まいをしている。 「あっ、えと……。おはようございます。お店、開いてますか?」 「ええ。モーニングもやっていますよ。どうぞ」 入口へと促すと、少女はこちらに礼をして、店に入っていく。 彼女は鞄の他に、長い棒状の袋を背負っていた。 恐らく竹刀か木刀が入っているのだろう。年もちょうど剣道をやっている零央と同じくらいだろうか。 武道をやっている人間の静謐さを、彼女からも感じた。 俺も掃除道具を片付け、店の中へと戻った。 喫茶『楽園』の今日の早朝シフトはマスターと俺の二人だけ。 当然だが、マスターは溝口さんではない。 日本人で、もう老人と言って良いお年の方だが優しく穏やかで、俺もよくしてもらっている。 調理師として雇われているが、小さい店なので注文取りなどの仕事も行わなくてはならない。 「マスター、掃除終わりました」 「ああ、一騎君、ありがとう」 コーヒーを注いでいるマスターに声をかけ。 手を洗い終わり、水とおしぼりとメニューを持って、先程の少女のところへと歩いていく。 「いらっしゃいませ。こちらが朝のメニューとなっております」 「ええ、ありがとう」 彼女は真剣にメニューを眺め。即断した。 「じゃあこのミニ一騎カレーとサラダのセットで。飲み物は……このワイルドベリーとアセロラのジュースで」 「はい、ミニカレーセット、本日のミックスジュースですね。少々お待ちください」 マスターが気まぐれで毎日入れているミックスジュースは独創的で、なかなか頼まれないのだが、ようやく注文が入った。 俺は頭を下げ、マスターにミックスジュースの注文を伝える。マスターは嬉しそうな顔でサムズアップをした。 カレーは既に仕込んである。夕方また作れば十分な量だろう。 ここの立地は近くにビジネス街はないため、昼過ぎまでは穏やかな客足だ。 混み始めるのは午後のティータイムから、夕食時にかけてが一番のピークだ。 品を盛りつけながら、店内を見回す。 先程の少女以外では、新聞を読んでいる常連の初老男性と、二人組の若い女性がいる。 その二人組の女性はカウンターで話しているため、会話内容がこちらの耳にも入ってくる。 「―――本当なのよ。この街には白髪の人喰い鬼がいるんだって!」 「えー、こわい~! LoRのオーガみたいな? ホントなの?」 「ジェイミーが言ってたのよ! 付き合ってる彼がロウワーで見たんだって……食べてるとこ」 「ウソー、やめてよ食事中に」 サラダを盛り付けている最中も、二人が笑いながら話している内容が聴こえてくる。 『……一騎』 『ああ』 勿論、ただの与太話の可能性が高いだろう。 けれど、今は聖杯戦争中なのだ。 人を喰らうサーヴァント……例えばバーサーカー辺りなら、居てもおかしくはない。 「はい一騎君、ワイルドベリーとアセロラのジュースできたよ。意外と好評だねえ」 「あっ。はい。ははは、そうですね」 ◇ 早朝のちょっとしたピークを終え。 店に穏やかな時間が流れ始める。しかし――― 『人喰い鬼、か……』 『魂喰いのため、だろうね』 アーチャーが答える。 サーヴァントの魔力を高めるため、人の魂を喰らう。 そういう主従もいるだろう、とアーチャーは言った。 生きたいという願いを踏み躙り。 戦えない人間を嬲り。 身勝手に命を弄ぶ。 そういう奴が、この街にいるんだろうか。 ―――情は判断を誤らせる。 分かっている。 だが、触れてしまったのだ。 この街の人々に。 穏やかに暮らす人達に。 『行くの?』 『……ああ』 おはようございます、と交代の人が店に来ていた。 挨拶を交わし、今日の料理の仕込み状況を伝える。 俺はまた、夕方にここに来ればいいことになっていた。 『……私には単独行動の能力があるんだ。一騎はここで』 『……』 手の指のリング痕を見る。 遠見やカノンなら、絶対に止めるだろう。 それでも。 拳を握った。 『いや。俺も行こう。  ……助けてくれるかい、アーチャー』 『……全く君は。うん、任せてよ、一騎』 【リバータウン・喫茶『楽園』/一日目 早朝】 【真壁一騎@蒼穹のファフナーEXODUS】 [状態]健康(同化現象の症状を除く) [精神]正常 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]携帯電話、鞄 [所持金]一人暮らしをなんとかやっていける金額(雇われ調理師) [思考・状況] 基本行動方針:生きたい。 1.白髪の人喰い鬼の調査を行う。ロウワー・サウスサイドに向かってみるか? 2.噂を調べ、命を弄ぶ主従を止める。 3.夕方には喫茶『楽園』に戻る。 [備考] ・令呪は左手の甲に宿っています。 ・三好夏凜と出会いましたが、名前も知らず、マスターとは認識していません。 ・『この都市には白髪の人喰い鬼がいる』という噂を聞きました。 【アーチャー(ストレングス)@ブラック★ロックシューター(TVアニメ版)】 [状態]健康 [精神]正常 [装備]なし [道具]黒いフード [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:仲間としてマスターに協力する。 1.一騎の指示に従う。 [備考] ・三好夏凜を見ましたが、マスターとは認識していません。 ◆ 「うん、美味しかったわね、あのカレー。なんだか元気出てきたわ」 店を出て両手を頭上で組み、蒼い空に向かって、んーと伸びをする三好夏凜。 『……』 『凱? どうかした?』 『いや……』 サイボーグ・凱は霊体化しているので、夏凜には凱の今の表情を窺い知ることはできない。 『……さっきの青年』 『さっきのカレー持ってきてくれた人? あの人が《一騎カレー》の一騎って人なのかしらね』 『ああ。彼から、戦士の匂いを感じた……ような気がする』 『ええ? 優しくて穏やかそうだったわよ。  っていうか、あの青年は! 戦士だあああ!!! とかいういつもの断定はどうしたのよ』 『あのな、俺はいつもそんな風なわけじゃないぞ。  いや、霊体化だと感覚が鈍るせいもあるんだろうが、今ひとつ自信がない』 『ふうん?』 凱がそう言う以上、なんらかのものをあの人から感じたのだろうと思う夏凜少女。 『んー分かったわ。じゃあタイミングが合えば、夕食もここに来て様子を見てみましょ』 『ああ、それでいい』 喫茶店から離れ、二人は近くの路面電車の乗り場まで歩いていく。 『そういえば、電車に乗りたいんだったわよね』 『ああ。厳密に言うと、電車と言うよりも線路を見たい』 『線路?』 『ああ。ライナーガオーがその線路で使えるかどうかを見ておきたいんだ』 凱の発言に、夏凜は思わず立ち止まってしまう。 『ライナーガオーって、前教えてくれた新幹線型のやつよね!?  無理よ、無理無理!! どこの世界に路面電車に新幹線走らせる馬鹿がいるのよ!!』 『そんなことはないぞ、夏凜!  ライナーガオーは全世界の鉄道路線上で走れるようになっているはずだ!!』 ―――君達に最新情報を公開しよう。 ライナーガオーは、500系新幹線をベースに、前部車両、および後部車両の二両編成で構成されている。 ガオガイガーの変身パーツとなるライナーガオーだが、それだけではない。 これらは作戦上必要に応じて分離し、独立稼動することが可能なのである。 主に鉄道路線上に沿った索敵行動や、あらゆる車両との連結を可能にする可変型万能連結器による、輸送や目標拿捕、救助等が想定されている。 また車輪幅を自在に変更できるゲージ可変装置によって、全世界のあらゆる鉄道路線上を問題なく走行ができる。 内部機関で駆動するために、送電線等の外部電力供給も必要はない。 全身をレーザーコーティングG装甲で覆った、まさに夢のウルテクマシンなのである。 『はー……。ホントにアンタが呼び出すマシンは何でもありね……』 『ハハハ! そうだろう、夏凜!!』 『はいはい……』 姿が見えないはずなのに、今度は何故か凱の誇らしげな様子が見える夏凜。 そして二人の行く手に、路面電車の乗り場が見え始めていた。 【リバータウン・路面電車の乗り場付近/一日目 早朝】 【三好夏凜@結城友奈は勇者である】 [状態]健康 [精神]正常 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]スマホ、ボランティア証、学生証、鞄(にぼしとサプリは入っている)、木刀袋(木刀×2) [所持金]一人暮らしをするのに十分な金額(仕送り、実家は裕福) [思考・状況] 基本行動方針:マスターやサーヴァントの噂を調査し判明すれば叩く。戦闘行為はできるだけ広い場所で行う。 1.リバータウンにある路面電車に乗る。 2.各エリアのボランティア事務所へ行き、仕事を請け負いつつ敵主従の調査。 3.夕食はリバータウンの喫茶『楽園』で食べる? [備考] ・令呪は右肩に宿っています。 ・ステルスガオーIIで街を上空から確認し、各エリアでの広い土地の位置を把握済です。 ・リバータウン一帯のスクールは休校中。 ・真壁一騎と出会いましたが、名前も知らず、マスターとは認識していません。一騎カレーの人かもしれないと思っています。 【ライダー(獅子王凱)@勇者王ガオガイガー】 [状態]健康 [精神]正常 [装備]ガオーブレス [道具]私服 [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターの願いを叶える。 1.夏凜を守る。 2.ライナーガオーが使えるか、アーカムにある各路線をチェックしたい。 [備考] ・真壁一騎を見ましたが、マスターとは認識していません。戦士の匂いがすると思っています。 |BACK||NEXT| |OP:[[運命の呼び声~Call of Fate~]]|投下順|002:[[首括りの丘へ]]| |010:[[妖怪の賢者と戦姫]]|時系列順|003:[[選択]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |OP:[[運命の呼び声~Call of Fate~]]|[[真壁一騎]]&アーチャー([[ストレングス]])|013:[[The Keeper of Arcane Lore>The Keeper of Arcane Lore(前編)]]| |~|[[三好夏凜]]&ライダー([[獅子王凱]])|015:[[UNDERGROUND SEARCHLIE]]|
*蒼い空 ◆MQZCGutBfo 「――ディバイディングドライバー?」 日課である早朝のランニングから帰ってきて、シャワーを浴びてタンクトップに着替え終わり。 今日の行動を考えるため、凱とテーブルで打ち合わせをしていた最中。 ……幽霊相手に覗かれるだの覗かれないだの言っても仕方ない気もするけど、当然事前に厳重に注意しておいたわよ。 「そうだ。夏凜が見たガイガーよりも、ガオガイガーは更に大きい。  だからその状態で戦えば、街に大きな被害が出てしまう。  それを防ぐために、このディバイディングドライバーが必要なんだ」 紙に図を描いて教えてくれる凱。 空間湾曲によって敵周辺の地域を収縮移動させて、広範囲の戦闘領域を作り出す……と説明してくれる。 「んー。要は街に被害を与えず、敵だけを残した大きなひろーい穴みたいなのが出来るってこと?」 「ああ、その認識で構わない」 「なんだか魔法みたいね……」 「……だが。ディバイディングドライバーを使用するには、大量の魔力が必要なんだ」 魔力……。 私は右を向いて、自分の肩を見る。 満開ゲージのちょうど反対側にあたる場所。 そこに、花びらを模した紋様が直接肌に刻まれていた。 令呪。 サーヴァントに対する三つの絶対命令権。 その一画一画が膨大な魔力を持つらしく、これを魔力として使うこともできるのだという。 ……外に出る時は、袖のある服を着るようになった。 「分かったわ。敵の主従と戦う際に、市民は巻き込みたくないって言うんでしょ。  私も同感。これは大事に使うわ」 敵の主従も、私のようにきっと切羽詰まった願いを持った連中だろう。 この前戦った、あの女魔術師の必死の形相を思い出す。 ―――私には相手を倒す覚悟がいるし、その相手もまた、その覚悟を持っているはずだ。 だからこそ、そうではない巻き込まれた街の人には、極力被害を出したくない。 「ああ……助かる、夏凜」 「べ、べつにかまわないけど。  そもそも、そのガオガイガー、ってのを呼ぶにも相当量の魔力が必要って話だったわよね」 「ああ、そうだ。そして何より、勇気の心を共鳴させる必要がある」 今度は左肩を見る。 そこには今は何もないけれど。勇者装束時には5枚の花びらの印が施される。 満開。 神樹様の膨大な魔力を譲り受ける力。 勇者に変身できている以上、きっと、満開もできるのだろう。 ―――そして使えば、再び代償が発生する。 「勇気、ね……」 満開で身体の機能を失った時の恐怖を押し殺し。 テレビで見たアメリカ人風に肩を竦めて溜息をついてみる。 「たっく。ホンットばか食いよね、ウチの勇者様は」 「いや、その……何というか、本当に申し訳ない」 真面目な顔して頭を下げる凱。 「じょーだんよ。別にアンタ自身のせいじゃないでしょ」 奇跡は、きっと何度も起こらない。 次に失えば、もう二度と身体は元に戻らないと思っておいた方がいい。 じっと凱の身体を見る。 街に出た時、基本は霊体化してもらうが、いつ実体化しても良いように、買ってきた私服を着させている。 彼はサイボーグだったのだと言う。 身体が自分のものではないという感覚。どんな気持ちだったのだろう。 「……? どうかしたか、夏凜」 「なっ、なんでもないわよ!!  ……コホン。  で。今度はこっちのスマホを見て」 テーブルにスマホを置いて、アーカム市の地図を開く。 「飛行機……えっと、ステルスガオー? で街を飛んだ時にチェックした場所に印を打ったわ。  各エリアでの広い土地、あのギャレオンって子を呼んでも戦えそうな場所ね」 「なるほど、これは分かりやすいな。  街で戦う時は、極力そこに誘導して欲しい。  いざという時は、やはりギャレオンの力がいる」 日本と違い、アメリカは土地を広く使っている。 ビル街の中にも大きめの広場はあったし、各所にある公園も広い。 もちろん人目を気にしなければ、だけど。 「ええ、移動のときは出来るだけ広場に近い道を通るようにするわ。  それで、今日の方針だけど……」 先の集団衰弱事件はようやく発生が収まってきたけれど、今日もリバータウン一帯のスクールは休校。 夏凜の通うジュニア・ハイも同様に休校との連絡メールがあった。 「……そうね、今日はボランティア活動をしつつ、各エリアでサーヴァントの情報がないか探してみましょ。  このボランティア証明証があれば、色々情報の聞き込みできるでしょうし」 アメリカはボランティア活動が盛んで、私はリバータウンのジュニア・ハイスクールの学生であると同時に、 アーカム市営のボランティア団体にも所属している。 休校であることを話せば、平日でも各地区のボランティア事務所で、街の清掃や孤児院の訪問など、何らかの作業を貰えるだろう。 正直言って、私は人見知りだった。 あまり他人と会話することもなかったし、初めて会う人にいきなり情報を聞くなんてのも苦手分野だ。 それでも、勇者部は地域のために、風が引っ張って色々な活動をしていた。 老人ホームや保育園に行ったこともあるし、いきなり一人で違う運動部の助っ人に出されることもあった。 その経験が、ここで活きることになりそうだ。 「じゃ、袖のある服に着替えてくるから、そうしたら出発しましょうか」 「待て夏凜! 朝食を取っていないぞ!」 いきなり凱が声を上げて私を止める。 「あっと……そうね。にぼしとサプリでささっと済ませちゃうから、ちょっと待ってて」 「待て!! そんなんじゃ体力でないぞ!  夏凜の場合、体力はそのまま魔力にも繋がっている。  食事はきちんと取った方がいい」 「う……。そう言われちゃうと痛いわね。  と言っても材料なんかないし……。  ……そうね。どこかお店で軽く食べてから出かけましょうか」 「ああ、それならば問題ない!」 凱は満足そうに頷いた。 ◆ ======================================= ―――叫んでいた。 左目から涙のような青い光を発する少女に、フードを被り巨大な手を持った少女が挑みかかる。 狂気の表情で笑い声を上げながら、全力で殴り続ける。 ―――それじゃ駄目だと。叫んでいた。 血が噴き出し、傷ついても傷ついても、少女は笑うことをやめない。 その巨大な手の指先から、自己の鬱屈を発散させるかのように銃弾を撃ち込む。 何発も何発も。 雨のように。 血のように。 このままでは。 大切な人――トモダチ――を、助けられないから。 本当は、消えたくなんてない。 辛くて。厳しい。 でも。 とても素敵な世界。 無くしたくない。 消えたくない。 それでも ―――大好きだから。 大きな穴に、身を投げた――― ======================================= ◇ どこか薄暗い雰囲気を持つこのアーカム。 この街にも陽が昇りはじめ。 蒼い空が、姿を現し始めた。 その空の下。 喫茶店の前を掃除しながら、夢を思い出していた。 あの巨大な手を持った少女。 あれは、アーチャーだった。 今隣で霊体化している少女の穏やかな顔と、夢での狂気に満ちた形相はまるで一致しない。 叫んでいた少女の声。 そちらの方が、今のアーチャーなんじゃないかと、感じた。 ―――それでも、やはり分からなかった。 あれが例えアーチャーの過去だったとしても。 一方的に過去を覗き見たくらいで、他人を理解できたことにはならない。 知るということ。理解するということ。 このふたつは、また違うものなのだから。 『……なあ、アーチャー』 『ん。どうしたの、一騎』 ならば理解する努力をしてみようと思い、彼女に話しかけようとしたとき。 こちらに歩いてきた少女と、目が合った。 その少女は髪を二つに結び、凛とした佇まいをしている。 「あっ、えと……。おはようございます。お店、開いてますか?」 「ええ。モーニングもやっていますよ。どうぞ」 入口へと促すと、少女はこちらに礼をして、店に入っていく。 彼女は鞄の他に、長い棒状の袋を背負っていた。 恐らく竹刀か木刀が入っているのだろう。年もちょうど剣道をやっている零央と同じくらいだろうか。 武道をやっている人間の静謐さを、彼女からも感じた。 俺も掃除道具を片付け、店の中へと戻った。 喫茶『楽園』の今日の早朝シフトはマスターと俺の二人だけ。 当然だが、マスターは溝口さんではない。 日本人で、もう老人と言って良いお年の方だが優しく穏やかで、俺もよくしてもらっている。 調理師として雇われているが、小さい店なので注文取りなどの仕事も行わなくてはならない。 「マスター、掃除終わりました」 「ああ、一騎君、ありがとう」 コーヒーを注いでいるマスターに声をかけ。 手を洗い終わり、水とおしぼりとメニューを持って、先程の少女のところへと歩いていく。 「いらっしゃいませ。こちらが朝のメニューとなっております」 「ええ、ありがとう」 彼女は真剣にメニューを眺め。即断した。 「じゃあこのミニ一騎カレーとサラダのセットで。飲み物は……このワイルドベリーとアセロラのジュースで」 「はい、ミニカレーセット、本日のミックスジュースですね。少々お待ちください」 マスターが気まぐれで毎日入れているミックスジュースは独創的で、なかなか頼まれないのだが、ようやく注文が入った。 俺は頭を下げ、マスターにミックスジュースの注文を伝える。マスターは嬉しそうな顔でサムズアップをした。 カレーは既に仕込んである。夕方また作れば十分な量だろう。 ここの立地は近くにビジネス街はないため、昼過ぎまでは穏やかな客足だ。 混み始めるのは午後のティータイムから、夕食時にかけてが一番のピークだ。 品を盛りつけながら、店内を見回す。 先程の少女以外では、新聞を読んでいる常連の初老男性と、二人組の若い女性がいる。 その二人組の女性はカウンターで話しているため、会話内容がこちらの耳にも入ってくる。 「―――本当なのよ。この街には白髪の人喰い鬼がいるんだって!」 「えー、こわい~! LoRのオーガみたいな? ホントなの?」 「ジェイミーが言ってたのよ! 付き合ってる彼がロウワーで見たんだって……食べてるとこ」 「ウソー、やめてよ食事中に」 サラダを盛り付けている最中も、二人が笑いながら話している内容が聴こえてくる。 『……一騎』 『ああ』 勿論、ただの与太話の可能性が高いだろう。 けれど、今は聖杯戦争中なのだ。 人を喰らうサーヴァント……例えばバーサーカー辺りなら、居てもおかしくはない。 「はい一騎君、ワイルドベリーとアセロラのジュースできたよ。意外と好評だねえ」 「あっ。はい。ははは、そうですね」 ◇ 早朝のちょっとしたピークを終え。 店に穏やかな時間が流れ始める。しかし――― 『人喰い鬼、か……』 『魂喰いのため、だろうね』 アーチャーが答える。 サーヴァントの魔力を高めるため、人の魂を喰らう。 そういう主従もいるだろう、とアーチャーは言った。 生きたいという願いを踏み躙り。 戦えない人間を嬲り。 身勝手に命を弄ぶ。 そういう奴が、この街にいるんだろうか。 ―――情は判断を誤らせる。 分かっている。 だが、触れてしまったのだ。 この街の人々に。 穏やかに暮らす人達に。 『行くの?』 『……ああ』 おはようございます、と交代の人が店に来ていた。 挨拶を交わし、今日の料理の仕込み状況を伝える。 俺はまた、夕方にここに来ればいいことになっていた。 『……私には単独行動の能力があるんだ。一騎はここで』 『……』 手の指のリング痕を見る。 遠見やカノンなら、絶対に止めるだろう。 それでも。 拳を握った。 『いや。俺も行こう。  ……助けてくれるかい、アーチャー』 『……全く君は。うん、任せてよ、一騎』 【リバータウン・喫茶『楽園』/一日目 早朝】 【真壁一騎@蒼穹のファフナーEXODUS】 [状態]健康(同化現象の症状を除く) [精神]正常 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]携帯電話、鞄 [所持金]一人暮らしをなんとかやっていける金額(雇われ調理師) [思考・状況] 基本行動方針:生きたい。 1.白髪の人喰い鬼の調査を行う。ロウワー・サウスサイドに向かってみるか? 2.噂を調べ、命を弄ぶ主従を止める。 3.夕方には喫茶『楽園』に戻る。 [備考] ・令呪は左手の甲に宿っています。 ・三好夏凜と出会いましたが、名前も知らず、マスターとは認識していません。 ・『この都市には白髪の人喰い鬼がいる』という噂を聞きました。 【アーチャー(ストレングス)@ブラック★ロックシューター(TVアニメ版)】 [状態]健康 [精神]正常 [装備]なし [道具]黒いフード [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:仲間としてマスターに協力する。 1.一騎の指示に従う。 [備考] ・三好夏凜を見ましたが、マスターとは認識していません。 ◆ 「うん、美味しかったわね、あのカレー。なんだか元気出てきたわ」 店を出て両手を頭上で組み、蒼い空に向かって、んーと伸びをする三好夏凜。 『……』 『凱? どうかした?』 『いや……』 サイボーグ・凱は霊体化しているので、夏凜には凱の今の表情を窺い知ることはできない。 『……さっきの青年』 『さっきのカレー持ってきてくれた人? あの人が《一騎カレー》の一騎って人なのかしらね』 『ああ。彼から、戦士の匂いを感じた……ような気がする』 『ええ? 優しくて穏やかそうだったわよ。  っていうか、あの青年は! 戦士だあああ!!! とかいういつもの断定はどうしたのよ』 『あのな、俺はいつもそんな風なわけじゃないぞ。  いや、霊体化だと感覚が鈍るせいもあるんだろうが、今ひとつ自信がない』 『ふうん?』 凱がそう言う以上、なんらかのものをあの人から感じたのだろうと思う夏凜少女。 『んー分かったわ。じゃあタイミングが合えば、夕食もここに来て様子を見てみましょ』 『ああ、それでいい』 喫茶店から離れ、二人は近くの路面電車の乗り場まで歩いていく。 『そういえば、電車に乗りたいんだったわよね』 『ああ。厳密に言うと、電車と言うよりも線路を見たい』 『線路?』 『ああ。ライナーガオーがその線路で使えるかどうかを見ておきたいんだ』 凱の発言に、夏凜は思わず立ち止まってしまう。 『ライナーガオーって、前教えてくれた新幹線型のやつよね!?  無理よ、無理無理!! どこの世界に路面電車に新幹線走らせる馬鹿がいるのよ!!』 『そんなことはないぞ、夏凜!  ライナーガオーは全世界の鉄道路線上で走れるようになっているはずだ!!』 ―――君達に最新情報を公開しよう。 ライナーガオーは、500系新幹線をベースに、前部車両、および後部車両の二両編成で構成されている。 ガオガイガーの変身パーツとなるライナーガオーだが、それだけではない。 これらは作戦上必要に応じて分離し、独立稼動することが可能なのである。 主に鉄道路線上に沿った索敵行動や、あらゆる車両との連結を可能にする可変型万能連結器による、輸送や目標拿捕、救助等が想定されている。 また車輪幅を自在に変更できるゲージ可変装置によって、全世界のあらゆる鉄道路線上を問題なく走行ができる。 内部機関で駆動するために、送電線等の外部電力供給も必要はない。 全身をレーザーコーティングG装甲で覆った、まさに夢のウルテクマシンなのである。 『はー……。ホントにアンタが呼び出すマシンは何でもありね……』 『ハハハ! そうだろう、夏凜!!』 『はいはい……』 姿が見えないはずなのに、今度は何故か凱の誇らしげな様子が見える夏凜。 そして二人の行く手に、路面電車の乗り場が見え始めていた。 【リバータウン・路面電車の乗り場付近/一日目 早朝】 【三好夏凜@結城友奈は勇者である】 [状態]健康 [精神]正常 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]スマホ、ボランティア証、学生証、鞄(にぼしとサプリは入っている)、木刀袋(木刀×2) [所持金]一人暮らしをするのに十分な金額(仕送り、実家は裕福) [思考・状況] 基本行動方針:マスターやサーヴァントの噂を調査し判明すれば叩く。戦闘行為はできるだけ広い場所で行う。 1.リバータウンにある路面電車に乗る。 2.各エリアのボランティア事務所へ行き、仕事を請け負いつつ敵主従の調査。 3.夕食はリバータウンの喫茶『楽園』で食べる? [備考] ・令呪は右肩に宿っています。 ・ステルスガオーIIで街を上空から確認し、各エリアでの広い土地の位置を把握済です。 ・リバータウン一帯のスクールは休校中。 ・真壁一騎と出会いましたが、名前も知らず、マスターとは認識していません。一騎カレーの人かもしれないと思っています。 【ライダー(獅子王凱)@勇者王ガオガイガー】 [状態]健康 [精神]正常 [装備]ガオーブレス [道具]私服 [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターの願いを叶える。 1.夏凜を守る。 2.ライナーガオーが使えるか、アーカムにある各路線をチェックしたい。 [備考] ・真壁一騎を見ましたが、マスターとは認識していません。戦士の匂いがすると思っています。 |BACK||NEXT| |OP:[[運命の呼び声~Call of Fate~]]|投下順|002:[[首括りの丘へ]]| |010:[[妖怪の賢者と戦姫]]|時系列順|003:[[選択]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |OP:[[運命の呼び声~Call of Fate~]]|[[真壁一騎]]&アーチャー([[ストレングス]])|013:[[The Keeper of Arcane Lore>The Keeper of Arcane Lore(前編)]]| |~|[[三好夏凜]]&ライダー([[獅子王凱]])|015:[[UNDERGROUND SEARCHLIE]]|

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