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アーカム喰種[日々] ◆GOn9rNo1ts



あの日々に追い縋り、あの日々を追い越して、気付けば背後に、彼らは見えず。



下水道は、腐った死骸と這い回る溝鼠と、糞尿の臭いがした。
やっぱりここは、嫌いだ。

「かえ、らなきゃ」

あんていくに、帰る。
僕の『喰種』としての出発点であり、大切な仲間たちが日々を過ごしている、喫茶店。
入見さんが珈琲を入れ、古間さんが掃除をして、芳村さんが店長としてニコニコとカウンターに立っている。
看板娘の董香ちゃんがぶっきらぼうさを隠しながら、時たま西尾先輩と喧嘩もしながら、接客に励んでいる。
雛実ちゃんが二階の客間で本を読み、分からない単語があれば僕に読み方と意味を聞きに来る。
四方さんが立ち寄れば、特訓が始まる。彼は結構スパルタだった。

そんな居場所に、帰りたい。
そんな彼らを、救いたい。

そのためにも、僕はこの聖杯戦争を勝ち抜かなければならない。
そのためにも、まずは拠点に戻り、身体と精神を休めなければ。

鉛のように重くなった足を動かす。一歩、一歩。ほんの少しだけでも前に進むために。
疲れとそれ以外のナニカで飛びそうになる意識をなんとか現実に繋ぎ止めながら、地下を行く。
入り組んだプチ迷宮と化したこの道も、いくらか通い慣れたつもりだったが。
今日はなんだか、僕を拒否するように、意地悪をするように、ぐにゃりぐにゃりと歪んで見えた。
いつもよりもずっとぼんやりとした感覚で進んでいるから、かもしれない。
それとも、先ほどのように、何者かの攻撃を受けているのかも。そうだったなら、摘まなければ。


なにはともあれ『14』番だ。あそこまでいけば、あとは地上に一直線。


そう思うと気が楽になる。やっぱり、何事でもゴールが設定されていると安心するものだ。
この聖杯戦争だってそうだ。
今だって、自分の身体のことも、先ほど蘇ったヤモリのことも、分からないことは沢山ある。
だけど、結局は簡単な話なのだ。
勝てばいい。勝ち続け、奪い続け、何もかもを犠牲にした先に、きっと希望は待っている。
そのためには、もっと強くならなければ。誰にも負けないように。誰も奪われないように。
もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともと…………僕は、強くなる。
みんなのために、つよくなる。




僕の決意を嘲うかのように、ぐぅと間抜けな音がした。




ああ、お腹が空いたなあ。



と、その時。

ネコの鳴き声が遠くに聞こえた気がした。

そうか、もうこんなところまで来ていたんだ。

梯子を昇り、マンホールを下から突き上げる。地下から地上へ。光量差に目を細める。
陰気くさい、隠れ住むにはぴったりなこの通りでも、今は朝の陽ざしがキラキラと差し込んでいた。
誰にも見つかっていないことを目と耳とで確認しながら、そっと音をたてぬよう、閑散とした家々を抜ける。
ちらほらと空家も見える、みすぼらしい住宅の集まり。その一角が、僕の拠点だ。



「おかえり、金木君」



急に湧いて降ってきた言葉に一瞬、身構える。ぼんやりしていたとはいえ、不覚だ。
声の先、僕の家の玄関扉の目前にあるちょっとした段差に、ヒトが座っていた。
白黒マダラ模様の、無線機を付けられた猫をほれほれと構いながら、もしくは構われながら。
表情の窺えない、無表情というよりも、ハムスターのような邪気の無さで。
彼女は、首にかけたカメラを構えた。



「『バネ足ジョップリン』から通達があるけど……」



遂に始まった、聖杯戦争。
その初戦にてさっそく死闘を繰り広げた、帰り道に。



「まずは、食事にした方が良さそうだね」



小学生くらいの背丈の女の子/オイシソウナニクが、僕を待っていた。
無機質なカメラのレンズの奥底で、僕を観測していた。
パシャリ。にゃぁ。



【Sainty Check】






  • 金木研…………『成功』






  • 掘ちえ…………『成功』
「お待たせしました」



『保存食』を食べ終え地下室から戻ると、彼女は猫に押し倒されていた。
べち、べち、と猫パンチを食らいながら、平然とした顔で写真を撮っている。


「……何してるんですか」

「え?このアングルで撮るのが一番良いかなって」


人間としての尊厳はどこに消えたのだろうか。
至極真面目な顔の彼女――掘ちえにして『バネ足ジョップリン』に苦笑いを返しながら、珈琲を淹れる。
あんていくには遠く及ばないインスタントだが、背に腹は代えられない。
そもそも、こうやって人並みの住居や珈琲を手に入れられるのも全ては僕のサーヴァント、ウォッチャーのお蔭なのだから、文句など言えば罰が当たる。
彼らの中(?)に生身の人間が存在していたおかげで、ツテを頼って僕は最低限の生活を送ることが出来ている。
治安のせいか人が全然住んでいない地域の家を借り、地下室に僕のための『食事部屋』まで設け、聖杯戦争に備え、日中をここで過ごすことが出来る。
全く、いたせりつくせりだ。ホームレスとして暮らしていた頃を『思い出す』と涙が出る。
彼らからすればこれは干渉でも何でもない、サーヴァントとしてのマスターへのサービスのようなものだと言っていたが、それにしても普通の人間に比べて規模が違う。
なんだか普通とは別の方向に、僕はサーヴァントの強大さを理解しつつあった。


「ほら、ハイセはあっちに行った行った」

「へー、ハイセっていうんだ。どういう意味?」

「ドイツ語で名無し、ですよ。どこから来たのかも今ひとつ分からない、『この子たち』にはぴったりかなって」


僕は今、日中はこの家で隠れ過ごし、夜になると地下道を通り街のあちこちに出て他のマスター探しを続けている。
バネ足の中には、ウォッチャーたる自分たちにすべて任せておけばいいと言う意見もあった。
だが、彼らとてカメラのない路地裏など観測できない場所は存在し、そういった場所を僕が虱潰しに探索するのは有りだろうという結論が出ている。
結果的にゴロツキ、チンピラの類に絡まれることも多くなってしまったが
  • トラブルの火種を抱えるリスク
  • 難易度の高い『食事』の調達が出来るというリターン
の二つを天秤にかければとんとんといったところか。
まあ、僕としては、何時でも何処でも現れるクズどもには心底うんざりしているのだが。

そう。今の僕にとって差し当たっての問題は『食事』である。

通常、喰種はひと月に一度、人肉を喰うだけで生きていける。
この、ひと月に一度という特性のお蔭で、喰種は古来より人間と正面衝突しなければならないことにもならず、基本的にはひっそりと生活できているといえよう。

だけど、この聖杯戦争において、僕は普通の人間と同じく一日三度の『食事』をとらねば空腹感を覚える身体になってしまっていた。
原因は二つ考えられている。

一つは、サーヴァントの魔力供給にかかる負担が増大だということ。
僕のサーヴァント、ウォッチャーは特殊なタイプであるらしく、そもそもサーヴァントなのに戦闘を行えない。
代わりに彼らは魔力を消費し、『観る』のである。
詳しくは知らないが、24時間魔力を消費し色々と『観る』彼らからの負担は結構シャレにならない。
一度にごっそりと持っていかれるわけではないが、少しずつ持っていかれる分、より分かりづらい負担が僕の身にかかり続けているのだ。
それこそ、人間が何もせずとも勝手にお腹が空くのと同じ要領。
ただ、人間と違うのは、僕がエネルギーを得るためには人を喰うしかないということだ。


「私たちは人の生き死にに直接干渉はしないから、その辺りは金木君自身に頑張ってもらうしかないね」


という言もあり、今は摘まれても良いような『クズ豆』を調達し、地下室に保存したりもしている。


「ご飯を自分で取ってきてくれるのは、こちらとしてはありがたいね」

「人を猫みたいな言い方しないで下さいよ」


ハイセが僕の膝の上に乗り、いつのまにやら口に咥えていた鼠の死骸をぽとりと落とした。


「ペットは飼い主に似る?」

「こういうのでその例えはなんか嫌ですね……」


心なしか自慢げな表情をしながらこちらをじっと見つめてくるハイセを撫でてやる。おーよしよし。

ともかく、もう一つ考えられている原因。
それは、都市伝説『白髪の人喰い鬼』の影響だ。

僕は今、ウォッチャーの力により一種の『都市伝説』となっている。
そのおかげでサーヴァントとも渡り合えるようになっているらしいのだが、問題は『引っ張られる』ことらしい。
曰く、他人が僕を見て人を喰う喰種だと思いやすくなっているように。
僕自身でさえ『白髪の人喰い鬼』たらんと無意識に思わされている……のかもしれないという仮説だ。


「街を出歩けないっていうのは不便だよね」

「そこはもう割り切ってますので……」


だが、もしもこの仮説が正解だったとしても、僕にはどうすることも出来ない。
いや、正確には、例えそうだとしても、どうもする気がない。
この力を失えば、僕は奪われる側にしかなりえないのだから。
誰に恐れられても良い。誰に怖がられても良い。
いつか僕自身が僕自身の在り様を嫌悪する日が来ようが、止まる気はない。
僕の評判や実態など、どうでもいいことなのだから。
今はただ、あんていくのために戦うことしか頭にない。


「通達の前にちょっと聞きたいことがあるんだけど」



そんな僕の決意を鋭敏に嗅ぎ取ったのだろうか。
急に改まった顔をして、『バネ足ジョップリン』の一員である少女はちらりと僕を横目で見る。
その真剣な表情に、少し緊張。いったいなんだろう。






「金木君さ」






もしかして。
さっき、彼女のことを■■■■■と思ってしまったことがバレ――







「どんな女の子がタイプ?」








僕は、むせた。







「あー、ごめんごめん。ナンパしてるとかじゃなくて」



「単刀直入に言うと、どんな女の子とエッチしたい?」







僕は、大いにむせた。
「いやー、そういえばうっかりしてたと思ってさ」


酷い状態になっている今の僕のことも少しは気にして欲しい。
無慈悲に焚かれるフラッシュに「もしかして狙ってやったのだろうか」という疑念も芽生え始める中、少女は一方的に話を続ける。

「食事も睡眠も今のところ大丈夫だけど、最後の一つが完全スルーだった。
金木君もオトコノコなんだから、ちゃんと全部の欲求を満たしてあげないとね」

「いやいやいやいや何する気ですか。ナニする気ですか!」

「……金木君ってけっこうムッツリスケベ?」

「断じて違います」

「別に生ものをそのまま送ってあげようってわけじゃないよ。
キミの好みに合ったエロ本を私たちが選別して、プレゼントしてあげようかなと」

「いりません、全く必要ないです」

「さあ、どういうのが好きなのかお姉さんに話してごらん」

「正直言って、今でもちえさんが僕より年上っていうのが信じられないんですけど」

「私としては、年下が好みだったらちょっとひくかも」

「……誰のことを想像してるんですか……」

「というわけで、今度ドSっぽいクールなお姉さん系ポルノを進呈しよう」

「実は人の話全く聞く気ないですよね!?」



「金木君、ようやく顔から力抜けたね」



「……そうですか?」

カメラを操作して撮った写真を逐一確認し、満足そうにうんうんと頷くちえさん。
ニカっと笑んだ彼女の顔が、朝日のように眩しく感じた。

「モデルの色んな面を撮るのは楽しいな」

「結局は写真ですか……」


はぁ~と大きな溜息をついて見せるも、やはり全く気にする様子もない。
流石、あの月島さんの友人をしているだけはある。自由奔放という定型句が似合うお人だ。
でも、こういう振り回され方は、そこまで嫌いではなかった。
この街で会話ができる数少ない奇人の存在が、今の僕にはありがたい。

ひとしきり写真の吟味を終えたのか、そういえば、といった風に、カメラを首にかけなおし。
ちえさんは、ようやく本題に入ってくれる。


サーヴァント、ウォッチャーとしての。


『バネ足ジョップリン』としての、本題を。




「『標的』の情報が入ったよ」




と、いうことは。



「うん。聖杯戦争、ようやく一歩前進だね」




【ロウワー・サウスサイド・寂れた住宅街/1日目 早朝】
【金木研@東京喰種】
[状態]疲労(神話生物化1回)
[精神]少しリラックス
[令呪]残り3画
[装備]鱗赫(赫子と邪神の触手と銀の鍵のハイブリッド)
[道具]違法薬物(拠点)、銃(拠点)、邪神の細胞と銀の鍵の破片(腹の中)
[所持金]100$程度
[思考・状況]
基本行動方針:あんていくに行かないと
1. まずは休もう。
2.『標的』への対処。どう動くかな。
[備考]
※邪神の化身と銀の鍵を喰ったためピンチになった時に赫子に邪神の力と銀の鍵の力が宿ります。
※神話生物化が始まりました。正気度上限値を削ってステータスが上がります。
※暗黒の男に憑かれました。《中度》以上の精神状態の時に会話が可能です。
※《重度》に陥ったため精神汚染スキルを獲得しました。
※『白秋』を詠うことで一時的に正気度を回復できます。
※聖杯戦争における『標的』の情報を得ました。詳しい中身は次の書き手にお任せします。
ハロー、バネ足ジョップリン。

こちらバネ足ジョップリン。

金木君に情報を渡したよ。



【オカエリ、バネ足ジョップリン。オ疲レ様】

【無事デ何ヨリダヨ】



【チッ、喰われなかったか】【賭けは私の勝ちだね。例の口座にウェブマネー振り込みよろ】
【最低だな】【サイテーだな】【恥を知れ】【まあまあ】【有りじゃね】
【いや、人の生き死にで賭けとかドン引き】【そういうお前らも今まで散々他人の運命に関わってきたわけだが】
【迷子の女の子を出口まで導いたり?】【気に喰わねえやつを最下層に誘い込んだり?】【直接手は出してないからセーフ】

【で、今回はどっちなんだよ】



どっちでもないんじゃないかな。

私が与えた情報を彼がどう利用しても、利用しなくても、それは彼の勝手だし。

その結果として彼が死んでも、まあ仕方ないよね。



【ククク、君ハ最高ニ『バネ足ジョップリン』ダネ、バネ足ジョップリン】

【君ガ私タチノ得タ、ドノ『情報』ヲドレダケ彼ニ提供シタカハ敢エテ詮索シマイ】

【キット、面白クナルコトダケハ確カダロウカラネ】



あ、それと気になることが一つあるんだけど。

金木君、前よりも神秘っぽくなってたよ。



【フム?】

上手く説明できないんだけどさ。なんか、ぞわっとした。

今回は大丈夫だったけど、これからもっと“そう”なったとしたら。

もしかしたら、会うだけでハッキョーしちゃうかも?
【そんなアホみたいなこと起こるわけないだろ】【邪神がどうとかの話?】【馬鹿馬鹿しいね】【でも、実際に僕たちの声で発狂した人もいますし……】
【我らがマスターは所詮サーヴァントならぬマスターの身である。その存在そのものだけでサーヴァントの宝具級になるなどあり得んとは思わんかね?】【相変わらずあんた偉そうだな】
【そうならないに3000!】【ならないに5000】【相変わらず最低だな、お前ら】



【そうなるに、50000】



【誰だあんた?】【知らない顔だな】【俺たちに顔なんてないんですけど?】【比喩なんですけど?】【ヒャッハー!】
【やけに大きく出たな】【金持ち!】【鴨葱!】【玉の輿!】【本音丸出し】【悪くない】

【いやいや、気にしないでくれたまえ。ただの新貌だとも】

【しかし……もしも彼が“そう”なって、誰とも顔を合わせられなくなったとしたら】

【彼はいったい何のために、誰のために、戦うのだろうね?】



【偉そうなのが増えたな】【厨二乙】【厨二といえば、丁度この街に来てるアイドルの子が可愛くってさ】
【僕はアナスタシアちゃん!】【兄弟、飲もうぜ】【ライブを無料(ただ)見出来るって超便利だよな、俺ら】【今度のライブも超楽しみだよね……観測者としてね!】
【そういえばこないだTRPGやったんだけどさー。神話生物って見ただけでSanチェックなのな】【どうでもいい】【チラ裏】【いいから観測しろよ】【なんだこの落差】



【イズレニセヨ、私タチノスルコトハ変ワラナイサ】


【観測シ、幕ノ合間ニ登場人物へチョッカイヲカケナガラ、コノ物語ヲ楽シム】


【例エ中身ガ誰デアッテモ、ソノ一点ニオイテ私タチハ等シク『バネ足ジョップリン』ダトモ】


【アーカム全土/1日目 早朝】
【ウォッチャー(バネ足ジョップリン)@がるぐる!】
[状態]観測中
[精神]多数
[装備]不要
[道具]不要
[所持金]不要
[思考・状況]
基本行動方針:金木研の神話を作る
1.【色々見て回ろうぜ】【お祭りだね】【どっちかっていうとまだ前夜祭じゃないかな】
[備考]
※包帯男を認識しました(マスターかサーヴァントかはわかっていません)
※暗黒の男を認識しました
※包帯男の都市伝説を広めています。
※金木研に情報を渡しました。また、それ以上の情報を保有しています。


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