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《回転》サウンドマン&アーチャー ◆zzpohGTsas


1:

 矢よりも速く、白人の使う銃の弾丸よりも速いのではと思う程の速度で撃ち放たれた鉄の球が、俺の胸に打ち当たり、背中を貫通して通り抜けて行く。
鉄球は俺の身体を貫くだけでは足りず、俺の背後にある、俺と一心同体の守護霊すらも破壊する。余りにも過剰な破壊力。鉄球に俺が貫かれた時点で、俺は死んでいたというのに。

 激痛が身体に走ったのは、ほんの数瞬の事だった。それが過ぎた後には、俺はもう痛みすら感じなくなった。
『死』、と言う名の麻袋が、俺の身体を包みに掛かって来ている事が、ありありと理解出来る。俺は、10秒とこの世界に最早生きていられないだろう。
朝靄が掛かった様に、俺の視界が霧がかる。ぼやける視界で、俺を鉄球で撃ち抜いた白人が、俺の事を油断なく見つめている。
ジョニィ・ジョースター。その身体に、聖人の身体を埋め込んだ男。俺達インディアンの……果てなき故郷を取り戻す為の足掛かりが。

 意識が完全に闇に落ちる前に、俺は色々な事を考えていた。
白人に先祖伝来の土地を奪われた悔しい思い出、今まで通りのやり方じゃ白人共は土地を返してくれない事を悟った時の事、
金の力で白人が不当に奪った土地を全て買い戻してやろうと決意した時の事、……父母の形見のエメラルドをスティール・ボール・ランレースの参加費代わりに渡してくれた、厳しくもやさしい姉の事。

 戦って、完膚なきまでに負けたのだから、悔いはない。砂漠の砂1粒程も、俺は後悔しちゃいない。
だだ……故郷に残して来た、たった1人の家族である姉の事が、俺は気がかりだった。彼女は、何も悪くない。
どうか、幸せになって欲しい。平穏に人生を過ごし、俺の様に痛みを伴わず、安らかに逝って欲しい。腹の底から、俺は祈った。

 ああ、それにしても……土地を取り戻せなかったのは、残念だ。
姉に取り戻して見せる、旅に出ると大見得まで切ったと言うのに、その旅路の終わりがこれでは、笑えて仕方がない。
姉も、部族の皆も、俺の事をペテン師呼ばわりしないだろうか。ズル賢いコヨーテの様な奴だと、蔑まないだろうか。俺は……怖くて仕方がなくなってきた。

 浅く冷たい水の中に、音立てて仰向けに俺は倒れ込んだ。
力及ばず、星になる時が来たらしい。睡魔にも似たまどろみが身体を襲うだけでなく、考える事も億劫になって来た。
瞼をそっと、俺は閉じる。岩倉の中に閉じ込められたような、本当の暗黒だけが俺の視界に広がって行く。

 ――暗黒を切り裂いて、不愉快な虹色の光が、瞬いたような気がした。





2:

 余裕のない表情で、男が前方100m程遠方を睨みつける。
2m程もある、岩の塊が服を着た様なその大男は、その手に、これまた自分の身長と同じ大きさのバカデカい弓を持ちながら、悪態を吐いていた。
自らの身体に宿る魔力から、赤子の腕程もある太い矢を投影し、それを目にも留まらぬ程の速度で乱射する。男はアーチャーのクラスで現界したサーヴァントだった。
親指程もある弓の弦の張力を利用した放たれたその矢は、最早矢ではなかった。例えるならばそれは、一条の光の筋。
矢は軌道上で1本のレーザービームの様な光条となり、物理的な干渉を全く物ともせず直進したり、蛇の様な蛇行軌道を描いたり、
突如急なアーチを描き頭上から鷹が急襲するように降り注いで見せたりと、弓術に百年身を捧げても到達出来ないであろう境地の技を、事もなげに男は開帳していた。
しかも、アーチャーの大弓から放たれる矢の一本一本の尽くが、音の壁を超え、戦闘機の最高速もかくやと言う程の猛スピード。
避けられない筈なのである。普通の存在であったのならば。

 では何故、視界の先にいるあの男は、事もなげに俺の矢を回避出来るのだ、と。心の中で大男は呪詛を吐き捨てた。
緑色のシャツに白い半ズボンを穿いた、茶の髪に人種的な物であろう褐色の肌の男性だった。大男程ではないが、一般人から見たら、体格が良い部類に当たる青年である。
そんな青年が、此方に向かって走ってきながら、音速を遥かに超える速度で殺到する殺意の光条を躱す、躱す、躱す!! 
身体を少しだけ動かして光条の狙いから逸らして見せたり、移動しながら大きく左右に動いて見せたりしながら、全く矢が当たらない。
どれも虚しく空を切り、芝生の地面の上に突き刺さるだけ。それだけならば、まだ良かったかもしれない。

 アーチャーの怒りを更に助長させるのは、ラフな格好をしたあの男が足元で転がしている球体であった。
白と黒の合成皮革で出来た正六角形を張り付けたその球体を、現代では『サッカーボール』と呼ぶ事は知っていた。
そしてそのボールが、世界中で嗜まれているサッカーと呼ばれる球技、もとい、遊戯で扱われている事も、承知している。
そう、その青年は、サッカーボールをドリブルしながら、アーチャーの、神域にまで達した弓の技をいなしているのだ。
これが頭に来ない訳がない。要するにあの男は、玉転がしに興じながら、自分の矢を躱しているのだ。自分の技術を小馬鹿にされていると思うのも、無理はなかろう。

 背後で指示を飛ばす自身のマスターの不安が、アーチャーに伝わってくる。マスターの方はそう言った声を上げていないが、感情と言うものは言外せずとも伝播するものだ。
しかし、マスターが言い知れぬ不安を抱くのは、尤もな所でもある。何故ならば、人智を超えた神秘そのものであり、
音に聞こえた英霊であるアーチャーですら、不安を覚えているのだから人の身であるマスターがそう言った感情を宿すのは、無理からぬ事だろう。
眼前80m先――人間並みの移動速度で接近して来ている――を走るあの青年が、サーヴァントである事は疑いようもない。
戦闘が始まった当初、アーチャー達はあのサーヴァントが弱い存在だろうと考えていた。無理もない、その姿には余りにも神秘性や英雄の纏うカリスマ性がなかったからだ。
しかし、戦ってみたらそれが嘘だと言う事が解った。あの男は、強い。サッカーボールを転がしながらと言うのがまことに腹ただしいが、
ドリブルをしながら、音速で飛来する矢を回避出来るのである。その技量、疑う余地は最早なし。

 此方との距離が目測50mを切ったら、宝具を開帳しろ。
マスターから念話で指示が飛んだ。『了解』、とアーチャーは返事をする。妥当な判断だった。
矢を投影し、大弓に矢を番えるが――妙である。明らかに、自分と相手サーヴァントとの彼我の距離の縮まる速度が、やけに速いのである。
何かがおかしい、と考えたと殆ど同時に、そのカラクリを理解した。1歩ごとに進むペースが、異常なのである。
たった1歩で、10m程の距離を瞬時に移動している。それを縮地だと理解したのは、人外の反射神経をもつサーヴァントであるからこそ。
相手も、アーチャーが宝具を使う事を読んでいたのである。だからこそ、ある地点で急加速を行い、アーチャーの意表を突いたのである。

「しまった!!」

 そう叫び、慌てて宝具を使おうと考えた時には、既に相手サーヴァントは40m程の距離にまで接近していた。
其処で、相手が止まった。それに呼応して、サッカーボールも停止。その位置で相手が、大きく右足を振り上げる。

「くらえっ!! マッハシュート!!」

 高らかにそう宣言し、相手は思いっきりボールを蹴り上げた。
アーチャーの怪物じみた動体視力が、蹴られた瞬間のボールを捉える。ありえない現象だった。
サッカーボールが、まるで水風船かゴム鞠みたいに力を加えているが如く変形しているのだ。通常のサッカーボールでは考えられないレベルの変形具合だ。
中身まで100%ゴムで出来ていなければ、説明不可能な程である。そうした変形の後、相手サーヴァントの足の甲からボールが蹴り放たれた。
驚く程見事な、直線の軌道。アーチャーが放った矢の弾道に勝るとも劣らない。
だがもっと驚くべきは――そのサッカーボールがサーヴァントの宣言通り、本当に『音速』で飛来して来ていると言う事であろう。
この速度を保ったまま向かう先は、アーチャーの顔面であった。防御が最早間に合わない。そう判断したアーチャーは、防御の体勢に入ろうとした、その瞬間だった。
今度こそ本当に、目を剥いて驚いてしまった。当然である。それまで完璧な直線運動を続けていたサッカーボールが、進行ルート上から『完全に消滅』したのだから。
別のルートへとカーブしたでもなければ、ルート上で突如として急上昇したわけでもない。本当に、初めからボールなど幻であり、存在しなかったかのように、消え失せていたのである。

「なにィ!?」

 「ボールが消え――」、アーチャーが其処まで言葉を続けた、刹那の事だった。
サッカーボールが突如として、軌道上に姿を現した。――アーチャーの顔面まで、あと5m以下、と言う所で。

 ――「た」、と、アーチャーが言葉を切った瞬間、ボールが彼の顔面に激突。もっと奇妙だったのは、激突した後の事だった。
果たしてサッカーボールがアーチャーの顔面に当たった瞬間、如何なる力学的エネルギーが、如何なるベクトルで、如何なる作用をもたらしたのか。
ボールに当たったアーチャーは倒れるでもなく、後方へと素っ飛ぶのでもない。『上空』へと吹っ飛んだのだ。
しかも、高い。地上にいる人間が、顔を上にして見上げなければならない程の高さまで。アーチャーは其処で、宙を舞っていた。

 サッカーボールを蹴り飛ばした張本人である敵サーヴァントが、跳躍する。
助走もなければ、特殊な装置の力もなく、立ち高跳びの要領で彼はアーチャーが吹っ飛ばされた高さ――高度20m上空まで飛翔。
アーチャーに追撃を仕掛けるのかと思いきや、青年は彼を飛び越えた。用があるのは、アーチャーではなかった。
彼の上空にあった、『サッカーボール』に用があったのである。其処で青年は、空中に仰向け、と言うよりは、地面に背を向けるような体勢を作り始めたのである。
そう、これこそは、サッカーの試合において最も観客を沸かせる一方で、危険な技の為にペナルティを取られかねない超大技……『オーバーヘッドキック』であった。

 自分の頭より上の位置にあるサッカーボールを、青年は思いっきり蹴り抜いた。
足の甲に当たるや否や、ボールはそれこそ軟球のように柔らかに形を変え、その後、カタパルトに何十倍する勢いと速度で、地上へと急降下して行く。
寸分違わぬ狙いの正確さであった。外部からの邪魔が無ければ、間違いなく男の蹴ったボールは、マスターの顔面にぶつかる手筈だった。

「なにィ!? アーチャーが消え――」

 マスターの方は、「た」と言い切る前に、顔面にサッカーボールが衝突し、遥かな高さを舞い飛んでいたのだった。





3:

「凄いものだな、お前のその技術は」

 奇跡的に、無傷でアーチャーとの戦いを乗り切り、見事勝利を飾って見せた自分のサーヴァントを、男は褒めたたえた。
クリストファー・コロンブスがサン・サルバドル島を発見する前の、ネイティブアメリカンが北アメリカの覇者だった時代からタイムスリップして来たような服装の男である。
斯様な服装であるのも、無理はない事であった。何故ならばこの男は、世界中で中世と近代との価値観と様式が溶き絵具の様に混じり合った、
18世紀末の時代からやって来たインディアンであるのだから、この様な時代錯誤めいた服装は、仕方のない事なのだ。
白人の聞き間違いによって長らく誤認されて来た名前を語るのであれば、サンドマン(砂男)、インディアン本来の名前を語るのならば、『サウンドマン』。
それが、この男の名前であった。

「正直な所、かなり危なかった。此処まで危険な戦いとは思ってなかったからな、無傷で倒せたのは……奇跡だったかもしれない」

 サウンドマンの言葉にそう返事をするのは、アーチャーとの戦いで見事なドリブルとシュートを見せつけた、あの褐色の肌の男だった。
謙遜ではない。一見すればあの戦いは余力を残した戦いに見えたかもしれないが、その実、このサーヴァントとしても内心は相当緊張しながら戦っており、
一撃貰えば必殺は免れないであったろうアーチャーのあの矢を掠りもせずに彼を倒せたのは、本当に、このサーヴァントの言う通り奇跡に近い事だった。

 最早語るまでも無き事かも知れないが、この男こそサウンドマンに呼応するように現れたサーヴァントだった。
彼は、アーチャーとしてのクラスでこの世界に呼び出された。その名を、『アルツール・アンチネス・コインブラ』。
生国はブラジル。完成されたフィジカルとサッカーセンスを以て、若くして完成されたスーパーストライカーとしての異名を勝ち取るに至った最強のサッカー選手。それが彼なのである。

「お前のその技術……サッカー、と言うのだったか。恐るべき闘法だな。寸分の狂いもなく相手に球を蹴り飛ばし、それで相手を吹き飛ばす。さぞ、元居た世界では優れた戦士だったのだろう」

「いや、サッカーは戦いの道具じゃなく、スポーツ競技なのだが……」

「……顔に球を当てる上に、人を空まで吹っ飛ばすのにか?」

「競技上ままある事だ、珍しい事じゃない」

「そうか」

 サウンドマン自体は、サッカーと言うスポーツなど知らないし、聞いた事すらないので、そう言うものなのだと納得する事にした。
尤も、コインブラが語るサッカー像と言うのは、一般人が想起するサッカー像とは全く違うものであるのだが、その事をサウンドマンが、知る由もなく

「……マスター」

 真率そうな声音と表情で、コインブラが語りかけてくる。「何だ」、と短く返すサウンドマン。

「本当に、聖杯戦争を続けるつもりなのか?」

「……」

 目を瞑り、サウンドマンは考える。2人は、各々の今後やスタンスについて、全く語り合っていなかった。
コインブラの言う通り、本当に聖杯戦争と言う戦いに身を投じる必要が、あるのだろうかと。サウンドマンは思案する。


 きっかけは、緑色の墓標と呼ばれる小さな遺跡で見つけた鍵だった。
合衆国の大統領と『遺体』の回収と引き換えに先祖の土地を取り戻すと言う契約を交わしたサウンドマンは、スティール・ボール・ランのレースで優勝する必要性が、必ずしもなくなってしまい、幾許かの余裕が出来ていた。
その余裕だった時期に、遺体を身体に取り込んだと思しき人物達に殺された大統領の刺客の死体を確認しに、
嘗て遺体――脊椎の部分――が眠っていたと言う緑色の墓標なる小さな遺跡に、足を運んだ事がある。その時に、ブラックモアと呼ばれるスタンド使いの死体の他に、
奇妙な物を見つけた。それこそが、銀の鍵と呼ばれる、この聖杯戦争の参加切符のようなものだった。
大統領やその近辺を守る人物達に聞いて見た所、「遺体とは何の関連性もない物だから、処理は任せる」と言われた為、サウンドマンはそれを懐にしまっておいたのだ。
そしてそのまま時が過ぎた。……ジョニィ・ジョースターの放った金属球に胸を貫かれ、敗北する瞬間まで。

 そして気付いたら、サウンドマンはこの地を踏んでいた。
今でも信じられない。この場所がアメリカはアメリカでも、サウンドマン達がスティール・ボール・ランに熱を上げていた時期から100年以上も先の時代のアメリカで、
しかもそもそも、全く異なる世界のアメリカであるなど、例え彼でなくても信じられる事ではないだろう。
アーカムと呼ばれる街の、ノースサイドと呼ばれる区域にある、草っ原が広がっている地点で、訳も分からず茫然としていた所に、
先程のアーチャー達の襲撃にあった。そしてその危機を救うべく現れたのが、彼、アーチャーのサーヴァント、コインブラであった。

 聖杯戦争。俄かに信じ難い催しであるが、先程の戦いを見せられては、夢だとは言っていられない。
何人もの参加者を集めて行う、スティール・ボール・ランのような建前上殺しは許されないとされるレースとは違う。
正真正銘、建前の上でも殺し合いを認めている、本当の戦争。この戦争に勝ち残った末に得られる褒賞は、万能の願望器とすら称される聖杯。
万能の願望器。その名前が仄めかす通り、それに願えば、如何なる望みをも叶えてくれる奇跡の代物であると言う。果たして、それを求めるべきか、否か。

 スティール・ボール・ランは当然の事、途中で変更した目的である遺体集めよりも、過酷な戦いであると言う事は、サウンドマンにも解る。
しかし、自分は一度死んだ人間である。最早死ぬ事は、恐れていない。それに、如何なる願いをも叶えてくれる、異教の神の神品が、
肌の色や人種を問わず、勝ち残りさえすればその手に収められると言うのだ。これに乗らない手は、なかった。
サウンドマンは、この聖杯戦争に呼ばれた事実を、部族の神が彼に与えた最後の機会だと考える事としたのだ。
そして、今度こそ、望みを果たす。先祖が守って来た土地を――いや、違う。
アメリカ全土の土地を、再びインディアン達のものとする、と言う、途方もなく、それでいて切実な望みを、今度こそ叶える為に。

「俺は聖杯が欲しい。奪われた先祖の土地と、そして、アメリカに住んでいた本当の住民全員の誇りを取り戻す為に、戦いに身を投げる」

「……決意は固そうだな。見ただけで理解出来る。解った、お前に付き合おう、マスター」

 暫しサウンドマンの顔を注視してから、コインブラは口にする。

「正直な所、俺はお前に断って欲しかったよ、マスター。初めに言うが、生前俺に殺しの経験は本当にない。さっきのマスターとアーチャーのサーヴァントで初めてだ」

「不安なのか」

「強がっても嘘だとバレるだろうから、正直に言う。その通りだ」

 如何にコインブラのいた世界のサッカーが、人間を数mも上空まで吹っ飛ばし、スパイクを上にあげてスライディングをする選手ばかりであり、
サッカーゴールの上によじ登ってシュートを防いだり、ヘディングしている自チームの選手にドロップキックを放ってシュートの勢いを増させる選手がいたとしても。
彼らは皆、スポーツマンシップに――一応――則った清い選手である。殺人など当然、犯した経験などある筈がない。不安になるのも、当然の事だった。

「お前の気持ちも汲んでやりたいが、どの道俺はこの世界からどうやって帰るのか、その手段を知らない。悪いな」

「構わない。不安と言うのも事実だが……俺にもやりたい事がある」

「やりたい事?」

 サウンドマンが思わず口にする。

「俺には生前どうしても勝てなかった選手がいた。日本人だ。俺はある時まで、日本のサッカーのレベルなどたかが知れていると自惚れていたが……その俺が、認識を改めなければならない位には、凄い奴だった」

 空を見上げながらコインブラは言葉を続ける。透明な水のような大空を、1羽の名も知らぬ鳥が翼を広げて飛んでいた。

「フィジカルは、俺と差がない。サッカーのセンスも、俺と同じ。違うのは、アイツはサイクロンと呼ばれるシュートを持っていた」

「サイクロン」

「サッカーを知らないみたいだから、本当に噛み砕いて説明するが、ボールに独特の回転を掛けた後で、ドライブシュートと呼ばれるシュートを叩き込むんだ」

「強いのか」

「身体に負担は掛かるシュートだったがな。最初編み出した時は欠点の多いシュートだったが、彼は戦いの中で、このシュートを改良していった」

「だが、お前がアーチャーを吹っ飛ばした技も凄かったじゃないか」

「あれは俺がサーヴァントになった事であんなふうになっただけだ。それでも、あのマッハシュートを会得する為に、俺も努力はしたがな」

 目線を大空からサウンドマンの方に移して、コインブラは真面目な顔で、言葉を続ける。

「俺は、サイクロンを超えるシュートを、この聖杯戦争で編み出してみたい。俺の願いは、それだけだ」

「……望みは、呼び出された時点で、半分は叶っているという事か。……願いが叶うと良いな」

「ああ」

 倒したい相手を超えたい、それが、コインブラの願いだった。解りやすい。
其処まで思ってサウンドマンは、生前自分を亡き者にしたジョニィ・ジョースターの事を思い描く。
彼に対しては何の恨みも無い。いや寧ろ、仮に彼を葬ったとして、あの大統領がサウンドマンに報いるとも、今にして思えば考え難い。
変な話であるが、彼に殺されてこの地にやって来た事は、塞翁が馬と言う物なのかも知れない。本当に、奇妙な話だが。

「勝とう、アーチャー。己の目的の為に、聖杯まで駆けるぞ」

「了解した、マスター。こうなったら、お前について行くぞ」

 ガッ、と互いに固く握手しあい、この聖杯戦争を勝ち抜く決意を固める。

 幾何学的知識に裏付けされた黄金の回転に敗北した男と、台風の如き凄まじい回転力のシュートに遂に勝てなかった男が、今聖杯を躊躇いもなく追いかけはじめた。

よし、みんなきけ

【クラス】

アーチャー

【真名】

アルツール・アンチネス・コインブラ@キャプテン翼Ⅱ

【ステータス】

筋力B 耐久C 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具B

【属性】

中立・中庸

【クラススキル】

対魔力:E
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:B+
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクBならば、マスターを失っても2日間現界可能。
アーチャーは元々個人プレーを重視する傾向の強い選手であり、やや独りよがりなプレーをしたとしても、見逃して貰える程の卓越した実力を持っていた。

【保有スキル】

戦闘続行:E+++
一般的な戦闘続行スキルと違い、瀕死からの行動力はそれ程でもない。
アーチャーの場合は、宝具の発動や自身の現界の維持に必要な魔力が底を尽きた場合には、『ガッツ(気合)』でそれらの発動や維持を賄う事が出来る。
単独行動スキルに有利な補正を与えている要因となっているスキル。魔力とガッツが同時に底を尽きた場合、アーチャーの全ステータスはツーランクダウンする

投擲(サッカーボール):A+++
投擲と言うよりは、狙った位置にサッカーボールを蹴り飛ばす技量。ランクA+++は世界のトッププレイヤーどころか、歴史にその名を刻む程の名プレイヤー。
アーチャーは生前、完成されたスーパーストライカーとしてブラジルに君臨していた。

縮地:D
足元にサッカーボールがある際に限定的に発動するスキル。このランクの縮地スキルならば、7~10m程の距離を1歩で詰める事が出来る。
アーチャーのドリブルスピードは生前の時点で、およそ人類が到達しうる最高ランクであり、広大なサッカーコートの端から端を10秒以下で走破可能だった程。

マッハシュート
対人魔球。最大補足1人。
音速のスピードでサッカーボールを蹴り飛ばし、相手に激突させるシュート。
蹴られたボールはその軌道上で、別の空間内に没入させてその姿を消してしまい、一切視認出来なくなってしまう。
その後ボールは、相手に直撃する直前で姿を現し、そのまま相手に激突し、対象の相手を大きく吹っ飛ばす。
生前アーチャーが得意とした、キーパーから見たら消えたと錯覚する程凄まじい速度の無回転シュートが、英霊となった影響で神技の域にまで達したもの

【宝具】

『蜃気楼のストライカー(カルロス・サンターナ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
故国ブラジルにおいて、アーチャーと並ぶ実力を誇っていた名ストライカーであり、アーチャーの相棒とも言うべき選手、カルロスを召喚する宝具。
カルロスもまたアーチャーに負けず劣らずのサッカーセンスを持っていたが、アーチャーのサッカーは圧倒的な身体能力とテクニックに裏打ちされた物に対し、
カルロスのサッカーはフェイントで相手を惑わすテクニックに主眼を置いたサッカーとなっている。尤もカルロス自体の身体能力は、他の選手とは比較にならない程高い。
軌道上で複数にボールが分身するミラージュシュート、分身しつつ軌道上でマッハシュートの如くボールの消えるステルスシュート、
複数に分身しながら移動する分身ドリブルなど、兎に角相手を当惑させるような必殺技をカルロスはもっている。
カルロスは確かに強力な相棒ではあるが、彼が召喚されている間は、魔力消費の量も大きく跳ね上がる。
しかしカルロスもまたアーチャーと同じく、維持に必要な魔力が切れた場合は、『ガッツ(気合)』を消費して聖杯戦争の舞台に留まろうとする。

『音速幻影(リーサルツイン)』
ランク:D+++ 種別:対軍宝具 レンジ:1~30 最大補足:1~11以上
上記のカルロスを召喚する事で発動が可能な、アーチャーの本当の必殺シュート。
1つのサッカーボールに、アーチャーがマッハシュートを、カルロスがミラージュシュートを叩き込み、両者のシュートのいいとこどりを実現したボールを
蹴り放つ宝具。即ち、『音速のスピードで複数に分身するボールが、軌道上で突然空間に埋没し姿を消し、当たる直前でボールが出現、相手を吹っ飛ばす』宝具。
加えて、1人は英霊、1人は英霊にカウントされても問題のない程のサッカー選手2名の脚力の乗ったサッカーボールである為、単純な物理的威力も凄まじい。
最大補足の11以上とは、生前GKを含めた敵のプレイヤー11人が総出となってこのシュートを止めようとしても、その11人全員を空へと吹き飛ばし、それでもなおゴールネットを突き破る程の威力を秘めていた事に由来する。
非常に強力な必殺技ではあるが、発動条件は厳しい。先ず相棒であるカルロスがいる事もそうだが、次にボールが『低い浮き球』の状態である事と、
タイミング合わせや蹴る場所の調整諸々で、2人がボールを蹴るまでに秒単位の隙が生じる。腕に覚えのあるサーヴァントなら、発動する前に止める事は訳もない程度には発動に時間が掛かるのである。

【weapon】

無銘・サッカーボール:
サッカーに必要なボールである。一見すれば本当に何の変哲もないボールであるが、何故だか知らないがアーチャーの居た世界のサッカーボールは異様に強靭。
蹴られた際にありえない形に変形する、人間を数mの高さまで吹っ飛ばすなどザラで、地面に激突したらめり込んで止まり、
コンクリート程度なら容易く粉砕するなど、蹴る者が蹴れば、元がゴムと皮革と重心材料で出来ているとは思えない程の耐久力と破壊力を秘める。
ただし因果律の定めにより、アーチャーは愚か、彼を超えるスーパーストライカーであった大空翼であろうとも、『ゴールポストだけは絶対に破壊出来ない』。
逆にボールの方が、一定確率で破裂、使用不可能になる。破裂した場合は、マスター或いはアーチャーの魔力から、新しいサッカーボールが投影される。

【人物背景】

 原作に登場する選手ではなく、テクモ版のゲームオリジナルキャラクター。
来たるべきワールドユースの優勝の為に、ブラジルのサッカー協会に日本から呼び返された、主人公大空翼のサッカーの師匠、ロベルト本郷が、
大会決勝までその存在をありとあらゆる人物に秘匿していたスーパーストライカー。
その秘匿の程は、コインブラ不在状態のブラジルユースのエース、カルロス・サンターナですら、その存在を知らされていなかった程。
与えられた背番号は10番。これは、エースであるカルロスにすら与えられなかった背番号であり、完全なるエースナンバーである。
翼に敗北し、全国放送でその名前を知られてからは、ブラジルサッカー界が有する最高戦力の1人として、長らくカルロスと共に活躍。
が、脚の大怪我により選手生命が完全に断たれる危機に瀕し、一度はサッカー選手の引退を考える。
親友でありパートナーであるカルロスが、コインブラの引退について深く悩み、スランプに陥るが、それを克服、
コパ・アメリカのアルゼンチンとの決勝戦で見事に復活した姿に感銘を受けて、引退を撤回。再びフィールドに舞い戻って見せるとカルロスに告げ、リハビリに励む事となる。

【サーヴァントとしての願い】

生前敗れた大空翼の必殺シュート、『サイクロン』を超えるシュートをこの聖杯戦争で編み出す。

【方針】

マスターであるサウンドマンに従いつつ、新しいシュートの研究に励む。





【マスター】

サウンドマン(或いはサンドマン)@ジョジョの奇妙な冒険 スティール・ボール・ラン

【マスターとしての願い】

北アメリカ大陸全土を、今度こそインディアン達の土地にする

【weapon】

【能力・技能】

走法:
極めて特殊な走法を持ち、馬や1980年の代物とはいえ、自動車に並走、或いはそれらを時によっては上回る程の速度で、
しかも極めて長い間走り続ける事が出来る。超人的な筋肉と持久力の持ち主、と言えるだろう。

スタンド・『イン・ア・サイレント・ウェイ』:
『破壊力-C/スピード-C/射程距離-D(2m)/持続力-A/精密動作性-D/成長性-B』と言うパラメーターを持つ、サウンドマンのスタンド。
ただしこれらのステータスは必ずしも、聖杯戦争に参加しているサーヴァントのものと一致、同一の力を発揮出来るとは限らない。
インディアンの部族が付けているような羽飾りを装備した、人型の怪物のスタンド。
自らが生み出した音を擬音化させて3次元空間に表出させる力を持ったスタンドであり、これにより、切った音や破壊した音、燃える音等を具現化。
それらに触れれば、その音を生じさせた原因と同じ現象を、触れた存在に引き起こすのである。
最も強力な運用手段は、水中等の逃げ場が極端に少ない場所に、その音を流したり運ばせたりすると言う方法。
作中では協力者であるDioのスタンドによって生み出された、小型のラプトルに音を運ばせて、遠方の相手を追い詰めると言う手段で、
ジョニィとジャイロを追い詰めた。通常スタンドには最も得意とする射程距離と言うものが設定されているのだが、生み出した音の塊に関して言えば、
どうやら射程距離の制約の対象外にあると言えるようで、この一点からも、応用性に富んだ強力な能力を持ったスタンド。

【人物背景】

北アメリカ大陸を横断する超大規模レース、スティール・ボール・ランの参加者の1人。
インディアンの一部族の末裔の1人。両親は既に亡くなっており、唯一の家族に姉1人を持つ。
白人に迫害される定めにあるインディアンの一員でありながら、白人の社会に度々もぐりこみ、彼らが著した書物を読んでいると言う事実から、
同じ部族の仲間達から爪弾き者扱いされており、一度は裏切り物として処刑すらされ掛けた。
しかしサウンドマン自体は決して白人の世界に憧れていたとかそう言った理由からではなく、何とかして白人から、彼らに奪われた土地を取り戻せないかと考えた結果、
敵の文化を知り、彼らなりの流儀で奪い返さねばならないと考えたからであり、白人に誇りを踏み躙られた事実に関しては、他のインディアン同様強く憤っている。
彼らの文化の根底にあるものが金であると悟ったサウンドマンは、白人に奪われた土地を買い戻せる程の賞金が得られるレース、
スティール・ボール・ランの存在を知り、姉から両親の形見のエメラルドを貰い、それを参加金の1200$に充て、レースに出場。
彼は馬に乗らず、車にも乗らず、自らの脚力で以て、常にレースの順位の上位ランキングに君臨、一時は優勝候補とも目されていたが、
ある時大統領と取引をし、ある人物の遺体を回収する代わりに、元の土地を返してやると言う要求を呑み、遺体を既に手にしていたジョニィ達の前に立ちはだかる。
そして、彼らと熾烈な、スタンドを駆使した戦いを繰り広げるも、敗北。ジョニィの金属球に胸を撃ち貫かれ死亡する。

原作初期ではサンドマンと呼ばれていたが、これは後に白人の聞き間違いで誤解された名前であり、本来の名前は『サウンドマン』であると暴露する。

【方針】

聖杯を手に入れる。人を殺すと言う行為には、全くためらいがない。




つばさくん、きょうのスコアメモよ

いあいあ はすたあ はすたあ くふあやく
ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ
あいあい はすたあ