《道化人形》マリア・カデンツァヴナ・イヴ&キャスター ◆aWSXUOcrjU
ロウワー・サウスサイド。
アーカムの9つのエリアの中でも、最も暗く寂れた場所だ。
いわゆる貧民街であるそこは、住民の生活水準も治安も、最底辺に位置している。
住むことはおろか立ち入ることすら、本来は憚られるような暗黒街だ。
ここに居を構える者がいるとするなら、それは周りと同じ貧乏人か、あるいは法の目を逃れ、身を隠したいと思う者か。
「ふふっ……」
廃屋でくつくつと笑う男は、後者に属する人間だった。
ウェーブのかかった長髪の下に、褐色の顔を覗かせた男だ。
美形とすら言える端正な顔立ちは、どこか嗜虐的な色を宿した、暗い微笑に歪められていた。
「………」
吐き気がするほどにおぞましい。
男の顔と周囲を交互に見回し、マリア・カデンツァヴナ・イヴは思う。
キャスターのサーヴァントと名乗った男が、一瞬前にしでかしたことの、なんと恐ろしくも惨たらしいことか。
「いい具合に集まったじゃないか。まぁ、ひとまずはこんなところかな」
キャスターの周囲に並んでいるのは、色も模様もバラバラな、無数の棺桶だった。
それも空の棺ではない。全てに中身が入っている。正確にはキャスターが用意している。
この男はつい一瞬前に、この地区の人間達を1人1人襲い、その生命を奪っていったのだ。
確か魂喰い、と言ったか。サーヴァントは人間の生霊を喰らい、自らの糧とすることができるらしい。
そうしてこの男は、周囲の命を、次々と犠牲にしていったのだ。自分が強くなるそのためだけに。
「キャスター……これは本当に、必要なことだったの?」
「もちろん必要だよ、マスター。魔術師でないマスターからは、ボクは満足に魔力を得られない。
だからこうして、それ以外の手段で、必要な魔力を補っているのさ」
芝居がかった身振りを交えて、キャスターがマリアの問いに答えた。
「それにことボクに関しては、魂喰いのメリットはそれだけじゃない。
尊い犠牲となった彼らは、ボクの忠実なしもべとなって、マスターに貢献するというわけだ」
キャスターの有するスキルの中に、「ネクロマンサー」というものがある。
彼は死体を人形のように操り、自らの手下として使役できるのだそうだ。
死体をその場に放置せず、一箇所に集めていたのはそのためか。なんとも吐き気のしそうな理由だった。
「どうだい? これで納得がいっただろう?」
「でもッ! 彼らは聖杯のことも知らない……戦う意志のない一般人なのよッ!?
貴方も戦争を知っているなら、覚悟も牙も持たない者が、一方的に嬲られる悲しみくらい……ッ!」
「やれやれ、がっかりさせないでほしいなぁ」
言いながら、ずいっ、と近寄った。
突然目と鼻の先に迫った、キャスターの浅黒い顔に、マリアは一瞬息を呑んだ。
「マスターの言うその理屈は、殺す相手を選り好むということだ。
その点ではボクと変わらない。ただそれを理解しないまま、正義面して言い放つのは……ちょっとばかり不愉快だな」
やれやれといった顔つきで、ため息混じりにキャスターは言う。
綺麗事で飾ろうと、人を殺すことに変わりはない。
選んで殺すということが、上等であるはずもない。それを理解すべきだと。
「……ッ!」
瞳を覗きこむような視線に、マリアは言葉を返せなかった。
所在なさげに視線を逸らし、否定できないと目で語ってしまった。
それは違うと言い返せないことも、正論だと思ってしまうことも、何もかもが情けなかった。
「いいかい、マスター。ボクは強い。君が引いたクジは間違いなく当たりだ」
そこは信用していいよと、言いながらキャスターが身を退かせる。
「なにせボクは蟹座(キャンサー)のシラー……死と創造を司る黄金聖闘士(ゴールドセイント)だからね」
神話の時代から受け継がれてきた、88の星座の力。
その頂点に存在している、黄道十二星座の戦士。
それらの一角である己が、弱いサーヴァントであるはずがないと。
「しかしながら、君が弱い。魔力の素養に乏しい君では、ボクの力を引き出しきれない。
それでもなお勝とうとするのなら、果たしてどうすればいいやら……それは理解しているね?」
返すまでもなかった。
その答えはつい先程に、ご丁寧に説明されていた。
「つまりボクのこの行動は、君の弱さが招いた結果さ。それは真摯に受け止めるべきだと、少なくともボクはそう思うよ」
「………」
「まぁ、無理もないだろうね。途中で施設に拾われたような、恵まれた環境にいた君では」
奪ってでも生き延びようとする気持ちなど、理解できるはずもないだろうと。
「……さてと、話はこれで終わりだ。君は世界を救うため、ボクは世界に帰るため……お互い頑張ろうじゃないか」
キャスターのシラーはそう締めくくると、再び棺桶へと向かった。
(恵まれている……)
そう考えたことはない。
しかし改めて振り返ると、否定はできないかもしれない。
マリアと生前のシラーは、どちらも戦争に巻き込まれ、全てを失った孤児だった。
違いがあるとするならば、マリアが妹のセレナ共々、米国の研究機関・F.I.Sに、観察対象として保護されたことだろう。
過酷な境遇ではあったが、最低限度の衣食住は、間違いなく保障されていた。
何物の保護も受けられず、続けたシラーに比べれば、確かに恵まれているのかもしれない。
(セレナ……ッ!)
だとしても、どうしても許容できない。
どれほどの裏付けがあったとしても、この殺戮は間違いなく悪だ。
自分は馬鹿なことをしている。またしても無辜の命を奪い、犠牲の塔を積み上げている。
それを懺悔するように、胸中で妹の名を呼んだ。
馬鹿な姉ですまないと。
月を止めるためとはいえ、こんな馬鹿げたことをしている、駄目な姉で本当にすまないと。
銀色の装束を纏い、身を挺して自分達を守った、妹の姿に謝り続けた。
現状へとマリアを誘った鍵が、同じく銀色に染まっていたことは、皮肉としか言いようがなかった。
【クラス】キャスター
【真名】シラー
【出典】聖闘士星矢Ω
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力C 耐久C+ 敏捷B 魔力A+ 幸運D 宝具A
【クラススキル】
陣地作成:A
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“工房”を上回る“神殿”を形成することが可能。
シラーは生前の逸話から、巨大な神殿「巨蟹宮」を、物理的に建造することもできる。
道具作成:C
魔術的な道具を作成する技能。
【保有スキル】
セブンセンシズ:A+
人間の六感を超えた第七感。
聖闘士(セイント)の持つ力・小宇宙(コスモ)の頂点とも言われており、爆発的な力を発揮することができる。
その感覚に目覚めることは困難を極めており、聖闘士の中でも、限られた者しか目覚めていない。
シラーの持つ莫大な魔力の裏付けとなっているスキル。
ネクロマンサー:B
死体を操り手駒とする術。
生命活動が停止していることが条件であり、仮死状態であっても問題はない。
このランクの場合、相手がサーヴァントでも、低級のものであれば操ることができる。
死の芳香:C
瘴気を用いた戦闘スタイル。
死の恐怖を喚起させる攻撃により、相手の精神にもダメージを与えることができる。
【宝具】
『蟹座の黄金聖衣(キャンサークロス)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
黄金聖闘士(ゴールドセイント)の1人・蟹座(キャンサー)の聖闘士に与えられる黄金聖衣(ゴールドクロス)。
黄金に光り輝く鎧は、太陽の力を蓄積しており、他の聖衣とは一線を画する強度を誇る。
この聖衣を然るべき者が装着することにより、装着者の筋力・耐久・敏捷・幸運のパラメーターが1ランクずつアップする。
本来のランクはA+なのだが、アテナとアプスの小宇宙が衝突した際の影響で、
聖衣石(クロストーン)と呼ばれる形態に変質してしまっており、若干のランク低下が見られる。
『積尸気冥界波(せきしきめいかいは)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大補足:1人
蟹座の聖闘士と共に語り継がれてきた、おぞましい威力を宿す奥義が宝具化したもの。
小宇宙を死の燐光へと変換し、敵に向かって放つ技である。
この積尸気を受けた標的は、黄泉比良坂へと堕とされてしまう。
より強い力で振り払うことは可能だが、そうしなければ命中と同時に即死することになる。
『積尸気冥界輪舞(せきしきめいかいりんぶ)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~30 最大補足:40人
『積尸気冥界波(せきしきめいかいは)』よりも多くの積尸気を発生させ、竜巻の形にしてぶつける技。
消費は大きいが、威力・攻撃範囲共に向上しており、一度に多くの敵を葬ることができる。
【weapon】
なし
【人物背景】
88の聖闘士の中でも、最高位に位置する黄金聖闘士の1人。
かつては戦災孤児であり、過酷な環境の中で生きるために、略奪を繰り返していた。
そうした経緯から、「この世には強者と弱者しかおらず、選ばれた強い者が生き残る」という価値観を持つようになっていった。
他人の放つ「死の匂い」を好み、死を弄ぶことにサディスティックな悦びを覚える人物。
優男風の見た目通り、どこか気障な言動が目立っている。戦闘中にたびたびマントで手を拭うなど、潔癖症と思われる仕草を見せることも。
一方で、自らが死に瀕することは極端に恐れており、聖闘士の力を欲した理由も、「死から遠ざかるため」であると語っている。
闇の住人のように振る舞いながらも、本物の闇の深さを知らず、安全圏で悦に浸るだけの小心者。
小宇宙の属性は水。
しかし戦闘の際には、瘴気の塊をぶつける「冥土引導」など、蟹座の聖闘士特有の瘴気を用いた技を用いる。
2人1組の死体人形に瘴気を放たせ、敵を打ち上げ地面に叩き落とす「冥土凋落」という派生技も使用可能。
生物にとって最大のストレスである、死の恐怖を喚起させる攻撃は、相対する者の精神に甚大なダメージを与えるだろう。
【サーヴァントとしての願い】
受肉したい。死の牢獄から逃れ生き返りたい。
【方針】
まずは魂喰いを行い、自身の魔力と使える死体人形とを同時に増やしていく。
噂を聞きつけ、他のマスターが陣地に乗り込んでくれば、蓄えた魔力で迎え撃つ。
【マスター】マリア・カデンツァヴナ・イヴ
【出典】戦姫絶唱シンフォギアG
【性別】女性
【マスターとしての願い】
月の落下を止めたい
【weapon】
ガングニール
北欧の軍神オーディンの槍から生み出されたシンフォギア。
その由来の通り、槍型の武器(アームドギア)を用いる。
また、羽織ったマントは自在に操ることができ、中距離攻撃やシールドとして使うことが可能。
必殺技は、槍の先端からエネルギーを解放し、ビームのようにして発射する「HRIZON†SPEAR」。
白銀のシンフォギア
実妹セレナ・カデンツァヴナ・イヴの遺品。
彼女の死亡および、本シンフォギアの破損により、登録データは全て抹消されてしまっている。
そのためいかな聖遺物に由来するものなのか、どのような性能を持っているのかなど、ほとんどの情報が不明。
起動聖詠には「アガートラーム」というフレーズが盛り込まれており、それがシンフォギアの名称であるということは推測できる。
相応の覚悟と意志により、「奇跡」を手繰り寄せることがない限り、決して起動することはない。
【能力・技能】
シンフォギア適合者(偽)
神話の遺産・聖遺物から生み出された、FG式回天特機装束・シンフォギアを扱う技術である。
しかし彼女自身の適合率はあまりに低く、制御薬・LiNKERの服用なしには、シンフォギアを纏うことはできなかった。
初期状態では効力が切れているため、シンフォギアを纏って戦うためには、まずLiNKERを確保しなければならない。
【人物背景】
かつてアメリカの実験機関「F.I.S」に囚われていた、レセプター・チルドレンの1人。
月落下の事実を世界に公表し、完全聖遺物・フロンティアによる状況打開を行うため、武装組織「フィーネ」の首魁として蜂起する。
しかし彼女自身は争いを恐れており、現在の立場も組織の維持のため、ナスターシャ教授に依頼されて受け入れたものだった。
2歳歳下の妹・セレナを喪っており、妹の悲劇を繰り返したくないという想いが、彼女の心を繋ぎ止めている。
表向きには強気に振舞っているものの、本来は消極的な性格。
そのため、テロ組織として戦うことによる良心の呵責や、組織の代表を求められる重圧により、心を擦り減らしていった。
それでも、優しく面倒見のいいお姉さん基質でもあるため、周囲の人間からの信頼は厚い。
表向きには歌手活動をしており、そちらの方面では、僅か2ヶ月で全米ヒットチャートの頂点に立つほどの才能とカリスマを有している。
【方針】
迷いはあるが、一応聖杯狙い。
最終更新:2016年04月28日 23:02