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《作曲家》西木野真姫&バーサーカー ◆vXLu8QOeNE



疲れた時に僕を励ます 君の笑顔は最高 そして少しずつ進むんだね

ときめきへの鍵はここにあるさ

ユメノトビラ 誰もが探してるよ――



――ここに、ありますよ?夢のような扉がね……。


◆ ◆ ◆



午前7時。フレンチ・ヒルの邸宅にて。
それは他の豪邸群に比べればまだ小さい方だが、それでも中所得者層からみればなかなかの豪華さを誇る。

「……」

その邸宅のある寝室で西木野真姫は起床する。
けたたましく泣きわめく目覚まし時計を止め、ベッドに腰掛ける。
意識が完全に覚醒しておらず、大きく伸びをするもまだ眠気は取れない。
真姫の目つきは非常に悪く、寝心地は最悪だったことを窺わせる。

その原因は悪夢である。
あの妙にリアリティのあった夢は何日経っても忘れることができないほどに心に残っている。
心に残っている故に何度も繰り返し夢に出てきてしまうのだ。
しかもその夢は自分の作曲した曲の一部をBGMとしているのだからなお性質が悪い。

夢の中ではいつの間にか手に取っていたアラベスク模様の装飾が施された鍵と、目の前に大きな扉があった。
謎の声が響き、言われるがまま「夢のような扉」を鍵で開け、それをくぐってしまった。
目が覚めた時には、真姫は東京にある自宅ではなく、合衆国マサチューセッツ州の「アーカム」という都市にいた。

「はぁ……」

寝癖を手で直しながら、学校で使うテキストの整理をするために部屋にある勉強机の方へ向かう。

「聖杯戦争…なにそれ、意味わかんない」

初めてアーカムで目覚めた時は混乱こそしたが、どこか不思議な感覚が真姫を襲っていた。
何事もなかったかのように平然としている家族、なぜか不自由なく使えるようになった英語、アーカム市民としての記憶……。
そして、聖杯戦争こともいつの間にか真姫は『知っていた』。

しかし、いきなり万能の願望機を巡る殺し合いに参加しろと言われても現実味を帯びない。
尤も、扉を開く夢を見たと思ったら拉致されて仮の生活を送らされているという時点で十分現実味を帯びていないのだが。
本来、聖杯戦争にリアリティを持たせる要因の一つに、サーヴァントとの邂逅がある。
実在人物の霊が自分の元へ馳せ参じるという、本来ならばあり得ない経験が否が応でも聖杯戦争が現実だと認識させるのだ。

真姫にも、本来は頼りになるサーヴァントが存在するはずなのだが――。
テキストを鞄に詰めている途中で、真姫は『それ』を見つける。

「……ホントにこれが私のサーヴァント?」

真姫は自らのサーヴァントを手に取り、気持ち悪い虫を見るような目で眺める。
それは、楽譜だった。譜面が赤黒い血で作られており、不気味さを際立たせる。
題の部分には手書きで“ゴルゴダの丘”と書かれている。

バーサーカーのクラスで召喚された真姫のサーヴァントは、物言わぬ楽譜、SCP-012であった。
「サーヴァント(召使い)なのに物」という異質な矛盾は、真姫を大きく困惑させた。
それゆえに、SCP-012から聖杯戦争の詳細についてわかる情報が制限され、
真姫の聖杯戦争に参加しているという自覚をさらに薄めさせる結果となった。
現に、ここ数日の真姫は現状に疑問を抱きつつもアメリカでの日常を何とはなしに送っていた。

SCP-012に書いてある曲は途中で途切れており、
スクールアイドルユニット「μ's」で作曲を担当しているからかこの譜面の続きを書こうしたこともあった。
しかし、実際に演奏してみるとその曲はあまりにも耳障りで聞けたものではなく、続きを書くことをすぐに断念した。

「真姫、朝食の用意できたわよ」

部屋の外から真姫の母の呼び出しがかかる。文面上は日本語だが、実際は英語だ。

「今いくから!」

しばらくSCP-012を眺めていると時間が過ぎていたようで、真姫は急いで必要なテキストとSCP-012を鞄に詰めると、食卓へ向かった。
朝食はアメリカのホームドラマでよくあるようなチョコフレークの入ったボウルをミルクで満たしたものだった。


◆ ◆ ◆




アメリカ、ある意味日本から近いようで遠い国の学校は日本とはかなり違う部分がある。
アメリカの高校は日本とは違い、制服といった概念はない。
さらに、学年も日本の小・中・高の6・3・3制にあたる区分けとしてアメリカで最も多いのは6・2・4制である。
そのため、アーカムにあるハイスクールに通う真姫は私服で通う。
学年も日本の高校では1年生であるはずだが、アメリカのハイスクールではセカンドグレード(2年)であった。
私服で通うということは毎日お洒落して学校へいけるので嫌いではなかったが、同時に真姫の通っていた音ノ木坂学院の制服が恋しくなり、気分は複雑であった。



この日の全授業が終わり、放課後。
真姫は音楽室にいた。
「アーカム」という都市での生活も数日が過ぎたが、未だにここに連れてこられた理由がわかっていない。
そのため、本能的に恐怖を感じることもあり、しばしば元いた音ノ木坂に戻りたいという思いが湧く。
μ'sで皆とスクールアイドルをすることも楽しみの一つであったため、その思いは日を経るごとに強くなっている。
恐怖とそれからくる悲しみを紛らわすため、放課後に自分の作曲した曲をピアノで弾くことが日課となっていたのだが……。

「うう、なんでコレが入ってるのよ…」

取り出したのはSCP-012。
朝、テキストの整理で急いでいたからか一緒に入れてしまったらしい。

「こんなもの持ってたら変な人だって思われちゃう」

一応作曲できることは周囲にも知られているため、こんな変な曲を作っていると誤解されたらたまったものではない。
真姫はすぐに鞄へ戻そうとしたが――。

「やっほー、マキじゃーん!何してるの?またジャパンで作った曲弾くの?」

そこにアメリカ人の知人が入ってきた。プライベートでともに行動することはないが、クラスメイトの中ではよく話す方だ。

「あ、新しい曲作ったの!?見せてよ!」
「あ、ちょ、見ないでよ!」

真姫が知人の方へ振り向く前に、彼女は真姫の手からSCP-012を抜き去って見てしまう。
それを真姫は数秒の内にぶんどるようにして取り返し、鞄の中に収めた。




真姫はまだ知らない。この刹那的なやり取りがSCP-012の恐ろしさを肌で感じることになることを。




「………」

彼女は無言かつ無表情で真姫を見つめている。
……見られてしまったのだろうか。心の中で引いてはいないだろうか?

「……見た?」
「……なきゃ」
「…へ?」
「…完成させなきゃ」

真姫はその知人の顔を見て絶句する。
目は血走り、彼女の視線は真姫ではなくSCP-012の入った鞄に向けられている。

「な、何?」

真姫は恐怖から後ずさり、反射的に鞄を抱いて守る。

「完成させなきゃ、完成させなきゃ…その楽譜を、“ゴルゴダの丘”を…!」
「ひっ……!」

――はじめに楽譜に接触した[編集済]は気が触れ、自らの血で楽譜を完成させようとし、ついには大量の失血と内出血を負いました。

SCP-012。通称『A Bad Composition(不吉な曲)』。
それに接触したものは気が触れ、自分の血で楽譜を完成させようとする。
真姫の知人は実際に目にしたことで正気度を著しく喪失し、発狂したのだ。
今は真姫のことなど意に介せず、楽譜を完成させることしか頭にない。
真姫がSCP-012を前にして平気だったのは、マスターであるがゆえにSCP-012の放つ神秘に耐性を持っていたからに他ならない。


バーサーカーとして召喚されたSCP-012。しかしそれは、狂ったサーヴァントではなく、『狂わせる』サーヴァントであった。


「書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを完成完成完成完成完成完成完成完成完成完成完成完成完成完成させさせさせさせさせさせさせさせさせないとないと――」
「あ、あ、あ」
「どいてよ、マキ…続き書けないじゃないッ!!!」

先ほどの面影も感じさせず、豹変した知人に真姫は鞄を抱いたまま尻もちをつき、恐怖に満ちた表情で彼女を見つめることしかできなかった。


「お願い…近づかないでよ…」

何とか声を絞り出すも、その声は傷ついた小動物のように弱々しい。



「いいから続きを書かせろつってんだろオオオがああアアアアアアア!!!!!!!!!!!」



彼女は突然激昂して真姫に覆いかぶさり、固めた拳で頬を殴ってきた。
真姫は頬に押し寄せてきた痛みに「あぎゃっ…!」と漏らし、増大した恐怖心が涙となって溢れ出た。

「続き……書かせロ……カンセイ…さセろ……!」
「あ……あ……」

心を染める、混乱、恐怖、絶望。助けを呼ぶことも忘れて、別人のように鞄を奪おうとする知人を見上げる。
餓えた獣のように口で息をして、涎を垂らしており、真姫を睨みつけている。
これがバーサーカーの力なのか。無言で人を狂わせ、楽譜を完成させようとする。
バーサーカーがせめて犬程度に話の通じる生命体であれば。
「やめて」と必死に説得すれば関係のない他人に危害を加えることをやめてくれるかもしれない。
だが……バーサーカーは『楽譜』。
意思を持つかもわからないそれは無機質に、無差別に狂気をまき散らす。
真姫の心には、バーサーカーへの『意思を持たないがゆえに、底の知れない恐怖』がむくむくと広がっていった。
数瞬後…涙だけでは抑えつけられなかった負の感情が爆発し、真姫を無理やり行動へ駆り立てた。

「あああああああああああああああああああ!!!!!」

下から知人の腹を蹴り上げ、強引に束縛を解くと、鞄を持って真姫は全速力で音楽室を、学校を出た。
逃げている間は、後ろを振り向く余裕すらなかった。早く帰りたい。ここから逃げ出したい欲求が頭を支配していた。


◆ ◆ ◆



アーカムの自宅に帰った真姫は母親に目もくれず一目散に部屋に戻る。
鞄を放り出し、ベッドに転がり込んだ。

「う…ううっ……ぐすっ」

枕に顔を押し付けて、嗚咽を漏らす。
真姫はSCP-012が人を狂わす場面を目の当たりにし、中度の正気度喪失を起こしていた。

「帰りたい……帰りたいよう……」

暗闇の中で想起するのは、μ'sのメンバーのこと。
真姫はできることなら、今すぐにでも帰りたいと心から願った。

「誰か……誰か助けてよ……凛……花陽……にこちゃん……」

真姫の声は誰にも聞かれることはない。
ただ一つ、SCP-012を除いて。
SCP-012は鞄の中で、今も神秘を放ち続けている…。


【クラス】
バーサーカー

【真名】
SCP-012@SCP Foundation

【パラメータ】
筋力- 耐久- 敏捷- 魔力[データ削除] 幸運[データ削除] 宝具EX

【属性】
[データ削除]

【クラス別スキル】
狂化:-
バーサーカーは物であり、狂っている様子もないのでこのスキルには該当しません。
代わりに狂気感染スキルを所有しています。

【保有スキル】
狂気感染:D
狂気を伝播させる能力です。
バーサーカーへ接触した時に精神抵抗判定を行い、失敗すればその者にDランク相当の狂化スキルを付与します。
このスキルは、スキル及び能力次第で抵抗可能です。

被虐体質:EX
集団戦闘において、敵の標的になる確率が増すスキルです。
EXランクともなると特殊効果がつき、
一度バーサーカーへ接触した者は他者に注意を向けず、バーサーカーのことしか考えられなくなります。
バーサーカーから離されることで効果は徐々に弱まり、消滅します。

検閲済み:EX
バーサーカーはSCPと呼ばれる人知を超えた存在を確保、収容、保護するSCP財団に保護されていたSCPの内の一体です。
SCPの扱い方と概要を記したレポートは検閲を経た上で見ることができたという逸話から、
サーヴァントがバーサーカーについて知ることができる情報はほとんど限られています。

単独行動:A
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力です。
Aランクならば1週間の現界が可能です。

【宝具】
『不吉な曲(バッド・コンポジション)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:[削除済] 最大捕捉:[削除済]
SCPは人知を超えた存在で正体不明であるがために、財団に秘匿されており、非常に強い神秘を持ちます。
SCPであるバーサーカー自身が宝具であり、常時発動しています。
そのため、常に強い神秘を周囲に発しており、見ただけでも正気度は著しく喪失します。
████████████はバーサーカーを少し見ただけで[編集済]

バーサーカーへ接触した者は西木野真姫以外のマスター、サーヴァント、NPC問わず数秒の内に正気度に大きなダメージを負い、気が触れます。
そして自らの血で楽譜を完成させようとします。
血で楽譜の一部を完成させようとすることで、大量の失血と内出血、さらには精神病を発症し、重症を負いました。
バーサーカーに精神を侵された者は一節を書き終えると「完成できない」と言いすぐに自殺します。
なお、バーサーカーの宝具にはスキル及び能力次第で抵抗可能です。

【SCP背景】
SCP-012はSCP財団にて保護・収容されているObject Class: EuclidのSCPの一種です。
SCP-012は考古学者K.M.サンドバルによってイタリアの北部にある嵐で荒らされたばかりの墓から発掘されました。
手書きで"ゴルゴダの丘"と題された一部大きいサイズも含んだ不完全な楽譜一式でした。
赤い/黒いインクは初めベリーか天然の染料かと考えられていましたが、後に複数人の血液であると判明しました。

最初の調査後、何度も楽譜への接触を試みました。
すべての実験でも被験者は自らの血で楽譜の一部を完成させようとしました。
これらの被験者は一節を書き終えると「完成できない」と言いすぐに自殺しました。
音楽を演奏してみると耳障りな不協和音と楽器に合わないメロディとハーモニーが流れるだけでした。

バーサーカーのクラスで召喚されましたが、SCP-012はただの楽譜であり、バーサーカーが自力で動くことはできませんし、霊体化もできません。
ですが、自力で動くことがない分、実体化していてもほとんど魔力を消費しません。

【サーヴァントとしての願い】
不明。

【マスター】
西木野真姫@ラブライブ!

【マスターとしての願い】
元の世界へ帰りたい……

【weapon】
特になし

【能力・技能】
アイドルなのでダンスと歌ができ、作曲も担当しているため音楽(ピアノ)が得意。
特技に「テストで満点を取ること」を挙げられる程度には頭がいい。

【人物背景】
音ノ木坂学院の一年生で、スクールアイドルユニット『μ's』のメンバーの1人。
両親は地元の総合病院の医者で、別荘を持つほどのお嬢様。将来は実家の病院を継ぐ予定。
成績優秀で、特技はテストで満点を取ること。
ピアノも演奏できる事からμ'sの楽曲の作曲を任されている。
アニメでは真面目だがちょっぴり皮肉屋なツンデレとして描かれている。
穂乃果の情熱に根負けして『START:DASH!!』の作曲を担当した後、
花陽を後押ししてμ'sへと導くと共に、凛と一緒に加入した。
先輩メンバーを呼び捨てで呼ぶことに対して最後まで抵抗があったが、希の計らいで克服している。
サンタの存在を信じているなど純粋で子供っぽい面もある。

バーサーカーが人を狂気に陥れる場面に直面したことで、中度の正気度喪失を起こしている。

【方針】
助けて……



本SSは、クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP Foundationにてxthevilecorruptor氏が創作されたSCP-012の記事に記されたSCP-012を聖杯戦争のサーヴァント化したSSであることを明記しておきます。