昏濁の坩堝へと  ◆q4eJ67HsvU





『――昔と少しも変わらぬ伝説に取り憑かれた都市、アーカム。歪み、傾いだ腰折れ屋根が連なる街。

 旧き闇黒の植民地時代には、その狭い屋根裏に英国王の官吏の目を逃れた魔女共が隠れ潜んでいたという――』



                                   ―― H.P.ラヴクラフト「魔女の家の夢」より




                    ▼  ▼  ▼






ダウンタウンの警察署へとまっすぐ向かうはずの車が急にスピードを落としたので、後部座席のDr.ネクロは、おや、と顔を上げた。

アーカムという街が目を覚まし切らない早朝に、ロウアー・サウスサイドのスラム街を中心として発生した災厄。
『白髪の食屍鬼(グール)』という都市伝説を媒介とした「なにか」による犠牲者は、静かに、しかし着実に増え続けている。
現れた食屍鬼――正確にはそれを模した『タタリ』――を撃退することでこの異変に関わったネクロは、これから協力者と共に警察署へ向かうはずだった。
ネクロ本人としては不本意ながら、非常に不本意ながら、事件の重要参考人として連行されるという形で、だが。

「どうした、マスク君。ようやく私に対して正しい扱いをする気になったかな」

これ見よがしに掛けられっぱなしの手錠をガチャつかせ、運転席に座る青年を見やると、彼は手元の端末を神妙な顔で見つめていた。
いや、神妙な顔なのかも、本当に見つめているのかも、厳密に言えばネクロには分からない。
というのも、彼の目元は奇妙な仮面――蝶の両翅のように左右に広がった、四つ目の意匠を持つ視覚補助デバイス――によって覆われているからだ。
コードネームは『マスク』。
ネクロに言わせれば安直でひねりのない名を名乗る彼は、ここアーカムにおいてはFBI捜査官のロールを宛てがわれていた。
ひょんなことから協力関係になった二人だが、この数時間で、ネクロからマスクへの印象は概ね「めんどくさいヤツ」で固まりつつある。
もっとも、マスクもマスクでネクロに対しては似たような認識でいるかもしれないが。

「ん? どうしたんだ、手錠の鍵なら君の右胸のポケットだぞ」

「……ロウアー・サウスサイドの一件はしばらく市警の諸君に任せて、後回しにすべきかもしれんな」

「おーい、人の話を聞かない奴だな君は」

「話したいことしか話さん奴が言うことかよ。見ろ、ミスカトニック大のキャンパス内で学生の首吊りがあった」

マスクが差し出した携帯端末の画面を、後部座席から身を乗り出して覗き込む。
このスマートフォンとかいう端末は、馴染み深い1950年代――ネクロが本来暮らしているはずの時代――には存在しなかったものだ。
だからというわけでもないのだが、ネクロはこの最新鋭の情報機器ではなく、ロウアーの闇市場で転売されていた旧式の携帯を使っている。
辛うじて電話帳機能が付いているだけのオンボロだが、電話するだけなら不自由しないし、万が一番号を押さえられても足が着かないからだ。
とはいえ、使い方に詳しくないだけでスマートフォンの機能自体は十分理解している。単に使う気にならないだけだった。

画面に表示されているのは、アーカム・アドヴァタイザー紙のオンライン記事だ。
運転中のマスクが気付いたところを見るに、号外記事が載ると通知が来る仕組みになっているのだろうか。
アドヴァタイザーは競合紙のアーカム・ガゼットよりも攻撃的な話題を好む傾向にある新聞社だが、タブロイドめいたいい加減な記事を刷ったりはしない。
見出しに躍る"Miskatonic University Death"の文字列は随分と刺激的ではあるが、信憑性はそれなりに確かだと判断して読み進める。

そして。
最後まで目を通したところで、Dr.ネクロの、まだ幼い少女のものにしか見えないその整った眉が、僅かに動いた。
しかし声色を変えたりはせず、ネクロはなんてこともないように軽く返事をした。

「……これがどうした。こんな陰気くさい街じゃ、学生だって自殺したくもなるさ」

「陰気くさいのは同意の至りだが、それだけで足場のない木にぶら下がれるほど器用に死ねるものか?」

「おいおいマスク、まるで首吊りじゃなくて首縊りだって口振りだな。自殺と他殺じゃ大違いだぞ」

「大違いだからこそ、こうして車を止めて話している。サウスサイドの魔女には察してもらえるものと信じるが?」



ネクロはおどけた口調を引っ込めて、すっとその双眸を細めた。
たったそれだけで彼女の両目に宿る光は、飄々とした少女のものから、人の道に外れたる者――魔術師に特有の仄暗いそれへと変化した。
Dr.ネクロはロウアー・サウスサイドの闇医者だが、同時に百年を超える年月を生きた闇の住人でもある。
マスクが何をもって自分を試しているのかも理解しているし、それに対する答えも当然のように用意している。

「……1704年、グーディ・ファウラー。セイラム魔女裁判の影に怯えたアーカム市民によって弾劾され、木に吊るされる。
 彼女が本物の魔女だったかはさて置くとして、アーカムの裏に流れる影の歴史を知る者にとっては、首縊りは魔女狩りの隠喩だ」

「流石に詳しいな。侮った非礼は詫びねばならないか」

特に詫びているふうではないマスクの口調に腹を立てるでもなく、ネクロは「分かればいい」と鼻を鳴らした。

「だが随分と大胆な挑発だな。魔女狩り……今のアーカムで魔女狩りをやろうとは」

「狙いは聖杯戦争のマスターと見て間違いないな」

「その吊るされた学生が、実際にマスターの一人かは知らんがね。だが宣戦布告には違いあるまいさ」

ここまで大胆な行動をよくぞやったものだと感心したものか、それとも呆れたものか。
その両方だろうなとDr.ネクロは率直な評価を下した。
架空都市アーカムの中心たるミスカトニック大学の構内で起こったセンセーショナルな事件。
このニュースがアーカム全市を駆け巡るまでにほとんど時間はかからなかっただろう。
アーカムの暗部に関する知識を持つマスターならば魔女狩りのメッセージを読み取れるし、そうでなくても異常事件はそれだけで注意を惹きつける。
結果、多かれ少なかれ、聖杯戦争に関わる者達の目は首縊りの主犯者へと向けられることになるだろう。

「下手をすれば全てのサーヴァントを敵に回しかねないというのに、よくやるものだ」

「君は知らないだろうが、魔術師なんて連中は大概どこかしらネジが飛んでるものさ」

「それは自分自身も含めての評価と聞こえるなあ、ドクター?」

「さぁてね。だが本物の馬鹿でないとするなら、現実的に追求を捌き切る手段があるのかもしれん。
 それほどまでに強力なサーヴァントを従えているか、あるいは自分自身の実力に相当な自信があるか。
 もしくは、もともと不特定多数のマスターを引き寄せるのが目的で、あえて混戦を招こうとしているのかもな」

いずれにせよ、相応のリスクを伴うのは間違いない。
それをも織り込み済みの挑発行為ならば、なるほど犯人は大したタマだ。
サウスサイドの大破壊の黒幕を追うのも大事だが、新たな動きがあるまでは現状以上の情報を得るのは難しいだろう。
だからこそ、こちらの事件を先に調査する価値はある。それは確かに理解できた。

「だがマスク。大学の件はそれこそ市警の諸君に任せて、我々は後で情報だけいただくというわけにはいかないのか?」
「私がサウスサイドで自由に動けているからこそ、余計に縄張り争いに執心するのが田舎警察の習い性なのだ」
「お、おう。なるほど、そっちの理由か」

言われてみれば、FBIのエージェントはアーカムの警察組織においてはいわば外様のよそ者だ。
捜査体制が盤石になって情報を回してもらえなくなる前に、さっさと現場に上がり込んでおこうというわけか。
いつの時代も警察は面子というものを大事にするのだなあ、とネクロは妙なところで感心をした。

「故にだ。ドクターには私の助手働きとして、私の捜査の旗担ぎをしてもらうことになる」

「助手だぁ? 言っちゃ悪いがマスク、君は魔術に関して素人だろ。君が私の助手じゃないのか?」

「これでも相応の歩み寄りと敬意の証だと受け取ってもらいたいものだ」

例によって話を聞かず、胸ポケットから出した鍵を無造作に後部座席に放ったマスクに、ネクロは恨みがましい視線を送った。
手錠くらい、敬意があるなら自分で外してくれたっていいじゃあないか。



                    ▼  ▼  ▼



ミスカトニック大学応用化学部教授、プレシア・テスタロッサにとって、警察の捜査は茶番そのものだった。

大学の構内で首縊りにされた女学生の遺体を下ろし、何処かへ――恐らくは市警と提携を結んでいる大学内の附属病院へ――運び去ってからは、
警察官たちは飽きもせずに現場周辺で這いつくばって証拠を探し、学生や教授たちの証言を取り、署と何やら無線でやり取りする流れを繰り返している。
市の中核たるこの大学は独立自治の気風が強く、たとえ事件捜査とはいえ「よそ者」の警官たちが構内を荒らすのを快く思わない者も多い。
大学が機能を止めていない以上は市警もよそ者であり続けるほかなく、正義の執行者が肩身を狭くしてせこせこと歩き回る様は滑稽だった。

プレシアも犠牲者が所属していたゼミの担当教授として何度か聴取をされたが、一度もあくびをしなかったのは我ながら驚嘆に値すると思っていた。
警察は少女の死を不審に思いながらも完全に他殺に切り替えることも出来ず、その歯がゆさがプレシアへの接し方にも現れていた。
まるで腫れ物に触るような刑事の態度に辟易としながらも、プレシアは「気丈に振る舞いながら内心で教え子の早すぎる死を悔やむ教師」を演じ切った。
元々、警察側も他殺の線一本で操作しているわけではない以上、現状プレシアを重要な参考人とはしていないのだろう。
あるいはもっと現実的に、女の細腕で死体を吊るすのは不可能だと考えたのかもしれない。
うんざりするほどの時間を奪われはしたものの、結論から言えば、午前中のうちにプレシアは鬱陶しい「任意の捜査協力」から開放されたのだった。

来賓室を後にして、いつもながらの不機嫌な顔を今日は一層に険しくしながら、プレシアは新棟の廊下を足早に歩いていた。

(警察に聖杯戦争の関係者がいれば、これを機に仕掛けてくると思ったのだけれど。とんだ肩すかしだわ)

不機嫌の理由は、自分が僅かなりとも疑われたことではなく、思いのほか「疑われていない」ことにある。
プレシア・テスタロッサは、精神の均衡こそ保てているとは言い難いものの、しかし前後不覚の狂人ではない。
自分の行いがどのような結果を招くかを、その明晰な頭脳をもって推し量ることぐらいは容易い。

あからさまに他のマスターへのメッセージを含んだ変死体。
当然、アーカム中の視線がこちらに向くことになる。そんなことは当然、想定済みだ。
死んだ女学生は応用科学部のゼミ生だ。彼女の死を調べるのならば、どうやってもプレシアに接近せざるを得ない。
あえて我が身を渦中に巻き込むことによって、逆に近づく者の正体を暴き立てる。
そんなプレシアの目論見は、今のところ実を結んでいるとは言い難かった。

(警察はともかく、このミスカトニック大学の内部に聖杯戦争の関係者が潜り込んでいない、などということはあり得ない。
 ここはアーカムの中心であると同時に、この街の智識の集積点であり、魔術師にとって最大の要地だもの。
 パチュリー・ノーレッジに限らず、この大学の何処かには他のマスターがいるはずなのに……揺さぶりが足りなかったかしら)

事件を起こしてみれば即座に食いついてくると考えるのは、早計だっただろうか。
何も直接的な行動を起こさなくてもいい。僅かに嗅ぎ回る素振りを見せてくれるだけでも、狙いをもって観察すればその不審さを捉えられるもの。
そう思って、自らの目だけでなく魔術的手段を併用して学内を偵察しているのだが、今のところ尻尾を出す者はいない。
もしも本当に大学内に隠れ潜んでいるのなら、どうやら敵は相当したたかなようだ。
こちらも、手段を尽くし全力をもって事に当たる必要がある。

(……それにしても。本当に役に立たない英霊様だこと)

プレシアの苛立ちの矛先は、いつの間にか己のサーヴァント、ランサーへと向いていた。
彼女には、引き続き大学内での敵勢力の捜索と、奇襲を含めた威力偵察を命じてある。
にも関わらず、あの日本刀を振るうサムライのサーヴァント――恐らくクラスはセイバー――との一戦以来、全くの手がかりを拾えていない。
それにはランサーが一切の探索系スキルを有していないというのも理由としてあるはずだが、プレシアにとってそんなものは言い訳にもならない。
英霊とはいえ所詮はサーヴァントなど使い魔に過ぎないというのが、魔術師プレシア・テスタロッサの考えである。
使い魔ならば、主の命にはその存在意義を懸けてでも応えるのが従属物としての務めというものだろう。

つまるところ、自分はあの偉大なる英雄様に軽んじられているのだと、既にプレシアは結論付けている。
あの憎たらしいランサーは、令呪という絶対遵守の命令権によって、いやいや頭を垂れているに過ぎないに違いない。
なんて、屈辱。
死人ごときが一度世界を救った程度のことでつけ上がって、主人を見下し、あまつさえ口ごたえをするなんて。
もうプレシアの死んだ娘は、アリシア・テスタロッサは、あの愛らしい声を聴かせてはくれないのに。
何が英霊だ。何様のつもりで、さも当たり前のように蘇っているのだ。
誰がお前などに生き返ってくれと願った。
本当にこのプレシア・テスタロッサのしもべなら、今すぐそのまやかしの命を捧げてアリシアを連れ戻してみせろ――!


――どん、と鈍い衝撃があって、続いて何かが散らばる音が聞こえ、プレシアは思考への没入から引き戻された。


視線を落とせば、黒髪の少女が尻餅をついた姿勢のまま、散らばった本をかき集めていた。
どうやら考え事をしながら歩いていて、出会い頭に彼女とぶつかってしまったらしい。
常にデバイスを持ち歩いている以上、並の魔術師の不意討ち程度で不覚は取らないと自負しているが、流石に不注意が過ぎたようだ。
全てはあの忌々しいランサーに責があると内心で舌打ちをしながら、プレシアは眼前で本を拾うおどおどした少女を睥睨した。

「まったく。それだけの本を抱えて、人にぶつかればどうなるか想像できなかったのかしら?」
「あ……その……ご、ごめんなさい……」

見れば見るほど気弱そうな少女だ。
ゆったりとした服装の上からストールを羽織り、やけに長い前髪は半ばその瞳を覆っている。
本を山のように抱えているから、一瞬「図書館の魔女」ことパチュリー・ノーレッジかと思ったが、外見はまるで違っていた。

深夜に構内を歩いていたという情報から、刀剣のセイバーのマスターは例外的に時間外の図書館への立ち入りが許されている学生、
すなわち神秘学部の新星と名高いパチュリーである可能性が高いと推測したプレシアは、既に彼女に関する学内の資料には目を通している。
幸い彼女を取材した記事には写真が添えられていることが多く、一通り確認した今なら遠くから見かけても顔を見分けられる。
しかし何事にも無関心そうでありながら何処かふてぶてしさを感じさせるパチュリーと、目の前の少女はあまりに印象が違った。

顔立ちは東洋系。プレシアには中国人との見分けがつかないが、日本人だろうか。
もっとも東洋人は今のミスカトニック大学では珍しくない。学生だけでなく、確か何とかという民俗学の教授は日本人だったはずだ。
もうひとり、学内の名物である植物学部の芳乃さくら教授は、東洋系だとかどうとか以前の段階で目を引く容姿だが。
ともかく、東洋人であることがありふれた特徴となってしまうと、目の前の彼女はあまりにも特別な印象に乏しい。
つまるところ、どこにでもいる平凡なつまらない少女というのが、プレシアから彼女への第一印象だった。

プレシアは自分の講義に出席する学生の顔をいちいち覚えているほどマメでも人間好きでもないが、彼女の顔には見覚えがない。
恐らく応用化学部ではないだろうし、散らばった本がどれも小説や詩集であるのを見るに、そもそもプレシアとは無縁の人間だろう。

「あなた。学部と学年、それに名前は」

だからプレシアがそう尋ねたのは彼女に興味を持ったからではなく、腹立ち紛れの言い掛かりに過ぎない。
案の定というべきか、少女はびくりと震え、分かりやすいぐらいに狼狽した後、蚊の鳴くような声で答えを絞り出した。

「……文学部、一年……鷺沢文香、です……」

やはり日本人か。だからどうだということもないのだが。
既にプレシアは、どう見ても魔術師とは思えないこの少女、鷺沢文香から興味を失っていた。

「鷺沢文香、ね。つまらない不注意で貴重な私の時間を奪ったこと、文学部の担当教授にはきちんと報告しておくわ」

別にそんな報告などしてやる義理も意義もないのだが、文香は素直に信じたのか、しゅんと肩を落として項垂れた。
ああ、この反応。プレシアの嫌いなタイプの人間だ。
おとなしく抵抗しないでいれば、それだけで事が上手く運ぶとでも思っているのだろうか。
自らのサーヴァント、あるいは元の世界に残してきた愛娘の紛い物を思い出し、プレシアの眉間に皺が寄った。



「はぁ……もう結構よ。何処へなりとも行ってしまいなさい」

羽織っている白衣をこれ見よがしにはたいてから、プレシアはこれ以上文香に一瞥もくれることなく立ち去ろうとした。
足を止めたのは、背後から自分の名を呼ばれたような気がしたからだ。
最初は聞き間違いかと思ったが、振り返ると、文香の前髪の間から覗く瞳がまっすぐにプレシアを見つめていた。

「……あの、テスタロッサ教授……ひとつ、お聞きしたいことが……」

「まだ何か用? いえ、その前にどこで私の名前を? 私は貴女と接点など無いはずだけれど」

露骨に訝しがるプレシアに、文香は「図書館に置いてあった、大学の広報誌で……」と答えた。
なるほど、朧げな記憶がある。そういえば大昔にそんな取材を受けていたかもしれない。
プレシアがこのアーカムに辿り着くより前の時期に「あったことになっている」出来事だろうか。
自分が実際に取ったわけでもない行動が過去として存在するのは厄介だと思いながら、プレシアは不機嫌な視線だけで続きを促した。

「……はい……では……テスタロッサ教授は、パチュリー・ノーレッジという方を、ご存じですか……?」

何故ここでパチュリー・ノーレッジの名前が出てくるのだ。
などという疑問はおくびにも出さず、プレシアは「応用化学部の私がよその学生など知るわけがないでしょう」と切って捨てた。

「どうして私にそんな脈絡のない質問をしたのか、理解不能だわ」

「……すみません……テスタロッサ教授は、よく図書館を利用されているようですから……もしかしたらと思って……」

プレシアは舌打ちをした。
確かに図書館地下の稀覯書保管庫に魔導書が保管されているという噂を聞き、足繁く通い詰めていたのは確かだった。
しかし教授職にあるプレシアであっても禁書庫への入室は許されず、更には書庫自体に何らかの魔術的封印が為されており、無駄足に終わったのだ。
封印の突破自体はプレシアの魔術師としての智識と能力を総動員すれば可能かもしれないが、今はまだ大学内で騒ぎを起こすのは不味い。
そう思って機を伺うことにしていたのだが、こんな何でもない学生にも気に留められていたのか。
同僚はともかく学生になど一切興味のないプレシアは、恐らく顔を合わせたこともあっただろうパチュリーの顔も知らなかったというのに。

そこまで思いを巡らせてから、プレシアはようやく、目の前の少女が小刻みに震えていることに気がついた。

プレシアの高圧的な態度に怯えているのかと思ったが、もしもそうなら一刻も早く立ち去ろうとするはずだ。
たかが今の質問を投げかけるようなことが、鷺沢文香にとってはそんなにも勇気がいる、切実な行動だったのか。
言語化できない引っ掛かりを覚えながらも、プレシアはそれ以上何かを訊くこともなく、今度こそ立ち去った。

歩きながら、鷺沢文香の瞳がはっとするほど綺麗な青色をしていたのを思い出し、その美しさに一瞬惹きこまれていた自分に苛立った。



                    ▼  ▼  ▼


まだ耳鳴りがしているような気がする。

大学職員にキャンパス地区を案内されながら、マスクは今後のことに思いを巡らせていた。
アーカム市警への義理立てとして正規の手続きを踏んで捜査へと加わろうとしたのが、そもそもの間違いだったように思える。
おかげで署長直々の苦言を無駄に大音量で聞かされ、気勢を大いに削がれる羽目になってしまった。



『いいかね、ミスター・マスク! 我々アーカム市警が君の自由を許しているのは、捜査局本部のクンパ長官の肝煎りだからだ!
 君が気ままにロウアーのスラムをうろつけるのも我々の厚意あってこそのものだということを、君には今一度自覚してもらいたいものだね!
 確かに君が我々の仕事に少なからず貢献していることは認めよう! まああの程度のチンピラならうちの優秀な署員でもしょっぴけるがね!
 しかし! いいかねマスク、しかしだ! 自由といってもリバティとフリーダムは違うし、ワシントンD.C.とマサチューセッツも違う!
 ここはアーカムだ、我々の庭であり我々の故郷だ! 君のような外部の人間に頼らんでも、アーカム市警はこの難事件を解決してみせる!
 今に見ていたまえ、わがアーカム警察署が誇る敏腕捜査官『亜門 鋼太朗』が君より先に成果を上げると約束しよう!
 君は知らんだろうが、コウタロウとは日本の言葉で“鋼の男”という意味らしいぞ! ちなみに私も最近まで知らなかった!
 ともかく、亜門君はその名の通りの鋼の信念で必ずや真実に辿り着くだろう! 首を洗って待っていたまえミスター・マスク!
 では私はこのあたりで失礼するよ! この後はアップルフィールド氏とのアポがあるのでな! HAHAHAHAHAHAHAHA!!』


いい歳した大人が何をムキになっているんだと溜息もつきたくなるというものだ。
そのアモン・コウタロウなる男が何者かは知らないが、せいぜい自分の捜査の邪魔だけはしないでもらいたい。
それにしても、連邦捜査官という立場も思いのほか制約が多いものだ。
何しろ今回の事件について正式な令状を貰っているわけではないので、こうして大学に入るだけでも一苦労である。
というか、こうして職員に案内されるという形で大学内に入れたのは、結局のところマスクの実力ではなく……。

「それにしても驚きました、まさかあの高名なネクロ博士がミスカトニックの客員として赴任されるなんて」
「うむ、ここの大図書館の蔵書は世界有数だからな。前々からお招きに与ろうと思っていたのだ」
「………………」
「ところで博士、助手のマスクさんは顔色が良くないですが、お体の具合でも悪いのでしょうか?」
「ああ、気にするな。彼は面倒な言い回しをやめると死んでしまう病気なんだ」
「そうなのですか、おかわいそうに」
「………………」

いつの間にか、Dr.ネクロはミスカトニック大学に赴任した客員教授で、マスクはその助手ということになっている。
マスク達を出迎えた女性職員はそれを完全に信じ込んでいるようで、ネクロはそれをいいことに随分と好き勝手なことを話していた。
ロングコートの襟を立てて得意気に歩くネクロの耳元へ、マスクは体を屈めて顔を寄せた。

「おい、ドクター」
「どうした、助手くん。持病の具合はいいのか」
「それ以上言うならいよいよお前をインスマスの海底に沈めてやらねばならん」
「冗談だよ、短気な奴だな。それで?」
「それでじゃない。いったいどんな手を使ったんだ」

仮面の下で眉を顰めるマスクに、ネクロは特に大したことでもないように「暗示魔術だ」と答えた。

「暗示だと?」
「ああ。魔術としては比較的初歩だ。強い働きかけをもって、相手に自分の存在を斯くあるものと刷り込ませる。
 今の彼女には、私は子供の姿にすら見えていないだろう。こう見えて、幻覚を見せる魔術は得意なほうでね」
「摩訶不思議なる手を使ったか。この先出会う全員にそうやって暗示を掛けていくつもりか?」
「まさか。そこまで大々的に魔術を広めれば逆に怪しまれる。ここからは舌先三寸さ」

ネクロが、首から下げている「客員研究員(仮)」と書かれた小さなプレートをちらつかせてみせた。
今さっき窓口で貰った、名前も顔写真もない仮置きの証明証だが、ひとまず構内を歩き回るには問題無いだろう。
マスクも同じものを(ただし助研究員というひとつランクの低いものを)貰ってはいる。
だがこんなものでは見咎められた時の言い訳には弱く、警察関係者や証人相手には連邦捜査局の身分証の方が役立つだろう。
あるいは、マスクの持つもうひとつの証明証――アーカム市内における拳銃携帯許可のライセンス――が。

(いずれにせよ、この大学は必ず聖杯戦争と関係を持つ。私とクンタラの千年の願いに懸けて、成し遂げねばなるまい)



マスクの悲願は、かつて宇宙世紀末期に食糧不足のため食用に供された人々――そしてマスクことルイン・リーの祖先――クンタラの開放である。
それを為すのが聖杯である以上は、目の前を歩く魔術師Dr.ネクロもいずれは決着をつけるべき敵となるだろう。
彼女の宿願が何かは知らないし、訊いても教えてはくれないだろうが、決して聖杯を諦めたりはしないという確信はある。
それに、今でこそ冗談めいた台詞を飛ばしてくるが、いざとなれば自分の事も冷徹に始末しようとするのが魔術師だと、マスクは理解しつつあった。
口にこそ出さないが、彼女が血も涙もない人間だとまでは思ってはいない。
思ってはいないが、魔術師の倫理とは、兵士のそれとすら一線を引いたところにあるようにマスクには思えてならない。
そして、もしもこのミスカトニック大学で糸を手繰っているのが、そういう手合いの魔術師ならば――。

(こちらもモビルスーツで顔を隠した人間しか殺せないなどと、甘えたことは言うものか)

仮面越しの視界が、光学センサーでは捉えられないはずの穢れた魔力で烟っているように思えて、マスクはかぶりを振ってから歩みを進めた。



                    ▼  ▼  ▼



ミスカトニック大学の地下書庫には、封印された稀覯書だけが集められた禁書庫が存在する。

この世の理を外れた書、この宇宙の触れてはならぬ深淵へ言及した書、目を通すだけで不定の狂気に取り憑かれる禁断の書。
かつて、大学図書館の長であったヘンリー・アーミティッジ博士により「ダニッチ村で起こった何か」以降に作られたこのコレクションは、
世界各地から掻き集められたいわゆる魔導書――黒の書として知られるカルト儀式の見聞、南極の古代文明について記された書、
人類出現以前に認められたという最古の写本、屍体崇拝教団のおぞましき目録、中東地域の異端信仰について述べた書物、
そして狂えるアラブ人アブドゥル・アル=ハズラッドによってこの世に送り出されたかの悪名高き“死霊秘本”――のみならず、
かつては非オカルト的な書物として出版されたにも関わらず、後に禁断の智識や放置できない怪異を秘めているとして大学が収集した書を含む。
例えば、ジェームズ・ジョージ・フレイザーの『金枝篇』。
あるいは、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの『アウトサイダー及びその他の恐怖』。
最近のものでは、日本の作家である大迫栄一郎の『現代都市伝説考』が新たにリストに加わったと噂されている。
いずれにせよ、このコレクションは魔術に携わる者にとっては公然の秘密ではあるものの、魔術的処置により厳重な封印が為されており、
正規の手続きによっての閲覧は不可能とまでは言わないものの、非常に困難であることは間違いなかった。
現在アーカムで執り行われている魔術儀式、聖杯戦争。
その関係者の中には、ここにこそ聖杯や英霊の秘密が記された書が存在すると推測する者もいるが、入室を果たした者は未だにいない。


聖杯戦争の参加者として三画の令呪を戴くマスター、鷺沢文香は、その詳細な事実を知っているわけではない。
それでも大学図書館にアーカムの叡智が結集していることは理解していたし、元の世界へ帰る手掛かりがあるとすれば、まずここだろうと思っていた。
そして同じ学生でありながらも図書館の魔女と噂されるというパチュリー・ノーレッジならば、文香の迷いにも応えてくれるのではないか。
そう思って、以前図書館で見かけたことのある応用化学部の教授に意を決して話しかけたものの、すげなく切り捨てられ。
消沈して図書館へ実際に足を運んでみると、パチュリーは今日に限ってまだ図書館へ足を運んでいないという。
自分のなけなしの決意がことごとく空回っているように思えて、文香の長い前髪が落とす影は一層深くなった。

(そもそも……誰かに頼ろうというのが、間違いなのでしょうか……)

文香は聖杯になど興味はない。ただ自分が暮らしていたはずの世界に帰りたいだけだ。
たったそれだけのことなのに、ひとりぼっちの文香は地図もコンパスもなく荒野へ放り出されたようなもので、途方に暮れる以外に何も出来ない。
いや、本当はひとりぼっちではない。それは、分かってはいるのだが。

(……アーチャーさんは、私が話しかければ答えてくれる。だけど、言葉にしない問いに、答えをくれたりはしない。
 私から歩み寄らない限り、ずっと今のような、近くて遠い距離……。でも、その一歩が、私にはあまりにも……)

文香と契約した双銃のアーチャーは、その武器そのものが象徴するかのような、抜き身の銃のような男だ。
マスターである文香が願えばどんな敵とも戦い、あらゆる障害を排除しようとしてくれるだろう。
決して口数の多い男ではないが、彼なりの誠実さで文香の事情を慮ってくれているのは伝わってきていた。
それでも、怖いのだ。何故なら、彼は銃だから。
銃である以上は、銃爪に指を掛けるのも、決意をもって弾丸を撃ち出すのも、その持ち主であるマスターの役目だ。
アーチャーにとっての決断は、完全に文香へと委ねられている。
それが、文香にとってはたまらなく怖い。

(アイドルになった時は、プロデューサーさんが手を引いてくれた……でも、今の私のそばには、あの人はいなくて……。
 私の物語を読み進めるには、私自身がページを捲らなければならないのに……誰でもない、私が……自分で……っ)

自分の体がぶるぶると震えていることに気付き、文香は自分の両肩を抱いた。
それでも涙だけは――その一線だけは越えないようにと、悲鳴を上げそうな心を押し留める。
一度泣いてしまったら、もう立ち上がれなくなってしまう。そうしたら、もうあの輝くステージには手が届かない。
十二時までのシンデレラの魔法を、まだ解いてしまうわけにはいかないから。



                    ▼  ▼  ▼



それぞれの思惑をもって、マスター達は次々と舞台へと上がる。
そして彼らの従者たるサーヴァント達も、また、次々と。


プレシア・テスタロッサのサーヴァント、沈黙のランサー。
“破滅の使者”セーラーサターンは、学舎の屋上からキャンパスを見下ろしていた。
その胸に抱くのは悲愴な献身と、健気な覚悟。
どんなに主から虐げられようとも彼女の悲願は叶えてみせる。
それが献身の英雄としての矜持であり、父の愛によって生かされた娘としての想いだから。


マスクことルイン・リーのサーヴァント、刻印のアサシン。
“傷の男”スカーは、主の傍で一言も発することなく警戒を続けていた。
彼は暗殺者であり、復讐鬼である。その力の源泉は、今は怒りであり嘆きである。
現界にあたって欠落した何かを自覚することなく、ただ激情のままにその牙を研ぐ。
新たなる決意も、託された願いも知らぬ。今はただ、血をイシュヴァールへと捧げるために。


Dr.ネクロことデボネア・ヴァイオレットのサーヴァント、異貌のバーサーカー。
“マスクド・ライダー”風祭真は、その超感覚をもって敵を探し続けていた。
狂化によって薄められた知性。混濁する意識の中、求めるのは獣性を叩き付けられる存在だけだ。
だが、暴走する本能のままに敵を引き裂き食い千切って、その先は。
分かるわけがない。あの序章(プロローグ)の続きを知る者など、彼以外に一人としていないのだから。


鷺沢文香のサーヴァント、双銃のアーチャー。
“反逆者”ジョン・プレストンは、何も語らず、ただ無心にそこにいた。
その冷徹な鉄面皮の裏側に、鋭敏すぎる感受性を隠したまま。
遥か未来の英霊である彼に与えられた神秘は乏しく、立ち向かうべき敵はあまりにも強大。
だが男に動揺はない。ガン=カタとは人類史の窮極。人が人として積み重ねた全てをもって戦うのみ。


そして、ミスカトニック大学に潜む、他なるサーヴァント達。
威風堂々たる剣劇のセイバー、あるいは真理を嘯く幻実のアサシン。
戦端は今やそこら中にあった。後はそれが開かれるか、開かれないかの違いである。

秘匿者(キーパー)の宣言により開幕した聖杯戦争、その一日目。
魔導が混沌を呼び、ミスカトニックのキャンパスに腥い瘴気が集いつつあった。


【キャンパス・ミスカトニック大学構内/一日目 午前】

【プレシア・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは THE MOVIE 1ST】
[状態]健康
[精神]精神汚染:E
[令呪]残り三画
[装備]ミッドチルダ式ストレージデバイス
[道具]大学教授としての衣服および所持品
[所持金]豊富
[思考・状況]
基本行動方針:ミスカトニック大学に潜むマスターを燻り出し、殺す。
1.深夜の施設利用を許されているパチュリー・ノーレッジをマスター候補として警戒。
2.それ以外にも「罠」に反応する大学関係者がいないか観察する。
3.セーラーサターンに対して強い不信感。
[備考]


【ランサー(セーラーサターン)@美少女戦士セーラームーンS】
[状態]健康
[精神]正常
[装備]『沈黙の鎌(サイレンス・グレイブ)』
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターへの献身。
1.プレシアの願いを叶えるために尽力する。
2.マスターの信頼を得たい。
[備考]



【鷺沢文香@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態] 健康
[精神] 恐怖
[令呪] 残り三画
[装備] なし
[道具] 本
[所持金] 普通の大学生程度
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界に帰りたい
1.プロデューサーさん……
2.パチュリー・ノーレッジに会ってみたい
[備考]


【アーチャー(ジョン・プレストン)@リベリオン】
[状態] 健康
[精神] 正常
[装備] クラリックガン
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターを守る。
1.マスターを守る。
[備考]
※今のところ文香の方針に自ら干渉するつもりはありません。


【マスク@ガンダム Gのレコンギスタ】
[状態]健康
[精神]一時的ショックから回復
[令呪]残り3画
[装備]マスク、自動拳銃
[道具]FBIの身分証
[所持金]余裕はある
[思考・状況]
基本行動方針:捜査官として情報を収集する。
1.ミスカトニック大学内で首縊り事件に関する情報を集める。
2.白髪の食屍鬼を操るサーヴァント(ワラキアの夜)を警戒。
[備考]
※拳銃のライセンスを所持しています。


【アサシン(傷の男(スカー))@鋼の錬金術師】
[状態]健康
[精神]正常
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:基本的にはマスクに従う。
1.Dr.ネクロを警戒しつつ、マスクを護衛する。
[備考]
※盾の英霊(リーズバイフェ)およびそのマスター(亜門)と白髪の食屍鬼の戦闘を目視しています。
 どれだけ詳細に把握しているのかは後続に委ねます。



【Dr.ネクロ(デボネア・ヴァイオレット)@KEYMAN -THE HAND OF JUDGMENT-】
[状態]健康、魔力消費(小)
[精神]正常
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]魔術の各種媒介
[所持金]そこそこ
[思考・状況]
基本行動方針:他のマスターと協力しながらしばらくは様子見。
1.ミスカトニック大学内で首縊り事件に関する情報を集める。
2.せっかく大学内に入れたのだから、図書館にも寄ってみたい。
3.白髪の食屍鬼を操るサーヴァント(ワラキアの夜)を警戒。
[備考]
※盾の英霊(リーズバイフェ)およびそのマスター(亜門)と白髪の食屍鬼の戦闘、
 また白髪の食屍鬼同士(金木とヤモリ)の戦闘を把握しています。
 しかしどちらも仔細に観察していたわけではありません。


【バーサーカー(仮面ライダーシン)@真・仮面ライダー序章】
[状態]健康
[精神]正常
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:???
1.???
[備考]

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017:それぞれのブランチ 投下順 018:昏濁の坩堝へと
017:それぞれのブランチ 時系列順 019:昏濁の坩堝へと

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002:首括りの丘へ プレシア・テスタロッサ&ランサー(セーラーサターン : 
011:Answer And Answer 鷺沢文香&アーチャー(ジョン・プレストン 024:Libra ribrary
009:アーカム喰種[JAM] Dr.ネクロ(デボネア・ヴァイオレット)&バーサーカー(仮面ライダーシン
マスク&(アサシン)傷の男(スカー)

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最終更新:2017年12月02日 23:00