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CrazyBotch ◆HQRzDweJVY









きんいろのらいおんさん


おひめさまをねらってた


やりをもったきしも


ぼうとくてきなちからでねじふせた


ひとりになったおひめさま


あわれにむしゃむしゃたべられた



  ■  ■  ■



商業地区の一角にとある古ぼけた飲食店があった。
いわゆる"ダイナー"と呼ばれる形式の大衆食堂であり、
現在様々な地域にある24時間営業のファミリーレストランの元になったような店構えをしている。

その店内の奥まった場所にあるボックス席に二人の姿はあった。
一人は金髪の少年。13歳にしてミスカトニック大学に籍をおくアルフォンス・エルリック。
そしてもう一人は彼の従者(サーヴァント)。魔術師(キャスター)、リナ・インバースだ。
今現在リナは先程までつけていた魔術師めいたショルダーアーマーやマントを取り払い、
二人の姿は早めの昼食を取る年若いカップルにも見える。
だがそんな彼らには店内中の視線が集中している。

正確に言えば二人にではない。
二人の間にあるテーブル、更に正確に言えばそこにのった大量の料理に、である。

ただでさえアメリカンサイズの料理が机狭しと並べられている。
だが男性4人がやっとのことで平らげる量は、次々とリナの胃袋の中へ消えていく。

「んー……大味だけど味自体は悪く無いわね」

ここに来るまでに食事をしているというのに、その小さな体のどこにそれだけの量が入るのか。
サーヴァントだから物理法則を無視して入るのだろうか。
いや、多分英霊になる前からこんな人だったに違いない。
そう思わせるほどに慣れていた。

「うーん、食べた食べた。ごちそうさまでした!」

満足そうに一息つくリナ。
そんな彼女に対しにアルフォンスは気になっていることを問いかけた。

「ところでリナさん、今更なんですけど堂々と姿を表して大丈夫なんですか?」

出発前に話した対魔力を持つサーヴァントに襲撃されると危険なのではないだろうか。
そんなアルの疑問にリナは『何を当たり前のことを』と言いたげな表情で答える。

「仕方ないでしょ。実体化しないと味覚が働かないんだから」
「ええー……」
「……っていうのは半分冗談よ。ちゃんと考えぐらいあるわよ」

『半分は本気だったんだ……』と呆れ半分の視線を無視して、リナはピッと人差し指を立てる。

「まずこの状況で最も警戒すべきはアーチャーによる長距離狙撃とアサシンによる襲撃……つまりは暗殺ね。
 でもこの店の構造上、奥の方にあるこの席は狙撃がしにくい場所にある。
 それに暗殺するにしてもあたしならもっといい時間と場所を狙うわ」

ただ標的だけを消せばいいならば話は別だが、この場所で起こっているのは聖杯戦争という名のバトルロイヤルなのだ。
獲物を殺した次の瞬間に自分自身が獲物になってしまっては元も子もない。

「ちなみに宝具に関しては"なんでもあり"だから警戒するだけ無駄よ。
 それはもう背負うべきリスクとして割りきりなさい。警戒しすぎたら何も行動できないわ」

遠回しに"諦めろ"というようなリナの言葉。
だがその顔に浮かんでいるのは、言葉とは裏腹な自信に満ちた笑みだ。

「……ま、安心しなさい。
 狙撃手にも暗殺者にも狙われたことは一度や二度じゃないから、よっぽどじゃなきゃなんとかなるわ」

そう言って不敵に笑うリナを見て、アルは改めて理解する。
目の前にいる彼女もまた幾多の冒険と視線をくぐり抜けてきた英霊なのだ、と。
一方で対面のリナは周囲をぐるりと見回していた。

「さて、それはそれとして、もう一つ確かめたいこともだいたい確かめられたわね」

リナの言葉を受けて、アルの頭に疑問符が浮かぶ。
どうみても大量に飯を食べていただけのように思えるのだが。

「何よその顔は。あたしが適当言ってるとか思ってんじゃないでしょうね」

ぎくり。
自覚したことはなかったが。もしかして自分は結構顔に出るタイプなのだろうか。
そんなアルの様子を見て、リナは大きな溜息をつく。

「……まあいいわ。
 あたしが確かめたかったのは、【実体化したあたしがどれぐらいの影響があるか】ってことよ」
「影響……ですか?」

リナの言葉の意味が理解できず、アルは小首を傾げた。

「言ったでしょ。あのギャングども、怯え方が尋常じゃなかったって」

最初に襲撃したギャングのことを思い出す。
喚き、叫び、まるで親を見失った赤子のように泣き叫ぶ男たちの姿。

「最初にあたしを目撃した時は威勢がよかったんだけど、どうも魔法を見た途端にああなっちゃったっぽいのよね」
「それは……いきなり火の玉とか見たらビックリするんじゃないでしょうか」
「一般人ならわからないでもないけど、あいつだって三下とはいえ悪党よ。
 あんないきなりパニック状態に陥るなんていくらなんでも不自然よ」
「……そういうものですか」

アルは動く鎧(リビングアーマー)として兄と旅した間の記憶が無い。
故に伝聞でしか世界を知らず、そしてそのことを自覚している。
だからこそ世界を旅してきたリナの言葉に素直に頷いた。

「ええ、そういうものよ。
 ……で、予想通りといえば予想通りなんだけど、普通に実体化してるぐらいだと影響はないみたいね。
 となると魔術を目撃するとあのギャングどもみたいになる、って考えるのが自然ね」
「うーん……それだとなんで僕は大丈夫だったんでしょう」
「あたしとパスがつながってるから……ってのが一番可能性としては高いでしょうね。
 自分の毒で死ぬ毒蛇がいないのと同じことよ」

となると他人の魔術を見た瞬間、自分もああなってしまう可能性があるということか。

「ま、そのあたりは宝具同様心配しても仕方がないことね。
 今のところは覚悟しときなさいとしか言えないわ。
 ……それで、さっきお願いしてたものは書いてくれた?」
「あ、はい。思いつく限りはここに書きましたけど……」

そう言ってアルはメモ帳を差し出す。
そこにはマメそうな筆跡でずらっと、ミスカトニック大学で教鞭をとる個性的な人物が列記されている。
つい先程、当面の調査対象を大学教授陣に定めたものの、該当者は山のようにいる。
そこでとりあえず絞るためにもアルが知る学内の有名人をリストアップしたのだ。

「ハーバード・ウェストの再来と呼ばれるリー先生、ロボット工学のエキスパートであるティモシー・ウェインライト教授、
 核物理学の権威であるラトホテップ博士に民俗学のタモン・タケウチ……そのほかにも結構いるわね」
「元々何かに極めて秀でた人って変人が多いですからね……」
「……まぁ一理あるわね。のーみそがスライムの天才剣士ってやつもいるし」

どうもその系統の天才に心あたりがあるらしい。
アルにしてみれば目の前の存在もそれに近いのだが、それを口にすれば碌な事にならないことは確かなので口を閉じている。

「あれ、そういえばあのちみっこは?」
「ちみっこって……芳乃教授ですか? うーんそれほど怪しいとは思えないんですけど……。
 変わり者ってわけじゃないですし、親しみやすい人ですよ」
「いや、怪しい事この上ないと思うんだけど……」

呆れたようなリナの視線を受け、彼女も加えるべきだろうかとアルが考えたその時だった。
ポケットの中から響く振動。
どうやら誰からかメールが届いたらしい。
慣れた手つきでスマートフォンを取り出し、メールの文面を見たアルの表情が驚きに変わる。

「どうかしたの?」
「大学の友人からです。
 "今、大学にはこないほうがいいかもしれない"、と」
「どーゆーこと?」
「ええと……こういうことらしいです」

液晶の上で指を滑らせ、表示されたサイトをリナに向ける。
その小さな画面に映しだされていたのはアーカムの地方紙の電子版。
その中央にでかでかと"Miskatonic University Death"というショッキングな見出し文が映し出されている。

この事件により、受ける予定だった講義が休講になっただけでなく、
アルの友人も長時間事情聴取に付き合わされたらしい。
実際、死体が吊るされていた桜の木とアルの所属する機械工学科は目と鼻の先だ。
今学校に行けばアルも似たような目に合うだろうことは想像に難くない。

「……嫌な感じね」

記事を読み終わったリナがポツリと呟く。
その視線はスマートフォンに固定されたままだ。

「嫌な感じって……魔術的な何かを感じるってことですか?」
「流石にあたしでも電波越しに魔力を感じるとかそんな真似はできないわよ。
 ただ……これ、どーみてもあたし達――マスターとサーヴァントに対する挑発でしょ」

被害者は桜の木に吊るされていた。
首をくくられた死体。それはアーカムでは別の意味を持つ。

魔女狩り、そして首括りの丘。
アーカムに伝わる陰鬱なる歴史。
この街に住む人間ならば、そのことを思い出さずにはいられない。
ましてやそれが魔女――"魔"に係る聖杯戦争のマスターならば。

「その被害者の子がマスターかどうかはわからないけど、学内にマスターが居るのは確実みたいね。
 ただこれだけ全方面にケンカ売ってるってことは、今頃は大学に血気盛んな奴が押し寄せてるでしょうね……
 ああもう、こっちの予定ぐちゃぐちゃじゃない!」

元々アルたちは大学に行って各マスターやサーヴァントの情報を探る予定だった。
だが今大学には次々とサーヴァントたちが集まっている。
万が一、三騎士にでもこちらの正体がバレでもすれば、手も足も出ないまま撃破されてしまう可能性がある。

「僕達も向かうべきだと思いますか?」
「乱戦になれば切り札――神滅斬(ラグナブレード)を当てるチャンスは格段に増えるでしょうけど……
 こっちの情報も少なからず割れてしまうことは覚悟しないといけないわ。
 そうなるとこの序盤で今後の動きが制限されてしまう。
 ハイリスク・ハイリターン……個人的にはリスク多めって感じね」

『あんまりオススメはできないわ』と付け加えるリナ。
しかし真剣な眼差しでアルを真正面から見つめる。

「……とはいえ最終決定権はマスターであるあんたにあるわ。
 これに限ってはどっちが正解――なんて話じゃないから好きに決めちゃって」

そう言われても頭の中は一気に増えた情報でごちゃごちゃしている。
とりあえず頭の中をリセットさせようとアルがコーヒーを口にした瞬間、

「――だからその子がロウワー・サウスサイドで"さまよう鎧"を見たんだって!」

隣の席から聞こえてきた女性の声にむせ返る。
衝立で姿は見えないが、どうやら隣のテーブルで誰かが話をしているらしい。

「ままままた、ボクを驚かそうたってそうはいきませんからね!」
「あー、でもYogTube(ヨグチューブ)に動画も上がってるんだって。せっかくだし見る?」
「どーせトリックですよ! ボ、ボクより歳上なんだからそういうのはそろそろ卒業したらどうですか!?」

上ずるような少女の声に我に返ったアルは事態を把握する。
どうやら自分がとった行動が噂になってしまっているようだ。
それも一種の都市伝説として。
しかしまさか動画まで上がっていたとは……。
一方で、対面のリナはにやにやとした笑みをアルに向けている。
どうやらアルが都市伝説となったのが面白いらしい。

「でもその噂ならウチも聞いたことありますえ?
 確か……"悪逆非道の悪魔をつれている騎士の亡霊"って話でっしゃろ?」

が、続いた言葉にリナの笑顔が凍りつく。

「なんでも出会ったら最後、口から地獄の炎を吐いて、生きたまま焼き殺されてしまうそうどす。
 更にはあまりに残虐なその光景を目にしたものは恐怖のあまり発狂してしまうそうどすえ。
 物騒すぎて凶暴すぎて黒い仔山羊もまたいで通るとか……」
「へー、その話は初めて聞いたかも。ん……? 冷房が効きすぎてない、この店?」

真正面に座るリナは表情こそ笑顔だが青筋を立てている。
あと少しでもリミットを超えたら見ず知らずの彼女らのもとに乗り込みそうな雰囲気さえある。

「まぁ、でもそんなお話、この街ではそう珍しいことでもないどすえ?
 【幻の地下鉄道】とか【発狂した漁師】とか、お祖母様からいくらでも聞いたことありますし。
 最近だと【軍の秘密ステルス機がUFOを撃墜した】とか、【白髪の屍食鬼】とか、【地下から聞こえてくる男の叫び声】とか……」
「あ、それなら私最近面白い噂聞いたよ! "空飛ぶ金色のライオン"の噂!」
「そ、それは怖くなさそう……じゃなくて、ボクは優しいですからね! 話ぐらい聞いてあげますよ!」
「うん、なんでもビルぐらい大きい巨大なライオンで、目撃した人を頭からバリバリ食べちゃうんだって」
「……」

意外と残酷なオチに絶句する気配が伝わってくる。

「……あ、あれー、そろそろバスの時間みたいですね! 食べ終わったし早く行かないと!
 ほ、ほら二人とも急いでくださいよ!」
「ちょ、ちょっと待ってってば! まだあたしコーヒー飲み終わって――」
「もう一本あとでも間に合うからそんなに急がんでもええのに……」

ドタバタという足音とともに、少女たちの声が遠くなっていく。
再び沈黙の落ちるテーブル。
恐る恐るリナの様子をうかがう。
だが視線の先のリナはアルの予想とは違い、真剣な表情で何かを考え込んいた。

「……何か妙じゃない?」
「妙、ですか?」
「ええ。いくらなんでも噂が多すぎるでしょ」
「うーん……そうですか? "インターネット"があるこの世界なら不思議じゃないと思うんですけど……」

リナもアルも元々は個人が自由にできる情報通信網のない世界の出身だ。
故にインターネットに対しては聖杯を介しての知識しか持たない。
だが聖杯によって与えられた知識はあくまで知識だ。
そこに実感はなく、その間には奇妙な齟齬がある。
だからこそ"そういうこともあるのではないか"と思っていたのだが……

「だとしても、よ。
 通信技術が発達しても、それを使ってる人間はどの世界でもあまり違いがないわ。
 ……そもそも噂っていうのはあんまり同時並行的に流行らないのよ。
 噂となる火種が多い場合、短いスパンでどんどん切り替わるってほうがありえるわ。
 それにさっきの話にでてきたのはあくまで一部分でしょう?
 ちょっとそのインターネットってやつで調べてみてくれる?」

言われるまま、適当なキーワードで検索をかける。
すると胡乱なサイトや掲示板がいくつも引っかかた。
SNSサイトであるHastturでも同様だった。
先ほどの会話の中に出てきたものもあれば、そうでないものも両手の指で数えられないほどある。
確かにこれは一つの街にはびこる噂の量としては多すぎる。
しかもそれはここ数日で異常なほどに増えている……なんとなくだがアルにはそう感じられた。

「あたしとしては、"何か"がいるんじゃないかと思うんだけどね。
 噂を流通させる"何か"、が」

ネズミや虫が疫病を媒介するように噂話のパンデミックを引き起こしている存在がいる?
それは、ただの人の手には余る行為だ。

「……サーヴァント、ってことですか?」
「ええ、断言はできないけど確率は高いと思う」
「うーんだとしたら一体何のためにそんな真似を……?」
「噂話を流すことで有利になる"何か"がある……
 一番考えられるのは知名度によってステータスをアップさせることだけど、
 噂程度でどれだけ力になるかわからないし、何より単純な愉快犯である可能性も捨てられないのよね……
 "人格が破綻した英雄"なんてどの世界にもいるもんだし」

それに、と付け足す。

「噂そのものがあたし達と無関係とも言い切れないしね」
「それって……」
「そう。多くの噂話ってのは元となる原型(アーキタイプ)があるものよ。
 普通なら"影を怪人と見間違えた"とかそんな些細なものだったかもしれない。
 ――でもここアーカムではそうとは限らない」

聖杯戦争。
超常現象(オカルト)の窮極である英霊同士のぶつかり合い。
それに付随する科学では到底証明できない現象。

「聖杯戦争で起こった超常的な何かが、その噂の元になっている可能性がある。
 ちょうど鎧姿のアル君が都市伝説になったみたいにね。
 特にさっきの"金色のライオン"なんて、都市伝説としては突飛すぎると思わない?」

確かに。他の都市伝説が人間などをベースにしているのに対し、あまりにも具体的かつ突飛だ。
だとしたら、金色のライオン"の元になった現象とは一体何なのだろうか。

「――金色のライオン、か……」

誰に向けたものでもないつぶやき。
だがその言葉が持つ何かが、アルの脳裏に奇妙に引っかかった。



  ■  ■  ■



「……おじさんは、だあれ?」

「フフフ……私かね? 私は君と同じく真実を知ったものだ。
 同様に真実に辿り着いた君に会いに来た」

「しんじつ……?」

「ああ、そうとも。
 君の知る真実を他のものにも知らしめようじゃないか。
 さぁ、聞かせてくれたまえ……君の知る真実(メモリー)を!」





【商業地区・大衆食堂/一日目 午前】

【アルフォンス・エルリック@劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者】
[状態]健康
[精神]正常
[令呪]残り三画
[装備]掌に錬成陣が描かれた手袋、赤いコート
[道具]鞄(大学生としての所持品)、西洋鎧(屋敷に保管)
[所持金]古物商だった父の遺産で慎ましく暮らしていける程度
[思考・状況]
基本行動方針:兄さんに会うために聖杯に願う。
1.今後の方針を決める。
2. 噂話が気になる。
3.三騎士との戦いはできるだけ回避する
[備考]
令呪は右手の甲に宿っています。
芳乃さくらと顔見知り程度に知り合っています。マスターとは認識していません。


【キャスター(リナ・インバース)@スレイヤーズ】
[状態]健康
[精神]正常
[装備]ショートソード、バンダナ
[道具]魔血玉
[所持金]たくさん金貨や宝石があるけど支払いは全てアルフォンス持ち
[思考・状況]
基本行動方針:おたからとごちそうをゲットしつつなるべく楽に敵をぶちのめして勝つ!
1.大学ねぇ
2.芳乃さくらを含めミスカトニック大学の教授陣が怪しい
3.対魔力持ちを警戒、三騎士の情報をできるだけ集める
[備考]
  • 芳乃さくらをマスターではないかと疑っています。
  • 噂の媒介をするものがいるのではないかと疑っています。

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