《オカルト》アイアンメイデン・ジャンヌ&ライダー◆q4eJ67HsvU






 ――世界が平和でありますように。





   ▼  ▼  ▼



 とある雨の夜、アーカムで一人の男が雷に打たれて死んだ。


 一瞬の雷鳴とともに黒焦げになったその男は、フレンチヒルからアップタウンの自宅へ続く道を急いでいた。
 その遺体は二目と見れない程に焼け爛れ、手荷物もあらかた消し炭同然になっていたから、
 警察がその身元を突き止めるまでには思いのほか時間が掛かることとなった。

 その調査の結果、男は独身でアーカム市内には身寄りもおらず信仰以外に趣味もないような平凡な人間であったから、
 十中八九は日課であったらしい丘の上の教会への礼拝の帰り道であったのだろうと人々は結論づけた。
 とはいえ、落雷を受けて死に至るまでの状況に何の事件性も無いのは明白であったため、
 警察は彼の死をただの不運な事故として淡々と処理し、ノースサイドのマスコミもわざわざ新聞のネタにしようとはしなかった。

 彼の死の不審については、ただフレンチヒルの街道沿いに住む古くからの住人達だけが、僅かに噂をしているのみであった。
 いわくこの道には街灯が並び、その合間を埋めるように背の高い街路樹が植えられている。また当然、周囲の邸宅には避雷針があった。
 にも関わらず、彼の死を目撃した者によれば――雷はそれらに落ちることなく、間隙を縫うように男を打ったのだという。
 さながら雷が意志を持っているかのようで、その者は得体の知れない恐怖に怯え、しばらく口が利けなくなったそうだ。

 しかしながら、その噂について語る者の誰もが目撃者の話を真面目に信じているわけではなかった。
 都市部から離れたこのあたりではこのような下世話な噂話が数少ない娯楽になる、というだけのことに過ぎない。
 不運な男を襲った雷にまつわる噂も、近いうちにもっと下らないゴシップに取って代わられることだろう。
 ……彼の死が偶然ではないと知る、ただひとりの少女以外は。


「――私は、とても悲しい」


 フレンチヒルの丘の上の教会には、ほとんど知る者のいない地下室がある。
 併設された孤児院の子供達や職員はもちろん、神父ですら立ち入ったことが無いのではないか。
 時代そのものに忘れ去られ、中に淀む空気ごと凍り付かせてきたような部屋。
 その石造りの冷え冷えとした空間に、まだ幼さの残る少女の声が反響した。

 蝋燭の明かりで照らされるその光景を目にした者がいたとしたら、その異様さに絶句しただろう。
 部屋の中心にてその小さな両手を組み、祈りの姿勢をとっているのは銀髪の少女であった。
 質素ながら気品のある、フリルの付いたドレス風の服を纏ったその姿には、清純さと崇高さすら覚えるほどの美しさがあった。
 しかしながらその周囲を取り囲む数々の器具――鮮血の滴る鉄処女(アイアンメイデン)、そして様々な拷問具。
 中世ヨーロッパの残虐趣味もかくやといった拷問部屋の様相を呈すこの部屋は、少なくとも現代の教会の地下にあって良いものではない。
 伝承に残る青髭公が冒涜的な娯楽に興じたような、あるいは血の伯爵夫人が残虐を通して永遠の美を求めたような、
 おぞましく血塗られた伝承こそが相応しく、この清廉そのものの少女にはあまりにも似つかわしくはない。
 しかし、拷問具を濡らすまだ生温かい血は、紛れもなくまだ12歳にも満たないこの少女のものであった。


 “聖・少・女”アイアンメイデン・ジャンヌ――彼女は、かの拷問具の名を冠して呼ばれている。


 とはいえ、この架空都市アーカムにおいて、ジャンヌをその名で呼ぶ者はいない。
 この教会の隣に存在する孤児院で育った、人より少しだけ思い込みが強く、人より少しだけ霊感があるだけの、ただの少女。
 聖・少・女ではなくただの少・女に過ぎないジャンヌを、特別な存在として目に留める者など居はしない。
 いるとすれば、その者はアーカムにでっち上げられた仮初の平穏の、その裏側を知る者に他ならない。

「あの者の霊と話しました。行き場のない無念だけが軋みを上げる、救われぬ魂……その嘆きを聞き届けてまいりました」

 ジャンヌがぎゅっと握り締めたその小さな手が、スカートの布地に皺を寄せた。

「あのような哀しみを生む行いが、裁きであると? お答えなさい、ライダー。返答如何では、わたくしにも考えがあります」

 11歳に過ぎない子供の発するにはあまりにも落ち着いた、人生を投げ打って手に入れたような怜悧な声が響く。
 答える者など、この殺風景な地下室にはいるわけがない――少なくともジャンヌ自身がそう思っていないのは明らかだった。
 果たして、答える声はあった。場違いなほど傲岸にして、神の城にて発するにはあまりに不遜な笑い声が。

「ヤハハハハハハ! そうとも聖・少・女……あの男はこの『神』と謁見する栄誉に与かりながら、悲鳴を上げて逃げたのだぞ?
 私の顔を拝しながらあの怯えよう、大いなる不敬である。ゆえに誅した……私が『法』で、全てが『裁き』だ」

 虚空に雷鳴が響き、迸るいかづちの流れが人の形を取った。
 ――天空一万メートルの雲の国“スカイピア”最高神、『神(ゴッド)・エネル』。
 月にまで届く空飛ぶ方舟を操った逸話により『騎兵(ライダー)』のクラスを得て現界した、ジャンヌのサーヴァントである。
 自身と一心同体ともいえるその男を前にして、ジャンヌは僅かに眉間へ険を寄せた。
 もはや語るまでもない。雷に打たれて死んだあの男は、エネルが戯れに殺したようなものであることなど。

「……詭弁を。貴方はその肉体そのものが宝具であり神秘そのもの。姿を現すことで何が起こるか、分からぬはずはないでしょう」
「なに、脅かしてやっただけではないか。神たる私も、このような形式の『聖杯戦争』は耳にするのも初めてだ。
 心網(マントラ)も生前同様とはいかない以上、この身の力を自ら正しく把握するのもサーヴァントの務めだろう」
「聞き違いでなければ、ライダー。汝の行いは、命をいたずらに弄んで愉しんでいるだけに過ぎない」
「ヤハハハ、我は『神』なり。下々の者どもが私を愉しませるのならばそれも良し、意義ある命ではないか!」
「……もはや語る言葉はありませんね」

 ジャンヌは溜息をついた。
 確かに法は正義によってもたらされ、その正義を形作るのは人の心である。
 しかし、あのような者が好き勝手に振舞うことが、法の秩序であるわけがない。
 少女はそっと己の下腹部に触れた。
 O.S.(オーバーソウル)アイアンレオタードを纏っている状態ならば鍵穴があるその位置に、マスターの証たる霊呪が刻まれている。
 その呪印が僅かに熱を持つのを感じながら、ジャンヌは決然と神を名乗る男に視線を向けた。

「ライダー――英霊エネルよ! アイアンメイデン・ジャンヌが聖・少・女の名において、令呪をもって命じる!
 汝、聖杯戦争と関わりのない罪無き者を、二度とこのアーカムの地にて殺め、傷つけることは許しません!」

 決意を込めた少女の宣言を、エネルは至極つまらなさそうに聞いた。

「馬鹿め。僅か三画のうちの一画を、そのような下らん命令に使うとは」
「何とでもお言いなさい。貴方の行いは本来ならば、我が持霊『法神シャマシュ』が直々に極刑を下すべきものです」
「ヤハハハ……少しでも出来ると思っているのならばやめておけ。貴様がシャーマン――この街における魔術師として規格外だとしてもな。
 神クラスとはいえ、貴様が使役する霊はあくまで霊。私を確実に裁けるとは限らん……それにだ」
「…………」
「気付いているのだろう? 私が現界している限り、貴様の巫力は第一にこの神・エネルを支え続けているのだ。
 その状態で別の霊による最大最速の霊体具現化など出来まい。枷を嵌められた法神ではサーヴァントは殺せん」


 ジャンヌは奥歯を噛み締めた。
 その通りだった。ジャンヌ一人の力では、このアーカムから生きて脱出することなど出来ない。
 ましてや、聖杯を手にして『世界平和』を実現することなど、とても。
 だからこそ、このあまりにも尊大な英霊の力を借りて、戦い抜くしかないのだ。
 分かっている。分かってはいる。それでも、許しがたいものというのは、また確かにあるのだった。

「……まぁ、いいだろう。私は少し下界の様子を見てくるとしよう。青海の街とやらにも関心はないでもないしな」 

 ライダーはそう言い、雷光と共に霊体化した。
 気配が消えたところを見ると、本当に部屋から出て行ったようだ。
 あのライダーには周囲の気配を探る特殊スキルと、電気に姿を変える能力がある。
 その力を駆使して情報を集めるつもりなのだろう。再び神として君臨するために。

 シャマシュの象徴たる『法典』の刻印が刻まれた『銀の鍵』を無意識に握り締めながら、ジャンヌは思う。
 かつての自分ならば、自らの掟に反する者は、あの男と同じように裁いていたのではないか?
 その正義の行いが何を生むのか、それを知らなかったあの頃ならば。

(……やったら、やり返される)

 ジャンヌは自分がこのアーカムに辿り着いた経緯を思い返した。
 正確には、自分が『死に至った』経緯を。
 シャーマンファイトにおいてジャンヌ自身が死の裁きを下したひとりのシャーマン。
 その弟が復讐のため襲い掛かってきた時……ジャンヌは、応戦できなかった。
 シャマシュの力を持ってすればどうにでも出来ただろう。それでも、涙を流すことしか出来なかった。
 震えながら、「ごめんなさい」と詫び続けることしか出来なかった。
 たとえシャーマンでも、肉体の失われたものを蘇生することなど不可能だ。
 そうして人が永遠に失われる寂しさを知ってしまったからこそ……復讐者を裁くことが、出来なかった。

(私は弱くなってしまったのでしょうか……マルコ)

 身寄りのない自分をここまで育て上げてくれた彼は、果たして生きているだろうか。
 もしも彼が、そして共にいた者たちまでも命を落としているならば、それは自分の心の弱さが招いた罪だ。
 その罪を贖うために、自分は果たして何をすればいい?
 聖杯を勝ち取り、世界に平和をもたらすことが償いになるのだろうか。
 それとも、それすら傲慢な考えに過ぎないのだろうか。

 この教会で目を覚まし、聖杯戦争のマスターとして目覚めた彼女に、あの神を名乗る男が告げた言葉が今になって反響する。


 ――人間が神を恐れるのではない。『恐怖』こそが『神』なのだ、と。


 今のジャンヌは、それを頭ごなしに否定する術を失ってしまっていた。
 もちろん、下らない戯言だと跳ね除ける自体は簡単だろう。
 しかし、絶対の法と信じたシャマシュの裁きすら、他の者には恐怖の象徴として映るのではないかという考えが振り払えない。 
 仮に神の本質が恐怖ならば、この世界に仮初の秩序を齎しているものもまた、名状しがたい恐怖だというのか。


 この世界の神とは何か――アイアンメイデン・ジャンヌは、その真実を知らなければならない。


【クラス】
ライダー

【真名】
エネル@ONE PIECE

【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷A+ 魔力B 幸運C 宝具A

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
嵐の航海者:B-
 船と認識されるものを駆る才能。
 軍団のリーダーとしての能力も必要となるため、軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。
 エネルは月への船旅を成し遂げた逸話を持つものの、孤独な航海であったためにランクが低下している。

対魔力:C
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
神性:EX
 神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血であるとされる。
 エネルの体に神霊の血は流れていないにも関わらず、その神の如き力への人々の畏怖のみによってこのスキルを所持している。
 なおランクEXはこのスキルの所有自体が規格外であることを示し、ランクAよりも神霊適性が高いことを意味するわけではない。

心網(マントラ):A
 見聞色の覇気とも呼ばれる、相手の気配を感じ先読みする力。
 気配感知と心眼(真)の複合スキルであり、更に近距離ならば感情を読み取ることも出来る。
 生前のエネルは雷の力と組み合わせ一国全体に展開できたが、聖杯戦争においては大幅に範囲を減じている。

悪魔の実:A
 能力の代償として得た、海に嫌われるという呪い。
 この場合の「海」とは水の溜まった場所を指し、体の一部が浸かるだけでも全ステータスおよび宝具の効果が大きく減退する。


【宝具】
『神の名は万雷の如く(ゴッド・エネル)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:自身
 自然(ロギア)系悪魔の実・最強種のひとつ「ゴロゴロの実」によって得た力。
 自分自身の肉体を文字通り雷へと変換する常時発動型宝具。
 神秘の低い物理攻撃を自動的に無効化し、短距離ならば金属や大気中を伝って電流の如きスピードで移動できる。
 更に変幻自在の雷撃はそのまま絶大な攻撃力を持つほか、金属の加熱や電波操作など多彩な応用が可能。
 高位の神秘による攻撃は受けるため生前ほど無敵ではないとはいえ、まさしく自然の猛威を体現する宝具である。
 最大の欠点は、高ランクの常時発動型ゆえに多大な魔力消費が常に発生し続けること。


『神罰の方舟(マクシム)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~80 最大捕捉:100人
 エネル自身の電力で稼働する空飛ぶ方舟。
 一隻で月まで航行できる能力を持つが、その真価は激しい気流とともに雷雲を放出する機構「デスピア」にある。
 その力により天候をも操作し、広範囲に絶大な威力の雷撃を降り注がせることが出来るだけでなく、
 莫大な雷の力を篭めた雷雲そのものを落とすことで島ひとつを跡形もなく消し飛ばすことすら可能。
 対軍宝具として破格のスペックを持つが、高い神秘を秘めたこの宝具の現界自体に魔力を使うだけでなく、
 最大稼働にはエネルのもうひとつの宝具も全開にする必要があるため、燃費は劣悪の一言。


【weapon】
「黄金の棍棒」
 エネルが常に携行している武器。
 黄金だからといって決して柔らかいということはなく、また電熱を加えて槍状に変化させることも出来る。
 ちなみに正式名称は「のの様棒」である(「のの様」とは観音様の訛り)。


【人物背景】
 スカイピア唯一神。通称「神(ゴッド)・エネル」。
 地上10000メートルの雲の上に浮かぶ島で神を名乗る男。
 物語の8年前に、自らの生まれた空島から神官や兵を率いてスカイピアへ侵攻し首長の座を簒奪、神の島に君臨した。
 それ以来恐怖政治を敷き、入国者を犯罪者に仕立てて裁きの地に誘導するよう義務付け、国民の罪の意識を煽ることで統率していた。
 自然(ロギア)系悪魔の実最強種のひとつ「ゴロゴロの実」の能力を持ち、その強さゆえに自らを全能なる神と呼んで憚らない傲岸不遜な男。
 神たる自分が正すと称してエネル曰く「不自然」な空飛ぶ島を破壊し、自身は伝承に語られる「限りない大地」へ向かおうとしていた。
 しかし電撃が効かないゴム人間であるルフィと戦い、自身の絶対優位を揺るがされ驚愕。その後も激戦を繰り広げたが敗北する。
 そして、戦いが終わった後でただひとり、限りない大地である月へと旅立っていった。
 なお、

【サーヴァントとしての願い】
 神が頂点に君臨するのは当然である。




【マスター】
アイアンメイデン・ジャンヌ@シャーマンキング

【マスターとしての願い】
 世界が平和でありますように。

【能力・技能】
 シャーマンとして極めて高い能力を持つ。

『法神シャマシュ』
 メイデンの持霊である神クラスの霊。古代バビロニアにおいて法と太陽を司っていた。
 ネジなどを媒介に拷問道具や処刑器具を具現化(オーバーソウル)出来る。その速度は光に例えられるほど。
 また強力な治癒能力を有し、死体さえ激しく損壊していなければ蘇生すら可能とする。
 しかし、その霊力の高さゆえコントロールには多大な巫力を要し、魔力消費の多いエネルと契約している状態ではフルパワーの運用は非常に困難。

【人物背景】
 十の法を重んじ正義を実現する為の組織『X-LAWS(エックス・ロウズ)』のリーダーたる聖・少・女。
 常に自ら拷問を受けることでシャーマンとしての力を極限まで高め続けている、作中最強クラスのシャーマンのひとり。
 人類にハンムラビ法典を授けたとされる神クラスの霊『法神シャマシュ』を持霊とし、拷問具を具現化して戦う。
 実際は聖女ではなく、才能に目をつけたマルコとラキストによる洗脳に近い教育によって自身を絶対的存在と錯覚した孤児に過ぎない。
 しかしその事実を知らされた後も自分が祭り上げられただけの存在であることを受け入れ、新たな法のために歩もうと誓った。
 その後はかつての盲目的な正義感に従うのではなく、人の死が何をもたらすのかについて思いを巡らせるようになる。
 だがその結果、復讐者アナホルを前にして完全に戦意喪失。無抵抗のまま殺害され――アーカムに辿り着いた。

【方針】
 聖杯狙い。
 かつては法を絶対と信じ容赦ない裁きを下していたが、今は迷いが生じている。
 そのため、悪と断じることのできない者を殺めることは可能ならば避けたいと考えている。


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