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《芸術/演劇》シュバルツ・バルト&キャスター  ◆HQRzDweJVY




たとえ、忌まわしきあの魔女裁判がなくとも、人というものは闇を恐れる存在である事に変わりは無いはずだ。

人は、その恐れから目を背け、自身が生まれる前の歴史など、意味が無かったことのように振舞っている。

人は、過去の記憶を断ち切って生きていけるものだろうか?

自己の立つ場所が、いったい何時から、どこから繋がっているのかも知らずに……

私は、新聞記者として生きてきた。 真実を掘り出して記事を書く……

しかし、この街では、真実など新聞記者ごときが触れられるものではない事がよくわかった……

それに、本当に知らなければならない真実は、この街の誰も知ろうとしていない。

私は知りたい! 知らなければならない事を……!


  ■  ■  ■



「"包帯男"がやってくるぞ!」
「逃げろ逃げろー!」

学校からの帰り道、"彼女"はすれ違う子供がそう言い合うのを聞いた。

"包帯男"――それは最近この街で流れている噂話だ。
曰く、全身に大火傷を追った男がこの街を徘徊している。
曰く、その男はボロボロのスーツと包帯に身を包んでいる。
曰く、包帯男に出会ってしまったものは二度と帰ってこれない。、
その噂を最初に聞いたのはどこだったか。
友達との何気ない雑談の中だったか、恋人とのメールのやりとりの中でだったか。
確かなのは自分だけでなく、その噂はそこかしこで話題に登っているということ。
ただ"彼女"は元々そういうホラーのたぐいは苦手なのだ。
早く家に帰ろう――思わず歩みを早める"彼女"の目に何かが舞い込んできたのはそのタイミングだった。

――紙切れが舞っている。
それは学校で配られるプリントのような質の悪いコピー紙に印刷された何か。
普通ならばゴミが風に飛ばされてきた、それだけで済む話だ。
だがそれは一枚や二枚ではなかった。
灰色の空を見上げれば数百枚の紙切れが、宙を舞っている。

誰かのイタズラにしては質が悪い。
ここはダウンタウン。
フレンチ・ヒル程ではないが治安もよく、人通りも多い地域だ。
そんな場所で大量の紙をばらまけばどうなるか。
事実、大通りでは急ブレーキの音やクラクションの音が鳴り始めている。
それにしてもこれは一体何なのだろう。少女は地面に落ちたそれを何気ない気持ちで手にとった。

「ひっ……」

だが紙に描かれた冒涜的な絵に思わず悲鳴を上げそうになる。
不気味なタッチで描かれた蛸の化け物の絵には、本能的な嫌悪感を掻き立てられる何かがある。
裏面は裏面でタイプライターで打たれた文字に埋め尽くされていた。
それは思いついたまま書かれた詩のようであり、同時に親身な忠告のようでもあった。
何処の誰がこんなものを――その発生源を追うように視線を上げ、少女は目を見開いた。

女の視線の先にあったのは、ビルの屋上に仁王立ちしている人影。
その人影は瞳を爛々と輝かせ、こちらを見つめているではないか。
だがその姿はまるで! ああ、まるで!

「――包帯、男」

彼女は、恐怖のあまり叫び声を上げた。


  ■  ■  ■


包帯男――シュバルツ・バルトは彼女を見ていた。
いや彼女だけではない。空を見上げるアーカムの住人、その全てを睥睨していた。
少女と同様にヒステリーを起こすもの。
冷静なまま周囲のパニックに対応しようとするもの。
こちらを見あげたまま呆然としているもの。
食い入るようにビラの文字を見つめているもの。
――その全てを、二つの瞳で見つめている。
その目に浮かぶ感情は常人には図り知れない。
だが全てを燃やし尽くすような熱量がその目に宿っていることは確かだった。

「気は済んだかね、マスター?」

そんな男に語りかけるのは金髪の美丈夫だ。
マントを翻すその姿は堂に入っており、まるでどこかの舞台役者のようだ。
その両目は固く閉じられているが、迷いのない足取りでシュバルツへと歩み寄る。

「気が済む? 何の冗談だキャスター。
 まだ何も始まってはいないさ。何もな! これはまだ幕が開ける前の前座にすぎん」
「確かに。演者もまだ揃っていない故に此度も開演まではまだ至らず……といったところか」

包帯男とマントの男。
2人の芝居がかった言動も合わさるとビルの屋上がまるでどこかの舞台のようだ。
そんな中、キャスターと呼ばれた男が口を開く。

「しかしこれで確信した。やはり今の私は変質してしまっているようだ」
「ほう、それはどういうことかね?」
「私とこの舞台(まち)の相性は最高にして最低なようでね。
 我が宝具は噂を糧として発動するが……この街はすでに過剰なほどの噂で溢れかえっている」

曰く、ミスカトニック大学図書館の奥底には怪しい魔導書が眠っているらしい。
曰く、ダウンタウンの方ですりガラスをひっかくような奇妙な鳥の鳴き声を聞いた。
曰く、リバータウンに来る魚のような顔つきをした漁師にまつわる奇妙な昔話――エトセトラ、エトセトラ。
そう、この街は魔女狩りが行われていた頃から噂話で飽和している。

「ありえないことだが、この街に"宝具が飲まれかかっている"。
 本来なら一夜限りとなるはずの舞台も、幾夜にも及ぶものになるだろう」
「"あり得ない事こそがあり得ない"……このアーカムならば何も不思議ではないな。
 この醜い、冒涜的な街では狂気は現実を容易く侵すのだから」

街を見下ろすシュバルツ。
その声には怒りとも苛立ちとも付かない感情が滲んでいる。

「――重ねて私自身も本来のあり方からは逸脱している。
 今の私は"キャスター"という"役"と"この顔を持った一介のサーヴァントでしかない」

本来ならばキャスターに"形"はない。
流れる噂を利用して、己の全てを変質させる形なき災厄、――それこそが本来のキャスターの姿だ。
だが固定された姿を持つ現在、その力は減退している。

「誰が書いた脚本かは知る由もないが――コレでは舞台監督の看板を返上せねばなるまい。
 情けない話だがこの様では端役(エキストラ)を監督することも出来まいよ」

キャスターのその言葉が意味するのは宝具の暴走。
サーヴァントにとっては致命的とも取れる発言だ。
だが――包帯の怪人は口の端を大きく釣り上げた。


「私にとって問題はない。
 むしろ騒ぎは大きければ大きいほど、衆目の目を集められる。
 だが君はどうかねキャスター。君の真名からすれば今の状況は不本意だろうに」
「……確かに。千差万別の形なき現象であることこそがタタリ。
 "キャスター"という形に押し込められていることに不満がないわけではない」

だがキャスターも主人と同じように笑みを形作る。

「……だが元より私にとって"聖杯戦争"という舞台は噂に聞けど決して登ることのなかった外様の舞台だ。
 なればこの夜は"キャスター"という役を演じてみせるとしよう。
 ――無論、これを仕組んだ脚本家には相応の批評を叩き付けるつもりではあるがね。
 無粋ではあるが、その程度は脚本家として覚悟してもらうとしよう」

キャスターの答えにシュバルツは満足気に笑う。

「――ならば良い。君とは仲良くやっていけそうだ。
 それに脚本に不満があれば変えてしまえばいいだけの話ではないかね、キャスター」
「ほう? それはとても興味深い発言だな」
「確かに聖杯戦争にも大筋の脚本はあるだろう。
 だが細かい演技は全て演者に委ねられている。即興(アドリブ)を入れたところで文句は言われず、むしろ歓迎されるべき行為だ。
 そして優れた即興は時に物語の大筋を変えることもある」

シュバルツは懐から新聞を取り出す。
その三面記事の隅にはマンション火災の記事が乗っている。
そしてその行方不明者欄の中に"マイクル・ゼーバッハ"という新聞記者の名前もある。
それは『この街に潜む何かを追って』消えてしまった男の名だ。

「この街の人間全てが知らなければならない……この街の本当の姿を。
 私が知り得た真実を!」

シュバルツが愛用のジッポライターで火をつけるとあっという間に燃え尽きる。
それはまるでこの世から"マイクル・ゼーバッハ"という存在を消し去る行為のようですらあった。

「ここでは誰も彼も"聖杯戦争"という舞台で踊る演者の一人に過ぎない。だが!」

灰色の空を見上げ、両手を大きく広げる。
まるで演者が舞台の上で大げさに身体を動かすように。

「見ているか! この街を睥睨する邪神どもよ! この即興劇の唯一にして最悪の観客たちよ!
 私は真実を明らかにしよう! この街の、この世界全てに貴様らの存在を!」

その声に応えるものは誰も居ない。
だがシュバルツの瞳は確かに"誰か"を見つめていた。


  ■  ■  ■


真実を知ろうとすることは罪悪なのか。

それとも、己がなにについて恐怖しているかを探求することが罪なのか。

だが、それすらも捨てた時、我々には何が残されるだろう?

恐怖とは何か、その本来の性質を忘れ去った人間に、どんな価値があるというのか。

それは、我々という矮小な生き物にとって必要なものなのだ。

人が恐れることをやめた時、人という種は袋小路に入り込む。

ただ滅びるのを、観照もなく待つだけの哀れな存在となり果てる。

考えよ。邪神の庭に囚われた人々よ!

この愚かなる茶番劇が、これからも永遠続くのを望むのでないならば。


署名:シュバルツ・バルト



【マスター】
 シュバルツ・バルト@THEビッグオー

【マスターとしての願い】
 この街に"真実"を知らしめる。
 そのために手段は選ばない。

【能力・技能】
  • ドミュナス
 ザ・ビッグシリーズを操縦することができる資格者。
 ただしビッグデュオを持たないため、意味を成さない技能となっている。
 だが人々の口に"空を飛ぶ紅い巨人"の噂が立ち上るとき、その力は真実となる。

  • 狂人
 彼は"真実"にたどり着いてしまった。
 故に狂った。すべてが狂った世界では真実は狂気そのものだからだ。
 同レベルの精神汚染スキルを持つサーヴァントと意思疎通ができる。
 またすでに発狂しているため、正気度判定を必要としない。
 ――だがそれ故にいつでも物語の表舞台から姿を消す可能性がある。

【人物背景】
 ロジャー・スミスの前に現れた全身に包帯を巻いた怪人。
 その正体は新聞記者『マイクル・ゼーバッハ』。
 独自にパラダイムシティの真実に迫り、そして発狂した男。
 ――知ってはならない真実を知ってしまった男の成れの果てである。


【クラス】
 キャスター

【真名】
 ワラキアの夜@MeltyBlood

【パラメーター】
 筋力:C 耐久:EX 敏捷:C 魔力:A 幸運:E 宝具:EX

【属性】
 混沌・悪

【クラススキル】
  • 道具作成(影):C--
 魔力を帯びた器具を影で作成可能。
 器具だけでなく人物の動きをする人形ですら作成可能だが一瞬で消失する。
 加えて彼が作成できるのは人々の噂に立ち上ったものだけである。

  • 陣地作成:B-
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 "工房"を上回る"神殿"を形成することが可能。
 キャスターの場合、固有結界そのものが"神殿"に該当し、アーカムを飲み込むほど強大である。
 だがアーカム側からの干渉によってランクは大きく下降している。

【保有スキル】
  • 精神汚染:B
 精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。
 本来ならば同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。
 ただしズェピアの殻をかぶっているため、ある程度の意思疎通が可能である。

  • 吸血鬼:A
 人ならざるモノ。夜の支配者。
 太陽が昇っている時間帯は筋力・耐久・敏捷の各ステータスにマイナス補正がかかる。
 逆に日没以降は各ステータスに補正がかかる(表示ステータスは補正済みのもの)

【Weapon】

【宝具】
  • 固有結界"タタリ"
 ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1000 最大捕捉:∞
 宝具にしてキャスターそのもの。噂を操作し、都市伝説を現実にする固有結界。
 都市伝説に制限はなく、死んだはずの人物と遭遇したり、突如力を手に入れたりと、噂の流れるコミュニティの性質によって大きく変化する。
 だがどんなものでも最終的には発生源の住人を皆殺しにするものに成り果てる。
 幾つもの噂話(シナリオフック)を持つ架空都市アーカムとの相性は最高レベル。
 だが相性が良すぎるがゆえに、本来なら一夜にして街を飲み込むはずのタタリは"アーカム"からの干渉を受け、完全発動に至ることが出来ない。
 更に本来無形であるはずのキャスターがサーヴァントという殻に当てはめられていることも加わって、タタリの一部が制御を外れて行動している可能性がある。

【人物背景】
 死徒二十七祖の第十三位である吸血鬼で、『タタリ』とも呼ばれる、殺劇の怪奇現象。
 元々は『ズェピア・エルトナム・オベローン』という優秀な錬金術士であった。
 だが研究の果てに『世界は終わる』という"答え"を知ってしまい、吸血鬼になってまでその未来を回避しようとしたが失敗し続ける。その果てについには第六法と呼ばれる奇跡でそれを覆そうとしたが失敗し発狂、"タタリ"という現象となった。
 ――求めてはならないものを求めた男の成れの果てである。

【サーヴァントとしての願い】
 この聖杯戦争という舞台を仕組んだ脚本家に"批評"を叩き付ける。

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