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もうひとつの戒名問題

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匿名ユーザー

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もうひとつの戒名問題


 以上の戒名問題は「戒名料問題」ともいうべきもので、お金がいるいらないという論争に終始しがちであることは誠に残念です。これを機にその背景にあるより本質的な諸問題の解決への糸口が模索されるべきだと思います。


 さて、私が問題としたい戒名問題は、「戒名料は妥当か」ということではなく「戒名は誰が授けるか」という問題です。今、以下のような問題がわりと当たり前に起こっています。


[ケース1]都会で家族が亡くなり、葬儀屋さんの紹介したお坊さんに戒名をつけてもらいお葬式をしてもらった。ところが後で郷里の菩提寺に納骨してもらお うとしたところ、はじめ菩提寺は筋が通らないとして納骨を拒否した。結局戒名をつけなおすことで解決したが二重に葬式費用がかかってしまった。葬儀屋さん の紹介したお坊さんと菩提寺との宗派は同じだったのに、なぜ戒名をつけなおさなければならないかわからない。


[ケース2]都会で家族が亡くなり、葬儀屋さんの紹介したお坊さんにお葬式をしてもらった。ところが位牌を見たら生前の名前が書いてある。「菩提寺につけ てもらってください」とのことだったが、新家であるため菩提寺はまだなかった。本家筋などでいろいろ探しているうちに、四十九日も過ぎてしまった。戒名な しではさぞ不安だったろうと思うと、戒名もつけないで仏式の葬式ができるものか疑問だ。


この問題について多くの僧侶はこのように答えると思います。


 檀家は菩提寺に対して、その寺が属する宗派の教義と儀礼を信じて宗教儀礼を依頼・履行し、一方菩提寺の維持にかかる費用を負担し、寺門の興隆に努力する という役割をつとめます。これに対して菩提寺は檀家への宗教儀礼と教化を正しく責任をもって履行し、檀家とともに寺門興隆に努力していきます。そのため、 戒名は菩提寺がつけて菩提寺の責任において葬式を行うべきであり、菩提寺の了承を得ないで他の寺院に儀礼を依頼するのは筋が通りません。[ケース1]で は、戒名は最終的に菩提寺の過去帳に記入され菩提を弔ってもらうことになる以上、菩提寺以外でつけられた戒名は不適切であると考えられます。[ケース2] では、菩提寺が定まらない以上戒名がつけられないのは致し方のないことで、速やかに菩提寺を探して入檀するべきだったと思います。 もしも、菩提寺が遠隔地であるため来てもらえないとしても、必ず最初に菩提寺に相談して、戒名をつけてもらうなり菩提寺からしかるべき僧侶を紹介してもらうなりするべきです。
 これを読んで「なるほど」と思いましたか?それとも納得できませんでしたか?この説明の大前提になっているのは寺檀制度です。寺檀制度があるからこそこの 説明が妥当であるといえるのです。  確かに寺檀制度は長く日本仏教を支え育ててきました。たとえこれが江戸幕府がキリシタン弾圧の手段として制定したものであるとしても、そもそも日本人の 中にこのような需要があったことは確かであり、その意味では評価されるでしょう。ちなみに1700年ころに徳川幕府が制定した『御条目宗門檀那請合之掟 (ごじょうもくしゅうもんだんなうけあいのおきて)』に、以下のように記されています。

「頭檀那なり共、祖師忌・仏忌・盆・彼岸・先祖命日に絶えて参詣仕らざる者は判形をひき、宗旨役所へ断り、きっと吟味を遂ぐべき事」 (檀家でお寺の行事に全く参加しない者はマークするので役所に届けること)「死後死体に剃刀を与へ、戒名を授け申すべき事、是は宗門寺の住持、死相を見届けて邪宗にて之なき段、慥(たしか)に受合の上にて引導す可き也。能々吟味 を遂ぐべき事」 (檀家で死者が出れば菩提寺の住職がキリスト教などに入信しないよう注意しつつ戒名を授け葬式を行うこと)
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