画面の映し方による演出効果のこと。
ここではカメラの動きについて解説する。
その他のカメラワークについては、フレームサイズパースを参照。

映像の教科書にも載っている。
映像の人はテストにも出るので、覚えとくと後で多少楽だが、実写とはやや違った用法も多いので注意(これについては余談参照)。


FIX

フィックス。
カメラを動かさない事。普通はこれ。

PAN

パン。フランダースのパンじゃない。
カメラの位置を動かさずに向きを変える事。
特に縦にカメラを振る事を「縦PAN」「TILT(ティルト)」などと言う事もある。正確にはPANは横の振りのみを指す言葉だが、最近は一概にPANと言ってしまう事が多い(アニメ界では特に)。

余談だが、語源は「パノラマ」。
「PANORAMA」は、イギリスの画家ロバート・バーカーによる造語。そもそもは1792年に氏が発明した絵画展示の形態に名付けたものであり、円形の建物の壁全面に風景画などを描き、展望台を設置して鑑賞するというものだった。

QUICKPAN(Q.PAN),フラPAN(フラッシュPAN)

直訳で「速いPAN」。
SWISHPANとは違い、単純に速いPAN。
誰かが登場する際に足元から前身を映すように使われたりする。
後ヅメにするといい感じ。

SWISHPAN

直訳で、「ヒュっというような(素早い)PAN」。
そのまま次のシーンへつないで、前後のシーンの距離感を表現したり、映像のテンポを軽快なものにするのによく使われる。
上記のQ.PANと似ているが、こちらは映像がブレるほど早く振る。
アニメでは流背を上に重ねフェードイン・アウトさせる事で表現する。


ジワPAN

ゆっくりPANすること。
2ちゃんねるで見かけただけの単語なので、伝わらない可能性アリ。

付けPAN

Follow、Follow PANとも言う。
実写映像で、被写体を追いかける(つける)ようにカメラを動かす事。
アニメーションでは、大判の背景と同じサイズの紙に作画したものを同時にスライドするか、通常サイズの紙にその場で動いているように(足踏みなど)作画したものと大判背景のスライドの組み合わせで表現する。
全車を付けPAN、後者をFollowまたはFollow PANと呼ぶ事が多いようだが、アニメでしか使われない半ば意味不明な造語なため、プロでも認識がいい加減な事があるらしい。

ズーム

引いたカメラからアップになったり、アップから引いたりする事。
アップになるのをズームイン・引くのをズームアウトと言う。
単に「ズーム」と言う場合は、大抵ズームインの事だと思う。
レンズの効果によるものなので、カメラを近づけたり遠ざけたりするのと違い、ただ画像を拡大縮小したような動きになる。

驚いたり何かに気付いた表情をズームインで見せる演出を、香港映画でよく使われた事から「香港ズーム」と言うらしい。

トラックアップ・バック/ダウン

カメラが実際に近付いたり遠ざかったりする事。
近付けるのを「トラックアップ(T.U.)」遠ざけるのを「トラックバック(T.B.)/トラックダウン(T.D.)」と言う。
この場合はズームと違いカメラと被写体の距離が変わるので、作画や3DCGで動かす必要がある。
アニメではデフォルメ表現として撮影による画像の拡大縮小やスライドなどを併用して表現する事もあるが、パースのズレがバレないように気をつける必要がある。

アニメの撮影においては、3DCGを使わない限りズームもトラックアップも同じであるので、演出のトラックアップ/バックと撮影のトラックアップ/バックを使い分ける必要がある。

予断ながら、実写の場合はドリーという台車を使用する事もあるため、その場合はドリーイン・アウトという用語も使うが、アニメではあまり使われない。

逆ズーム/ドリー効果

カメラを遠ざけながらズームイン、または近付けながらズームアウトすると、パース変化によって独特の映像効果になる。
人間の目やカメラではありえない特殊な絵になるため、その場面を印象付けるのに使われたりする。

映像史的にはアルフレッド・ヒッチコックの実写映画『めまい』で初めて使われた。
ちなみにこの時は、登場人物の一人が協会の屋根から落ちそうになり、必死にしがみつきながら思わず下を見た時の見た目による恐怖感を逆ズームで表現している。

映画『ジョーズ』で使われて有名になったためジョーズ効果とも呼ばれる・・・と教科書に書いてあったんだけど、ネットで調べても出てこないなぁ・・・上記『めまい』から「めまいズーム」という呼び名もあるそうだがホンマかいな。
『ジョーズ』撮影時、サメの模型を動かす機械が壊れてしまった際、逆ズームによってサメが近付いているように見せかけて誤魔化したという話も聞いた事があるが、調査中。警察署長の動揺した表情のアップを逆ズームで見せたカットはあるらしい。

フェアリング

PAN等の最初や最後を加速・減速させる事で、カメラを自然な動きにする処理。

映像の人向けの余談

アニメ業界ではカメラの動きが実写よりもいい加減なため、カメラワーク関係の用語がデタラメ。
例えば、「PAN」という言葉はそもそも横向きのカメラの振りのみを指す言葉なのだが、アニメ業界ではまとめて「PAN」と呼んでいる。
また、「付けPAN」という言葉は、実写では全く使わない。

なので、映像のテストではこの項目を鵜呑みにしない方がいい。
最終更新:2011年02月25日 15:55