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魔術師とスクールアイドルの夜 ◆YD4qd4xJMs





夜の森が平気な人間は、あまりいないだろう。
あの通信の内容が確かならば、ここは放射能によって生物が全て死に絶えている静寂の森。
時折吹く風によって、葉の擦れる音がするだけで、後は自分が踏みしめる足音だけ。
彼女、園田海未は暗い森の中を一人歩いていた。

(こ、怖すぎます)

自分の記憶が確かならば、いつもと同じようにμ'sの仲間達との練習を終えて帰宅し、
パジャマに着替えて、眠ったはずである。
それが気づけば、狭い球の中に入れられ、放射性物質に汚染されたという島にいるのだ。
おまけに、一定時間ごとに核爆弾が起爆するとのこと。
古典的に海未は頬をつねり、夢かどうか確かめてみたが………痛かった。
首に付けられている首輪の存在もあり、紛れもない現実であることに絶望した。

ゆっくりと足元や周りを探りながら海未は歩いていく。
さて、何故彼女は夜の森を歩いているのか?
彼女は実のところ、日が昇ってから、
通信にあった島の中心にあると言う防災センターに向かうつもりであった。
放送を聞いた限り、24時間で首輪の機能は失われるらしい。
助かるには、センターで放射能から身を守らなくてはならない。そう、海未は考えていた。

(ですが、あそこで火を起こしているのは誰でしょうか?)

つい先ほど、自分のバックの中身を確認し終わり、何気なく森の様子を体操座りで見ていた。
すると、凡そ五百メートルほど先だろうか。
木々の間で火が揺らいでいるような灯りが見えたのだ。
確認した名簿の中には、穂乃果を始めとしたμ'sの仲間達の名前もある。
もし、あそこで灯りをともしている人物が穂乃果達なら………
そんな期待をしつつ、海未は夜の森をゆっくりと歩いて近づいているのだ。

「きゃっ!」

近くの木から何かが飛びだした。
慌てて、その場で海未はしゃがみこむ。
ホゥーホゥーと、鳴きながら灯りの方へと飛んでいく何か…どうやらフクロウのようだ。
安心してから、彼女の目にうっすら涙が浮かぶ。
だが、同時に海未はある違和感に気づく。
なぜ、今のフクロウは放射能の影響を受けて動くことができたのか?
恐る恐る顔を上げてみる。
当然、フクロウは飛びさったあとで、目指していた火の灯りが見えるだけ………では、なかった。

「待っていたよ、君もこの島に連れてこられた内の一人だね?」

いつの間に目の前にいたのだろうか。二メートルほど先に赤い目立つスーツを着た男性が立っている。
ハーフだろうか?両目は碧眼だ。
彼が右手に持っていた松明の明かりで、その風貌を確認することができた。

「多分そうですけれど、あの…あなたは?」

海未は立ちあがり、声をかけた。
知らない男性ではあったが、彼の柔らかな頬笑みによって、
警戒心はあまり抱かなかった。

「私は遠坂家五代目当主の遠坂時臣という。君の名前を伺ってもいいだろうか?」
「あ、私の名前は園田海未といいます。その、音ノ木坂学院という高校の2年生です」

仰々しい肩書が付いていることに少々海未は委縮する。
そんな彼女の様子を気にしないで、遠坂時臣は彼女について考察する。

「ふむ、女子高生とは…どうやら私のような人間以外にも、ここには多種多様な参加者がいるようだ」

新たな発見を得た喜びから、時臣は僅かに抑揚を上げつつ語った。

「参加者とは…いったい何のことでしょうか?」
「知りたいかね?まだ私も全ての現状を理解はできていない。が、調べて分かったこともある」

ミステリアスな雰囲気のする時臣の話し方に、海未は次第に引き込まれてゆく。

「できれば、君と情報交換をしたいのだが構わないだろうか?」

時臣は松明を持っていた右手を後ろに向け、奥に見える火のある場所へと、
彼女の視線を誘導しながら問いかけた。どうやら海未が目指していた灯りは、彼の拠点のようであった。

「えっと…遠坂さん、こちらこそよろしくお願いします」

初めて出会えた同じ境遇の人。
ほっと一息ついた表情で、軽くお辞儀をして彼の誘いを了承した。

「ありがとう。園田嬢」
「…普通に海未と呼んで貰って結構ですよ」




連れられてきた場所は、森の中でも少し開けた空間だった。その空間の中心には焚き火があり、
このような状況でありながらも、海未はキャンプに来ているかのような場違いなことを思った。
地面に倒れていた倒木に座る海未、焚き火を間に挟み彼女の反対側に立つ時臣。
今更だが、海未は一度落ち着いたことで、かなり年上の男性と一対一で対面している状況に緊張する。

(こんなとき、穂乃果なら自分から話しかけられるのでしょうが………)

自分の友人を思いつつも、海未はなかなか自分から時臣に声を掛けることができず、悶々とする。
すると、彼女から見て背を向けていた時臣が振り向き、語りかける。

「さて、まず君は魔術について、どの程度聞いたことがあるだろうか?」
「ま、まじゅつ。ですか?」

正直戸惑った。もしかして遠坂さんなりの場を和ます冗談………では、ないようだ。目が真剣である。
スクールアイドルとして活動していることを除けば、一般的な女子高生である海未は反応に困った。

「ええっと、漫画やアニメに出てくる想像上の技術のことでしょうか?あ、もしくはオカルト的な…」
「いや、もう結構だ…秘匿が正しく為されているとわかっていても、頭が痛い」

時臣は、こめかみに手を当て嘆かわしいと言わんばかりに顔を歪める。
女子高生に聞いておいてこの態度である。その動作に不満げな表情の海未、
ふうっ。と、一息吐いた時臣は改めて彼女へと視線を合わせた。

「海未。これから話すことを理解する為には、まずは私のことを知ってもらう必要がある」

先ほど、森の中で使っていた松明を再び手に時臣は持つ。すでに火は消されていた。
いったい何をするのか?疑問に思う海未。
時臣は目を閉じ、何か呟いた様子であったが、彼女の耳にはなんと言ったのか、聞き取れなかった。

「えっ!?」

そんな彼女の目の前で、一瞬で松明に火が灯った。
松明の火は次第に強まり、時臣の頭を軽く越す。
そして、まるで意思を持った炎のように、時臣の体を回り始める。
時臣が、松明ごと焚き火の方へと向けると、
釣られるように回っていた炎は勢いよく焚き火の中へと飛び込んで行く。
一瞬、焚き火が激しく燃え上がった。

(今のは…火を操った…?)

海未は目の前でおきたことに驚きを隠せない。

「にわかには信じ難いだろうが、今見せたのが魔術のほんの一端。私は魔術師と呼ばれる人間なのだよ」
「魔術師………」

放心状態の海未に、時臣は松明を置き、魔術の説明を始める。
この島へと着いてから時臣は、魔術で強化した方位磁針を使って周辺の警戒をしていた。
凡そ1キロメートル程度にいる生物に反応するようにしたのだ。
だが、自身が得意とする宝石等の、魔術に使える触媒が無い状態の為、
自分の魔術回路と魔術刻印による魔力の精製で、魔術の行使をしなければならなかった。
時臣は数分おきに発動させることで、魔力の消費を抑えつつ周囲の様子を探っていた。

そして、反応があったのが海未であった。
ただ、この時点では、どういった生物であるのか詳細は分からなかったため、
放射能によって死んだフクロウの遺骸を利用して、これを使い魔として海未の下へと放った。
視覚の共有で監視を行い、海未が自分の方へと向かっていることが分かったので、
途中で人目につかなくする結界を張った上で待ち伏せていたのだ。

「ずっと、見られていたのですか…」
「何か不都合なことでもあったかね?」

いや、監視されていい気分のする女性はいないだろうが、
自分の魔術を語り聞かせることに少々熱くなった時臣には、察すことができなかったようだ。

「何でもありません!遠坂さんが魔術師だということは納得しました」
「うむ、海未は理解が早くて助かるよ」

満足した様子の時臣は、海未から見て右手にある金属球に近づく。
火の灯りに照らされることで初めて金属球の全体像が見えた。
それは思ったより大きく、周りの風景から浮いた異質な存在であった。
これはおそらく時臣が入っていた物のようである。
時臣は、左手でその球へと触れながら語り始めた。

「まず私が試みたのが、魔術による金属球の解析だ」

解析ということは、魔術を使って構造を読み取るということだろうか。

「魔術的に調べた限り、この金属製の球体には我々を転移や召喚、あるいは記憶操作を施すといった魔術は仕組まれていないことがわかった」
「…えっと、それはつまりどういうことでしょうか?」

海未は話を促す。

「つまり、この金属球には魔術の痕跡はなかった。参加者を入れるための、単なる入れ物に過ぎないというのが私の推測だ」

そこまで話を聞いても、ああ、そうかもしれませんね。と海未は思うくらいだった。
正直、あの通信にあった核、とか放射能が本当なのか?そちらの方が重要に思っていたからである。
しかし、時臣は金属球を擦りながら、自分の調べた成果を話すことに夢中な様子である。
ひょっとして、聞き役が欲しかっただけではないかと思う海未であったが、
次の質問で意識が変わった。

「では海未、質問だ。我々は“どうやって”この金属球に入った?」

どうやって?この金属球が単なる入れ物であるとするなら、
海未は自分から入った記憶など、もちろんありはしない。だから答えは、

「それは“誰か”が私達を入れたのではないでしょうか?この球の中に………あれ?」

一瞬、海未の中でカチリと何か意識がズレた気がした。
さっきまで、穂乃果達に会いたい気持ちや、生きて帰りたい気持ちで一杯だった心に、
別の視点が生まれた。いや、違う。目を背けていたことに気付かされたのだ。
海未の様子を観察するように目を向ける時臣。

「現状を正しく認識できたかね?」
「あれ、そうですよね……誰かって…いったい誰ですか?私、何をされてこの島に………」

寒気がした、なぜ、こんな簡単なことに気付かなかったのだろうか。

「無理もない、人は無意識のうちに理解が及ばないことから逃れようとするものだ」

決め手となったのはあの通信だと、時臣は言う。

「分かりやすい現状の説明と生存のための行動指針の提示、だが、その裏には参加者達から余裕を奪う思惑がある」
「余裕ですか?」
「生き残ることに必死にさせ、そもそも何故この島にいるのかという根源的問題から目を背けさせようとしているのだよ」

ごくりと、海未は唾を飲み込んだ。
時臣の語る推測が自分の状況にピタリと嵌まっていたからだ。
私達をこの現状に引き入れた何者かの思惑が、この島には存在している。
それが、私達の意志など関係なくこの金属球にいれ、この島へ連れてきたと、時臣は補足した。

「いいかね、私達は断じて、災害に巻き込まれただけなどという“生存者”ではない。何者かの思惑によってこの島へと連れてこられた“参加者”なのだ」

焚き火の中の炭が燃え尽き、甲高い爆ぜる音が響いた。
ここで一息ついた時臣は、海未の様子を観察しながら、
彼女を中心にゆっくり時計回りに歩きながら話を続ける。

「そして、魔術師である私からすると、この何者かはとても興味深い存在だ」
「興味深いですか?」

海未とは対照的に時臣は興奮した様子である。

「ああ、そうだとも。なぜなら、ここに来る直前の記憶では、私は殺されたはずなのだよ」
「えっ!?こ、殺されたってどういうことですか!?」

今度の発言には純粋に驚いた海未。
どうやら時臣は、ここに来る以前は、聖杯戦争と呼ばれる儀式に参加していたのだという。
概要を説明してもらったが、海未は恐ろしいと感じた。
本当にそんなことが日本で起きていたのか、と。
その聖杯戦争の終盤で彼は魔術の弟子に…裏切られ、
刺された所で意識を失い、気がつけばここにいた。ということらしい。
何といったらいいのか分からない海未だったが、
時臣の「君も死んでここに来たのかね?」という発言は、断固否定した。

「じゃあ、遠坂さんはこの島に連れてこられて………生き返った、ということになるのでしょうか」
「おそらくそうだろう。肉体、魂を含めた完全蘇生など最早魔法の領域だ。それを成した存在とは…矮小の我が身では測ることすら適わないだろう」

しかし、自分がその成功例だというのに、何も分からないというのは、
魔術師として腹立たしい。と、時臣は言う。
やはり、その観点は一般人からするとおかしい。そう海未は思わずにはいられなかった。



「…なるほど、君と同じ高校の友人達も、巻き込まれているとは…心中穏やかではないだろう」
「はい…私は遠坂さんと出会えて幸運でしたが、みんなも無事だといいのですけれど…」

あれから海未が友人を探していることを時臣に伝えると、
「なぜ、友人がこの島にいると分かったのかね?」と聞いてきた。
不思議に思いつつも、彼女はタブレットを操作し、名簿を見せると時臣はひどく驚いた様子だった。
………ひょっとして、時臣さんは機械が苦手な人かもしれない。そう思うと、海未はちょっとおかしかった。
魔術師で一見すると完璧人間に見えるこの人にも苦手なことがあるのだと、気が楽になる。
名簿を慣れない操作で動かしながら、時臣は確認していく。
すると、その手が止まった。
おそらく時臣さんの関係者ではないだろうか。海未はそう当たりをつけた。

「これは………まずいな」

名簿から目を離した時臣は鋭い目つきでそう呟いた。

「何か名簿を見て分かったのですか?」
「うむ、私が考えるに、この島の参加者達は大きくニ種類に分けられる」

右手の人差指を伸ばして、一つ目を示す時臣。

「一つ目は“生存”を第一に行動する者達だ」
「防災試験センターで救助を待つ人達ということでしょうか」

確かに、あの放送を聞いた人間ならまず考える選択肢であるといえるだろう。
それに島の中央ならば、仲間たちに遭遇する可能性が高くなる。

「大多数はそうだろう。ただ一部の人間は港や軍事基地等で、船などがあれば、独自にこの島を脱出しようとするかもしれない」
「なるほど」

問題なのはもう一つのグループということだろう。
右手の中指も伸ばして、二つ目を示した。
時臣はゆっくりと口を開く。

「二つ目は…自分の“願望”を第一に行動する者達だ」
「願望、ですか?それは、生きてこの島を出たい。ということではないのでしょうか?」

違う。と、時臣は否定する。
名簿を見て確信した者達を、時臣は指差した。

「キャスターとライダー、そしてバーサーカー。彼らは本来なら聖杯戦争にサーヴァントとして呼ばれる英霊達のクラス名だ」

先ほど聞いた聖杯戦争の情報を思い出しながら、
海未は名簿の名前を凝視した。

「最も重要なことは、英霊にとって、生きることよりも優先される願望をそれぞれが持っている可能性が高いということだ」
「生きることよりも優先される願い…ですか?」

大雑把にしか英霊と呼ばれる存在について、海未は理解ができていないが、
かつての英雄であるならば、逆に、私達を助けてくれないのか。
純粋にそんな感情を抱いていた。

「例えばだ、第四次聖杯戦争において召喚されたキャスターは、自分たちの存在を一般に隠そうともせず、児童の誘拐・殺人などの凶行を繰り返した」

断じて許されない行いだ。と、時臣の表情は苦虫を潰したかのように歪む。
海未もその情報に驚く。時臣が危惧しているのはこのことであった。

この島にいるとされるサーヴァントが、
自身の経験した第四次聖杯戦争に召喚されたサーヴァントであるという確証は時臣にはない。
しかし、キャスターを含め、サーヴァント達にはそれぞれが叶えたい願いがあって、
聖杯戦争に招かれるという共通点がある。
他者の魔術師と英霊を倒してでも叶えたい、死後の願い。
この島で彼らが行動を起こす際に基準となるのは、核や放射能から逃れるということではなく、
その願いにあるはずだと、時臣は判断した。

「海未。バーサーカーとはどんなクラスなのか想像がつくだろうか?」
「言葉どおりの意味なら狂戦士といった意味でしょうか」
「その通り、聖杯戦争においてバーサーカーとは、狂化のスキルによって全体の能力を上げる代償に、英霊の理性を狂わせ、ただ戦いのみに特化させたクラスだ」

理性が狂っている?
それはつまり、本能のみで動く存在ということなのだろうか。

「間違いなく危険な存在だ。普通の人間はおろか並みの魔術師では、襲われれば殺されるという選択肢しかない」
「そんな人物がこの島にいるのですか………」

海未にもようやく時臣の言いたいことがわかった。
つまり、この島には生存を求める者達とは別に、他者を害する可能性のある者がいるということだ。
タブレットに表示されている名簿の中の知らない人物達。
この人たちが何を考えて行動しているのか。
もし、μ'sの仲間達が、悪意ある人物に出会っていたとするならば………
想像すると、海未の不安はこれまで以上のものとなった。




時臣は焚き火に追加の薪を入れた。
火が爆ぜる音が再び鳴り、それが今の沈んだ気持ちの海未には少し心地よかった。

………色々な情報を聞いた。
私たちをこの島へと連れてきた何者かの思惑。魔術。参加者の中に危険人物がいること。
常人ならば尻込みしてしまうような事態に置かれていることを認識してなお、海未は絶望していなかった。
それは、スクールアイドルとして諦めず努力を続けた経験のおかげかもしれない。
事の大きさは違えども、決して自分が望んだ状況でなくとも、挫けたくはない。

(今、穂乃果は何を考えているのでしょうか…)

彼女の持ち前の明るさと行動力が、今、無性に羨ましく感じた…みんなに、会いたい。
一人ぼっちは嫌だった。結局、彼女の一番したいことは決まっている。
俯いていた顔を上げる。海未の覚悟を決めた表情を見て、時臣は感心したと同時に、望郷の念を抱く。

(高校生となれば凛も、きっとこんな表情をする日が来るのだろう)

魔術師である時臣は、この島からなんとしても帰還を果たさねばならない。
自身の体にある遠坂家の魔術刻印、これを娘である凛に継承して貰わなければ、
遠坂家は没落してしまうこととなる。
冬木の地で死んでいれば、凛に移植される可能性はあったが、この島でそれは叶わないからだ。
徹頭徹尾、自身の成すべきことは決まっていた。

「………遠坂さんはこれからどうされるおつもりですか」
「当面の目的は、この地の詳しい調査。そして別分野の知識、情報をもった参加者との接触が妥当なところだろう」

先に口を開いたのは、海未からだった。
時臣の返事には、やはりという気持ちが大きかった。
この人は私と違って一人でもきっと、前へ進める人なのだ。でも、私ではだめなのだ。
時臣に仲間探しを手伝ってもらうことは、迷惑、いや足手まといになると、
これまでの会話で海未は判断していた。

「そう…ですか………」
「ふむ。もしよければ、君の友人の保護と並行して行おうと考えていたのだが…何か都合が悪いだろうか?」

ところが、時臣の口から出た言葉に海未は意表を突かれた。
なぜ?そういった気持ちが強かった。
ただの高校生に過ぎず、何の役にも立たない人間をそばに置く理由が無いはずである。
しかし、当の本人は、顎に手を当てて、当てが外れたかな?と考えるしぐさをしていた。

「でも、私みたいな普通の高校生が、遠坂さんのお役には立てません。いいえ、むしろ迷惑なのでは…」

視線を泳がせながら海未は答える。
その答えを聞いた時臣は、ああ、と納得した様子で海未を見ていた。

「常に余裕を持って優雅たれ」
「え?」

流暢な声で目を瞑り微笑みながら、そう呟く。

「我が遠坂家の家訓だよ。このような危険な状況で普通の女子高生をそのまま放任するなど…遠坂の人間として恥ずべき行いだろう」

呆気に取られた表情の海未に対して、
まるで、娘に語りかけるような優しい口調であった。
確かに、多くの魔術師は、魔道を知らぬ一般人からすれば、
魔術の探求のために非道な行いをする人種にみえるだろう。
事実、時臣は聖杯戦争において、監督役の神父とともに、
巻き込まれた一般人の被害よりも魔術という神秘の秘匿に重点を置いていた。

だが、聖杯戦争とこの島で行われていることは違う。
海未は自分のことを一般人と言ったが、時臣にとっては同じ参加者であることに重点を置いていた。

(この島全体を使った61人による大規模儀式、集められた多様な参加者に何をさせたいのか。それを見極める必要がある)

だからこそ、普通の女子高生に自身の魔術の一端を見せ、彼女の状態を観察していた。
極端な話だが、彼女自身は何も特別ではないと思っていても、ここに送られた時点で、何か影響を受けている可能性があったからである。
もちろん家訓を理由に挙げたのも本当ではある、が。

「常に余裕を持って優雅たれ…ですか。ふふっ、素敵な言葉ですね」
「そうだろうとも。海未、君はなかなか聡明なようだ。この地で最初に君に出会えたことは、私にとっても僥倖だったようだ」

海未はもう遠慮はしなかった。それに今まで話した中で、
この人は自分の家名に誇りを持っていることはよく分かった。その家訓を理由にしたのだ。
信じられる。μ'sで作詞をしている海未からして、その言葉はあまりに綺麗で憧れた。
この紳士的な魔術師が言って初めて似合う言葉ということかもしれない。
一方で、家訓を賞賛された時臣は気分が良くなり、お互い笑顔になった。





―――夜の森に、焚き火の灯りが一つと、魔術師とスクールアイドルの影が一つずつ。
   混迷の夜は過ぎてゆく、やがて訪れる困難を覚悟しつつ、二人は語り合った―――

【J5/金属球近く/一日目/深夜】
【遠坂時臣@Fate/Zero】
[状態]:健康
[服装]:いつもの赤スーツ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、その他不明支給品1~2
[思考]
基本:自分達を連れてきた存在の調査。冬木市へ帰還して魔術刻印を娘の凛に継承させる。
1: 島と参加者の調査 
2: バーサーカーを含めた危険人物への対抗手段の確保
3: 園田海未と友人達の捜索と保護
[備考] アニメ第17話で殺された後からの参加、うっかり属性。


【園田海未@ラブライブ!】
[状態]:健康
[服装]:音乃木坂高校の制服
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、その他不明支給品1~2
[思考]
基本:μ'sの仲間達と生還する
1: 時臣さんに協力してもらい仲間達を探す
2: この島で起きていることを知りたい
3: ………魔術って私にもできるでしょうか?
[備考] 時期はお任せします


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