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蘇生率Zero ◆/BLqsN1tl6



 衛宮切嗣は身近な岩陰に隠れながら情報の分析をしていた。
 己の限界を知り、出来ることと出来ないことを知っていれば戦いの中では強いアドバンテージとなる。

(体に異常はない。疲労もない。筋力も……)
 太い枯れ枝に力を入れる。すると、少ししなった後、音を立てて折れる。
(大丈夫だ。次は魔力)
 体に魔力を巡らせる。

(……やや、巡りが悪い。何かされたか? いや、この環境によるものか)

(原因は何にせよ、魔術に頼った戦いは今は避けるべきだ。武器を手に入れる必要がある)

 戦闘準備は急がねばならない。2350がセンターの入り口が開放される時間。そして2400が首輪のエネルギーが切れる時間。
 その間わずか10分。何かしらの不具合で首輪のエネルギーチャージ量が少なかったり、エネルギーの消費スピードが早まったら、そのわずか10分の振れ幅からこぼれ落ちてしまう。
 そうなると人間はどう考えるか? それは他人の物を奪おうとする。
 極限状態となったとき、1人では使い切ることの出来ない量の食料、武器、弾薬を頑なに得ようとする人間は沢山見てきた。

 今回もそんな奴は必ず出現する。

 ならば自衛の……時には他者から奪うための武器が必要だ。

 武器、手に入れる可能性はここにある。デイバッグだ。
(良い物が入っていてくれ)
 切嗣はささやかな願いを込めてデイバッグを開けた。

 まず最初に手にとったのは3枚のカードだった。
 サイズ的にはタロットカードに近い。
(っ! 1枚1枚に魔力が込められている。それも生半可な量ではない)

 魔術師の切嗣はすぐにカードの価値を理解する。
 これは並の魔術師では一生を掛けてもつくり上げることの出来ない生きたカードだ。

(キャスターの宝具か? いや、これほどのものを作れる英霊は記憶に無い。誰だ……?)

 数秒悩み、考えを放棄した。どうあれ、このカードの所有権は今、切嗣にある。

(魔力はあまり使いたくないところに魔具か……)

 わがままは言ってられない。切嗣は使い方の把握を行う。
 カードの絵柄を読み精霊召喚魔法とすぐに当たりが付いた。

(「THE WATERY」、水の精霊か)

 島という環境下では海岸にたどり着けばすぐに水を得ることが出来る。活用する場面は多そうだ。

 そこまで確認した時、切嗣の耳に鈍い打撃音が届いた。

(――近い、崖の方だ)
 切嗣はカードを胸の内ポケットにしまうと、音の方へ向かった。

               〆

 切嗣が到着したと同時に勢い良く水柱が上がった。

(誰かが落ちたのか?)

 近くの岩肌には大量の血痕が付着している。
 おおよそ人一人が破裂した分の量だった。

(投身自殺か……? いや、待て)

 泡立った海が波で透明度を取り戻す。
 2人の女性の姿が目にはいってきた。

 1人は岩肌の血の持ち主だろう。頭部と腕部、背部が潰れ、大量の血を海に流している。
 だが、もう一人は目立った外傷は見られなかった。ただブクブクと海底へと誘われている。

(転落だ。恐らく1人がもう一人をかばって落ちたんだ)
 異様なまでの損傷の偏りはその証拠だ。

(まだ助かるかもしれない)

「来い、ウォーティ!」

 切嗣は胸の内ポケットからカードを取り出すと魔力を込めてそれを掲げた。
 風が巻き起こり、ウォーティが実体化する。

 青い透明感のある人魚、それがウォーティの姿だった。

「ウォーティ、あの子を引き上げろ」

 ウォーティは頷くと手を前に掲げた。同時に少女の体が海面ごと持ち上がり、海岸へと運ばれた。

 すぐに切嗣は少女の脈を取る。
(――心肺停止。水を多く飲んでいる。呼吸が止まって既に5分は経っているだろう……くそっ!)

 呼吸が停止して3分で蘇生率は75%まで減少し、8分経過すると0%へ限りなく近くなる。
 切嗣は心臓マッサージを開始した。

(くそっ! 生き返れ!)

 切嗣の努力も虚しく、時計は吹雪が呼吸を止めてから8分を経過した。

               〆

 切嗣は手を合わせ、精一杯の追悼を行っていた。
 赤の他人であったが、目の前で少女の命が失われる。それが切嗣の大切なところに痛みを走らせる。

(――行こう)

 何が何でも聖杯を手に入れてこのような悲しいことが起こらない世界を作るために……
 最後にもう一度顔を見ておこう。そう思って振り返った時、少女の持っていた四角い箱がわずかに動いたことに気がつく。

(何だ?)

 胸の内ポケットからウォーティのカードを取り出し、身構える。
 箱が内部から小窓が開かれ何やら白いモノがもそもそと出てきた。

(――妖精!?)

 体長わずか10cm足らずの2頭身の人だった。
 妖精は吹雪を悲しげに見つめている。

「お前のご主人は死んでしまった。すまない……」
 切嗣は謝ることしか出来なかった。
 すると妖精は首をブンブンとふった。どうやら許してくれるらしい。
 それどころかお辞儀をした。吹雪を助けようとしてくれたことに感謝しているようだ。

「だが、結果的に僕は彼女を助けることが出来なかった。そして、彼女の体を君たちの家に連れて行くことも出来ない。まだ戦いは続く」

 妖精は頷いた。妖精も現状を理解しているのだろう。

 妖精は覚悟を決めたかのように大きく頷くと、彼女の背後に着けられている装置を外した。
 そして、それを指さして切嗣に目で訴える。

「……それを僕に使えってことかい?」

 妖精は頷いた。

               〆

 妖精が入っていた箱をよく見るとこれは戦闘艦が搭載する砲によく似ている。
 足に付けられたヒレみたいなものも船の舵だ。
 太ももに着けられている箱なんて魚雷が見えている。
 間違いない、この子は船を模した兵器を身につけている。
 妖精曰くこれで海を滑ることが出来るらしい。半信半疑だった。

 切嗣は自分の体のサイズに合わせるべく、戦闘艦を模した兵器”艤装”の改造に着手する。
 少女の装備だけでは自分の体に合わせることは難しかったが、少女が持っていたデイバッグに似たようなものがもう一つあった。
 恐らくこの子をかばった女性のものだろう。

 工具はやたらと精巧なドライバーやニッパーが入った工具箱が支給されていたため、それを使った。

 作業は程なくして完了する。
 大型艤装の中の妖精たちが手伝ってくれたおかげだ。

 完成品のボイラーを腰に装着し、ストックと照準器を着けた12.7サンチ連装砲を右手に持つ。
 長い脚の腿の部分には鈍く輝く3連装魚雷があり、革と金属が混在するゴテゴテとした靴をはく。
 1基の2門の35.6サンチ連装砲の砲身が左肩から覗いている。

 これを動かすのは重油(燃料)と魔力のハイブリッドだ。

――魔導戦艦 切嗣。抜錨!

【I-2/ 崖下 / 1日目/ 黎明】
【衛宮切嗣@Fate/Zero】
[状態]: 健康、魔力消費(微)
[服装]: 魔導戦艦切嗣
[装備]: 吹雪&金剛近代化改修艤装、クロウカード(ウォーティ)
[道具]: 支給品一式 X3、不明支給品(1~7)、クロウカード X2
     両津勘吉のプラモ作成工具
[思考]
基本: 正義の味方
1: 己の力を把握する。
2: 情報収集を行う。

※クロウカード残り2枚は不明です。
※吹雪&金剛の艤装を無理やり改造し、切嗣に合わせました。
 よって本来のスペックを出すのは難しく、魔力で補っています。
 (海を航行したり魚雷管を動かすときに魔力を消費します。ただし砲や魚雷を発射するだけならば魔力は不要です)
 兵装は金剛主砲1基(背部)、吹雪主砲1基[ストック+照準器](右腕)
 3連装魚雷発射管 X2(脚部)です。


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