「【愛の重み】」(2006/01/26 (木) 01:46:06) の最新版変更点
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<p>【愛の重み】</p>
<p><br>
男1「なぁ桜田、ちょっといいか」<br>
JUM「ん?何だ?」<br>
お昼休みも終わろうかという時<br>
昼食の弁当を食べ終わったJUMに<br>
それほど親しくもない学友が唐突に話しかけてきた。<br>
男1「お前さ水銀燈と仲いいよな?」<br>
JUM「ああ、まぁ同じ中学だったからよく話すけど」<br>
JUMと水銀燈は中学3年間同じクラス、<br>
さらにどういった縁か高校も入学してから同じクラスだった。<br>
中学で同じクラスになった当初から水銀燈はJUMのどこが気に入ったのか<br>
ちょっかいを出してきたのだきた。<br>
正確には一方的に水銀燈がJUMをからかって遊んでいるだけなのだが。<br>
しかしJUMはその関係が不思議と嫌ではなかった。<br>
中学3年間を通し水銀燈とJUMは親交を深め<br>
今では月の休日の何度かをともに過ごす親友のような仲になっていた。<br>
だが、JUMが水銀燈に対して抱いている思いはそれだけではなかった。<br>
それは彼女に対する純粋な好意<br>
そうJUMはいつの間にか水銀燈に対して異性に対する好意を抱いていた。<br>
もっともJUMはそれを打ち明けられずにいる。<br>
そんな事を露も知らない男子は話を進めていく。</p>
<p>男1「ならさ、あの噂って本当か?」<br>
JUM「噂?」<br>
男1「あれ、お前知らないの?」<br>
JUM「だから、なんだよその噂って・・・」<br>
男1「いや、水銀燈って金さえ出せばヤらしてくれるって話?」<br>
JUM「・・・なんだよそれ」<br>
男の言葉にJUMは顔をしかめる。<br>
そんなJUMにかまわず男は言葉を続ける。<br>
男1「いや、俺も詳しいことは知らないけどさ、そういう噂があるんだよ」<br>
JUM「ふーん・・・それで?」<br>
男1「っで水銀燈と親しいお前なら噂の真相を聞こうかと思ってな」<br>
JUM「仮にその噂が本当だとしたらどうするんだ」<br>
男1「ん?そりゃそんなに高くないなら一回お願いしようかと」<br>
そう言って男は下衆な笑みを浮かべた。<br>
確かに水銀燈は同じ年頃の女子に比べて成熟した体をしている。<br>
その上、顔は整っているし透き通るような白い肌も魅力適だった。<br>
また、煌くアッシュブロンドの髪もその整った顔立ちによく映えた。<br>
年頃の成年男子の目を引くのには十分すぎる容姿なのだ。<br>
男1「一度ぐらいあんな女抱きたいじゃんか」<br>
この男子が言いたいこともJUMはわからないでもなかった。<br>
JUMもそういった妄想をしたことはあったからだ。<br>
しかし、同時にその行為に後悔の念に駆られてもいた。<br>
それは侵してはいけない聖域を侵した気分ともいうのか<br>
とにかく行為の跡に猛烈な後ろめたさが襲ってきたのだ。</p>
<p>JUM「悪いけど、知らないな」<br>
そう言うと男は残念そうな顔をした後に苦笑いを浮かべた。<br>
男1「そうか・・・ならいいんだけどよ、あのさ、このことは内密にな」<br>
JUM「わかってるよ、ところで話っていうのはそれだけか?」<br>
男1「いや、後一つ、次の授業は自習だから自習室に行けってさ」<br>
JUM「ああ、わかった」<br>
男1「そうか、じゃあな」<br>
JUM「ああ」<br>
去っていく男子の背にそう言ってからJUMは教室の中を見渡し、水銀燈を探した。<br>
しかし、水銀燈の姿は教室の中にはなかった。<br>
JUM(・・・あくまで噂・・・・だよな)<br>
JUMはの心の中をモヤモヤとした感情が多い尽くしていった。</p>
<p>-放課後-<br>
銀「でも、珍しいわねぇジュンの方から一緒に帰ろうなんて誘ってくるなんてぇ」<br>
JUM「別に嫌ならいいんだぞ」<br>
銀「あらぁ、私嫌だなんて一言も言ってないじゃなぁい、むしろうれしいわぁ」<br>
結局JUMはモヤモヤとした感情を処理できず事の真相を聞こうと水銀燈を誘って<br>
放課後一緒に下校していた。<br>
銀「でも、ジュンと一緒に帰るのって、720時間ぶりぐらいかしらぁ」<br>
JUM「そこは大人しく1ヶ月ぶりって言えよな」<br>
銀「うふふ、いいじゃない別にぃ」<br>
JUM「わかり難いんだよ」<br>
JUM(やっぱり、こいつ綺麗だよな)<br>
改めて水銀燈を見てJUMは彼女は非常に美しい事を再認識していた。<br>
JUM(金さえ出せば・・・っか)<br>
JUMの頭の中では昼の男子の言葉が先ほどから繰り返し流れていた。<br>
銀「・・・ジュ・・・ン・・・ジュン!!」<br>
JUM「うわ、何だよ大声出して」<br>
銀「なによぉ、突然黙って、ボーっとしてたのはそっちじゃなぁい」<br>
そう言って水銀燈は軽く頬を膨らませて見せた。<br>
あたりを見渡せば周りは閑静な住宅街で<br>
水銀燈の家のすぐ近くであった。<br>
どうやら少し考えにふけっていたらしい。<br>
銀「もう、しっかりしなさい」<br>
JUM「ああ、ごめん」<br>
銀「ふぅ、まあいいわ、それじゃまた明日ね」<br>
JUM「まって」<br>
JUMは踵を返し、家のほうに歩き出そうとする水銀燈の手を握った。</p>
<p>銀「なに?」<br>
JUM「あ・・いや・・・その・・・・」<br>
JUMは迷っていた。<br>
噂の真相を聞くかどうかを<br>
聞いてみたい自分と聞きたくない自分<br>
その葛藤はしばらく続いた。<br>
そして・・・<br>
JUM「いや、噂を聞いたんだ・・・」<br>
結局、聞きたい思いが勝った<br>
銀「噂?」<br>
JUM「・・・その・・お前が援交してるって・・・」<br>
それを聴いた瞬間水銀燈は大きく目を見開き<br>
そしてスッと目を細めた。<br>
銀「ふ~ん、それでぇジュンはそれを私に聞いてどうしたいのぉ?」<br>
JUM「え!・・いや別に・・・」<br>
銀「まぁ道端でする話じゃないから、私の家にいらっしゃい」<br>
そう言うと水銀燈はJUMの手をとり歩き出した。</p>
<p>水銀燈がJUMを連れてきたのは彼女の部屋だった。<br>
彼女は制服を着たままベッドに座ると挑発的な目でJUMの方を見て話を切り出した。<br>
銀「それでぇ、そんな話を私にしたって事はJUMも私としたいの?」<br>
JUM「僕は別に・・・」<br>
銀「手なら2万、口なら5万、本番なら8万だけどジュンは特別に本番5万にしてあげる」<br>
JUM「っな!!」<br>
何を言ってるんだ、JUMはそう言いたかったが驚きで口がうまく動かせなかった。<br>
銀「ジュンとは長い付き合いだしねぇ特別割引よ」<br>
そう言って水銀燈は口の端に笑みを浮かべた<br>
銀「っでどうする。別に一括じゃなくてもいいわよぉ、これも特別」<br>
JUMは黙って水銀燈の目を見た。<br>
JUM(本気だ)<br>
JUMは迷った。<br>
彼女を汚してしまいたい気持ちと汚してしまいたくない気持ち<br>
その二つの間でJUMの心は揺れ動いていた。<br>
銀「まぁ、どっちにしても私はシャワーを浴びてくるからそれまでには決めておいてねぇ」<br>
そう言い残し水銀燈は部屋から出て行ってしまった。<br>
JUM(僕はどうしたいんだろ・・・)</p>
<p>JUMは考えた。<br>
彼女を抱きたいそう思っている<br>
好きなのだからそう言った感情をいだくのは当然だと誰かが囁く<br>
しかし、同時にこんな形では嫌だとも思っている。<br>
結果は同じでもそこにいたるまでの過程が大事なのだとまた誰かが囁く<br>
答えが出ぬまま時間だけが過ぎていく<br>
<br>
銀「どう、決まった?」<br>
どれぐらいそうしていただろうか<br>
どうやら結構な時間考えに沈んでいたらしい<br>
後ろから聞こえた水銀燈の声にJUMは顔を上げ振り向いた<br>
振り向くと水銀燈はバスタオル一枚を体に巻きつけた姿で立っていた<br>
そして、そのままJUMの前を通りまた先ほどと同じようにベッドに腰掛けた<br>
JUM「っな、お前なんて格好で」<br>
銀「あら、私を抱きたいんでしょ」<br>
JUM「それは・・・」<br>
そう言ってJUMはもう一度水銀燈を見た。<br>
しっとりと濡れた髪、桜色に上気した肌<br>
整った顔、身体そのどれも魅力的だった。<br>
それを見た瞬間JUMの中で何かがプツリと音を立てて切れた。<br>
銀「どう決めた?」<br>
JUM「・・・ああ」<br>
そう言ってJUMは立ち上がり<br>
水銀燈の方へ歩みを進め<br>
彼女の肩をつかんでベッドに押し倒し、その上に覆いかぶさると左手でその両手を拘束し<br>
右手で身体を覆っていたバスタオルに手をかけた。<br>
そして、彼女の唇を奪おうと顔を上げてJUMは固まった。<br>
なぜなら水銀燈は涙を流していたのだから・・・<br>
それを見た瞬間JUMは頭から冷水でも掛けられたかのように頭の中が冷えていった。<br>
JUM「お前・・・泣いてるのか・・・・」<br>
銀「な、泣いてなんかいないわ」<br>
JUM「どうして・・・」<br>
銀「泣いてないっていってるでしょ!!」<br>
本人は否定するもののその瞳からは涙がとめどなくあふれ出している。<br>
JUM「・・・ゴメン」<br>
そう言ってJUMは水銀燈の上からどくと背を向けて座った。<br>
JUM「本当にゴメンどうかしてた・・・」<br>
銀「・・・ジュン」<br>
JUM「馬鹿だな・・・こんなことして・・・最低だ・・・」<br>
JUM(僕は最低だ・・・)<br>
JUMはなぜ水銀燈を自分がどうしたいのかを思い出した。<br>
それは中学2年にあがって少ししてからの事だった。<br>
水銀燈はイジメのの標的にされたのだ。<br>
当時から並み外れた容姿をしていた水銀燈は男子の憧れの的だった。<br>
それを気に食わない一部の女子グループが始めたのだ。<br>
イジメは陰湿なものであった。</p>
<p>
ノートを破いたり、無視をするなどというものはかわいい方で<br>
制服をカッターで破いたり、机の上に猫の死骸がおかれていた事さえあった。<br>
水銀燈は気にしていないそぶりをしていたものの、本当は影で泣いていたのをJUMは知っていた。<br>
その時、JUMは思ったのだ。<br>
水銀燈を守りたいっと<br>
結局イジメ自体は学校側の知る事となりなくなりはしなかったが縮小したのだ。<br>
これはJUMが影で学校側に主犯格を知らせたからなのだが<br>
水銀燈を守りたいという気持ちがつしか好きだから守りたいという気持ちに<br>
とって変わっただけなのにいつの間にかそれが好きだっという気持ちに侵食されていたのだ<br>
JUM(そんなこと涙を見るまで忘れてたなんて・・・本当に最低だ・・・)<br>
銀「どうしたのジュン」<br>
いつの間にか泣き止んだ水銀燈がJUMの肩から手を回し後ろから抱きついてきた。<br>
背中に水銀燈の双丘があたるが先ほどのような劣情は浮かばなかった。<br>
優しい声が耳のすぐ近くで聞こえる<br>
JUM「な、なんでもない」<br>
銀「うそ、だってあなた泣いてるじゃない」<br>
JUM「え・・・」<br>
言われて初めてJUMは自分が涙を流している事に気がついた。<br>
銀「ねえ、どうしてやめたの、私を抱きたかったんじゃなかったの?」<br>
JUM「お前が泣いてたからだよ・・・それに」<br>
銀「それに?」<br>
JUM「僕はさ、水銀燈の事が好きだから・・・」<br>
その言葉は自然と口から出た<br>
いままで言おうとしてもどうしても言えなかった言葉が<br>
銀「・・・・なら」</p>
<p>
JUM「でも、やっぱりこういう形じゃ嫌なんだ・・・水銀燈の事が本当に好きだから大事にしたいから」、<br>
銀「・・・本当に私なんかが好きなの?」<br>
JUM「ああ、本気だ・・・」<br>
銀「・・・そう」<br>
JUM「でも・・・もういいんだ」<br>
銀「どうして?」<br>
JUM「・・・こんな事したんだ、もう君のそばにいる資格はない」<br>
銀「誘ったのは私よ、ジュンが責任を感じる事はないわ」<br>
JUM「それでもだよ・・・でも一つだけ聞かせてくれないか・・・」<br>
銀「なに?」<br>
JUM「どうして、あの時泣いてたんだ・・・?」<br>
銀「好きな男でも初めてをあんな風にされたくなかったからよ」<br>
JUM「・・・え?」<br>
JUMは目を見開いて振り返った。<br>
彼女はいま何といったんだ<br>
言葉は耳に入ってくるがそれが理解できない<br>
初めて・・・いやそれより好きな男って<br>
え?え?え?<br>
JUM「・・・いま・・・なんて・・・」<br>
銀「もう仕方ないわね、こういう事よ」<br>
混乱するJUMに微笑みかけると水銀燈はその唇をJUMの唇に重ねた。<br>
5秒ほどそうしてから水銀燈はゆっくりと唇を離した。<br>
銀「私も、あなたの事が好きよジュン」</p>
<p>JUM「・・・本当に?」<br>
ぐちゃぐちゃになった思考でJUMはその言葉だけをやっと搾り出した。<br>
それに対して水銀燈は極上の笑みを浮かべるとこう言った<br>
銀「ええ、本当に」<br>
JUMは嬉しさで天にも昇れそうな気分だった<br>
JUM「・・・本当に僕でいいのか?」<br>
銀「ええ、あなたじゃなくちゃダメなのよ」<br>
そういった水銀燈をJUMは正面からギュッと抱きしめた。<br>
どれくらいそうしていただろうか<br>
不意に水銀燈が耳元で囁いた。<br>
銀「ねぇジュン」<br>
JUM「なに?」<br>
銀「さっきの続きしない?」<br>
JUM「・・・え?」<br>
銀「いまはお互いの気持ち知ってるんだし、ね」<br>
JUM「いいのか?」<br>
銀「ええ、ただし、私初めてなんだら優しくね」<br>
JUM「わかった。」<br>
そう言うとJUMは水銀燈をベッドにやさしく横たえた。</p>
<p>エピローグ<br>
-午前二時-<br>
JUMは心地よい重みを胸に感じながら一糸纏わぬ水銀燈の髪を優しく梳いていた。<br>
JUM「なあ・・・」<br>
銀「なあにぃ?」<br>
JUM「お前、本当に初めてだったんだな・・・」<br>
銀「あらぁ、私を疑ってたのぉ?」<br>
JUM「だってさ、最初に手なら2万とか言ってたから経験豊富なんだとばっかり・・・」<br>
銀「あれは、嘘よジュンがムカつくこと言ってきたからキレちゃったのよぉ」<br>
JUM「ムカつくこと?」<br>
銀「私が売りやってるって噂の事」<br>
JUM「そういや、あの噂ってなんだったんだ?」<br>
銀「おおかた、私のことが気に入らない女子が流したんでしょ」<br>
JUM「そうだったのか・・・悪かった」<br>
銀「もう、いいわ」<br>
JUM「でも、噂はかなり広まってるみたいだぞ」<br>
銀「そうね、真に受けて本気で金持ってくるやつとかいたしねぇ」<br>
JUM「おいおい、大丈夫だったのか?」<br>
銀「そんなやつら皆、玉蹴り上げてやったわ」<br>
JUM「うわぁ・・・」<br>
銀「でも、もう大丈夫みたいねぇ」<br>
JUM「どうして?」<br>
銀「ジュンが守ってくれるんでしょ」<br>
そう言ってJUMの唇に軽くキスをする。<br>
JUM「もちろん」<br>
JUMは力強くうなずいた。<br>
そうして他愛無いおしゃべりをしながら夜は更けていった。</p>
<p>FIN<br></p>
<hr>
【月下の妖精】
<p>満点の星空と満月<br>
陳腐な表現であるが他に相応しい表現もない。<br>
その星空の下すでに寝静まった住宅街をJUMはコンビニの買い物袋を片手にさげ一人歩いていた。<br>
朝方から降り続いた雪のせいで道は雪に覆われていて、JUMが歩くたびにサクサクと心地のよい音を立てる。<br>
静寂と闇が町を包み彼以外だれもいないような錯覚に陥る。<br>
JUM「はぁ~」<br>
JUMは冷たくなった手を白くなった息で暖めコートの襟を立て首をすぼめて体を震わせた。<br>
大寒波の影響で例年以上に冬の寒さは厳しかった。<br>
特に今日はこの冬一番の冷え込みらしいと今朝がた姉が言っていたのを思い出した。<br>
こんな日に外出したがる物好きは稀だろう、JUMとて本来は外に出ずに暖房の効いた室内にいたい。<br>
しかし、彼がそんな物好きの仲間入りをしているのは人間の三大欲求のの一つに耐えかねたからだ。<br>
普段夕食を作ってくれる姉がこの雪で止まった電車の影響で帰宅できなくなり<br>
襲ってくる空腹に耐えることができなかった彼は寒い中コンビニへと出かけるはめになったのだ。<br>
空を見上げれば星が煌き、大地を見れば雪がその星の光を反射しキラキラと輝いていた。<br>
そんなある種幻想的な街中をJUMは一人歩いていく。<br>
ふと前を見ると前方に見える公園のベンチに見知った顔が空を見上げ座っているのが見えた。<br>
JUM「水銀燈?」<br>
雪のように白い肌と輝く銀色の髪をもち黒い厚手のコートを着た少女はゆっくりとJUMの方に振り返った。<br>
銀「あら、ジュン」<br>
JUMの方に振り返った水銀燈はニコリと微笑んで見せた</p>
<p>
刹那、JUMの脳裏にまるで「雪の妖精のようだ」などというガラにもない考えがよぎる。<br>
JUMはそれを打ち消すように軽く首を左右に振ってから彼女に歩み寄る。<br>
JUM「なにしてるんだ、こんなところで」<br>
銀「部屋の窓から見えた月がすごく綺麗だったから、ちょっと散歩にね」<br>
そう言うと水銀燈はまた空を見上げる。<br>
どうやら彼女は稀な物好きらしい<br>
JUM「はぁ~、風邪引くぞ」<br>
水銀燈の言葉にJUMは苦笑を浮かべてコンビニ袋の中からホットの缶コーヒーを取り出すと彼女に手渡した。<br>
銀「ありがとぉ、ジュン」<br>
水銀燈は両手で缶コーヒーを受け取る<br>
それを確認した後JUMも軽くベンチの雪を払ってから彼女の横に腰を下ろし同じように空を見上げた。<br>
それから自分も袋の中から肉まんを取り出すとそれにかぶり付いた。<br>
銀「私ねぇ満月って好きなの」<br>
コーヒーを一口すすってから水銀燈はふとそんなことを言った。<br>
銀「私は綺麗じゃないから、憧れちゃうのよ」<br>
JUMは「そんなことないよ」と否定しようとしてやめた。<br>
なぜなら水銀燈が右手で自分の腹部を押さえていたからだ。</p>
<p>水銀燈の身体には大きな傷跡がある。<br>
彼女から聞いた話では小学生の頃に事故にあった時のものらしい。<br>
ひどい事故で一命は取り留めたものの身体には大きな傷跡が残り一生消えることはないのだといっていた。<br>
JUMもその傷跡は見たことはあったがそれでも彼女は綺麗だと思っていた。<br>
水銀燈はそれを気にしていないそぶりを見せていたがやはりそれにコンプレックスを抱いているJUMは知っていた。<br>
JUMは小さく息を吐き出すとそっと隣に座る水銀燈の肩を抱き寄せそっと囁いた。<br>
銀「ジュン?」<br>
JUM「お前もあの月に負けないくらい綺麗だよ」<br>
銀「本当にそう思う?」<br>
水銀燈は潤んだ瞳でJUMを見上げそう尋ねた。<br>
JUMはそれに短く「ああ」と答えてからそっとその唇をふさいだ。<br>
そして一度唇を離すと<br>
JUM「本当に綺麗だよ水銀燈」<br>
そういってまた唇を重ねた。</p>
<p>FIN</p>
<p>【愛の重み】</p>
<p><br>
男1「なぁ桜田、ちょっといいか」<br>
JUM「ん?何だ?」<br>
お昼休みも終わろうかという時<br>
昼食の弁当を食べ終わったJUMに<br>
それほど親しくもない学友が唐突に話しかけてきた。<br>
男1「お前さ水銀燈と仲いいよな?」<br>
JUM「ああ、まぁ同じ中学だったからよく話すけど」<br>
JUMと水銀燈は中学3年間同じクラス、<br>
さらにどういった縁か高校も入学してから同じクラスだった。<br>
中学で同じクラスになった当初から水銀燈はJUMのどこが気に入ったのか<br>
ちょっかいを出してきたのだきた。<br>
正確には一方的に水銀燈がJUMをからかって遊んでいるだけなのだが。<br>
しかしJUMはその関係が不思議と嫌ではなかった。<br>
中学3年間を通し水銀燈とJUMは親交を深め<br>
今では月の休日の何度かをともに過ごす親友のような仲になっていた。<br>
だが、JUMが水銀燈に対して抱いている思いはそれだけではなかった。<br>
それは彼女に対する純粋な好意<br>
そうJUMはいつの間にか水銀燈に対して異性に対する好意を抱いていた。<br>
もっともJUMはそれを打ち明けられずにいる。<br>
そんな事を露も知らない男子は話を進めていく。</p>
<p>男1「ならさ、あの噂って本当か?」<br>
JUM「噂?」<br>
男1「あれ、お前知らないの?」<br>
JUM「だから、なんだよその噂って・・・」<br>
男1「いや、水銀燈って金さえ出せばヤらしてくれるって話?」<br>
JUM「・・・なんだよそれ」<br>
男の言葉にJUMは顔をしかめる。<br>
そんなJUMにかまわず男は言葉を続ける。<br>
男1「いや、俺も詳しいことは知らないけどさ、そういう噂があるんだよ」<br>
JUM「ふーん・・・それで?」<br>
男1「っで水銀燈と親しいお前なら噂の真相を聞こうかと思ってな」<br>
JUM「仮にその噂が本当だとしたらどうするんだ」<br>
男1「ん?そりゃそんなに高くないなら一回お願いしようかと」<br>
そう言って男は下衆な笑みを浮かべた。<br>
確かに水銀燈は同じ年頃の女子に比べて成熟した体をしている。<br>
その上、顔は整っているし透き通るような白い肌も魅力適だった。<br>
また、煌くアッシュブロンドの髪もその整った顔立ちによく映えた。<br>
年頃の成年男子の目を引くのには十分すぎる容姿なのだ。<br>
男1「一度ぐらいあんな女抱きたいじゃんか」<br>
この男子が言いたいこともJUMはわからないでもなかった。<br>
JUMもそういった妄想をしたことはあったからだ。<br>
しかし、同時にその行為に後悔の念に駆られてもいた。<br>
それは侵してはいけない聖域を侵した気分ともいうのか<br>
とにかく行為の跡に猛烈な後ろめたさが襲ってきたのだ。</p>
<p>JUM「悪いけど、知らないな」<br>
そう言うと男は残念そうな顔をした後に苦笑いを浮かべた。<br>
男1「そうか・・・ならいいんだけどよ、あのさ、このことは内密にな」<br>
JUM「わかってるよ、ところで話っていうのはそれだけか?」<br>
男1「いや、後一つ、次の授業は自習だから自習室に行けってさ」<br>
JUM「ああ、わかった」<br>
男1「そうか、じゃあな」<br>
JUM「ああ」<br>
去っていく男子の背にそう言ってからJUMは教室の中を見渡し、水銀燈を探した。<br>
しかし、水銀燈の姿は教室の中にはなかった。<br>
JUM(・・・あくまで噂・・・・だよな)<br>
JUMはの心の中をモヤモヤとした感情が多い尽くしていった。</p>
<p>-放課後-<br>
銀「でも、珍しいわねぇジュンの方から一緒に帰ろうなんて誘ってくるなんてぇ」<br>
JUM「別に嫌ならいいんだぞ」<br>
銀「あらぁ、私嫌だなんて一言も言ってないじゃなぁい、むしろうれしいわぁ」<br>
結局JUMはモヤモヤとした感情を処理できず事の真相を聞こうと水銀燈を誘って<br>
放課後一緒に下校していた。<br>
銀「でも、ジュンと一緒に帰るのって、720時間ぶりぐらいかしらぁ」<br>
JUM「そこは大人しく1ヶ月ぶりって言えよな」<br>
銀「うふふ、いいじゃない別にぃ」<br>
JUM「わかり難いんだよ」<br>
JUM(やっぱり、こいつ綺麗だよな)<br>
改めて水銀燈を見てJUMは彼女は非常に美しい事を再認識していた。<br>
JUM(金さえ出せば・・・っか)<br>
JUMの頭の中では昼の男子の言葉が先ほどから繰り返し流れていた。<br>
銀「・・・ジュ・・・ン・・・ジュン!!」<br>
JUM「うわ、何だよ大声出して」<br>
銀「なによぉ、突然黙って、ボーっとしてたのはそっちじゃなぁい」<br>
そう言って水銀燈は軽く頬を膨らませて見せた。<br>
あたりを見渡せば周りは閑静な住宅街で<br>
水銀燈の家のすぐ近くであった。<br>
どうやら少し考えにふけっていたらしい。<br>
銀「もう、しっかりしなさい」<br>
JUM「ああ、ごめん」<br>
銀「ふぅ、まあいいわ、それじゃまた明日ね」<br>
JUM「まって」<br>
JUMは踵を返し、家のほうに歩き出そうとする水銀燈の手を握った。</p>
<p>銀「なに?」<br>
JUM「あ・・いや・・・その・・・・」<br>
JUMは迷っていた。<br>
噂の真相を聞くかどうかを<br>
聞いてみたい自分と聞きたくない自分<br>
その葛藤はしばらく続いた。<br>
そして・・・<br>
JUM「いや、噂を聞いたんだ・・・」<br>
結局、聞きたい思いが勝った<br>
銀「噂?」<br>
JUM「・・・その・・お前が援交してるって・・・」<br>
それを聴いた瞬間水銀燈は大きく目を見開き<br>
そしてスッと目を細めた。<br>
銀「ふ~ん、それでぇジュンはそれを私に聞いてどうしたいのぉ?」<br>
JUM「え!・・いや別に・・・」<br>
銀「まぁ道端でする話じゃないから、私の家にいらっしゃい」<br>
そう言うと水銀燈はJUMの手をとり歩き出した。</p>
<p>水銀燈がJUMを連れてきたのは彼女の部屋だった。<br>
彼女は制服を着たままベッドに座ると挑発的な目でJUMの方を見て話を切り出した。<br>
銀「それでぇ、そんな話を私にしたって事はJUMも私としたいの?」<br>
JUM「僕は別に・・・」<br>
銀「手なら2万、口なら5万、本番なら8万だけどジュンは特別に本番5万にしてあげる」<br>
JUM「っな!!」<br>
何を言ってるんだ、JUMはそう言いたかったが驚きで口がうまく動かせなかった。<br>
銀「ジュンとは長い付き合いだしねぇ特別割引よ」<br>
そう言って水銀燈は口の端に笑みを浮かべた<br>
銀「っでどうする。別に一括じゃなくてもいいわよぉ、これも特別」<br>
JUMは黙って水銀燈の目を見た。<br>
JUM(本気だ)<br>
JUMは迷った。<br>
彼女を汚してしまいたい気持ちと汚してしまいたくない気持ち<br>
その二つの間でJUMの心は揺れ動いていた。<br>
銀「まぁ、どっちにしても私はシャワーを浴びてくるからそれまでには決めておいてねぇ」<br>
そう言い残し水銀燈は部屋から出て行ってしまった。<br>
JUM(僕はどうしたいんだろ・・・)</p>
<p>JUMは考えた。<br>
彼女を抱きたいそう思っている<br>
好きなのだからそう言った感情をいだくのは当然だと誰かが囁く<br>
しかし、同時にこんな形では嫌だとも思っている。<br>
結果は同じでもそこにいたるまでの過程が大事なのだとまた誰かが囁く<br>
答えが出ぬまま時間だけが過ぎていく<br>
<br>
銀「どう、決まった?」<br>
どれぐらいそうしていただろうか<br>
どうやら結構な時間考えに沈んでいたらしい<br>
後ろから聞こえた水銀燈の声にJUMは顔を上げ振り向いた<br>
振り向くと水銀燈はバスタオル一枚を体に巻きつけた姿で立っていた<br>
そして、そのままJUMの前を通りまた先ほどと同じようにベッドに腰掛けた<br>
JUM「っな、お前なんて格好で」<br>
銀「あら、私を抱きたいんでしょ」<br>
JUM「それは・・・」<br>
そう言ってJUMはもう一度水銀燈を見た。<br>
しっとりと濡れた髪、桜色に上気した肌<br>
整った顔、身体そのどれも魅力的だった。<br>
それを見た瞬間JUMの中で何かがプツリと音を立てて切れた。<br>
銀「どう決めた?」<br>
JUM「・・・ああ」<br>
そう言ってJUMは立ち上がり<br>
水銀燈の方へ歩みを進め<br>
彼女の肩をつかんでベッドに押し倒し、その上に覆いかぶさると左手でその両手を拘束し<br>
右手で身体を覆っていたバスタオルに手をかけた。<br>
そして、彼女の唇を奪おうと顔を上げてJUMは固まった。<br>
なぜなら水銀燈は涙を流していたのだから・・・<br>
それを見た瞬間JUMは頭から冷水でも掛けられたかのように頭の中が冷えていった。<br>
JUM「お前・・・泣いてるのか・・・・」<br>
銀「な、泣いてなんかいないわ」<br>
JUM「どうして・・・」<br>
銀「泣いてないっていってるでしょ!!」<br>
本人は否定するもののその瞳からは涙がとめどなくあふれ出している。<br>
JUM「・・・ゴメン」<br>
そう言ってJUMは水銀燈の上からどくと背を向けて座った。<br>
JUM「本当にゴメンどうかしてた・・・」<br>
銀「・・・ジュン」<br>
JUM「馬鹿だな・・・こんなことして・・・最低だ・・・」<br>
JUM(僕は最低だ・・・)<br>
JUMはなぜ水銀燈を自分がどうしたいのかを思い出した。<br>
それは中学2年にあがって少ししてからの事だった。<br>
水銀燈はイジメのの標的にされたのだ。<br>
当時から並み外れた容姿をしていた水銀燈は男子の憧れの的だった。<br>
それを気に食わない一部の女子グループが始めたのだ。<br>
イジメは陰湿なものであった。</p>
<p>
ノートを破いたり、無視をするなどというものはかわいい方で<br>
制服をカッターで破いたり、机の上に猫の死骸がおかれていた事さえあった。<br>
水銀燈は気にしていないそぶりをしていたものの、本当は影で泣いていたのをJUMは知っていた。<br>
その時、JUMは思ったのだ。<br>
水銀燈を守りたいっと<br>
結局イジメ自体は学校側の知る事となりなくなりはしなかったが縮小したのだ。<br>
これはJUMが影で学校側に主犯格を知らせたからなのだが<br>
水銀燈を守りたいという気持ちがつしか好きだから守りたいという気持ちに<br>
とって変わっただけなのにいつの間にかそれが好きだっという気持ちに侵食されていたのだ<br>
JUM(そんなこと涙を見るまで忘れてたなんて・・・本当に最低だ・・・)<br>
銀「どうしたのジュン」<br>
いつの間にか泣き止んだ水銀燈がJUMの肩から手を回し後ろから抱きついてきた。<br>
背中に水銀燈の双丘があたるが先ほどのような劣情は浮かばなかった。<br>
優しい声が耳のすぐ近くで聞こえる<br>
JUM「な、なんでもない」<br>
銀「うそ、だってあなた泣いてるじゃない」<br>
JUM「え・・・」<br>
言われて初めてJUMは自分が涙を流している事に気がついた。<br>
銀「ねえ、どうしてやめたの、私を抱きたかったんじゃなかったの?」<br>
JUM「お前が泣いてたからだよ・・・それに」<br>
銀「それに?」<br>
JUM「僕はさ、水銀燈の事が好きだから・・・」<br>
その言葉は自然と口から出た<br>
いままで言おうとしてもどうしても言えなかった言葉が<br>
銀「・・・・なら」</p>
<p>
JUM「でも、やっぱりこういう形じゃ嫌なんだ・・・水銀燈の事が本当に好きだから大事にしたいから」、<br>
銀「・・・本当に私なんかが好きなの?」<br>
JUM「ああ、本気だ・・・」<br>
銀「・・・そう」<br>
JUM「でも・・・もういいんだ」<br>
銀「どうして?」<br>
JUM「・・・こんな事したんだ、もう君のそばにいる資格はない」<br>
銀「誘ったのは私よ、ジュンが責任を感じる事はないわ」<br>
JUM「それでもだよ・・・でも一つだけ聞かせてくれないか・・・」<br>
銀「なに?」<br>
JUM「どうして、あの時泣いてたんだ・・・?」<br>
銀「好きな男でも初めてをあんな風にされたくなかったからよ」<br>
JUM「・・・え?」<br>
JUMは目を見開いて振り返った。<br>
彼女はいま何といったんだ<br>
言葉は耳に入ってくるがそれが理解できない<br>
初めて・・・いやそれより好きな男って<br>
え?え?え?<br>
JUM「・・・いま・・・なんて・・・」<br>
銀「もう仕方ないわね、こういう事よ」<br>
混乱するJUMに微笑みかけると水銀燈はその唇をJUMの唇に重ねた。<br>
5秒ほどそうしてから水銀燈はゆっくりと唇を離した。<br>
銀「私も、あなたの事が好きよジュン」</p>
<p>JUM「・・・本当に?」<br>
ぐちゃぐちゃになった思考でJUMはその言葉だけをやっと搾り出した。<br>
それに対して水銀燈は極上の笑みを浮かべるとこう言った<br>
銀「ええ、本当に」<br>
JUMは嬉しさで天にも昇れそうな気分だった<br>
JUM「・・・本当に僕でいいのか?」<br>
銀「ええ、あなたじゃなくちゃダメなのよ」<br>
そういった水銀燈をJUMは正面からギュッと抱きしめた。<br>
どれくらいそうしていただろうか<br>
不意に水銀燈が耳元で囁いた。<br>
銀「ねぇジュン」<br>
JUM「なに?」<br>
銀「さっきの続きしない?」<br>
JUM「・・・え?」<br>
銀「いまはお互いの気持ち知ってるんだし、ね」<br>
JUM「いいのか?」<br>
銀「ええ、ただし、私初めてなんだら優しくね」<br>
JUM「わかった。」<br>
そう言うとJUMは水銀燈をベッドにやさしく横たえた。</p>
<p>エピローグ<br>
-午前二時-<br>
JUMは心地よい重みを胸に感じながら一糸纏わぬ水銀燈の髪を優しく梳いていた。<br>
JUM「なあ・・・」<br>
銀「なあにぃ?」<br>
JUM「お前、本当に初めてだったんだな・・・」<br>
銀「あらぁ、私を疑ってたのぉ?」<br>
JUM「だってさ、最初に手なら2万とか言ってたから経験豊富なんだとばっかり・・・」<br>
銀「あれは、嘘よジュンがムカつくこと言ってきたからキレちゃったのよぉ」<br>
JUM「ムカつくこと?」<br>
銀「私が売りやってるって噂の事」<br>
JUM「そういや、あの噂ってなんだったんだ?」<br>
銀「おおかた、私のことが気に入らない女子が流したんでしょ」<br>
JUM「そうだったのか・・・悪かった」<br>
銀「もう、いいわ」<br>
JUM「でも、噂はかなり広まってるみたいだぞ」<br>
銀「そうね、真に受けて本気で金持ってくるやつとかいたしねぇ」<br>
JUM「おいおい、大丈夫だったのか?」<br>
銀「そんなやつら皆、玉蹴り上げてやったわ」<br>
JUM「うわぁ・・・」<br>
銀「でも、もう大丈夫みたいねぇ」<br>
JUM「どうして?」<br>
銀「ジュンが守ってくれるんでしょ」<br>
そう言ってJUMの唇に軽くキスをする。<br>
JUM「もちろん」<br>
JUMは力強くうなずいた。<br>
そうして他愛無いおしゃべりをしながら夜は更けていった。</p>
<p>FIN<br></p>
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