「薔薇銀の恋愛相談」(2006/01/27 (金) 06:17:17) の最新版変更点
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<p>薔薇銀の恋愛相談……趣旨が完全に変わったが</p>
<p>高校生と言えば、恋の話に華が咲くお年頃。<br>
薔薇学といえどもそれは例外ではなく。<br>
一人の恋する乙女が、恋愛相談にやってきていた。</p>
<p>銀「……私ぃ、好きな人がいるんです」<br>
暗室の中、ぼんやりと浮かんだ影と水晶玉。<br>
水銀燈は、学校一当たるという占い師の元に来ていた。<br>
占「……それで、相手は?」<br>
目深く被ったフードによって、その表情は見えないが。<br>
水銀燈がイメージしていたのより遙かに若く、愛らしい声だった。<br>
銀「同じクラスの……桜田ジュン君です」<br>
水晶に水銀燈の顔が映し出される。不安そうな表情が。<br>
占「そう、それは何時から?」<br>
銀「中学の頃からです。何度かアプローチしたんですけど、彼気付いてくれなくて」<br>
身体をわざと密着させたり、それとなく仄めかしたりはしてみた。<br>
だがJUMは恥ずかしがったり戸惑ったりするだけだった。<br>
嫌われている様子もないし、脈がないわけではないのだろうが……<br>
占「そうですね――ズバリ言うわよ」<br>
銀「え?」<br>
占「アンタ死ぬわよ……じゃなかった。アナタ、現実を見てはどう?」<br>
銀「現実?それってどういう……」<br>
占「その桜田君、私も見たことあるけど、結構な人気があるようね」<br>
ドキリとした。確かに、JUMの周囲には一部女子が集まってくる。<br>
まさか、ジュンはその中の誰かのことが……?<br>
占「アナタ、私から見ても魅力的だけどね」<br>
銀「はぁ……ありがとうございます」<br>
占「脈のない相手より、身近であなたのことを想ってくれる人はいないかしら」<br>
なんて残酷なことを言うのだろうと、そう思った。<br>
だが一理ある。思えば、ずっとジュンのことばかりを追っていた。<br>
そのせいで視野狭窄に陥っていたのかもしれない。<br>
ジュンのことは確かに好きだが……本当に、一番なのだろうか。<br>
占「アナタの相を今見たけれど。近いうち、悪いことが起こるかもしれないわ」</p>
<p>
ショックだった。占いを受ければ、幸せになれると思っていた。<br>
見せられたのは優しい幻想ではなく、厳しい現実。<br>
でもそれが逆にありがたかった。少し、自分を見つめなおしてみよう。</p>
<p>……暗室の中、占い師は歯軋りをする。<br>
先程の客と、その話についてずっと考えていた。<br>
ぎりぎりぎりぎっりぎりぎりぎりぎりぎり<br>
憎い。あまりにも憎憎しい。あの男が、桜田ジュンが憎い<br>
ぴしり、水晶玉に罅が入る。掴んだそれを、床に向かって叩きつける。<br>
――少女の純真弄ぶ桜田ジュン、許すまじ!!</p>
<p><br>
策を練りながら廊下を歩く占い師。そこを雛苺が通りがかった。<br>
雛「占い師さん、どうしたの?」<br>
占「……お嬢さん、うにゅぅは欲しくないかな?」<br>
雛「うにゅぅ欲しいの~」<br>
占「それじゃあ、少しだけ私の言うことを聞いてくれない?」<br>
占い師が、嗤った。雛苺も、笑った。</p>
<p>翌日<br>
銀「ジュン~おはよ……う?」<br>
凍りついた。周囲で焔が燃え上がっている中、水銀燈は凍りついた。<br>
雛苺が、ジュンにべったりと抱きついている。<br>
雛「ジュン~好きなの~」<br>
J「ちょ、やめろよ。どうしたんだよ急に。皆見てるだろ!!」<br>
雛「え~?ジュンは雛のこと嫌いなの?」<br>
J「き、嫌いじゃないよ。でもちょっと近すぎるっていうか、胸。胸が」<br>
ベ「ん?お前巨乳が好きだって前言ってたろ。良かったな」<br>
J「よ、良くねえよ!!確かに好きだがってお前何を言わせ」</p>
<p>氷点下まで冷え込んだ。今、何を言った?<br>
巨乳が好き。巨乳が好き。キョニュウガスキ……<br>
ああ、漸く理解した。<br>
アレだけラブコールを送っても彼がなびかなかったわけ。<br>
要するに、カラダに魅力が足りなかったのか。<br>
そしてそれと同時に、ジュンも所詮はオスだと認識する。<br>
冷えていく。心が冷めていく。なんだか、哀しくなっていく。</p>
<p>薔「どうしたの、水銀燈?」<br>
冷めた視線で二人を見ていると、薔薇水晶が声をかけてくる。<br>
薔「なんだか、寂しそう?」<br>
ああ、この娘はよく気がついてしまうのだ。<br>
普段から仲良くしているから、些細な変化も見逃さない。<br>
薔「何か辛いことあったの?嫌なことがあったの?」<br>
銀「違うのよ薔薇水晶。違うの……」<br>
慰められたら、泣きそうになってしまうじゃないか……<br>
薔「嫌なら何も言わないでいいよ。私はいつでも、水銀燈の味方だから」<br>
にっこりと微笑んで抱き締めてくれる薔薇水晶。<br>
ああ、占いは当たっていた。よく当たる占いだ。<br>
私のことを見てくれている人が、こんなにも側にいた。<br>
この娘と一緒なら、私は生きていける。<br>
感謝しながら、少しだけ薔薇水晶の胸に抱かれて、泣いた。</p>
<p>
――水銀燈からは、見えない位置。薔薇水晶が、ニヤリと嗤った。</p>
<p>雛「占い師さん、言われたとおりにやったよぉ~」<br>
占「ご苦労、これは報酬のうにゅぅです」<br>
雛「わ~い。ありがとうなのぉ~」<br>
喜びながら走り去っていく雛苺を見て、占い師はほくそ笑む。<br>
フードの奥から、薄紫の長髪の束が覗く。<br>
さあ、次で仕上げだ――。</p>
<p>……<br>
J「ふぅ……なんだったんだ今日の雛苺。まあ、確かに悪くなかったが」<br>
思い出してJUMが笑う。なんというのか、ある意味役得なのだろうか。<br>
校庭を歩いていると、上から声が聞こえた。<br>
「おーい」<br>
見上げてみれば、窓から見えるベジータが手を振っている。<br>
なんだか顔色が良くないというか、白目を剥いているが。<br>
J「どうしたんだーベジー」<br>
JUMは気がついた。ベジータの手に、何故か花瓶が握られていることを。<br>
そして気付いたときには、花瓶は手を離れ、重力に従い落下してきていた。<br>
寸分違わず、脳天に直撃。だらだらと流血しながら、JUMは意識を失った。</p>
<p>翌日から凄まじい勢いで噂が広がっていた。<br>
「桜田君入院したらしいわよー」<br>
「なんでもベジータがやっかみで桜田君を殺して自分も死のうとしたとか」</p>
<p>
教室の盛り上がりには関係なく、水銀燈は薔薇水晶を猫かわいがりしていた。<br>
その表情に翳りはもはやない。何か吹っ切れたのか、心から幸せそうだった。<br>
薔薇水晶もされるがままに、幸せそうだった。</p>
<p>数日後、意識の回復したベジータは語る。<br>
ローブを被った謎の占い師に襲撃された、と。<br>
さしたる証拠も見つからず、記憶の混濁かでっち上げだと判断された。<br>
また、学園のよく当たると評判の占い師は、以降ぱったりと姿を消した。<br>
そのことから一部では、本当に犯人は占い師かもしれないとも噂された。<br>
が、ベジータには人望がなかった為大凡の人間は犯人だと思っている。<br>
ジュンは幸いなことに一命を取り留めた為、ベジータは辛うじて停学で済んだ。</p>
<p>薔「銀ちゃん」<br>
銀「何、薔薇水晶?」<br>
薔「私ね、世界で一番銀ちゃんが大好きだよ!!」<br>
以降、二人の笑顔が絶える事はなかった。<br>
水銀燈が笑えば、薔薇水晶も嬉しそうに嗤った。</p>
<p>END<br></p>
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