「『優しさの断片』」(2006/01/30 (月) 19:00:38) の最新版変更点
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<p>『優しさの断片』</p>
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学校に行く道の途中には、小さな公園がある。そこに住んでるおじさんは<br>
いつも犬を連れているんだ。犬はいつも舌を出していて、何か食べ物が落ちて<br>
ないか探してる。私はその光景を見る度に、何かしてあげたいと思うんだ。<br>
薔薇「……あの人、ゴミ箱に捨ててある物食べてるよ?」<br>
水「そうねぇ…。でも、仕方ないことなのよぉ?」<br>
薔薇「……どうして?」<br>
水「それは……生きていくためよぉ」<br>
薔薇「……生きるためにゴミを食べるの?」<br>
水「だって…そうでもしないと、あの人は死んでしまうから…」<br>
薔薇「……悲しいね」</p>
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私には、昼休みにはお弁当がある。普通の食べ物を食べることが出来る。<br>
でも、それが当たり前だから、感謝をすることを忘れていたんだ。<br>
水「ごちそうさまぁ」<br>
薔薇「……もう食べないの?半分も残ってるよ?」<br>
水「……だ、ダイエットしてるから、もうごちそうさまなのよぉ」<br>
薔薇「……ふ~ん。別に太ってないと思うけど」<br>
水「……」</p>
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私がしようと思うことは、ただのお節介なんだろうか?偽善なんだろうか?<br>
失礼な話なんだろうか?それとも、優しさなんだろうか…?<br>
ただ、私はあの公園にいるおじさんに何かしてあげたいだけなんだ…。</p>
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薔薇水晶と別れた後、私はこっそりと、帰り道の反対方向に歩く。<br>
そして私は、あの公園にいるおじさんに話しかける。<br>
残したお弁当を差し出しながら……。<br>
水「あの…これ、良かったら食べてください」<br>
お「何の真似だ?」<br>
水「お腹が空いているんですよねぇ?今だってゴミ箱を…」<br>
お「ふざけんじゃねぇ!俺を馬鹿にしてんのかぁ!?」<br>
水「でも、これ美味しいですよ?そんなゴミ箱に捨ててあるようなものよりずっと…」<br>
パチン!と音がはじけた瞬間、顔が熱くなった。ビンタをされるなんて<br>
いつ以来だろうか……。<br>
お「てめぇらみたいな、ガキに食い物を恵んで貰うほど、俺は落ちぶれちゃいねえ!」</p>
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それは心の底からの叫びだった。おじさんの隣にいた犬が、おじさんを<br>
なだめるように、クゥンと小さく鳴いた。<br>
お「俺だってよぉ、好きでこんなことやってんじゃねぇんだよ…」<br>
水「…ごめんなさい。本当に…ごめんなさい」<br>
お「別に良いんだよ…。殴ったりして悪かったよ」<br>
水「…私は…おじさんが、喜ぶと思って…それで…それで」<br>
お「わかってるよ…。でもな、お嬢ちゃん…気持ちだけで十分なんだよ…」</p>
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枯れた花に水をあげることは、とても大切。私はそれを優しさだと思う。<br>
でも、枯れていない花に水をやりすぎるのは悪いこと。<br>
おじさんは、枯れてなんかいなかったんだ……。</p>
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あれから、一週間が経った。おじさんはもう、あの公園にはいない。<br>
どこか、違う世界に旅立ったのだろう。<br>
翠「こんな不味いもの、私は食べないです!」<br>
蒼「翠星石、好き嫌いはよくないよ?せっかくお爺さんが作ってくれたお弁当<br>
なんだから、残しちゃ悪いでしょ?」<br>
翠「嫌です!あのおじじ、私が嫌いだからってわざと嫌いなもの入れたんです!」<br>
翠星石は、わがままを言いながら、お弁当をひっくり返した。<br>
蒼「ああ!なんてことするのさ!?」<br>
翠「ふん。せいせいしたです!食堂でパンでも食べるです!」<br>
どうしてだろうか?私の体が、勝手に反応した。気がつくと私は<br>
翠星石をひっぱたいていた。<br>
水「食べ物を粗末にしちゃダメでしょう!この馬鹿ぁ!」<br>
翠「……ご、ごめんなさいですぅ……」<br>
蒼「水銀燈…」</p>
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いつも、食べ物がそこにあるとは限らない。毎日楽しく過ごせる保証もない。<br>
だからこそ、小さなことにも感謝をしないといけないんだ。<br>
薔薇「……別に叩いたりしなくても、良かったと思うよ?」<br>
水「そうかもしれないわねぇ…。でもねぇ、叩かれて学べることもあるのよぉ?」<br>
薔薇「……それは、なんなの?」<br>
水「そうねぇ、上手く言えないけど…優しさの断片みたいなものかしらぁ」<br>
薔薇「……??」<br>
おじさん、優しさってなんなのかなぁ…。まだ、私にはわからいよ…。<br>
…完。</p>
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