「メグ」(2006/02/17 (金) 18:04:43) の最新版変更点
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<p>~邂逅~</p>
<p>昼下がり、乾いた風吹く病院の屋上。<br>
僕は看護婦の目を盗んで、今この場にいるのだ。<br>
フェンスに寄っかかり、空を仰ぐ。少し眩しかった。<br>
雲ひとつ無い無限の天井。心を見透かすように澄んだ蒼い空間。<br>
此処に来ると、あの日もこんな空だったな、とふと思ってしまう。</p>
<p>
ゆっくり目を閉じる。瞼に映るのは、彼女の最後の笑顔。</p>
<p>「めぐ・・・僕は・・・」</p>
<p>一日として忘れたことは無い。</p>
<p>彼女と過ごした時間を。</p>
<p>あの日の</p>
<p>彼女の涙を。</p>
<p>
半年前、僕は不注意で交通事故に巻き込まれた。右足を酷くやってしまったよう<br>
だった。<br>
とはいっても命に別状は無く今に至るのだが。<br>
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄<br>
事故から3週間後、僕はいつもの様に病室で一人勉強していた。午前のノルマを<br>
終え、ゆっくりとベッドに横たわる。<br>
しばらくして静かにに開くドア。見慣れた顔のご登場だ。<br>
の「ジュン君、入るわね~。」<br>
ジ「...あぁ。ってあれ? 今日学校は?」<br>
の「私たちの学年はテスト休みなのぅ。だから今日は早めに来れたのよ~。」<br>
「あのさぁジュン君、今日すっごくいいお天気なのよ。だから一緒に屋上に行かない?
看護婦さんからも許可いただいたの♪」<br>
ジ「まぁ、たまにはいいかな...。」<br>
松葉杖をつきながらゆっくりと階段を上る。<br>
の「大丈夫?ジュン君、手伝おうか?」<br>
ジ「いや、いいよ。この程度ならリハビリになるし。」<br>
屋上への扉を開く。陽の光が目を刺激する。光に慣れるまで目を細める。<br>
の「来てよかったね、ジュン君。」<br>
ジ「ん・・・そうだな。」<br>
フェンス越しに外界を眺める。乾いた風が心地よい。<br>
僕の通っている学校が見える。みんなの顔を思い出し、思わず微笑んでしまう。</p>
<p>・・・何か聞こえる?</p>
<p>ジ「姉ちゃん、今なんか言った?」<br>
の「え?何も・・・。」<br>
また聞こえた。これは・・・歌? 誰かが歌っている? <br>
ジュンは周りを見渡す。少し離れたところに人がいるのに気付いた。<br>
ジ「この歌・・・あの人が?」</p>
<p><br>
『やっぱり、あの人が...。』<br>
とても澄んだ綺麗な声。だけどとても悲しい声。<br>
ジュンはその不思議な声に引き寄せられるように、自分でも気付かないうちに、<br>
いつのまにかすぐ隣にまで近寄っていた。<br>
『女の子・・・僕と同い年くらいか?』<br>
少女と目が合う。その時初めてジュンは自分の状況を把握した。</p>
<p>めぐ「あの、何か・・・?」<br>
ジ「え・・・?あ、いや!
別に・・・。なんていうか・・・歌聞いてて・・・。<br>
綺麗な声だな~。みた、みたいな? あ、あはははは・・・」<br>
完全に混乱していた。穴があったら入りたい。<br>
しばらく不思議そうな顔をしていた彼女だが、すぐに優しく微笑する。<br>
めぐ「ふふ、面白いのね、キミ。名前は?」<br>
ジ「え・・・。」<br>
ジュンは彼女の神秘的な瞳に吸い込まれそうだった。<br>
めぐ「あら、私ったら。名乗るならまず自分からよね。私は柿崎めぐ。」</p>
<p>ジ「僕はジュン・・・。桜田ジュン。」</p>
<p>
これが二人の出会い。運命の歯車はここから動き出したのだ。</p>
<p>・・・あれから数週間・・・<br>
めぐは時間があれば、屋上に来て歌を歌っている。<br>
僕は彼女の隣に座ってその歌を聴く・・・。
いろいろお喋りもした。僕は友達の<br>
こと。彼女は住んでいた町のこと。<br>
いつからか、それが僕の時間の過ごし方となっていた。<br>
めぐ「ねぇ、私の歌聞いてて楽しいの?」<br>
ジュン「つまんなかったらここにいないって。」<br>
めぐ「ふふ、ホントにジュンって変わった人・・・。」<br>
ジュン「それはお互い様だろw」<br>
めぐ「そうね、私は変わってるわ。っていうより狂ってるのかもw」</p>
<p>ジュン「・・・なら僕も狂ってるよ。」<br>
めぐ「え?それってどういう・・・<br>
<br>
ぎゅっ</p>
<p>ジュンはめぐの手を強く、優しく握りる。<br>
周りの空気がゆっくり流れる。今なら言える。<br>
ジ「めぐ、僕は・・・きみが好きだ。」</p>
<p>
スローだった時がまた流れ出す。ジュンは、今自分がしてしまったことを激しく後悔<br>
している。<br>
ジ「あ・・・、そっ、そのゴメン! 会って間もないのに・・・いきなりこんな、<br>
こんな・・・。」<br>
そう言うとジュンは掴んでいた手を振りほどく。<br>
『あぁぁぁぁ、ダメだ、めぐの顔が見られな え?』
振りほどいて、何も無い<br>
はずの手に暖かいものが触れる。細い、白い小さな手。今度はめぐがジュンの手<br>
を握っている。<br>
めぐ「ジュン・・・」<br>
ジ「は、はひっ!」<br>
めぐ「ありがとう・・・。私も・・・ジュンが好き。」<br>
ジ「あ・・・ぇ・・・ぇ・・・?」</p>
<p>
めぐを見るとはっとした。めぐは今までに見たことの無いほどの優しい笑顔だった。<br>
ジ「で、でも僕なんか・・・
そう言うおうとすると、めぐは僕の唇に人差し指を<br>
添え、言葉を制止する。</p>
<p>めぐ「ねぇ、もう一回歌っていい・・・?」<br>
僕はそれ以上何も言わなかった。今はただ、この優しい時間を過ごしてていたい・・・。</p>
<p>
静かな午後、いつもの場所、いつもと同じ時間にめぐはいなかった。少し待っていても彼女は来ない。<br>
『面会の人でも来てるのかな?』<br>
そう思いジュンは病室に戻るため歩き出す。屋上の扉に手を掛けると同時に開くそれ。そこにはめぐの姿が。<br>
ジ
「あ、どうしたんだよ?今日遅かったな。面会でもあったのか?
」<br>
めぐ「ジュン・・・。」<br>
ジ「ん? 」<br>
めぐ「話したい事があるの。」<br>
ジュンは気付いていなかった。めぐの声にはいつもの輝きが無かったことを。</p>
<p>めぐ「私ね・・・もうあなたに会えなくなるわ・・・
。」</p>
<p>ジ「え・・・?それって・・・?」</p>
<p>
ジュンは混乱した。あのめぐがこんな不謹慎な冗談は言わないと知っていたから。<br>
めぐ「私の病気・・・前に話したわよね?」</p>
<p>
以前、めぐから聞いた話しだ。めぐは心臓の病気だった。幼い頃からのモノで、<br>
薬や手術で今まで永らえてきたらしい。めぐに告白したあの日、余命はあと5年だったそうだ。<br>
それでも僕は気持ちを伝えたかった。<br>
そして、あれからまだ一ヶ月しかたっていない。</p>
<p>
めぐ「今日、病気の定期検査を受けたの。そうしたら、あと2ヵ月ももたないって・・・。」<br>
僕の頭の中は真っ白になった。めぐ、何言っているんだ?</p>
<p>
冗談は言わないと知っていた。冗談じゃないと分かっていた。<br>
だけど・・・。<br>
ジ「は、はは。変な事言うなって。あ、そういや今日姉ちゃんがお菓子持ってきてくれて・・・<br>
めぐ「聞いて・・・ジュン、私・・・。」</p>
<p>
『言うな言うな言うな言うな!聞きたくない聞きたくない聞きたくない!』</p>
<p>
言葉が止まる。ジュンはめぐを見る。目の前でめぐは泣いていた。<br>
めぐ「もうダメなんだ・・・。私、『壊れた子』だから・・・。」<br>
そう言いながら彼女はケラケラと笑っている。大粒の涙と共に。<br>
ジュンはその場にへたりこんでしまった。<br>
そんなジュンを背中から優しく抱き締めるめぐ。</p>
<p>
めぐ「ジュン、私ね、死ぬことなんて怖くなかった・・・。こんな苦しい命なら、<br>
いっそ早く枯れてほしかった・・・。だけどあなたに会って、一緒に過ごして、私思ったの・・・。<br>
もっと生きたいって・・・まだ死にたくないって・・・。」</p>
<p>ジ「・・・め、・・ぐ・・・。」<br>
『なんて言えばいいんだ? 僕はどうすればいいんだ?
どんなに優しい言葉を<br>
かけても、めぐの命を、心を救うことはできない。僕はなんて無力なんだ・・・。』</p>
<p>
僕はただめぐを抱き締め返すことしか出来なかった。そんな自分が憎くて仕方ない。<br>
僕は声を上げ泣いた。めぐは僕の胸の中で、静かに泣いた。</p>
<p>空は雲ひとつ無い、晴天だった。</p>
<p>
その日からめぐは集中治療室に入り、会う事ができなくなってしまった。<br>
そして、めぐの死を知ったのは予想より早くだった。</p>
<p>
それからはいつもとは違った・・・いや、いつもどおりだった。今までの時間はまるで甘い夢のようだった。<br>
むしろ夢だったのかもしれない・・・。<br>
――――――――――<br>
少し前のことを思い出していた。<br>
ジ「人間なんて脆いよな・・・。」独り言を呟きながら僕は屋上で風に吹かれている。<br>
めぐと過ごしたあの場所で。 涙はとうに枯れてしまっていた。<br>
ジ「いっそのこと人形になれればいいのにな・・・。」「はは、やっぱり僕は狂ってるよ、めぐ。」<br>
・・・瞬間、強い風が体を揺らす。</p>
<p>『ふふ、なら私も狂ってるわね。』<br>
ジ「・・・めぐ?」</p>
<p>風が止む。耳に残るは彼女の声。<br>
それは刹那に見た白昼夢か。はたまた風の運んだ幻か・・・。<br>
ジュンはまた空を仰ぐ。もう眩しくはなかった。</p>
<p>
『そうだ・・・僕には帰る場所がある・・・。そして僕は君の分まで生きなくちゃならない。<br>
めぐ、君はいつもそばにいてくれるだろ?
・・・今度は僕が歌うよ。命の歌を・・・。』<br>
そう言って屋上をあとにする。</p>
<p>空は晴れ渡っていた。</p>
<p>きっと雨は降らない。<br>
fin</p>
<p>~邂逅~</p>
<p>昼下がり、乾いた風吹く病院の屋上。<br>
僕は看護婦の目を盗んで、今この場にいるのだ。<br>
フェンスに寄っかかり、空を仰ぐ。少し眩しかった。<br>
雲ひとつ無い無限の天井。心を見透かすように澄んだ蒼い空間。<br>
此処に来ると、あの日もこんな空だったな、とふと思ってしまう。</p>
<p>
ゆっくり目を閉じる。瞼に映るのは、彼女の最後の笑顔。</p>
<p>「めぐ・・・僕は・・・」</p>
<p>一日として忘れたことは無い。</p>
<p>彼女と過ごした時間を。</p>
<p>あの日の</p>
<p>彼女の涙を。</p>
<p>
半年前、僕は不注意で交通事故に巻き込まれた。右足を酷くやってしまったよう<br>
だった。<br>
とはいっても命に別状は無く今に至るのだが。<br>
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄<br>
事故から3週間後、僕はいつもの様に病室で一人勉強していた。午前のノルマを<br>
終え、ゆっくりとベッドに横たわる。<br>
しばらくして静かにに開くドア。見慣れた顔のご登場だ。<br>
の「ジュン君、入るわね~。」<br>
ジ「...あぁ。ってあれ? 今日学校は?」<br>
の「私たちの学年はテスト休みなのぅ。だから今日は早めに来れたのよ~。」<br>
「あのさぁジュン君、今日すっごくいいお天気なのよ。だから一緒に屋上に行かない?看護婦さんからも許可いただいたの♪」<br>
ジ「まぁ、たまにはいいかな...。」<br>
松葉杖をつきながらゆっくりと階段を上る。<br>
の「大丈夫?ジュン君、手伝おうか?」<br>
ジ「いや、いいよ。この程度ならリハビリになるし。」<br>
屋上への扉を開く。陽の光が目を刺激する。光に慣れるまで目を細める。<br>
の「来てよかったね、ジュン君。」<br>
ジ「ん・・・そうだな。」<br>
フェンス越しに外界を眺める。乾いた風が心地よい。<br>
僕の通っている学校が見える。みんなの顔を思い出し、思わず微笑んでしまう。</p>
<p>・・・何か聞こえる?</p>
<p>ジ「姉ちゃん、今なんか言った?」<br>
の「え?何も・・・。」<br>
また聞こえた。これは・・・歌? 誰かが歌っている? <br>
ジュンは周りを見渡す。少し離れたところに人がいるのに気付いた。<br>
ジ「この歌・・・あの人が?」</p>
<p><br>
『やっぱり、あの人が...。』<br>
とても澄んだ綺麗な声。だけどとても悲しい声。<br>
ジュンはその不思議な声に引き寄せられるように、自分でも気付かないうちに、<br>
いつのまにかすぐ隣にまで近寄っていた。<br>
『女の子・・・僕と同い年くらいか?』<br>
少女と目が合う。その時初めてジュンは自分の状況を把握した。</p>
<p>めぐ「あの、何か・・・?」<br>
ジ「え・・・?あ、いや!別に・・・。なんていうか・・・歌聞いてて・・・。<br>
綺麗な声だな~。みた、みたいな? あ、あはははは・・・」<br>
完全に混乱していた。穴があったら入りたい。<br>
しばらく不思議そうな顔をしていた彼女だが、すぐに優しく微笑する。<br>
めぐ「ふふ、面白いのね、キミ。名前は?」<br>
ジ「え・・・。」<br>
ジュンは彼女の神秘的な瞳に吸い込まれそうだった。<br>
めぐ「あら、私ったら。名乗るならまず自分からよね。私は柿崎めぐ。」</p>
<p>ジ「僕はジュン・・・。桜田ジュン。」</p>
<p>
これが二人の出会い。運命の歯車はここから動き出したのだ。</p>
<p>・・・あれから数週間・・・<br>
めぐは時間があれば、屋上に来て歌を歌っている。<br>
僕は彼女の隣に座ってその歌を聴く・・・。いろいろお喋りもした。僕は友達の<br>
こと。彼女は住んでいた町のこと。<br>
いつからか、それが僕の時間の過ごし方となっていた。<br>
めぐ「ねぇ、私の歌聞いてて楽しいの?」<br>
ジュン「つまんなかったらここにいないって。」<br>
めぐ「ふふ、ホントにジュンって変わった人・・・。」<br>
ジュン「それはお互い様だろw」<br>
めぐ「そうね、私は変わってるわ。っていうより狂ってるのかもw」</p>
<p>ジュン「・・・なら僕も狂ってるよ。」<br>
めぐ「え?それってどういう・・・<br>
<br>
ぎゅっ</p>
<p>ジュンはめぐの手を強く、優しく握りる。<br>
周りの空気がゆっくり流れる。今なら言える。<br>
ジ「めぐ、僕は・・・きみが好きだ。」</p>
<p>
スローだった時がまた流れ出す。ジュンは、今自分がしてしまったことを激しく後悔<br>
している。<br>
ジ「あ・・・、そっ、そのゴメン! 会って間もないのに・・・いきなりこんな、<br>
こんな・・・。」<br>
そう言うとジュンは掴んでいた手を振りほどく。<br>
『あぁぁぁぁ、ダメだ、めぐの顔が見られな
え?』振りほどいて、何も無い<br>
はずの手に暖かいものが触れる。細い、白い小さな手。今度はめぐがジュンの手<br>
を握っている。<br>
めぐ「ジュン・・・」<br>
ジ「は、はひっ!」<br>
めぐ「ありがとう・・・。私も・・・ジュンが好き。」<br>
ジ「あ・・・ぇ・・・ぇ・・・?」</p>
<p>
めぐを見るとはっとした。めぐは今までに見たことの無いほどの優しい笑顔だった。<br>
ジ「で、でも僕なんか・・・そう言うおうとすると、めぐは僕の唇に人差し指を<br>
添え、言葉を制止する。</p>
<p>めぐ「ねぇ、もう一回歌っていい・・・?」<br>
僕はそれ以上何も言わなかった。今はただ、この優しい時間を過ごしてていたい・・・。</p>
<p>
静かな午後、いつもの場所、いつもと同じ時間にめぐはいなかった。少し待っていても彼女は来ない。<br>
『面会の人でも来てるのかな?』<br>
そう思いジュンは病室に戻るため歩き出す。屋上の扉に手を掛けると同時に開くそれ。そこにはめぐの姿が。<br>
ジ「あ、どうしたんだよ?今日遅かったな。面会でもあったのか?」<br>
めぐ「ジュン・・・。」<br>
ジ「ん? 」<br>
めぐ「話したい事があるの。」<br>
ジュンは気付いていなかった。めぐの声にはいつもの輝きが無かったことを。</p>
<p>
めぐ「私ね・・・もうあなたに会えなくなるわ・・・。」</p>
<p>ジ「え・・・?それって・・・?」</p>
<p>
ジュンは混乱した。あのめぐがこんな不謹慎な冗談は言わないと知っていたから。<br>
めぐ「私の病気・・・前に話したわよね?」</p>
<p>
以前、めぐから聞いた話しだ。めぐは心臓の病気だった。幼い頃からのモノで、<br>
薬や手術で今まで永らえてきたらしい。めぐに告白したあの日、余命はあと5年だったそうだ。<br>
それでも僕は気持ちを伝えたかった。<br>
そして、あれからまだ一ヶ月しかたっていない。</p>
<p>
めぐ「今日、病気の定期検査を受けたの。そうしたら、あと2ヵ月ももたないって・・・。」<br>
僕の頭の中は真っ白になった。めぐ、何言っているんだ?</p>
<p>
冗談は言わないと知っていた。冗談じゃないと分かっていた。<br>
だけど・・・。<br>
ジ「は、はは。変な事言うなって。あ、そういや今日姉ちゃんがお菓子持ってきてくれて・・・<br>
めぐ「聞いて・・・ジュン、私・・・。」</p>
<p>
『言うな言うな言うな言うな!聞きたくない聞きたくない聞きたくない!』</p>
<p>
言葉が止まる。ジュンはめぐを見る。目の前でめぐは泣いていた。<br>
めぐ「もうダメなんだ・・・。私、『壊れた子』だから・・・。」<br>
そう言いながら彼女はケラケラと笑っている。大粒の涙と共に。<br>
ジュンはその場にへたりこんでしまった。<br>
そんなジュンを背中から優しく抱き締めるめぐ。</p>
<p>
めぐ「ジュン、私ね、死ぬことなんて怖くなかった・・・。こんな苦しい命なら、<br>
いっそ早く枯れてほしかった・・・。だけどあなたに会って、一緒に過ごして、私思ったの・・・。<br>
もっと生きたいって・・・まだ死にたくないって・・・。」</p>
<p>ジ「・・・め、・・ぐ・・・。」<br>
『なんて言えばいいんだ?
僕はどうすればいいんだ?どんなに優しい言葉を<br>
かけても、めぐの命を、心を救うことはできない。僕はなんて無力なんだ・・・。』</p>
<p>
僕はただめぐを抱き締め返すことしか出来なかった。そんな自分が憎くて仕方ない。<br>
僕は声を上げ泣いた。めぐは僕の胸の中で、静かに泣いた。</p>
<p>空は雲ひとつ無い、晴天だった。</p>
<p>
その日からめぐは集中治療室に入り、会う事ができなくなってしまった。<br>
そして、めぐの死を知ったのは予想より早くだった。</p>
<p>
それからはいつもとは違った・・・いや、いつもどおりだった。今までの時間はまるで甘い夢のようだった。<br>
むしろ夢だったのかもしれない・・・。<br>
――――――――――<br>
少し前のことを思い出していた。<br>
ジ「人間なんて脆いよな・・・。」独り言を呟きながら僕は屋上で風に吹かれている。<br>
めぐと過ごしたあの場所で。 涙はとうに枯れてしまっていた。<br>
ジ「いっそのこと人形になれればいいのにな・・・。」「はは、やっぱり僕は狂ってるよ、めぐ。」<br>
・・・瞬間、強い風が体を揺らす。</p>
<p>『ふふ、なら私も狂ってるわね。』<br>
ジ「・・・めぐ?」</p>
<p>風が止む。耳に残るは彼女の声。<br>
それは刹那に見た白昼夢か。はたまた風の運んだ幻か・・・。<br>
ジュンはまた空を仰ぐ。もう眩しくはなかった。</p>
<p>
『そうだ・・・僕には帰る場所がある・・・。そして僕は君の分まで生きなくちゃならない。<br>
めぐ、君はいつもそばにいてくれるだろ?・・・今度は僕が歌うよ。命の歌を・・・。』<br>
そう言って屋上をあとにする。</p>
<p>空は晴れ渡っていた。</p>
<p>きっと雨は降らない。<br>
fin</p>
<hr>
季節は夏。<br>
詳しく言うと夏休み。<br>
部活が午前中で終わって帰っている途中の事<br>
突然の雨。気持ちよかったが雨宿りしたい<br>
そんなときに目に付いた図書館<br>
当分雨は止みそうにない<br>
J「雨宿りにはちょうどいい」<br>
そんな事を考えそこに入る<br>
夏休み、しかも正午を回ったぐらい<br>
当然人はすくなかった<br>
J「ここに来たのは久しぶりだな・・・・」<br>
ずいぶんと様変わりしていて少し寂しかった<br>
感傷に浸りながら本を選び席に着く<br>
「よかったら・・・これどうぞ?………」<br>
ずぶ濡れの自分に差し出されたタオル<br>
顔を上げて声の主を見る<br>
知らない人。少しやつれているような………でも綺麗な人<br>
見とれながらその優しさを受け取る<br>
J「ありがとう………」<br>
こんな事をされたのはいつ以来であろう?<br>
「私………用事があるので………さよなら!」<br>
そう言って飛び出す女の子<br>
まだ雨が降っているのに…………
<p>次の日会えるかも知れない<br>
そんな甘い考えと共に<br>
同じ時間に図書館に行く<br>
昨日と同じ場所で女の子は本を読んでいる<br>
J「昨日はありがとう」<br>
大きな声は出せないが精一杯の感謝を込める<br>
「あまりにも濡れていたから………」<br>
少し恥ずかしそうな女の子<br>
昨日はよく見てなかったのでわからなかったが<br>
歳は同じ。もしくは1つ上ぐらいか?<br>
昨日の気持ちを忘れぬ内に切り出す<br>
J「昨日の恩返しがしたい…………これから昼食にでも?」<br>
「大丈夫です!………それにお昼はもう食べたし………」<br>
『キュー』<br>
彼女の方から音が鳴る<br>
顔が赤くなる<br>
お互い吹き出してしまう<br>
J「ははは」<br>
「ふふふ」<br>
「ゴメンなさいwwやっぱりごちそうになりますwww」<br>
そんななりゆきでレストラン</p>
<p>話していく内に彼女の事がわかりはじめる<br>
名前はめぐと言う事<br>
同じ学校だったこと。<br>
やっぱり先輩だった事。<br>
体が弱く入退院を繰り返している事。<br>
それからの夏休みは図書館に行く事が日課になっていた<br>
楽しかった。<br>
いつもより日常が充実していた。<br>
おたがいが惹かれていったのも事実。<br>
夏休みが終わってもこんな関係でいたい。<br>
J「夏休み終わっても会えるよな?」<br>
「…………うん」<br>
夏休みの最後の会話</p>
<p>久しぶりに部活に出た<br>
先輩からはサボっていた理由を聞かれる<br>
「何で部活サボってたんだよ?」<br>
J「ちょっと図書館でwww」<br>
自慢げに答える<br>
「何々?女?」<br>
J「ここの先輩らしいんですけどねwww」<br>
そう言うと会話が止まる。<br>
先輩達が顔をしかめる<br>
「なぁ?名前とか聞いてないのか?」<br>
J「下の名前だけですけど………確か、メグ?だったと」<br>
先輩の顔が暗くなる<br>
「なぁ?その女の事は忘れろ」<br>
J「なんでですか?」<br>
頭に来る言い方当然返事もぶっきらぼう<br>
「あんまり言いたくは無いんだけどな…………<br>
俺は同じクラスだからよ………<br>
昨日の夜に緊急入院でさ………死んだよ……」<br>
J「そんなwww悪い上段はやめてくださいよ」<br>
本当の事を言ってる風にしか見えない<br>
信じたくない。それが本当であっても<br>
「こんな事………冗談でも言えねえよ………」<br>
その場に崩れ落ちる僕<br>
周りのことは考えない。<br>
嗚咽が響き渡る<br>
そんな中水銀燈から渡される手紙<br>
「………最後まで私じゃなくてあんたの名前しか呼ばなかったわ」<br>
「くやしい………」<br>
そんな事葉を言い捨てて立ち去っていった</p>
<p>
「わ、わかったわぁ・・・着替えるから出てもらえるぅ?」<br>
「・・・いや、体育の時いつも胸を揉み合っているじゃない」<br>
薔薇はサラッという、やっぱ怖い<br>
「し、してないわよぉ!!出ててぇ!!」<br>
「・・・いやだ、銀の裸・・・下着姿見たい・・・」<br>
普段まじまじと見ることができないので、無理な注文<br>
恋人同士の独特の雰囲気が、部屋ごと包む<br>
「わ、わかったわよぉ・・・薔薇ちゃんがぁそこまで言うならぁ」<br>
おずおずと脱ぎだしたパジャマ、パサッパサッとカーペットに落ちる<br>
下半身はスラッと伸びた足、身の引き締まったふくらはぎと太もも<br>
上半身はうっすらと浮き出る腹筋、引き締まったウエスト<br>
そして男を殴り飛ばすほどの力がある腕は、華奢で今にも折れそうだった</p>
<p>薔薇は言う<br>
「・・・負けた・・・わたしお腹太いもん・・・」<br>
「プッ・・・」そう言えば薔薇は食欲旺盛、いつも1000円分はあるかと思われる菓子パンを昼食に食べていた<br>
「・・・でも綺麗・・・」そう言うと、ブラをつけていない銀の胸に顔をうずめた<br>
「・・・もう離さないわ・・・わたしの・・・銀・・・」<br>
「薔薇ちゃぁん・・・約束よぉ・・・離しちゃだめよぉ・・・」<br>
銀は微笑み、こう語りかける<br>
「愛してるわぁ・・・」</p>
<p>開ける事が恐かった<br>
読む事が恐かった<br>
めぐの思いが無くなってしまうような気がして………<br>
その日の帰り道の突然の夕立<br>
最初の出会いを思い出す<br>
J「…………めぐ…………」<br>
そこで気づく<br>
読まない方が彼女の思いを無くしてしまう<br>
開けない方が彼女の思いを消してしまう<br>
向かった場所は図書館<br>
いつも座っていた場所に座る<br>
そこに彼女の姿は見えない<br>
おそるおそる開けた手紙</p>
<p>「ごめんねジュン君<br>
約束守れなくて……<br>
実はジュン君と出会ったときにはもうダメだったの<br>
もう助からないからって退院して図書館にいたんだ<br>
そしたら濡れたジュン君が入って来てかっこよかったなー<br>
思わず声かけちゃってさ<br>
一目ぼれだったんだ<br>
最後に悔いが残らないようにしたつもりだったのに……<br>
逆に悔いがのこちゃったなー<br>
私は先に天国に行くけど<br>
ジュン君はもっとかっこよくなってから来るんだよ?<br>
あなたのメグより」<br>
声を出して泣きたかった<br>
メグの声が聞こえた気がした<br>
「よかったら……どうぞ?」<br></p>
<hr>
表示オプション
横に並べて表示:
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