水銀燈「もー!なによー!
わたしと雛苺のどっちが大事なのよー!!」
JUM「いや、さっきから雛苺って・・・何を争ってるんだ?」
水銀燈「いいから、この際はっきりしなさいよー!
どっちか言うまで帰さないんだからあ!」
JUM「・・・えー?・・・うーん
そうだなー・・・
雛苺かな。8:2で。」
水銀燈「う・・・
うぅ~ッ
なんでよぉもぉーッ!!!!!」
JUM「・・・うあ?泣いちゃったのか?」
水銀燈「ジュンのアホーッ!!!」
JUM「う・・・やばい。こりゃまじだ。」
JUM「お前が一番好き!!」
水銀燈「・・・ほんと?」
JUN「う、うん。
だから今日は一緒に寝よう?
な?」
水銀燈「・・・うん」
水銀燈(…フフ…いつもよりちょっと早めにいって、めぐを驚かしちゃお♪
…ん!?めぐの病室の方から叫び声が…まさか、めぐの身に危険が!?)
めぐ「…俺はァ、あなたが愛おしいいいいい!!!糞まみれにしてくれえええええええ!!!あばばばば!!!ひょえええええ!!!おまえの頭を開いてちょっと気軽になって楽しめ!おまえの頭を開いてちょっと気軽になって楽しめ!」
水銀燈「!」
看護婦A「…また、めぐちゃんの歌が始まったわ(ヒソヒソ」
看護婦B「…困ったわね(ヒソヒソ」
水銀燈「…め、めぐ…あああ」
ふと目が覚め、暗闇の中を手探りで時計を探す。病室に差し込む月明かりに、時計をかざしてみる──午前三時だ
街は眠っている、物音一つ聞こえない。深海の底に沈んだ棺の中に居る気分だ。
私は、生きてるのだろうか?──急に不安になる
目をつむり、心を落ち着かせる。しかし焦燥感がこみ上げる。
私は まだ 死にたくない
寂しさと恐怖から涙が滲んでくる。
「…天使…さん」──呼んでみる、いるはずないのに…
「…歌、…うたって」──誰かの声…
「からたちのとげは痛いよ…青い青い 針のとげだよ…」
~五月雨~
水銀燈「んんっ・・・・・」
朝、彼女は深い眠りから外の小さな雑音で目が覚めた
今日は今の季節は変わって妙に肌寒く、さきほどまで寝ていた毛布に包まりながら窓の外を眺めると雨が降っていた
雨・・・
それは彼女に1つだけ心に残る事を思い出していた
水銀燈「早く止むといいわぁ・・・・・」
雨は街を行き交う人々に執拗に降り注いでおり、いつもの朝と変わって光が溢れてはいない
彼女は寝惚けながじっとそんな景色を眺めていた
暫くして彼女は私服に着替え、朝食の準備等を済ませ朝食を始めていた
トースト・サラダ・コーヒーなど実に質素ではあるが彼女にとってはこれ以上は必要もなく、十分な朝食である
水銀燈はテレビのリモコンを手に取りピッと電源のスイッチを押した
「本日は全国的に降水率が90%です。お出かけの方はかならず傘を持って・・」
水銀燈「(はぁ・・・今日はずっと雨みたいだわぁ・・・)」
彼女はため息をつきながらテレビの電源を切り、外に出かける準備をし始めた
毎朝必ず朝食後の散歩は彼女に日課になっており、今日も例外ではなかった。
水銀燈「(まぁ、たまには雨の中を歩くのもいいわぁ・・・)」
そんな事を思いつつ冷蔵庫からバスタオル、ハム、牛乳、小皿などを自分の手持ちのバックに詰め込み傘を2つ用意し、少し肌寒い外へ出かけた
ザー・・・・・・・・
彼女は少し鬱になった。こんな寒い中に居たら風邪を引いてしまう、そんな事が頭によぎりいつも以上に歩く速度を速めていた
ほんの少し歩いたところその子は小さな声を上げてそこに一人寂しく誰かを待っていた。
この子を拾ってください
雨が降りしきる中、その子はニャーニャーと行き交う人々に声をかけているが誰一人立ち止まらず自分とは関わりが無いんだと言わんばかりにその子を通り過ぎていた
水銀燈「(いつから私はこんなに甘くなったのかしらぁ・・・)」
その小さな仔猫の前に向かい予備に持って来た傘を1つ取り広げ、その子に襲い掛かっていた無常な雨を遮断した
その仔猫は水銀燈を見るとニャーニャーと体を振るえながらもじっと見ていた
水銀燈「貴方はなんで捨てられちゃったのかしら・・・」
彼女はその子をバスタオルで念入りに拭いて上げてから持って着た小皿に牛乳を注いでハムを2切れその子に与えてあげた
仔猫は彼女から施してもらった自分の生きるための食べ物に必死に食べ始めた
それは1日振りの食事であろうに、とても美味しそうに食べている。
水銀燈「貴方も一人で寂しくないの・・・?」
そんな答えも返ってくるはずも無い事を仔猫に投げかけていた。
そう、私はいつも一人で居た。それが寂しいなんて事は自分で麻痺してきてしまったんだろうか
この子を見るまでは
一通り与えられたミルクとハムを食べ終わったその子は水銀燈にお礼でも言っているかのようにニャーと声をかけてくれた
水銀燈「あらぁ、お粗末様。おちびちゃんなのに沢山食べたわねぇ・・・・」
そんな純粋な目で見つめられ、好意を持たれているその子に水銀燈は悪い気分ではなかった
水銀燈「貴方も私も一人ぼっちなの、こんな寒い中で飼い主を待って居てもどうせ来ないわよぉ・・・」
そんな寂しい言葉を彼女は投げかけたが仔猫は必死に通り過ぎる人や水銀燈に必死に小さな声で引きとめようとしていた
水銀燈「(本当におばかさぁん・・・そんな事で体力を使って死んでもしらないんだから・・・)」
本来ならもう自分もやる事を済ませたら戻る予定だった水銀燈はその場から離れられずに居た
仔猫はまるで自分の様だと
必死に周りに助けてもらいたい。私一人では寂しい。まるでその仔猫は自分の代わりに代弁をしてくれているような姿を目が離せなかった
はぁ・・・私も本当にやきが回ったのかしらぁ・・・・
彼女は仕方が無いと決心をつけ、その子を両手に抱いた
水銀燈「貴方は一人なの。私も一人・・・そんな子同士だけど楽しくなるかしらねぇ・・・?」
その仔猫は水銀燈の暖かい胸の中でゴロゴロと鳴きながら体を水銀燈に預けた
そして自宅へ戻ろうとした時には雨がやみ、空には大きな虹がかかっていた。
それはまるで水銀燈の心の中のように澄んで居た
~END~
~アナザーver行ってみる?~
水銀燈「あー!このおばかさぁん。ちゃんとトイレはこっちでしょ~」
仔猫「ニャ~!」
仔猫を追う水銀燈。一人では無い生活。一人では味わえなかったこんな日常
その仔猫はこれからもずっと彼女とその生涯を終えるまで傍にいてくれる。
彼女と仔猫は出会うべきしてあったのかもしれないと水銀燈はそんな事を考えていた
一人は寂しいかもしれない。けどそれは少しのきっかけで変われる事なのかもしれない
彼女達を見れば案外幸せって身近な所にあるんだと思う。
水銀燈「こら~~!そんな所で爪をといじゃいけないって何度も言ってるでしょ~~」
静かだった彼女の家はそれからそんな喧騒を立てながら続いて行く
すたん!
「うわぁ!」
僕が校舎の裏で静かな昼休みを過ごしていると、頭上から人が降ってきた。
正確には背にしている校舎の窓から飛び出してきたと言うべきか。
「あら、人がいた? ごめんなさいねぇ……ってジュンじゃない」
太陽の光を反射して白く輝く髪をなびかせながら振り返った彼女の名は、水銀燈。
クラスメイト程度には親しいがそれほど接点がある訳じゃない。
「何でそんなとこから……」
「しっ! 静かにして!」
「!?」
文句の一つでも言おうとしていた僕は、いきなり彼女に押し倒された。
「どこに居るの、水銀燈! 観念して出てきなさい!」
校舎の中から、もう一人のクラスメイトである真紅の怒声が聞こえてきた。
真紅と水銀燈は仲が良いのか悪いのか、いつも些細な事でいがみ合っている。
どうやら今回はそれに巻き込まれたらしい。
僕の頭を抱え込むように押さえつける水銀燈。
必然的に互いの顔も接近し、彼女の吐息が僕の顔を撫でる。
「……ふぅ。どうやら撒いたみたいね」
真紅の声が遠ざかり、一先ず危機が去った所で僕は解放された。
「また今度は何をやったのさ……」
「別に大した事じゃないわよ? ただ、真紅の事を心配して寄せて上げるタイプのブラを紹介してあげただけよぉ」
うわぁ……それは……。
「そしたらあの娘、すでに装着済みだったのよ! 可笑しいでしょ? あれでもうバストアップしてるだなんて」
いくら真紅でもそれは切れると思うぞ?
「それじゃ私はもう行くわね。ほとぼりが冷めるまで安全な所に身を隠してるわ」
そう言って水銀燈はこの場から去ろうとする。
「あ……ちょっと待って」
「なぁに?」
「それ……ほつれてる」
水銀燈のブレザーの腕の所のボタンが取れかかっていた。
「あら? 逃げているうちにどこかに引っ掛けたのかしら?」
「ちょっと貸して」
「いいわよぉ、これくらい」
「身だしなみくらい気にしろよ。すぐに終わるから」
僕はそう言って、ポケットからソーイングセットを取り出す。
「脱がなくて良いよ。ボタンくらい袖を通したままでもできるから」
「そんなのいつも持ち歩いてるの?」
「うるさいなぁ……っと、ほい、できた」
ボタンを縫い付けるくらい、ものの数十秒で終わる。
「……ほんと、魔法みたいな指先ね」
「僕のただ一つの特技だからね。しかもそれほど役に立たない」
「そんな事無いわよ。少なくとも私にはできないし」
「男が誇れるものじゃないよ」
実際、昔はそれで苛められた事もあった。
「ふぅん……それじゃあ……」
含んだ笑みを滲ませながら、徐々に水銀燈の顔が近づいてきた。
「え……え?」
その唇が軽く僕の頬に触れる。
「報酬よ。あなたはそれだけの事をしたのだから、もっと誇りなさい」
「声が聞こえたわ! こっちなの、水銀燈!!」
「やばっ! それじゃ今度こそ私は行くわ。真紅には適当に誤魔化して置いてちょうだい」
水銀燈はそう言い、スカートの裾を翻らせながら駆けて行った。
「……白か……」
彼女の唇が触れた部分が、僅かに熱を持っているような気がした。