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何でもない昼休み。僕はいつものように過ごしていた。

翠「JUM、ちょっと付き合えです」
J「・・なんか…かったるい」
翠「折角翠星石が誘ってやってるのだから文句言うなです!」

そう言うと翠星石は僕を屋上に連れ出して
糸電話を手渡した。糸の長さは10mはあるだろう。

J「糸電話か・・懐かしいな」
翠「JU・・聞こえ・・るで・・か」

流石に長過ぎたのだろうか?
声がよく聞こえない。

翠「翠星・・はJ・・Mが・・・きです」
J「え・・」

とっさに翠星石を見ると頬を赤く染めていた。
声はよく聞こえなかったが伝えたいことは分かった気がする。

J「僕も翠星石の事、好きだよ」

この声は翠星石に届いただろうか。


僕は夕日が大好きだ

夕日が沈めば一日は終わる
このつまらない一日は終わる
ただ同じことを繰り返す一日は終わる
だから僕は夕日を見るたびに思う
『早く沈め』と

・・・

僕は朝日が大嫌いだ

朝日が昇れば一日が始まる
またつまらない一日が始まる
ただ同じことを繰り返す一日が始まる

制服に袖を通す
制服の冷たさが肌に伝わる
トーストをくわえて家を後にする

「あっ、ジュン・・・」
聞き覚えのある女の子の声
心地よく耳に通る女の子の声
「・・・翠星石か」
「翠星石か、じゃねーです」
言葉が返ってくる
彼女、翠星石は僕の家のお隣さん、つまり僕とは幼馴染だ
「げ、元気がないみたいだから翠星石が一緒に学校に行ってやるです。か、感謝しやがれです」
「・・・いいよ。僕なんかといたらクラスのみんなに嫌われるぞ」
「いいです。外野には言わせておけばいいです」
「・・・いいってば。先に行く」
「あっ、ま、待つですジュン・・・!」
うるさい
どうして僕に構うんだ
お前は僕なんかとはつりあわない
お前は僕なんかとは関わってはいけない
お前は僕なんかとは一緒にいられない

「おはよー」
「おーす」
「今日もさみーな」

挨拶が飛び交う教室
仲のいい友達同士での挨拶
同じクラスだから、という義理の挨拶
でも僕が教室に入っても、どちらも聞こえてこない
聞こえるはずがない

時間が過ぎる
授業が進む
私語が多くなる
どれもこれも
僕には関係のない時間
僕には必要のない時間

ふと聞こえてくるひそひそ声
ああ、また僕のことか

次第に規模を拡大する騒音
聞こえているはずなのに無視をする教師
うるさい
うるさい


プロローグ


いつもの朝。いつもの通学路。そして、いつものあいつ。

何も変わらぬ日常。

僕は何を勘違いしていたんだろうか。

こんな日がずっと続くと。

それが当たり前だと。

ほんの小さな事で、世界は色を失ってしまう。

失って初めて気付く。
彼女が僕の、全てだったと。


これだと、どう見みても暗い話になりそうだな…

J「ふぁ…眠…さすがに徹夜は無茶だったか…」
あくびをしながら、JUMはいつもの道を学校へ向かって歩く。
翠「JUMーー!!!」
ドドドド…ドンッ!
J「ぐぼっ!!」
寝不足のJUMは、後ろから猛然とタックルする少女を避けれなかった。
翠「JUM、おはよー!なのです!」
J「げほっ、げほ…って、何すんだよ翠星石!」
翠「何って、朝のスキンシップです~♪」
J「スキンシップって…なんだよそれ。やるにしても、もうちょっと優しく頼むよ…」
翠「ダメですぅ~。朝の出会いは、その日一日を決める大事な場面なのですから。翠星石のJUMへの愛を、全身で表現するですよ!」
J「そんな無茶苦茶な愛、受けとめきれないって…」
翠「無理でも何でも受け止めるです!」

いつものやりとり。いつもの風景。

J「くっつくなよ!歩きにくいだろ」
翠「いやですぅ~。離れないですぅ~。」
J「ったく…」

その日も、いつもの様に一日が過ぎて行くはずだった。

翠「じゃあ、また後でです…」
J「毎朝そんな哀しそうな顔すんなよ。別にクラスが違っても、またすぐ会うじゃないか」
翠「嫌です!翠星石はJUMとずっと一緒にいたいです…。少しも離れたくないです…」J「そんな事言ってもしかたないだろ。じゃあまた後でな。」
翠「あう…です」
ガラガラガラ…
雛「JUM!~おはようなの~!」
真「おはよう、JUM」
銀「おはよぉ~。」
JUM「よぉ。おはよう。」
教室に入ると、いつもの面々がすでに集まっていた。
銀「朝から大変ねぇ~」
J「聞いてたのか…」銀「あれだけ大声で騒げばねぇ。ま、毎日の事だしねぇ~。おアツイ限りねぇ~」
J「俺の身にもなってみろって…寝不足の頭にはしんどいよ…」
銀「若いっていいわねぇ」

ガラガラガラ…
梅「おーい、授業始めるぞー」
J「さて…寝るかな…」
僕は子守唄が始まると同時に眠りについた。


誰もいない屋上
「よくここにいるよね」
透き通るような空
「珍しいな授業はどうした?」
吹き抜ける風
「さぼっちゃった」
優しい光り
「どうして?」
虫の囁き
「……なんとなく」
そこには色々な物がある
「な~んだ」
しかし望む物があるとは限らない
「なんで?」
けど、今は違う
「俺に会いに来たかと思って」
今は……
「……だったら?」
今だけは……
「えっ?」
君がここにいる
「な~んてね」
ただそれだけでよかった
「なんだよそれ」
変わる必要は無い
「キス……しない?」
君がいるなら

独特の香り
「何してるです?」
独特の雰囲気
「何って本を読んでるだけだぞ」
窓から溢れる光りは辺りを照らす
「チビ人間に分かるですか?」
静寂な時の流れ
「なんだよそれ」
彼女がいると全てが崩れる
「楽しそうですね、翠星石にも見せるです」
彼女の香りが
「別なの読めよ」
彼女の雰囲気が
「翠星石はこれがいいです」
彼女の笑顔が僕の心を照らし
「しょうがないな」
僕の理性を乱す
「こらっ翠星石がまだ読んでないのにページをめくるなです」
けど、たまにはそんなのも悪くない
「分かったよ」
いや、君がいて悪いことなんてない

~終わりだす


~B part Go!~
「翠星石-。大丈夫かー?」
医務室のドアを開けたジュンはギョッとした。怪我人が30人ほどいるのだ。それに。
「セエイ!セイセイ!どうしましたー?あなたも怪我ですかー?」
「う・・・HG先生。華陀先生って・・・?」
「セイセイセイ。華陀は私のPNみたいなものですよー(自主規制)―――!」
「あの、翠星石は・・・?」
「あぁ、あの子ですかー。あの子はこの私特製の軟膏を私ておいたからもう大丈夫(自主規制)--!さっき入れ違いに出て行きましたー」
「そうですか・・・」
「ちょっと待ってくださーい。もしあなたも怪我をしたなら、この私の特製注射で・・・バッチコーイ!」
HGはピシャンとケツを叩くがジュンは華麗にスルーして教室を出ていった。

(翠星石・・・ドコだ?)
先ほどの玉いれでは自分は直接は悪くはないのだが、なんとなく後ろ髪を引かれる思いがしたので、一言侘びを入れようと思っている。
「ジュン!なにキョロキョロしてるデスか?」
名前を呼ばれて振り向くと翠星石が立っていた。彼女の手にはHG特製の軟膏が握られている。
「翠星石・・・あの」
「いいからちょっとこっちへ来やがれデス!」
ジュンの腕を強引に握った翠星石はズンズンと歩き出し、人気の無い校舎の外れにある教室にやってきた。
カチャン。
「なにを・・・?」
「鍵・・・掛けたデス。これで邪魔は入ってこれないデス。ジュン。ちょっとお願いがあるデス」
翠星石がジュンの胸にもたれかかってくる。見上げる彼女の瞳は少し、潤んでる。ジュンは息を呑んだ。
「あの・・・薬塗ってほしい・・・デス。HG先生は股間に薬をつけて塗ろうとしてくるから・・・嫌デス」
なんだそんなことかと胸をなでおろしたジュンだが、翠星石が突然服を脱ぎだしたのでさらに驚いた。
「ななななんで服を脱ぐんだ!?」
「だって背中とか服をぬがなけりゃ塗れないデス」
体操服を脱いだ翠星石はブラジャーも外し、ブルマ一丁となる。濡れたように艶のある髪を前に移動させ、背中を露わにさせる。
「ホラ。早く塗るデス」

ジュンは軟膏を手にとり、赤いアザが出来ている背中へと手を伸ばす。このまま放っておくと青なじみになってしまうなと思いながら軟膏を塗ると
翠星石は背中をびくんっと震わせた。
「ごめん・・・。痛かった?」
「・・・大丈夫デス。それより早くするデス」
いつもはもっと口やかましい翠星石が神妙にしている。
沈黙が続く。翠星石の考えていることがわからない。故になにをいっていいかわからなく、ジュンはただ黙々と軟膏を塗っていた。
「ジュン」
「なんだい?」
「ジュンは・・・このまま、このまま真紅と水銀燈の景品となっていいのデスか?」
翠星石はジュンの顔をみることなく喋り続けた。
「みんなの気持ちわかってるのデスか?・・・ジュン!答えるデス」
「・・・もう昔のようには戻れないのかな」
薬を塗る手を止めてジュンがポツリと呟く。
「もう戻れねーデス!なにを残酷なことを言ってやがるデスか!」
翠星石はジュンと目を合わせる。振り向いたときに彼女の髪は背中に戻り、胸が露わになる。たゆん、と揺れた。
「翠星石、服を・・・」
ジュンは目を逸らす

「服なんて関係ねーデス!ジュンは誰の気持ちも知らないんデス!真紅も蒼星石も薔薇水晶も金糸雀の気持ちも!そして私の思いだって・・・気づいてくれねーデス」
翠星石の頬に涙が伝った。
「・・・誰も傷つけたくないといったら・・・僕は卑怯者になるんだろうね」
翠星石はジュンの瞳を見つめる。彼の言葉に嘘はないようだ。翠星石のエメラルドグリーンの瞳とスカーレッドの瞳はどこまでも澄んでいる。
「・・・ハッキリさせないデスか・・・ジュン、手を貸すデス」
「え?」
ジュンの手を取った翠星石は自分の胸にジュンの手を当てる。初めて味わう感覚にジュンは少したじろいだ。
「どうデス?感じるデスか?翠星石の鼓動・・・ジュンのせいでこんなに速いデス・・・。雛苺や水銀燈に比べると貧相な胸デスが」
そう言った翠星石はてへッと舌を出した。
「よかった・・・翠星石、やっと笑った」
ほっとしたジュンは空いている手で翠星石の頬に触れた。
「ジュン・・・翠星石を抱いて欲しいデス・・・」
翠星石の言葉にジュンは動揺することなく、首を振った。
はっとした翠星石はその手を両手で握る。
「ジュン・・・言うデス。翠星石はジュンのことが好きデス。昔でもジュンは優しいから、きっと翠星石を振ってはくれないデス。だから・・・だから言うデス。初めての人はジュンがいいデス
そんな・・・そんな一生に一度のお願いですらダメだというのデスか?」
「翠星石・・・それだけはできない」

「・・・そうデスか。なら言わせて欲しいデス。翠星石はあなたのことが好きです。勝手に好きになりました。
でも今日、あなたに振られて、諦められないけれど・・・勝手に諦めていきます
。でも、最後だけ翠星石のワガママを聞いてください」
そう言った翠星石はジュンの唇に己の唇を重ねた。初めてだけど、一生懸命。この時間だけはこの人を独占したい。
でもいつまでもこのままでいたい。涙を流しながら、初めてのキスを味わった。
ジュンは優しく翠星石を抱きしめてやる。今は彼女のいうことを聞いてやろう。自分で彼女が癒せるものならばと。
唇を離すと二人の間に線ができ、その線が自重で切れたことが、キスの別れの合図となった。
「どうみても勝手な女デス・・・本当に、ヒック・・・本当にありがとうございました・・・デス」

いそいそと服を着た翠星石はさっきとはまるで別人のような表情をしていた。
「さ、早くいくデス!体育祭はまだ始まったばっかりデス!」

翠星石ー、翠星石はどこー?

廊下から、真紅、金糸雀、雛苺の声が聞こえてくる。勢いよくドアを開けた翠星石は叫んだ。

「こーこーデースー!ここー!危うくジュンに貞操を奪われるトコでしたー!」
顔色を変えた三人がこちらに向かって走ってくる。
「て、テメ!このやろう!」
翠星石はジュンに向かってウインクをした。

~B part END~


屋上に翠星石は1人たたずんでいた

―青い空―
―時間の流れはゆったり進む―

午後の休憩時間、翠星石は屋上によく来る
何も変化が訪れない日常
そんなとき決まって考え事をする場所

翠「本当の幸せって一体何です・・・?」

(私はJUMのことが好きです
でも告白する勇気が出ず、いつも悪口を叩き合う中
JUMを愛し、JUMに愛されたなら
それは幸せ・・・?)

―時の流れは誰にも等しく―
―青い空も変わらず広がっている―

J「翠星石、ここにいたのか」

JUMの声が聞こえ思わず振り返る
翠「ち、チビ人間!急に驚かしやがんじゃねーです」
J「悪いな。今時間あるか?」
翠「翠星石は考え事をして忙しいんです
  だからさっさと失せやがらないと承知しねーですよ」

(いつもこうだ・・・思っていることと逆のことを言う自分の性格がもどかしいんです
みんなと一緒に楽しいときには素直に笑い、
誰かが悲しいときには素直に泣く
そんなJUMに惹かれているのに・・・

J「今日は大事な話がある。だからそれはできない」

翠「だ、大事な話ってなんです?」
J「いつもお前は僕と話すと口論になる」
翠「当たり前です!翠星石はお前なんかきら・・」
J「僕もお前に合わせていつも憎まれ口を叩き合ってた。
  でももうそんなのは嫌なんだ。自分の気持ちと逆のことを言い合うのは」
翠「それって・・・」
J「翠星石、僕はお前が好きだ」

翠星石は急に泣き出す

翠「ウ・・ヒック・・、翠星石もJUMのことは本当は大好きです。
  でも、今の関係が壊れることが怖くて言えなかったんですぅ」

JUMは翠星石の手を握る

J「お互い素直じゃなかったよな。
  それと、外に長いこといたから手がかじかんでるぞ」
翠「・・・JUMの手すごく暖かいです」
J「そっか」
翠「これからもずっとこうしていたいんですぅ・・・」

(かじかむ指が求めていたもの、それはJUMの温もりだったんです
 JUMも私と同じ気持ちだった・・・
 本当の幸せは案外傍にあったんです)

翠「JUM・・・?」
J「ん、どうした?」

翠「私は今、幸福なんです」


夏にしては肌寒い日だった。放課後に下駄箱前で翠星石に偶然会ったのは
外が酷い雨だからだと思う。普段の彼女は優しそうな外見と強気な態度で
少し怖いくらいなのに下駄箱前で寂しそうに髪をいじる姿が
外の雨降る景色と紫陽花に合わさってどこか不思議な印象だった。
「まだ帰って無かったの?」
少し離れた距離から声を掛けたのに目に見えるくらい驚いた様子で
翠星石はこちらを見つめた。
「…傘ドロボーのばかやろーですぅ」
ぽつりとそれだけ呟くと翠星石は自分の足下に目をやり口を噤んだ。
良く見れば髪の毛先から、制服のスカートの裾から、頬の美しいラインを伝って
雨垂れがぽたりぽたりと水溜まりを作っている。少し震えていた。
「馬鹿、教室にいりゃ良かったのに…」
そこまで言って、こんなに体中を濡らしたままでは教室に入っても
そこら中の床やイスを濡らしてしまう、と翠星石が気遣っていた事に気がついた。
いつもの翠星石ならここで自分の意見を言い僕を捩じ伏せてふふん、と鼻で笑っていただろう。
しかし、翠星石は何も言わずにじっと下駄箱前で立っていた。

「…あー、その、ごめん。馬鹿は言い過ぎだったな」
それを言ったきり辺りは静まり返ってしまう。誰も来ない下駄箱前に翠星石と僕が
何もせずただ無駄に広い距離を置くだけ。雨の音が響いているだけ。
「………っくしゅんっ!」
くしゃみと同時に鼻を啜る音が翠星石から聞こえた。
「風邪引いてるんじゃないか?」
「近寄るなですぅ」
なんとか場を取り繕おうと近付くと翠星石は嫌がる様に顔を背ける。
「気にするなですぅ…」
(あ、 …翠星石)

僕に背を向けた翠星石は、細い背中も雨をたっぷり染み込ませてしまって
遠目からもうっすらと制服の向こう側の下着が、ブラが見えてしまった。
白い制服と、その中で翠星石の柔らかな体を包むピンクの下着。
傘が無い翠星石が家にも帰れず一人で雨宿りをしていたのは
これだったのかと今やっと気がついた。
(雨の日に雨宿り中の女子、って…そうだよな)
一瞬目を逸らしたがまた横目でちらりと翠星石の背中を見つめる。
黙っていれば儚げで優しそうな女の子に見える翠星石は、しょっちゅう痴漢やら
変な奴に声を掛けられるらしく、朝から翠星石の機嫌が悪い日は
大抵嫌な目に遭ったからだ。

購買の傘は売り切れ状態なのは確認済みだ。近くのコンビニの傘も
薔薇高校の生徒達が買い占めてしまっただろう。
また翠星石がふるっと体を震わせた。それに合わせて雨垂れがまた水溜まりに落ちる。
「翠星石、僕の傘に入れよ」
「…はぁ?」
「一緒に帰ろ」
思わず口をついて出て来た言葉に自分自身が一番驚いた。女の子と相合い傘…
普段の僕ならそんな恥ずかしい行動考えられない。
「…はっ!お断りですぅ、傘があるならさっさと帰れですぅ」
翠星石はこちらを振り返り気丈に振る舞って見せたがやはり普段の彼女らしくなく
どこか言葉に力が無かった。

「…だって、風邪ひくって」
「大丈夫ですぅ。人間こそ早く帰らないと風邪ひくですぅ」
「翠星石が心配なんだよ」
叫ぶ様に言ってしまいはっと口に手をやり翠星石の方を
見ると、翠星石の顔が見る見るうちに真っ赤になるのが分かった。
「…あ、相合い傘嫌なら、貸す!」
「え?」
うだうだしている今よりも翠星石が風邪を引かない様にするのが一番だと考えた。
制服の上着を脱ぎ鞄から折り畳み傘と、洗濯しようと持って来た体操服の
布の薄い汗臭いジャージを出した。

下駄箱前に近付き自分の下駄箱からスニーカーを出し履くと上履きをしまう。
極力翠星石の方を見ない様にしていたからこの時翠星石がどんなだったかは分からない。
ただ、僕の方を伺う様にじっと視線を感じた。
「コンビニで友達と待ち合わせ中だから」
優しく言おうとしたのに緊張からかぶっきらぼうになってしまい
とにかく翠星石の手に無理やり傘と制服の上着を渡すと傘がわりに
自分の頭にジャージを乗せた。
「それ着れば見えないよ」
「なっ、何が…」
「ピーンク!」
翠星石を追い越す様に下駄箱から校庭へ駆け出すと後ろから「こらー!」と
翠星石の大きな怒声が響き渡る様に聞こえた。
声からは分からなかったけど、ブラの色をからかって言った
瞬間のあの翠星石の顔。
「…すげ、可愛い」
耳まで赤くなって眉は困った様に垂れて口は声を出さないまま
ぱくぱくと動いていた。
これでいいんだ。
相合い傘しようと言った事も、
心配だなんて言った事も、
上着と傘を貸した事も、あの一言でありがたみが消えて無くなる。
それでいい、明日から気まずい思いをする必要も無い。

いつもと同じ、ちょっと乱暴な女の子と仲がいいだけの同級生のまま、
変わらない一日が明日もきっと始まる。
「…僕の意気地無し」
明日はきっと晴れるだろう。
傘を盗んだ犯人や僕の気持ちも何もかも明日に持ち越して今日は早く寝てしまおう。
誰も待たないコンビニにダッシュで駆け込み傘を探している側で
翠星石が僕に気付く様子も無く顔を赤らめて雨の中通り過ぎて行った。
制服の上に男物の上着を羽織り、なぜか可愛くて少しだけ切なくなった。

(後日談)

翌日、朝の学校
蒼「…なんか今日、元気がないね、風邪ひいた?」
翠「そっそんな事ないですぅ…(傘返さないとですぅ)」
蒼「そう?無理しないでいいからね」
翠「うん…(ところで傘は誰が盗んだんだろうですぅ…)」
水「あら、翠星石ぃ…」
蒼「おはよ」
翠「おはようですぅ」
水「おはよぅ…翠星石ぃ、昨日は助かったわぁ」
翠「なにがですぅ?」
水「これ、昨日困ってたのよぅ」
翠「なっ!傘、なんで水銀燈が!」
水「あなたの置き傘…ありがたく昨日貸してもらったわぁ」
翠「…!(水銀燈のせいで…!)」
蒼「もう、一言言ってからにしなよ。昨日は運良く翠星石も傘を二つ持ってたから良かったけど」
水「あらぁ?あなた昨日は雨降る前に帰らなかったかしらぁ?」
翠「…す、水銀燈ぉぉ!!覚悟しやがれですぅ!!」
水「きゃぁぁ、何よぅ。痛い!許してぇ」
蒼「(なんか恥ずかしい事があったんだろうな…)」


JUM、風邪でお休み。


携帯が鳴る。見ると翠星石からだった。電話に出る。
翠「私ですぅ 翠星石です!」

翠「大した用事じゃねぇですけど、どうしてるかなと思っただけです!」

翠「なっ、何を言ってやがるです!別に翠星石は寂しくなんかねぇです!」

翠「あっ待ってです。明日のお弁当!そうです。お弁当のリクエストです!」

翠「わっかたです。任せるですぅ!」

翠「うん、おやすみです!本当は、ちょっと声が聞きたかったのですぅ♪」


チビ人間不登校2日目
目が覚める。覚醒直後の気だるさと、先日の記憶にセーフティーシャッター
をかける妙な感覚が体を包むのが分かる。ベッドから身を起こして息を吸う
「・・・・・」
終わった、僕の人生は終わった。
昨日人のプライベートの領域を荒らした違法新人教師が来たがどうだっていい。
窓から漏れる陽光がもう昼頃である事を告げている。
朝五月蝿いのが何か言っていたが、最早覚えてもいない。
「ヒマだな・・・」
両親は外国で姉は登校中、今この家に居るのは自分一人だ。
飲み物を取りに行こうと部屋を横切る途中にPCをつける。

女物の衣装をデザインし始めて何年立つか、ふと思案する。
デザインはしても、実際にそれを仕上げて使用するアテが無い。
だからデザインはしても製作はしない。ふう、とため息をつく。
衣装といえばコスプレか、とふと思い、検索。
「他の俺のような異端者は一体どんな・・・」
ヲタク系のサイトの中から大きめそうなものを一つを選びクリック。
途端、表示されたものは―――
「・・・・・( д )   ゚ ゚」
左右別々の色のカラコンを付けた女子高生くらいの女子。
薄い色の髪は長く、手には如雨露を持っている。
「なんだこいつ・・・」
じっくり3分程見とれる。
はっと我に返ると、自分が一つの事を妄想していた事に気がついた。
(こいつなら似合う・・・?)
気付いた時には、目の前に先日のノートと、裁縫箱が置かれていた。



『惚れ薬入りのクッキー』

今日の家庭科の時間は、調理実習でクッキーを作ることになっていた。
俄然、張り切っているのは翠星石だ。彼女はこのクッキーで、ジュンを
落とそうと思っている。
翠「これでジュンはイチコロですぅ~。いっしっし」
出来上がったクッキーに隠し味を入れる。ネギ先生にもらった惚れ薬だ。
翠「惚れ薬入りのクッキー。まさに完璧ですぅ~」
蒼「翠星石、クッキー出来たみたいだね。僕に一つ味見させてよ?」
翠「だ、ダメですぅ~。これは特別な成分が入っているんですぅ~」
蒼「特別な成分?青酸○リでも入れたの?」
翠「私は人殺しですかぁ!?そんなもの入れてねぇです!」

ネギ先生は、魔法使いだ。そんな先生が調合した惚れ薬なら、完璧に
ジュンは翠星石に惚れるだろう。でも、それで本当に良いのかな?
勝負は放課後。みんなが帰る前に、ジュンを呼び出すつもりだ。
翠「……ジュン、あの…ちょっと用事があるから来やがれです!」
ジュン「はぁ?人にものを頼む時は、丁寧にっていつも…」
翠「い、良いからさっさと来るです!能書きはいらねぇです!」
手を引っ張り、翠星石はジュンを連れて行った。告白するには
ばっちりの場所。三階廊下奥、別名『過疎区』ここなら邪魔をする人はいない。

緊張しているせいか、クッキーを持つ手が震える。
果たして本当に、惚れ薬の効き目はあるのだろうか?

手が震える。顔が紅くなる。目を見ながら話せない。私は目を背けながら
クッキーを渡した。
ジュン「これって、家庭科の時に作ってたやつ?」
翠「そ、そうです。お前のために作ってやったです。ありがたく食いやがれです」
ジュン「はいはい。食べれば良いんでしょ。食べれば」
ジュンが私の作ったクッキーを食べた。急に怖くなってくる。
翠「ど、どうですか…?おいしいですか?」
ジュン「うん、普通においしいよ。甘さもちょうど良いし」
翠「良かったです…」
ここからが、本番だ。惚れ薬はちゃんと効いているのだろうか?不安に
なりながらも、私は口を開く。心臓は止まるかと思うくらい加速した。

翠「そんなにおいしいなら、これからは私がお弁当とかも作ってあげるです」
ジュン「いや、悪いよ。毎朝作るの大変だろ?僕のためなんかに…」
翠「お、お前だから作ってやるんです!」
ジュン「それってどういう…」
翠「鈍感ですね!私はジュンが好きなんです!気付きやがれです!バカ!」
どうしてこんな告白しか出来ないのだろう?もっと可愛く言いたいのに…。
でも、ジュンは私の頭をなでながら、言った。
ジュン「ありがとう…。僕も、お前のこと好きだよ?」
翠「そ、それは付き合ってくれるってことですか?」
ジュン「ああ、そうだよ」
やった!惚れ薬の効き目はやっぱり絶大だったんだ!こうして私は
めでたく、ジュンの恋人になれた。

翌日、私はネギ先生の元に行く。ちゃんとお礼を言わないと。
ネギ先生は、化学実験室で、くつろいでいた。
翠「ネギ先生、惚れ薬の効果絶大だったです。ありがとうです」
ネ「ああ、それは良かったですね。翠星石さん」
翠「やっぱり、先生は魔法使いですぅ~」
ネ「それは違いますよ。魔法を使ったのはあなたの方です」
翠「え?それはどういうことですか?」
ネギ先生は、昨日くれた惚れ薬を机に置いた。昨日と同じ、カプセル型
の薬だ。その薬のおかげで、ジュンと付き合えたんじゃないのか?

ネ「これは、ただのビタミン剤ですよ」
翠「え!?それじゃあ、惚れ薬じゃなかったんですか?」
ネ「そういうことになりますね」
翠「じゃあ、どうしてジュンは私と付き合ってくれたんですか…?」
ネ「簡単ですよ。あなたが恋の魔法を使っただけです。クッキーに
惚れ薬じゃなく、もっと効果的なあなたの愛を入れたからですよ」
翠「……は、恥ずかしいこと言わないで欲しいです!」
ネ「ともかく、おめでとうございます。翠星石さん」

惚れ薬なんか使わなくても、愛が強ければ、その思いはきっと届く。
…完。


女生徒1「ねえねえ、あのニュース知ってる?」
女生徒2「まさか・・あの通り魔の事件?」
女生徒1「そうそうそれそれ!」
女生徒2「殺されちゃったのってみんな女性なんでしょ?
    しかも3人も女子高生を・・・・」
女生徒1「犯人もまだつかまってないっぽいし・・私たちも気をつけなきゃね」
女生徒2「うんうん、お互い気をつけよう」

そばで聞いていた翠星石は
翠「ふん、何が通り魔ですかぁ、ちっとも恐くないですよ」
蒼「なにいってるんだい、僕等も狙われるかもしれないんだよ?」
翠「蒼星石は心配性すぎるです。もう少し落ち着くですよ」
蒼「緊張感がたりないんだよ翠星石は・・・もう・・」
翠「じゃあそろそろ帰るです、部活頑張るですよ」
蒼「翠星石も気をつけてね(心配だなぁ・・・)」
翠「とはいったものの、やっぱり恐いですぅ・・
  そうだ!!チビ人間と帰ればいいのですぅ!そうと決まれば・・・」


翠「チビ人間!!この翠星石と一緒に帰りやがれですぅ!!」
J「えーもうべジと帰る約束してん・・・」
翠「うるせえですよ!!そんな約束なんかほっといて一緒に帰るです!」
J「でも・・・」
翠「・・・お願いですよ・・・一緒に・・」
翠星石のただならぬ雰囲気に何かをかんじたのかJUMは
J「わかったわかった、帰ればいいんだろ、帰れば」
翠「最初っからそういいやがれ、ですぅ!!」
J(やっぱいつもの翠星石だ・・・)
べ「JUM!待たせたな、帰るぞ!!」
J「わるい、べジ、ちょっと用事を思い出した・・・スマン」
べ「はあ!?」
J「じゃあな」
べ「ちょ、待てって!」
JUMは唖然とするべジをおいて翠星石の元へいそいだ」

下校中…
べ「なんかおかしいと思ったら…あの野郎ぉ…翠嬢と一緒に帰ってやがってぇ
  今行ってとっちめてやりてえがなんか面白そうだから尾行だw」

翠「…なんか後ろから余計なのがついてきてるですぅ」
J「…(気にしない、気にしない)
  ところでなんで今日俺と帰ろうとしたわけ?」
翠「ぐ、偶然チビ人間を見つけて一人でいやがったから哀れに思って
  声を掛けてやったですよ!」
J「ふーん、…ありがとな…」
翠「なぁ!?い、いいいいきなり何を言い出しやがるですか!?」
J「いや、なんだかんだ言っても翠星石って…その…なんだ…」
翠(あーもう言いたい事があるならはっきり言えですぅ!!)
J「えっと…ヵヮィィし…」
翠「!? いいい今なんて言ったですか!?」
J「とにかく俺はお前が…」
その時、後ろから不穏な空気が…

男「ううう…」
翠「チビ人間?今何か…」
J「え?いや…僕は何も…」
男「うおおおおああああ!!!」
あまりにも唐突な叫び声にJUMと翠星石は腰を抜かしてしまった。
そこには見知らぬ斧を持った男が立っていた。
J「なんだ?あいつは…大丈夫か翠…」
JUMが翠星石を見ると、翠星石は小刻みに震えていた。
翠「…出たです…」
J「なにがだよ!?」
翠「…通り魔ですぅ…話に聞いた…恐いですぅ…誰か…」
JUMに決断する時が迫る…
翠星石と逃げるか…殺されるかを…

JUMは覚悟を決めた

逃げるしかない! と、
J「逃げるぞ!翠星石!早く!」
翠「あ、足がうごかねえですぅ…JUM…早く逃げやがれですぅ」
J「お前をおいて逃げられるか!!」
翠「J、JUM…」
男が迫る。
翠「JUM!!後ろ!!危ないですぅ!!」
男は斧を振りかざす。そして…

-ブシュ-

JUMの肩から鮮血が吹きだす。
J「うあっ!!!」
翠「JUM!!!」
男は薄気味悪い笑みを浮かべる
J・翠「もうだめ(だ(ですぅ…」
そのとき密か(バレ)に尾行をしていたべジータが
べ「おい!てめえ!そいつらに手を出すんじゃねえ!俺が相手になってやる!」
J「べジータ!」
べ「心配無用だぜお前ら!俺が来たからには安心しろ」
J「馬鹿野郎!!なんできやがった!早く警…」
べ「警察ならもうよんだぜ。それにお前らは俺の大事な友達だろ?」
J「状況を考えろよ!?」
べ「まあ見てろ、おいお前、俺を殺ってみろよ」
男はべジータの方を向きそして走っていく
男「うおおおあqwせdrftgy」
べ「遅い!」
べジータはひらりと身をかわし男の鳩尾に強烈な一撃を叩き込む
男「うがああああ」
男はその場に倒れこんだ

その後……
事件は無事解決し、犯人逮捕に貢献したべジータは一躍脚光を浴びた。
べ「いやーなんか俺今めっちゃ俺輝いてるよw」
そこへ…
蒼「すごいじゃないか!、べジータ」
べ「蒼、蒼嬢!!なんでここにくぁwせdrftgyふじこ」
蒼星石はべジータに歩み寄り
蒼「そんなにあせんないでよ。でもほんとにびっくりしたよ
  まさかべジータが犯人を捕まえちゃうなんて」
べ「いやはっはっは照れるなあww」
蒼「それと…翠星石を助けてくれてありがとう。翠星石にかわって僕が
  べジータにお礼をしてあげるよ」
べ「へっ…?」
そういうと蒼星石はべジータにキスをした。
蒼「ああ、恥ずかしいな、じゃあねべジータ」
小走りで蒼星石は走っていってしまった。
べジータの春はすぐそこまで来ているようだ

J「今日も来てないな、あいつ…」
あの事件以来翠星石は一度も学校に来ていない。
J「まあ無理もないよな…あんな目にあっちゃ…
  今日会いに行ってみるか」
蒼「やめた方がいいよ」
J「わ!びっくりしたあ、なんでだよ?」
蒼「翠星石が落ち込んでる原因はね、自分のこともあるけど
  ほんとはJUMくんを巻き込んでしまったことが一番の原因らしいんだ
  もし会いに行ったりしたらまた辛い思いをさせてしまうと思うんだ」
J「だからって…このままじゃ…よくないよ!!」
蒼「J、JUMくん、待って!!」
JUMは学校を後にした

J「翠星石!いるんだろ!開けてくれ!」
翠「い、いやですぅ、開けないですぅ!」
J「まだ気にしてるのか…」
翠「JUMは翠星石のせいで死にかけたです。あわせる顔がないですぅ…」
J「そんな事は気にしてないよ。それと…」
翠「?」
J「今、JUMっていったよな?名前で呼んでくれたな?」
翠「違うです。これは…」
J「翠星石に名前で呼ばれたのは、久しぶりだなあ」
翠「か、からかいにきたのですか!?とっととかえるですぅ!!チビ人間!!」
J「いつも通りの、翠星石だな」
翠「あ…」
J「出てきてくれ、翠星石。伝えたいことがあるんだ。
  頼む…」
ドアがゆっくりと開く
翠「さ、さっさといいやがれですぅ!」
J「あの時言い逃したけど俺は翠星石、俺はお前が
  好 き だ」
翠「…す、翠星石も、ですぅ…」
二人はお互いを抱きしめあった。
夕日が二人を優しく包むなかで…

END


今日はバレンタインだ
あいつに思いを伝えたい
でも、できない。
理由は簡単。この関係を壊したくないから。
でもこの気持ちを簡単にあきらめられるほど私は人間できてない。
今日はバレンタイン。
この気持ち、あいつにぶつけて楽になりたいよ

「あっ、チビ人間・・・。」
またこんな風な口しか聞けない。
本当は普通に話しかけたいのに
「なんだよ、性悪おんな。」
私がこんな口しか聞けないから、あいつもイライラするのだろう。
「ふ、ふん!また一人で登校ですか?
しょうがないから翠星石がいっしょにいってやるですう。」
「いや、べつにいいし・・・。」
「づべこべいわずにいっしょにいくですよ!」
「はいはい・・・。」

今日はバレンタイン。
今日こそあいつにこの気持ちを伝えるんだ・・・!


教室に入るとなんだかいつもよりにぎやかに感じた。
ああ、これがバレンタインの魔法なのだろう。
男の子も女の子もみんなドキドキしているに違いない。
かくゆう私もドキドキしているのだが・・・。
「ねえねえ、翠星石ちゃんは誰かにチョコあげるの?」
「ほえ?」
いきなりだったので変な声を上げてしまった。
「わ、わたしは・・・。」
「まあ翠星石のチョコなんて誰ももらってくれないよ。」
ズキッ。
いつものあいつの軽い悪口なのに今日はすごく痛く感じる。
「わ、わたしのチョコはめちゃめちゃおいしいんです!」
「さあ?どうだかなあ~。」
「もう、うるさいですぅ~・・・。」
今日はいつもの悪口に反撃できない・・・。
ただ話しているだけなのにドキドキが止まらない。
なぜ?
やっぱり今日この思いを伝えると決めたから?
・・・放課後まで普通にしていられるかな・・・。

今日一日、ずっとあいつのことを見てしまっていた。
授業が一つ終わるたびにドキドキが激しくなっていく。
昼食もぜんぜんのどを通らない・・・。
友達が何人か心配して聞いてくれたぐらいだ。
違うよ。病気なんかじゃないのよ。
ただ、ドキドキが激しくて食べられないだけ・・・。


気がついた時にはもう授業は全部終わっていた。
もう授業は終わり?ああ、どうしよう。
まだ心の準備が整ってないよ・・・。
前からずっと今日言おうと決めていたのに
いざその時間が近づいてくると決心した心が壊れてしまいそう。
いや、言おう。いまこそ、言おう。
そう自分に言い聞かせて
「あの~、JUN?」
「ん?なんだ?」
「後で屋上に来てほしいんです・・・。」
「はあ?なんで?」
「そのときにはなしから・・。とにかく来てほしいんです・・。」
「??ああ、わかったよ。」
あいつの笑顔を見て少しだけ勇気が出た。
そしてわたしの人生で初めての告白が始まった。

屋上に行くともうあいつは待っていた。
「おう、翠星石。話って何だ?」
時間はもう五時。あいつが夕日に照らされて
いつもより数倍かっこよく見える。
「あ、はい。あの・・・実は・・・。」
「実は??」
さあ、あいつはもう目の前にいる。
勇気を出せ、頑張れわたし。
「あの・・これをJUNに受け取ってもらいたいんです~・・・。」
「え・・・・・?」
あいつは差し出したチョコを受け取らずに呆然と立ち尽くしている。
「あ、やっぱり翠星石のチョコなんかいらないですよね・・。
ごめんなさいですJUN。時間をとらせてしまって・・・。」
「いや・・・おれ、すっごい嬉しいよ・・。」
え・・・?一瞬目を疑った。
だって・・・。だってJUNが泣きながら翠星石のチョコを受け取ってくれたから・・・。
「おれ・・今日さ・・・翠星石からチョコもらえたらって思ってたから・・・。だから・・・本当にもらえたら・・・なんだかさ・・・。」
あいつは目を真っ赤にしながら泣いている。
本当に泣きたいのはやっとチョコを渡せた、翠星石の方なのに・・・。
「本当に・・・本当にありがとな・・翠星石・・・。」
「実は・・もう一つ大切な話があるです・・・。」
「・・・?」


そうわたしにはもう一つ話がある。
まだわたしは泣いてはだめ。
そう言い聞かせながら
「JUN・・・わたし、翠星石はずっとあなたのことが好きでした!!!」
「・・・!!」
「ずっと・・・そう、ずっと!!ずっとです!!いつもあなたのことを見てました!
だからどうか・・どうか翠星石と付き合ってほしいです!!!」
「翠星石・・・!」
その時、JUNはわたしのことをぎゅっと強く、そして優しく抱きしめてくれました。
「僕もだ翠星石・・・。ぼくもお前のことが大好きだ!」
ああ、やっと言えた。
そして受け入れてもらえた。
今まで生きていてこんなに嬉しいことはない。
「一生JUNを離さないです・・。」
「ああ、ぼくもだ・・・!」
後から後から涙が溢れてくる。
お互い強く抱きしめながら、いつまでも夕日に照らされて愛を確かめ合った。
何度も・・・何度も・・・。


今日はバレンタイン。
特別な魔法がかかった、特別な日・・・。
~fin~