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あの戦いから三年が経った。僕は今、近所の私立高校に通っている。
自慢じゃないけど成績は学年でトップクラスだ。
「ジュン、何をしているの?」薔薇のように可憐な少女が、ドアの隙間からこっちを見ている。
彼女の名前は真紅。ローゼンによって作られた人形だった。
「あぁ、ちょっとな」
「眠りの時間は大切よ。勉強もいいけど、ほどほどにしなさい」
「わかったよ」
素っ気無く答えたからか、真紅は部屋に戻っていった。
足音が聞こえなくなるのを確認してから、パソコンに向き直った。
「やっぱり不思議だよな・・・」

~三年前~
アリスが誕生した。だがアリスは一瞬で滅んだ。ラプラスと共に。
ローザミスティカの膨大な力に、戦いで傷ついた体では、耐え切れなかったのだ。
その体から溢れんばかりの赤い光が、nのフィールドを包み込み、爆発した。
ラプラスの機転で、僕は助かったらしい。ローゼンは、僕をかばう様に息絶えていた。
残ったものはローザミスティカだけ。
「うわああああああああああああああああああああああああ!!!」
絶叫した。何が起こったのか理解できず、どうしたらいいのかも、わからない。
倒れているローゼンの肩を、必死に揺さぶった。
「おい!起きてくれよ!一体どうなったんだよ!」
ローゼンが死んでいると気づくのに数分かかった。
「なんでだ・・・何なんだよ!」
何もできなかった弱い自分が悔しくて泣いた。涙が尽きるまで泣き続けた。
激しく泣いたせいか、少しだけ冷静になった。
「ここはどこだろう・・・?」
周りを見渡すと、ここが町外れの廃墟だとわかった。
「ッ!?」
ガラスの塊のような物が、太陽の光で反射していた。
まるで、僕に気づいて欲しくて光っているような気がした。
それはローザミスティカだった。

「これは・・・」
手にとってみる。人肌のように温かい。
僕はローザミスティカを抱きしめながら呟いた。
「どうして・・・どうしてこんな事に」
涸れ果てたと思っていた涙が、また溢れ出ていた。
一筋の涙が、頬を伝って零れた。
それは偶然にも、指輪のあった場所に落ちた。
「熱ッ」
真紅と初めて契約したときの痛みが、僕を襲った。
指が焼けるように熱い。激しい痛みに身を悶える。
「痛ッ!!イダダダダダダ!!」
奇声を上げながら、地面を転がり続けた。
痛みが治まってきた頃には、すっかり夜になっていた。

静寂が辺りを包み込んだ。月明かりで、かろうじて見える。
「はぁ、はぁ・・・。何で指輪が戻ったんだろう。しかも前より痛かったし…
  そうだ!ローザミスティカ!ローザミスティカはどこにいったんだ!!」
起き上がろうとするが、立つことはできなかった。
「クソっ!」
怒りを静めるべく、地面を叩いた。
ふと夜空を見上げると、視界の隅に、キラキラ光るローザミスティカを見つけた。
心なしか、ローザミスティカの輝きが、以前より増した気がする。
「あんな所まで飛んでたのか」
這いずるようにして、近づいていった。
不思議なことに、ローザミスティカは、指輪と共鳴しているようだ。
僕との距離が縮まるほど、力強く、燃える様に赤く、光り輝いた。
「眩しいな」
手で光を遮りながら進んだ。

左手を伸ばす。
「あと・・・、ちょっと・・・!」
ローザミスティカに、指先が、微かに触れた。
すると、ローザミスティカが、みるみるうちに、指輪に吸い込まれていった。
「え?」
指輪から温かい光が溢れる。その光は、綺麗に七本に別れた。
七本の光は一本に集束し、轟音とともに閃光が走った。
ほんの一瞬だが、世界は光に満たされた。
僕は咄嗟に目を閉じ、顔を伏せた。
やがて光は収まり、漆黒の夜が戻ってきた。
そおっと瞼を開けていく。
「うぅ・・・」
目を擦りながら、光の集まった場所を見詰める。
「し、真紅ッ!?それに翠星石に蒼星石!雛苺!」
ぼんやりとだが、真紅たちが見える。僕は名前を呼び続けた。
「金糸雀!水銀燈!薔薇水晶!」
さっきと同じように、僕は、這いずりながら近づいていく。

ぼんやりとしていた視界が、徐々に鮮明になってくる。
「なっ、おまえら・・・・」
言葉に詰まった。真紅たちだと思っていた者が、人間だったから。
背丈は僕より少し小さいくらい。健やかな寝息を立てている。
このまま放っておくわけにもいかないので、真紅にそっくりな子を起こすことにした。
「あのぉ」
全く起きそうにも無い。
「あのぉ!起きてください」
「・・・・・バシッ」
いきなりビンタされた。
「汚らわしい手で触らないで頂戴!」
声は真紅そっくりだ。たぶん性格も。
そういえば僕の手は、地面を這いずり回ったせいで、ひどく汚れていた。
「おまえ真紅か?真紅なのか?」
必死に涙を堪えながら、僕は聞いてみた。

真紅たちの記憶は無くなっていた。
でも僕は覚えている。僕の覚えていることを全て話した。
話し終わる頃には、真紅たちの記憶が戻りつつあった。
水銀燈が暴れて大変だったな。
例外で、薔薇水晶の記憶だけ戻らなかった。
僕は薔薇水晶のことを、あまり知らなかったので、話せなかったんだ。
それから真紅たちは、戦うのをやめた。
真紅と薔薇水晶は僕の家に下宿することになった。雛苺は巴の家に、翠星石と蒼星石は時計屋のおじいさんの家に。
水銀燈はメグのところへ。金糸雀はミっちゃんさんの家へ。それぞれ去っていった。
「人間になったんだから、学校に行ったらどうだ?」
僕の提案で、真紅たちも学校に通うことになった。
ずっとサボっていた中学校、真紅たちと一緒に通ったら楽しかった。

あの戦いから三年が経った。僕は今、近所の私立高校に通っている。
もちろんみんな一緒だ。姉ちゃんも一個上の学年にいる。
自慢じゃないけど成績は学年でトップクラスだぞ。
昔なら考えられないほど、僕はこの学校が気に入ってる。
「ジュン、何をしているの?」真紅が、ドアの隙間からこっちを見ている。
「あぁ、ちょっとな」
「眠りの時間は大切よ。勉強もいいけど、ほどほどにしなさい」
「わかったよ」
これからも、僕たちはずっと一緒だ。