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誰もいないはずの屋上
立ち入り禁止にされている屋上
その扉を拘束するのは安易なダイヤル式の鍵
しかしその扉は開けられていた
扉の向こうには薄暗い雲と町の景色しかないはずだった……
「やっと見つけた、ジュン君」
そう言われた男はフェンス越しに空を眺めていた
「ジュン……君?」
いつもと違う彼の雰囲気に彼女は恐る恐る近づいた
「ジュン君どうかしたの?」
「蒼星石か?」
気付いてはくれた、
でも彼は振り向くことはなくただ空を眺めているだけだった……

 なにかが違う気がする
「ジュン君先生が呼んでたよ」
「そうか……」
ただこの景色を眺めているように見える
しかし、普段の彼を知っている彼女にしたら落ち込んでいるように見えた
「何かあったの?」
「実はフラれたんだ」
思ってもいない答えだった
「告白したの?僕の知ってる人?」
こんなことを聞いても意味がないことは分かっていた
「蒼星石の知らない人だよ、告白したらさ……他に好きな人がいるって」
彼は空に向かい呟いた
こんなに近くにいるのに彼の心には彼女の存在は無かった

 僕は彼のことを全然知らなかったんだ
「そうなんだ」
気のきいた言葉は出なかった
「うん」
どうしてだろう
落ち込んでいる彼の横顔が凛々しく見えた
けど、そんな彼は見たくない……
「ジュン……君」
後ろからゆっくりと手を回した
彼の心に僕がいないのが嫌だった
このままだと彼が遠くに行ってしまう気がした
彼を離したくなかった
「僕じゃ……だめかな?」
「蒼星石?」
僕が彼の辛さを消しさりたいと思った

 僕はなんてズルイのだろう
「僕……ずっと前からジュン君のことが」
なんで今なんだろう
「好き……なんだ」
「蒼星石……ゴメン」
彼は優しいからそんな気持でOKが来ないのは分かっていた
「でも、僕は君のそんな辛い姿を見たくない、僕はただ君の笑った顔が見たいんだ」
僕は彼の優しさにつけこんでいる
こんなことを言われると彼は断らない
「……ゴメン」
僕の知っている彼の答えは来なかった……
今まで彼の何を見ていたのだろう
「僕は裏切らないよ」
彼の笑顔が見たいから

 彼に対してはいつもと違う考え方をする
フェアじゃなくてもいい
ただ彼を離したくなかった
「蒼星石……」
彼を見つめゆっくりと瞼を下ろした
「僕は……いいよ」
やっぱり僕は彼の優しさに甘えてしまう
唇に冷たいものがあたる
「雨だ」
雨が邪魔をした
「戻るか」
「そうだね」
優しい彼ならしてくれるという満身はあった
雨がなければ……

ザー……
雨の音が凄い
扉に鍵を閉める音をかき消していた
「これでよしっ」
それでも彼の声だけはしっかりと僕には届いていた

 今度こそ……
「……いいよ」
また瞼を下ろした
今度は邪魔をするものない
「蒼星石……」
唇に暖かいものがあたる
雨の音は聞こえない
高鳴る胸の鼓動だけが響いていた……
「……んっ……」
唇の感触がなくなる
どれくらいの間キスをしていたのだろう
今までで一番、彼と長く入れたような気がした
「ありがとう、蒼星石元気が出たよ」
その言葉が嬉しかった
「よかった」
君の声は僕には届いているよ
僕の声はちゃんと届いているかな?ジュン君



~fin~