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―Cloche―
屋上。ここでは病院で献血の直後だったり、調子がよかったりする人たちが集う。
会話しながら、微笑みながら。
心臓病のため少し前から高校を休み、入院をしているジュンもまた例外でなく、ふらふらと屋上に現れた。
そこには4~5人の人がいた。献血を刺していたりする人もいるようだが。

そこでふと白い肌をした少女の存在に気づいた。思わずみとれた。―そこまで綺麗な子。もう少し遠めに見れば男の子に見えたかもしれない。
視線に気づいたか、少女が振り向く。首をかしげ、―多少遅めの足で近づいてきた。
「やぁ。僕の事、見てたよね。…どうしたの?」
首を傾げ、何か嬉しそうな口調。
「い、いや、なんでも。」
きょどりながら返事を返す。緊張しているのは相手にもわかった。
「ふふ。不思議な人だね。君。」

「僕は蒼星石。よろしく。」
そういって手を差し出す少女。その肌は痛いまでに白かった。とても繊細そうな体。
やつれてるようには見えない。もともとからだろう。
「ああ。よろしく。」
であってすぐなのだが…人懐っこいというか、同い年くらいと思えた。
「僕は16歳…君もだよね。」
年齢まで言っていないのに当てられたことに少し驚き
「何で知ってんだ?…そうか。ナースがいたな。」
看護婦が教えたということに気づき。一人納得。それは間違っていなかったようで
「うん。そうだよ。勘が鋭いね。」
またニコリと微笑む。
その次の瞬間。少し、どこか寂しそうな表情で喋った。
「ねぇ…君はどうしてここにいるの?」
その質問の真意が図りかねる。一応正直に答えは返したが。
「…俺、心臓病患ってて。だから。」
何か納得したかのように、蒼星石がふーん…という返事を返した。
「僕は…なんだったかな。忘れちゃったな。…でも重い病気。」
無理をしたような笑顔だったが、ジュンの目にはとてもかわいく見えた。
―そしてどこか、胸が痛かった。―

―キィ―――キィ―――
相手がいなくなったシーソー。
消えた明かりを見ながら、公園に一人ぼっち。
――――
ガラリ、ジュンの病室のドアが開いた。
「ねぇ、遊ぼうよ。」
そこにいたのは、屋上の少女。蒼星石がわざわざ部屋にきた。
「あ?…いいけどどこで遊ぶんだ?」
ベッドから体を起こし、ナースに「いくなら献血つけていってね。」と言われ乍ら、
蒼星石と会話を続ける。
「公園で、シーソーとか?」
どこからその発想がでてきたかわからないが、この病院の傍には公園があった。
体力落ちた人のためにリハビリも兼ねてあるらしい。
…それ以外に遊べるものがなかったという可能性をどこか否定しきれないのが少し悲しい。
まぁ、ゲームとかお願いすれば持ってきてもらえるのだろうけど。
「それじゃぁ、そうするか。」

二人で外へ行く間。蒼星石はたびたび笑顔を見せた。     ツライハズナノニ。

1~2時間ほど過<タ>っただろうか。
公園を少し回り、シーソーに乗り乍ら、蒼星石は気づいたかのように、「あ」という声。
「どうした?」
突然の声に思わず聞き返す。
「僕、検査あるんだった。…戻るね。」
シーソーから降り、病院へと歩みを進める。
「イヤだけど…治さないとね。外の世界みたいし。」
苦笑。とても苦しそう。
「そうか。わかった。…じゃあな。」
「うん。またね。」
病院へと戻っていく少女は とても悲しそうだった。―サミシソウダッタ。

―キィ、キィ―

―少し跳ね上がるシーソー

―キィ

―すぐに下に落ちて。

―目を瞑る。目の前にはあの娘<コ>の笑顔。

―蒼星石の笑顔が。

―愛おしいほど、好きだった。―でも。

そんな日々が続いた。
「今日、先行ってるよ。」
にこり、全く病気の気配を見せない蒼星石。病室のドアを静かに閉めていく。
「あ、おい!」
止めるのが一瞬遅れた。ドアが閉まった後に言っても仕方がない。
ベッドから降りると、急いで後を追った。

外へでて、走った。靴の結びが解けようとも。
多少胸が苦しくとも、蒼星石に会いたかった。

―スキダッタカラ―
―スキニナッテシマッタカラ―

二人でいれば、安心できた。

―これが、いつまでも続くと思っていた。―

屋上にふと寄ったとき。その少女はいた。
思わず駆け寄って。やぁ。と言葉を渡す。
「…ジュンくん。」
その声はどこか弱そうで。
「どうしたんだ。」
思わず夢中で言葉を返していた。―この娘<コ>は、俺が。―
「僕…もうすぐ死ぬかもしれない。」
ぽつりと呟いた言葉は寂しそうだった。

「どうして…どうして!…。」
声を荒げるわけでもなかったが、言わずにはいられなかった。
―マモリタイノニ!!!!―

「これ…。だんだんと悪化してる…。」
腕をめくり、また見えた凍てついたような白い肌に、ぽつぽつと見える赤い点。

日々、見るたびに増えていった。

「ごめんね…僕…。」
緊急手術のために、ベッドに運ばれる蒼星石が呟いた。
「…俺はおまえが戻ってくるの、信じてるから。」
「…ありがとう・・・バイバイ。」
無理したような笑顔をなんど見たか。その度に胸の奥底が苦しかった。
「別れの言葉なんて言わないでくれ…。お願いだから。」
手を握り…手を離していった。そして、
「ジュン君。検査の時間。」
少しの間、―離れ離れに。―

―バイバイ―

「…蒼星石?」
病室をがらっと空ける。
そこには、何かを片付けるナースの姿が。
「蒼星石は…ここにいた子はどうしたんですか?」
聞かずにはいられなかった。

首を振る。
「…手紙預かってるよ。ジュンくんだったよね。はい。」
そういってナースが渡す手紙。

「ジュンくんへ。」

迷わず開けた。

「多分、君の事だからこの手紙を読んでいくにつれて泣くかもね…。
 ずっと僕の事心配してくれてたみたいだし。
 でもね。泣かないで。君には強く生きてほしい。
 ほんとはずっと一緒にいたかった。
 ありがとう。君と過ごした時間はほんとに幸せだったから。」

―続きがまだあるが、涙が止まらない。―かすむ目で続きを読む。

「君の事、好きだったよ。本当に。治ったらずっと一緒にいられるかな…って。
 でも遅かったね。…健康な僕を、君にもらってほしかった。
 初めての友達は君だけだったから。
 それじゃあね。…幸せになってね。」

―涙が止め処なく溢れていく。

「蒼星石…俺も、もうすぐ、おまえに追いつく。だから…そのときは…。」

その夜、ジュンは病態を悪化させて――――

-Fin-