銀「(今日もジュンは図書館ね。うふふ、今なら真紅もいないしジュンとゆっくり話せるわ~)」
銀「あ~らジュン~、今日も学校には来ないで図書館でお勉強?・・・なんだったら今日は暇だから私がかわいそうな貴方と一緒に勉強してあげても」
ジ「うるさいな、僕の事なんてお前には関係ないだろ。ほっといてくれ。」
銀「・・・・・あ、あ~らそう・・。分かったわ・・・。」
ジ「そうか、分かったなら早くとっとどっかに行ってくれ。」
銀「・・・・良いわ、また今度ね。」
銀「(何なの、酷いわジュン・・・。あ、あれ何でかしら?どうして涙が出るの?どうして・・・?)」
水「あらぁ・・こんなにカチカチにさせてぇ、えいっ」グリッ
J「ちょ、ちょと水銀燈!何で、足で・・ウッ」
水「気持ち良くないのぉ?ほぉら・・」コリコリコリコリ
J「せ、せめて手でしてくれよ(き、気持ちい・・」
水「やぁよ、ジュンなんて足で十分だわ、ほらほらほらほら」ゴリ、グニュ、グリ
J「あ、もう・・腰が熱くなって・・」
水「なんかぁ、飽きちゃったぁ、して欲しかったら自分でお願いなさぁい、クスクス・・」
J「水銀燈、お願いだ。早く続きをしてくれ、辛いんだ・・」
水「よく言えたわねぇ、ご褒美よぉ、えいっ」グリッ
J「そ、そこ、もっと上を・・」
J「ふう、腰のマッサージ気持ちよかったよ」
私は私が嫌いだ……
同世代にまず見かけないシルバーブロンドの髪、白い肌に紅い瞳。どれもが忌々しく憎らしい。
この肌と瞳はアルビノ、即ち特異的な遺伝変異によって起こったものらしい……
人は異端を排除する生き物だ。
人は成長するに従いドロドロとした本心を暗い闇に仕舞い込み、仮面をかぶる術を自然と身につけるものだ。
だがその術を知らない子供は忌々しいまでに素直に己の本心に従い、身を委ねるのだ。他者の明確なる拒絶を……
「■■■って何かキモいよね」
「あの髪……まるで悪魔ね」
あちこちから聞こえる悪意ある言葉に幼いころの私は酷く傷つき、そして自分の殻へと閉じこもるようになるのは当然の成り行きだった。
殻に篭ればこれ以上傷つくことはない……暫くすると周りの音も気にならなくなった。それが酷く嬉しかった。だが……
「おい……」
あれは酷い夕立の日だった。持ってきたはずの傘は無くなっていた……そんな嫌がらせはいつもの事だった。
私は仕方ないので降りしきる雨の中、帰路へ着こうとした時ふと雨が自分の身体を叩かないことに気がついた。
顔を声の主へと向ける。するとそこには傘を片手に頬を指で掻く一人の少年の姿が少女の瞳に鮮やかに映った。
「傘……ないのか?」
いつもなら声を無視してさっさと帰っていたはずだ、なのに……
「…………見ればわかるでしょう?」
酷く冷たい声、そんな声に憎悪さえ抱きそうになる……それなのに……
「…………そっか」
「早く退きなさい……邪魔よ」
「なら……最後まで邪魔するかな」
「なっ!?」
酷く狼狽する自分の言葉に少年は小さく笑った。今までに見たことのないその暖かな笑みに私は……私の殻は音を立てて崩れたのだ。
今日は久しぶりの雨……おかげで久しぶりに昔のことを思い出した。自分の右手には水色の傘が握られている。
とりあえず私はその傘を片手に隣の咳に座る彼に向かって声をかけることにした。
「帰りましょうか……もちろん相合傘でねぇ♪」
私の声に奇声を上げる同級生達……高校に入って出来た“友達”に向かって私は余裕の笑みを浮かべた。
今、私は私が好きです。
女子生徒A「ねえ、水銀燈ってさーなんかからみづらくない?お高くまとってるっつーかさー、ウザイよね。銀色の髪振り回したりして。」
女子生徒B「うんうん、おまけにアイツ鞄とかに羽根のついたアクセとかもってるじゃん。
あれってめちゃキモイよね、まじお前はカラスかっつーの。アハハハハ」
女子生徒C「良いね~、男子を漁るカラス?まじ受ける~(笑)」
(女子、トイレから出ていく、入れ代わりに水銀燈がトイレの個室から出てくる)
銀「(どうして・・?私はそんな事してないわ・・・。私だって友達がほしい、皆と同じになりたいのに・・・)」
(水銀燈、泣きながら独り図書館に行く)
銀「ひっぐ・・・・。うっぐ・・。」
ジュン「おい水銀燈か、何泣いてんだ?」
銀「!!!???・・・(涙を制服の袖で拭い)あ・・・・あぁらジュンじゃなぁい。不登校の貴方がここで一体何をしてるのかしら?」
ジュン「うるさいな、そんな事お前には関係ないだろ。それより何泣いてたんだ?」
銀「あぁら、私は泣いてなんかいないわぁ。」
ジ「(近くにあった椅子を差し出しながら)目を真っ赤にしてしかも授業をさぼってるんじゃ説得力ないな。
座れよ、今僕暇だし話くらいなら聞いてやるよ。」
(水銀燈少し戸惑うが言うとおりに椅子に座る)
銀「ねぇジュン、私って・・・『ウザイ』かしら?私ってカラスみたい?
私は・・・・私は誰からも必要とされないジャンク?」
ジ「はあ?何だそれ。」
銀「ふふっ、さっき皆が私の事をそう言ってたわ。そんな事を言われてるのにも気付けなかったなんて・・・・・ほんと、私ってお馬鹿さん」
(ジュン、再び泣きだした水銀燈の肩に手を置き)
ジ「何があったかは知らんが僕は、お前は今のお前のままで良いと思うぞ。誰が何と言ったって構うもんか、自分は自分なんだからな。だからもっと自分に自信を持てよ水銀燈。」
銀「・・・・・あ、ありがとうジュン。ねぇジュン、もう少しここに居て良いかしら?」
ジ「別に・・好きにしろよ。」
銀「(微笑みながら)ありがとう・・・ジュン」
春一番が吹くにはまだ早いのに、今日は風が強かった。
いたずらな妖精が、トゥモエのスカートを大胆にめくりあげた。
パンモロである。
J「(うわー。思いっきり見ちゃったよ。トゥモエ万乗パンツかよ……おっきおっき)」
銀「ジュン!」
J「うわぁ!す、水銀灯。いきなり話しかけるなよ!」
銀「ふふっ、見ぃーちゃった。ジュンがトゥモエのパンツ見て欲情してるところ」
J「欲情なんてしてないぞ!」
銀「嘘はいけないわぁー。もうこんなになってるじゃない」
J「あっ――」
銀「昼間から盛ってるおサルさんには、お仕置きが必要みたいねぇ。うふふ」
カラオケ
薔薇水晶「・・・水銀燈は歌わないの?」
水銀燈「私は歌下手だしぃ・・・」
真紅「・・・そんなことは知っているのだわ。次はあなたの順番よ、水銀燈。」
水銀燈「え?私、予約なんてしてないけどぉ・・・」
真紅「余計なお世話だったかしら。こうでもしなければ歌わないでしょう?ほら、どうしたの?」
水銀燈「・・・うー、エホンッ。あっあー・・・」
蒼星石「へぇ、水銀燈って歌が上手だったんだね。」
金糸雀「悔しいけど負けたのかしら・・・」
真紅「あなたの歌は下手糞だけど・・・変よね。たまに聞きたくなるのだわ。」
水銀燈「・・・真紅ぅ。」
朝の朝礼
校長「今日は大変、良いニュースがあります」
一同「ざわ・・・」
校長「昨日の夕方、川で溺れていた猫を助けた生徒がいました」
校長「その生徒は、確か・・・真っ白い羽で飛んでいたそうです」
一同「ざわ・・・」
校長「天使が猫を助けたとも聞いております」
校長「水銀燈さん、こっちまで来てください。表彰状があります」
真「あのコの羽、白じゃないわよ・・・」
翠「おかしいですぅ~。どう見ても黒い羽した不吉な女ですぅ」
蒼「二人とも、悪口はよしなよ」
朝礼台まで歩いた水銀燈。
水「・・・勘違いしないで・・私は天使じゃない・・」
校長「でも、猫を助けたのは紛れもない君だ」
水「あ・・あれはただの・・・偽善よ・・・」
校長「ふふ。君の目からこぼれている涙も偽善かね?」
水「!!だから・・これは・・・猫が助かって・・良かったなって・・」
校長「君はこの学校で一番天使に近い生徒だよ・・・」
自分の中の優しさは、誰かが教えてくれるもの・・・。
J「はぁ…今日も慌ただしい1日だった…。せめて風呂でもゆっくり入りたいよ…」
カ゛ラッ
J「って、ちょwwwww何で水銀燈がウチの風呂にwwwwwww!?」
水「あらぁ、いいじゃなぁい…。一緒に入りましょうよぉ」
J「いや…その…確かに入りたいが…」
JUMの視界には一糸纏わぬ水銀燈の姿が飛び込んでくる。
水「シ゛ュンはぁ、私とお風呂入るの…嫌ぁ?」
J「いやいやいやいや…そんなことは断じてないけど……こんなとこ誰かに見られたら…」
水「私、学校ではツンツンしてるかもしれないけどねぇ…シ゛ュンの事大好きなのよぉ」
イスにちょこんと腰掛けた水銀燈は学校で見る以上に女っぽい、色っぽくみえた。
J「…わかった。一緒に入ろう。でもいきなりウチの風呂に侵入するのはこれっきりにしろよ」
水「うふふっ。シ゛ュンだぁいすきぃ!」
J「ちよwwwwwおまwwwwww抱きつくなwwwww」
あれはいつのことだったか・・・今みたいに夕陽がきれいな放課後だった。
そしてその日、僕は彼女に出会った。
J「ふぅ~、レポート提出してたらこんな時間になっちゃったな。帰ったらみんなうるさいだろうな・・」
帰ったらいつものように真紅たちが自分を罵倒するだろう・・・腹が立つこともあるが、それはそれで心地よいときもあった。
J「ん?あれはたしか・・・水銀燈?何してるんだ?」
水銀燈・・・彼女はいつも一人だった。真紅たちといるときもあるが、どこか浮いた感じがしていた。
彼女は膝をつき、ダンボール箱に入れられた小さな子犬を撫でているようだった。
J「(水銀燈か・・独特なオーラがあって話しかけにくいんだよな・・でも素通りするのも悪いし)や、やぁ、水銀燈・・」
水銀燈「・・・・・何?」
ちらっとこちらを見たが、顔は前を向いたままである。
J「な、なにしてるの?」
水銀燈「・・・見て分からないの?」
J「い、いや・・・わかるけど・・」
水銀燈「ならいちいち聞かないで」
J「あ・・ごめん」
そして沈黙が続いた。ジュンは水銀燈の側にいたものの、二人の距離はずいぶんと遠かった。細く美しい銀色の髪は、淡い夕陽で染まっていた。
どれほど時間が経っただろう・・・沈黙が続いたために時間の感覚すら失っていた。
しかし、沈黙が続いたのは話題がないからではない。ほのかに赤く染まった銀色の髪、どこか優しさを感じる瞳。彼は彼女に心を奪われていた。
J「(きれい・・・だな)」
水銀燈「ねぇ、さっきから何見てるの?無言で立たれると気分が悪いわ」
J「な、なんだよ気分が悪いって!失礼な奴だな!」
水銀燈「話す話題がないならさっさとどこかに行けばいいでしょう。はっきり言って迷惑だわ」
J「わかったよ!そこまで言うなら消えるよ、じゃあな!!」
水銀燈「・・・」
J「なんだよあの態度、ムカツク奴だな!!」
ジュンは先程の水銀燈の態度に憤っていた。しかし、頭によぎるのは子犬を優しくなでる、
美しい水銀燈の姿。ジュンはその姿に見とれていたのだろう。
J「・・・結構、きれいだったな・・・」
もうすっかり夕日は沈んでいた・・・