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こ  に  の      の
    の  七   お
  つ  祝    こ 

―この子の七つのお祝いに。―
「お休み…可愛い子。」
小さな手が握る薬指は…災いと幸せの象徴。

残されたぼんぼり―ジュンの遺愛―
火を燈す。

ボッ。

薄暗い部屋で細め泣いた。
二人で聞く外の雨に願った。…届く事はないが。

「涙モ枯れた。」
…泣き疲れた。

あれから幾つの年月が流れただろうか
貴方が残した『この娘』<チイサナシアワセ>を
愛でながら。
毎晩毎晩、この子のために子守の唄を口ずさむ。
「おやすみなさい…可愛い子。」

嬉しそうにその子は足をじたばたと。

寝床の灯りはゆらゆら、ひっそりとしていた。

「クォン」

天井で踊るような足音。
バタバタ、ドタバタと。

バキ、バキバキバキバキ。

「クゥーン…。」

地面に落ちる少し前に、狐であったものが飛び散った。

びちゃら びちゃら。
手足が頭に飛びつく。

「イヒヒ。」

ぺろり。何か嫌な感触。

毎朝

ガサガサガサ

毎晩

チタテテテテ

舌掻き毟って

「イヒヒヒヒヒ」

騒がしく…喧しい。
くるり、ぐるり。狐が向いた。
「もういいかい?」
嬉しそうにそれは喋った。
「…」
聞こえないふりを蒼星石は決めこむ。
「もういいかい?聞こえてるでしょう?」
くすくす。狐は耳元で言葉を紡ぐ。

それでも

「この子を守る。」

ウシロノショウメンダアレ?

プシューーーーーーーーーーーーーーーーー。

白黒映画の流るる廃工場から流れる煙が

「やめて・・・・やめてぇ!!!!」
白い煙が子を包んだ。

―ダメ ヤメテ ヤメテ ヤメテ ヤメテ ヤメテ
ドックン

どこにいたのだろう。蛇口に隠れていた少女は飛び出し、小さな子の影に重なる。

ぴちゃ。ぴちゃ。
少しずつ 嫌な音。

「キャッキャwww」
この笑みは僕の…大切な物

絶対に―誰にもやるものか。―
だって…ジュンくんが残した幸せだもの。

「あはははは!!!!!!!」
「溢れる汚水に肩身を浮かせてやがる!!!!」
「恥ずべきやつだ!!!!」
「キキキ。落としたのはおまえらだ!…たくwwwwww」

ゲラゲラと哂う狐の団居に背を向ける

「く・・・そ…あいつら・・・あいつら・・!!」
唇をかみ締め

だらだら。血が。

大切な遺愛を抱きしめ
「うわあぁぁぁぁ!!!!!」

…慟哭…

静かに流れる音が
こだまして ぐゎん…響く。

「行こう…。」
小さな手を引き生きていく。

道には ひらひら 椿の散華

「僕が守る。」
頬を寄せ

ぼんぼりにまた、火を燈した。

にわか雨が…地に染み、消える。

マ タ コ コ ダ

白黒映画の廃工場。流れる煙が…空へと瞬く。

「キィィィィィィ!!!」
狐の群れは大路に集まる。散りに散らばり。

「クォーーーーン」
「クォーン」
「クォーーオオン」
だんだんと影絵になるくらいの煙に包まれる。

ギロリ。

狐の眼球が…蒼星石達の方へ向いた。

カチ カチ カチ。
いつのまに近くに居たのだろう。
この老夫婦は。
「フフフ…。」
フシュー。
すぐ近くで、息を吹いているのがよくわかった。

足踏みをする翁は、手を懐へ隠しながら
媼へと近づいていく。
その媼は手遊びをしていたが迷わず話しかけていた。
こそり、こそりと耳打ちをしている。

「ほらほら。早く息止めなくちゃあ! 背中にしがみ付いて首刈るぞ。」

キツネの群れは どこまでも。

死者の名前が書かれた点鬼簿をくわえた白髪少女は神木に登って

「ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!」

絶叫。

「う・・・っ!!!」
思わず咽び、抱きしめた。―我が子を。

「キキキキキ。」
「クォーン」
狐の堵列は這いずり回る。そして

「やめて・・・やめて・・・やめてやめてやめて・・・やめてええ!!!!!!!」
夢中で叫んでいた。…子供は狐が連れ去ろうとする。

―タスケテタスケテタスケテタスケテ―

蒼星石は叫んだ。夢中で。
「…やるもんか・・・耳も鼻も…目も口も・・・!髪の毛一本すら・・・誰にもやらない・・!!!」
狐はキキキと哂いながら子供を掴む。
「おまえが望んだ幸せは、何一つ叶わないんだ・・・キキキ。」
少女が転がる。
「キゃッきャきャっキゃ。」
それでも笑っていた。

傍にいた老夫婦が耳元で囁く。

「隠してしまえよ。この子が七つになるまでに。」
そんな声にはっとなり…子供を抱きしめる。

「あああああああああ…ジュン君…鯉幟が空に上っていくまで…お願い・・・!」


子守唄を謳う。
「この子に幸せの風が吹きますように。」
・・・と。

ジュンの足跡を燈しながら歩く小さな背中をみて祈った。

七つのお祝いの日
一つの折鶴を折って、…ジュンの代わりとして、水上から流す。
幸せをこめて。

パタパタ。
折鶴は風に舞う。

―大丈夫―

突然目の前に光。
光の尾が。一匹の狐だろうか。にこりと微笑む。

「大丈夫。」
その強い光は手元の雪洞の光を消すほど明るく。

大路を掠めて悠然と舞う。
「ジュン君!!!」
叫んでいた。…気づいたから。

そして最後は 神の木へと消えた。

がぶり。がぶり。

狐たちは狂ったように互いに共食い。

「キキキ。クォーン。」

時折八の字に笑いながら。
力が抜け、座り込む。
抱かれる子はすやすやと眠っていた。

そして子守唄を歌う。
「おやすみよ、すやすやと。可愛い子。
 あなたは目を閉じて
 ただすやすやとお眠りなさい。」

崩れていく地面の下で子を抱く親狐は逃げていく。

ひゅーーーーーー。

神木から落ちた少女は顔が爛れて泡を吹き
狂ったように笑う。
「アハハハハハハ!!!!!」
浅黄に染まった老夫婦は利休鼠の眼球を擦って痙攣

劈くような音。あわてて蒼星石はそっちを向いた。そこには
双眸を無理につなぎ合わせたお狐様の行列。

「もういいかい」
何も見えていないその目は壊れたように喋る。
「まあだだよ」
そばのお付も同じような感じで。
蒼星石は気味が悪くなり 少し離れる

「もういいかい」
「…まあだだよ。」

がたん。
ごろごろ。

御狐様の首転がる。

そして…また蒼星石に笑顔
「ああ…この子が大きくなれば・・ジュン君と過ごした日々がまた…。」
瞳は刻んだガラスの回想。
脆いもの。

…空の鯉幟だけはそれを知っていた。

がさり。…蒼星石が抱きしめていたハズのそれを見る。

「あ…」
声にならない…だんだんと音を持っていく

「あ・・・・あああ・・・・・ああああああああああああああああああああ!」

「ああ・・・・!!」


その子・・・をよく見たら・・・

「お人形…あの子は・・・あの子は?!?!?!」

抱きしめていたのは…崩れた・・・人形・・・。

-Fin-