真紅のいちばん長い日
銀「JUM……わたし、水銀燈は……」
銀「できたぁできたぁ。あとはこれをJUMに渡すだけっと」
水銀燈が手にしているのは、CD-Rである。
翠「隊長!大変ですぅ」
真「そんなに慌てて、どうしたの」
翠「水銀燈が怪しげな自作CDをJUMに渡そうとしているですぅ」
真「な、な、なんですって!きっと告白だわ。明日は2月14日だもの」
今は、2月13日の放課後である。
翠「水銀燈はそのCDをどこかに隠したですぅ」
真「くっ、これは私たちに対する挑戦なのだわ」
蒼「おーい、真紅!」
真「あなたまで慌てて、まさか水銀燈の件でなにか分かったのかしら」
蒼「そうなんだ。水銀燈が隠した場所なんだけど、JUMくんが明日必ずチェックする場所だって」
真「靴箱か、机の中か、ロッカーかどこかでしょうね。でも大丈夫よ、ね金糸雀」
金「金糸雀におまかせかしらー」
14日、朝8時。
銀「これでよしっと。ふふふぅ」
同じ頃
真「JUMが来る前に、一通り確かめておきましょう」
蒼「でも水銀燈もまだ来てないよ」
真「油断は禁物よ」
翠「靴箱には入ってなかったですぅ」
蒼「ロッカーにもない」
真「机の中にもなかったわ」
銀「あらぁ?あなたたち何をしてるのぉ?」
真「水銀燈……(遅刻してるわよ)」
翠「CDはどこに隠したですか!」
銀「言うと思うの?おばかさぁん。ふふ」
蒼 メラメラ
金(この4人、ちょっと怖いかしらぁ)
放課後まで、3人は水銀燈を尾行し続けた。たとえば、
銀「ふう。おいしかったぁ」 とヤクルトの空を捨てたとき
翠「JUMは確かゴミ捨ての係りですぅ」
真「怪しいわね。、、二人とも」
蒼・翠「うん(はいです)」 と言ってゴミ箱を漁ったり。
しかし、放課後までCDは発見されず、水銀燈は帰っていった。
金「おそらく帰りに渡すのかしらー」
真「追うわよ」
蒼・翠「ラジャー(ですぅ)」
だが、水銀燈はそのまま真っ直ぐに自宅へ。
金「きっと諦めたのかしらー。私たちの連携の勝利かしらー」
真「腑に落ちないわね。だけど明日にしたとも思えないし」
蒼「疲れたよ。もう帰ろう」
翠「そうするですぅ。また明日です、真紅、金糸雀」
その頃、JUMは
J「夕刊と、あ、またダイレクトメールがきてる。ん? 貴方のX・水銀燈より?」
同じ頃
真「しまった、郵便ポストという手段が残されていたのだわ。私としたことが!」
真紅はJUMの家へ走る。走りながら翠・蒼に電話をした。
3人がついた時、JUMはCDを再生してしまった後だった。
真「JUM!CDは、CDがあったでしょう!」
J「ああ……」
真「もう聴いてしまったのね。ああ、なんてこと」
J「まったく、なんてこと、だ。あの水銀燈が僕の、僕の」
真「落ち着きなさいJUM。告白されたからと言って、付き合う必要はないのよ」
J「僕の妹だったなんてえええ」
真「へ?え、あ、ええ??告白ではなかったの?なぁんだ」
翠「なんかもうどうでもよくなったですぅ」
蒼「今度こそ帰ろっか」
J「どうでもよくなーい!」
終わり
いつもあなたは美味しい紅茶を入れてくれるけど
今日は寝込んでるいるから、テーブルの上のカップは空。
だから、今日は私が代わりにいれてあげるの…
美味しいレモンティーを…
…
……
………
あっ。これ、イソジンだったわ。
ここはどこ? 真っ暗で何も見えない。手探りで闇を掻き分ける。
それでも続く闇、闇、闇。どうにかなりそうだ。
いや・・・声が聞こえる・・・。誰かが呼んでいる・・・?
『私たちを忘れないで・・・。どこへ行っても・・・どんなに離れても・・・。』
ジ『し・・・ん く・・・?』
梅「桜田~授業は睡眠の時間ですか~そうですか。」
ジ「・・・ん・・・?」
クスクスとクラスに笑いが漏れる。
ジ『夢だったのか・・・。』
梅「そんなに寝たいなら廊下で『キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン』・・・っと授業終了か
運のいい奴だな~。笹塚、代わりに立ってろ。」
笹「ぇ・・・。」
真「まったく、あんな恥をかいて・・・。主人の私まで恥ずかしかったじゃない。」
ジ「・・・。」
真「
?まぁいいわ。そんなことより次は教室移動なのだわ。早く準備なさい。」
そういうと真紅は僕の手を握って廊下に出る。僕はその小さな手を強く掴んで呼びかける。
彼女の青い瞳を見据えて。
時の流れが遅くなる。
ジ「ぼ、僕は忘れたりなんかしないから・・・!」
真紅はそれを聞くと少し不思議そうな顔をしたが
すぐに優しく微笑む。
真「ふふ、おかしな子ね。さぁ、行きましょう?遅れてしまうわ。」
穏やかな光が僕たちを包んでいるのがわかる。
いつかはみんなは離れ離れになってしまう。
だけど・・・いいんだ今は。今だけは・・・。
こんな優しい時間をすごしていたいんだ。
fin 「わたしの気持ち」
最近、本当にごく最近「彼」のことが気になり始めた。
夜、寝る前も。学校の授業中でも。いつも彼のことばかり考えてしまう。
ときどき「彼」のことを見つめてしまっている自分にハッと気づくことがある。
この思いが恋なのかは自分にはわからない。
ただ、この気持ちはなくしてはならない、とても大切なもののように感じる。
だからはっきりするまでこの気持ちは大切に育てていこうと思う。
高校1年、入学してしばらくしてからのことだった・・・。
「お~い!真紅、帰るぞ~!」
「わかったのだわ。」
あの気持ちが生まれてから早1年。
結局何も進歩はしていなかった。いや、何もというのは少し違う。
あれからわたしたちは友達としてとても仲良くなった。
今ではこうしてよく一緒に下校しているくらいだ。
「JUMはいつも帰るのが早いのだわ。」
「だってしょうがないだろ?僕、部活とかはいってないし。」
あれからわたしの気持ちも進歩していない。
当時の気持ちに比べれば落ち着いてきたが、いまだに恋なのかはっきりしない。
ただ、この気持ちは大切に心の中に閉まってある。
「真紅だって暇だろ?」
「それはそうだけど・・・。」
はたからみれば恋人同士でもないのにこの関係はおかしく見えるだろう。
しかし、わたしはこの関係をとても心地よく感じている。
いつまでもここままでいいかもしれない・・・。
そう思っていた。
しかしいつまでもこの関係が続くはずもなかった。
ある時、わたしは偶然にも告白されている「彼」を見てしまった。
相手はわたしなんかよりもずっときれいだった。
わたしは結果も見ずにその場を去った。
つらくていられなかったからだ。
「(あんなにかわいい子から告白されたんだ・・・。きっと断るはずがない・・・。)」
「(まあわたしたちは付き合ってるわけでもなかったから別にいいわ・・・)」
自分に言い聞かせてみるが、何かすっきりしない。
何かがもやもやと心に渦巻いている。
「(やだ・・わたし・・嫉妬してる?)」
「(なんで?別にわたしたちはただの友達じゃない!)」
「(・・・!もしかして・・・わたし。・・・「彼」のことが・・・。)」
やっと自分の気持ちに気づけた気がした。そう、わたしは彼が好きだったのだ。
それは高校1年の時からだった。やっぱり恋だった。
しかし、もう遅い。「彼」もう告白されたのだ。
わたしは今まで一緒にいたのになぜ気づかなかったんだろう?
もう遅い・・・。ならもうこの気持ちは黙っててもいいじゃないか?
別にもう「彼」に伝える意味もない。
「(もう・・・黙っていよう・・・。)」
ここに一つの片思いが静かに終わった・・・。
~fin~
もう通い馴れたジュンの部屋…今日も二人っきり。付き合い始めて2回目の冬…
ジュンは真紅をベッドに座らせたまま…まだじらせている。
真紅「ねぇ…もういいでしょ?」
ジュン「いや…まだだ。がまんできないのか?」
ジュンは薄い笑みをうかべる。
真「さっきから…もぅ……ずっと…」
ジ「仕方ないなぁ。いれてやるよ。…ったく、わがままなお姫様だ。」
真「あぁ…ジュン…貴方がいれてくれるの大好きなの……」
潤んだ瞳でジュンを見つめる。
ジ「なんだよ。見るな!恥ずかしいだろ。」
真「でもぉ…」
ジ「言うこと聞けないのか?こりゃオシオキだなwwwこいつをいれてやる。」
真「いや…ごめんなさい……いれないで!!!」
真紅の願いも虚しくジュンは容赦なくいれる。
真「いやぁぁぁぁああ━━━━━!!!!!!!!」
絶叫する真紅。ジュンは真紅の表情を見て悦に入る。
ジ「………ほら。飲めよ?おいしいぜ?」
真「…くすん………ぇぅ……」
ジュンは追い打ちをかけるように、泣いている真紅を促す。
観念したのか真紅は口をつける。
真「(こくん)……あら…美味しい…やっぱりジュンがいれる紅茶は美味しいわ♪」
ジ「だろ?やっぱり砂糖を入れた方が美味しいんだって。食わず嫌いは程々にな!」
寒い冬の日…二人はいつも通りの午後を過ごした。
END
紅「起きるのだわ、起きるのだわ!」ペチッペチッ
ジ「いてっいてっ何すんだよ!」
紅「何って学校に遅れるのだわ!」
ジ「今日は休みだ!まったく!寝る!」
紅「あっ!(////) じゃぁじゃぁ出かけるのだわ!」ペチッペチッ
ジ「いてっいてっ!わかったわかった起きる起きるから!で何処に行きたいんだ」
紅「最初からそう言えばよくてよ!(/////)・・・
ジュンが連れって行ってくれる場所なら何処でもなのだわ!(/////)」
ジ「(キュン!やばっ可愛い!やっぱり僕って!!)」
休み時間
ジ「真紅どうした悩み毎か?」
紅「あ、ジュン!ええ悩みと言えば悩みなのだわ」
ジ「僕で良ければ相談にのるけど?」
紅「イメージチェンジしようと思うのだわ!」
ジ「(いきなりすげー展開だな。おい。)」
紅「普段着を紅から蒼の色にしようと思う!ジュンの意見を聞きたいのだわ?」
ジ「(蒼星石の人気に嫉妬ですか)服の色だけ変えても人気は出ないと思うけど」
紅「冗談よ!」
ジ「冗談かよwww!」
紅「いっそボーイッシュにしてみようと思うのだわ!」
ジ「(やっぱり嫉妬ですか!蒼星石を真似るですか?真紅さん いえ、真蒼さん)」
紅「ジュン、早く意見を聞かせるのだわ?」
ジ「僕は今のまま真紅が良いけどな!人気が出たら僕だけの真紅にならないじゃないか!」
紅「(////)そっ、それを早く言うのだわ!イメージチェンジは、なっ無しなのだわ!(////)」
ジ「(////)はいはい!」
紅「(////)はいは一回!」
真紅、ゲーセンへいく
ある日の放課後。JUMはベジータに誘われてゲーセンにいくことになった。
「あらぁ、あなたたちも行くのお?」
と、三人の会話に割り込んできたのは水銀燈。
「お前もいくのか?」
「宿題が出ない日はいつものことよぉ」
「それじゃ、真紅に雛苺。お前らも……」
JUMの傍らにいた真紅は、彼の言葉をぴしゃりとさえぎった。
「行かないわ」
そして渋い顔をして、
「ゲーセンなんて不良の集まる場所だわ。わたしが足を踏み入れるのに値しない場所よ」
いつの時代の話だよと思うJUM。相も変わらないお嬢様根性だ。
「あらぁ」
彼女の前で、JUMの首に手を回す水銀燈。
「だったら今日のJUMはわたしとデートねぇ」
と赤面したJUMの顔に頬を摺り寄せてくる。
「なっ!!」
真紅は水銀燈の行為に眉をひそめる。
「わたしの下僕から離れなさい!! 破廉恥だわ!!」
「あらぁ、だって、ゲーセンに集まるわたしたちは不良なんでしょう? だったら不良同士でもぉーっと仲良く仲良くしたいわあ」
「なにをふざけたことを!!」
「怖ぁい顔。ぶさいくな顔がもぉーっとブスになるわよぉ」
「余計なお世話よ!」
二人の言い争い──というより真紅いじりの様子を聞きながらJUMは心の中でため息をついた。
「で、結局行くのか」
「…………」
真紅は膨れたままJUMの方を見ようともしない。
だが、彼女の歩む先はいつもの下校コースとは全くの正反対。
陰湿な雰囲気の少女のとなりでは、雛苺が好奇心満々の顔でJUMを見ている。
「ねぇねぇJUM、ゲーセンってどういうトコなの?」
「あれ、雛苺はいったことないのか?」
「はぁー。所詮、チビ苺はお子さまだってことですぅ」
と、翠星石が雛苺の後ろで鼻でふんっと笑う。
「ヒナ、お子さまじゃないもん!!」
「まぁーったく、いまどきゲーセンも知らないなんて、昨年の紅白の司会者を言えないようなヤツですぅ」
「キミだって今日が初めてじゃないか」
蒼星石のため息交じりの突っ込み。
「えっそうなの?」
「ななな何を言うですか蒼星石!! わたしだってゲーセンぐらいいったことあるですぅ!! えっと……ほら、インベーなんとかっていうゲームが置いてある……」
「それはこの前の日曜に二人でいった喫茶店じゃないか」
「翠星石だっておこさまなの!!」
「うるさいですぅ、チビチビ苺!! お前はこたつで苺大福でも食ってればいいです!!」
「……インベーダー」
と、雛苺と翠星石の間に割り込む少女。眼帯をしていない右目があやしく光る。
「ななな、なんですかばらすいー……」
「……いまどきのゲーセン、置いてる?」
「インベーダーゲームはさすがにないと思うが……」
「……残念、名古屋かがっかり」
一行は駅前の大きな総合アミューズメント施設についた。
「で、わたしは何をすればいいのかしら?」
真紅はJUMをじっと見つめた。
「何って、好きなのやればいいだろ」
「ここに何があるのか、何がわたしに合うのか見当もつかないわ。JUM、あなたが選びなさい」
「お前なあ……」
JUMは文句を吐きつつも、予想された質問だったから、ここに来る前から真紅がやれそうなゲームを考えていた。
なにしろ彼女はコンシューマーのコントローラすら持ったことのない超ド級初心者だ。アクションだめ、シューティングだめ、音ゲーだめ、格ゲーだめ……。
「……まあ、お前にはクイズゲームぐらいしかやるものないなあ」
「クイズ?」
JUMが適当な台を紹介すると、真紅は何も考えずそれに百円玉を投下した。
「さてと」
JUMはベジータたち格ゲー組のところへ行った。
「ここからが本当の地獄だ……」
ベジータは呆然と台を離れた。その対戦相手は、
「ふふふ、おばかさぁん」
と、真っ白に煤けた彼の背中を送る。
「相当揉まれたようだな」
「ばかねぇ、サイヤ人の王子が格闘ゲームで負けるかとかいって十五回も連続でかかってくるんだもの」
小悪魔のようなくすくすとした微笑みを浮かべている。
「JUMもやるんでしょぉ? JUMと熱ぅい愛を交わしたいわあ」
「は、恥ずいこというなよ。つか意味不明だろ」と、JUMは百円玉を入れた。
「……………………」
JUMは未だに燃え尽き感がただわせながらベンチで休んでいるベジータの横に座っていた。
彼らは水銀燈がプレイしているのを呆然と見ている。
「何者だよ、あいつ……」
いつの間にか、彼女の背後にはギャラリーが四、五人集まっていた。
彼女の対戦相手の席は、未だに暖まる気配がない。たった今も十人目の対戦相手が席を立った。
「JUM」
そこへ、聞き覚えのある声。
いまにも泣き出しそうなのを必死でこらえようとしているような、そんな顔のお嬢さま。
「一体全体あれはどういうことかしら?」
「どういうことって何が」
「とぼけないで。ぜんぜん勝てないわよ」
「……それは単にお前が下手なだけだろ」
「あなたはわたしが『おにゃんこくらぶ』とやらのメンバーの名前をしってると思って!?」真紅は声を荒げる。
「……いや」
「あなたがいうからわざわざやってあげたのに、芸能だの、風俗だの、下らない問題ばかり出てたわ! ゲームなんて、もう二度と願い下げよ!」
「……あっそ」
「JUM。いい加減帰りましょう。腹立たしいわ……」
「もうちょっと待てよ。まだみんなプレイしてんだから」
「そう。じゃあわたしはこれで帰らせて……」
「ああ! 真紅、発見なの!!」
ぱたぱたという擬音が似合う駆け足でやってきたのは雛苺。あたまの桃色リボンが可愛らしい。
「真紅、真紅ぅ、ヒナといっしょにゲームやるの!!」
「えっ……」
「ほら、早くなの!!」
「いや、わたしは……」真紅はきっとJUMに顔を向けて、
「ちょっと、JUM! あなたはわたしの家来なんだから一緒にきなさい!」
「はいはい、わかりましたよお嬢様」
「ちょっと、翠星石。1面からボムなんて使わないでよ」
「何たわけたこと言ってるですか、蒼星石!!」
彼女は小さなかんしゃくを爆発させていた。
「あんな弾、人間が避けるようなもんじゃないです! 人間工学に真っ向から反逆してる不届きな奴らです!!」
「それは単にキミが下手なだけだよ」
2Pの疾風を操る妹は、姉の難癖に困った顔で、青赤と色彩豊かな敵弾を避けていく。
「だから、翠星石はボクの行動に合わせて自機を……って、何やられてんのさ」
蒼星石は、あんな単純な奇数弾に当たれる方が難しいと思った。
「むきー!! 今の今の、ぜぇーったいおかしいです!! プログラムの故障です!!! 責任者出てきやがれこの野郎です!!!!」
「はぁ……やだなあもう……」
落胆する蒼星石の横に割り込んでくる眼帯少女。
「……いい?」
「え……? あ、うん……」
「ちょっとばらすいー! こんな非人道的ゲームやるんじゃないです!!」
「……モスキート、ごー」
薔薇水晶の眼帯をしていない右目が怪しく光る。
「……トミー、教育の時間よ」
JUMは横目で翠星石の痴態を観察していた。
「ちょっとJUM!! 聞いてるの!?」
「はいはい、聞いてますよ」
彼の前には雛苺と二人同時プレイを付き合っている小うるさい女主人さま。
「どきどきなのー……」
二人は細胞がひしひしとうごめく不気味なシューティングをやっていた。
「うわあ、なんか出てきたのお!」
「雛苺、あなたに任せるわ」
「りょ、りょーかいなの……うわぁ!!」
目の前に出てきた敵を、背後からでてきた魚のような敵が食べる。
「でっかーいのお!」
敵は真紅のビッグバイパーと雛苺のロード・ブリティッシュに弾を吐いてくる。「うにゃー、こいつぅ、こいつぅ!」
「きゃー!! あたしの戦闘機ぃぃ!!」
へなへなと動くビッグバイパーはあわれ、敵の突撃に押しつぶされてしまった。
「ちょっとJUM! あたしの戦闘機が出てこないわよ!! プログラムの故障かしら!?」
「ゲームオーバーじゃん。単にお前が下手なだけ」
「キィー!! またあたしを勝たせないつもりね!! ゲームの分際で!!」
「真紅の分まで仇を討ってやるなのー!!」
そんな真紅の痴態をちらっと横目で見て、口元をにやにやさせる薔薇水晶。
「……ボムッ!」
「あ、うん」
JUMたちがゲームセンターを出たときは、もう空も赤く染まっている夕暮れどきだった。
「すごいよ、ばらすいー!! 1コインで二周だなんて!!」
蒼星石は今までにない興奮した面持ちで薔薇水晶の手を握る。
「……ファミコン戦士は負けない……いえー」
と、こっそりと右手でピースをつくる。
「…………それと二人協力プレイだったから」小さな声で顔を伏せる。
「ううん、ぼくが生き残れたのも、ぜんぶばらすいーのおかげだよ!!」
「わ、わたしは可憐な美少女ですから、あんな激しい運動神経を必要とするゲームはできなくて当然ですぅ」
「よく言うよ、ただのへたっぴのくせに」
「なんですか、蒼星石、この口は、この口は、この口はあああ!!」
「ひはひ、ひはひよ、ふいへーへひ!!」
「どうだった、わたしのプレイ?」
「水銀燈……」
彼女は後ろからJUMに覆いかぶさるように抱きついてきた。
「すごかったでしょぉ?」
水銀燈の甘く温い吐息が直に頬にふれて、その上背中に豊かなふくらみがもふもふと弾力して、男心をたまらなく刺激する。
「う、うん……」
「今日は勢い余って28人も抜いちゃったわぁ。もっとも、それから後は誰も乱入してくれなくなったけれども……」
「うう、水銀燈って、HGLだったのかしら……強いはずなのかしら……ううっ」
「あらぁ、よく知ってるわねぇ。わたしも有名になったものだわぁ」
「まあ、お前の凄さはまざまざと見せ付けられたよ。全国レベルじゃないのか?」
「うふふふふ、中学校時代からゲーセンはわたしの居場所だったからねぇ……」
「水銀燈」
JUMの背後から氷点下を大きく割った冷たい声。
「あなた、ちょっっっとわたしの家来に慣れ慣れしすぎじゃないのかしら?」
真紅は平然と怒りも微笑みもまったく浮かべてない無表情だった。
マジ切れしてる──JUMの脳内真紅警報がけたたましくアラートした。
「JUM、待ちなさい」
こそこそと水銀燈と真紅から離れようとするJUMに対するクビキ。
そうして彼女は、いままでの鬱憤を家来のすねに当たり散らして先へ先へと歩き去っていくのである。
「っ痛ッ────!! おいこら、真……」
「JUM、あんな怖ぁいお姫さまはほっときましょぉ?」
「真紅ぅー、おいてかないでなのー」
「もうゲーセンなんてこりごりですぅ。花も恥らう女の子はやっぱり……」
「ボクもばらすいーみたいなシューターになりたいなぁ……」
こうして、JUMとゆかいな仲間たちの楽しい一日が過ぎていくのである。
「……GAME OVER。こんてぃにゅ?」
美術の時間
先生「今日は写生を行う。各自、隣の席同士行う事。笹塚、廊下に立ってろ!」
水「じゃぁ、わたしはジュンをジュンはわたしを♪」
ジ「そんなに近づかなくても;」
紅「水銀燈、私の下僕にちょっかい出さないで頂戴!それにジュンを描くのは私なのだわ!」
水「真紅のおカバさん!わたしとジュンは隣同士なのぉ!真紅は違うでしょ♪」
ジ「そうだぞ真紅、我がままだぞ」
紅「うっぅ、先生!席替えを要求するのだわ!私をジュンの隣になさい!」
先生「おい、真紅いくらなんでもそれはー」
紅「だって、私の隣いないのだわ!」
(真紅の隣、廊下の笹塚)
水・ジ・先生「あっ!」
紅「起きるのだわ、起きるのだわ!」ペチッペチッ
ジ「いてっいてっ何すんだよ!」
紅「何って学校に遅れるのだわ!」
ジ「今日は休みだ!まったく!寝る!」
紅「あっ!(////) じゃぁじゃぁ出かけるのだわ!」ペチッペチッ
ジ「いてっいてっ!わかったわかった起きる起きるから!で何処に行きたいんだ」
紅「最初からそう言えばよくてよ!(/////)・・・
ジュンが連れって行ってくれる場所なら何処でもなのだわ!(/////)」
ジ「(キュン!やばっ可愛い!やっぱり僕って!!)」
『やっぱり好き』第一話
『ぱちんっ…!!』
部屋の中に乾いた音が鳴る。15時だというのに外は暗く雨が降っている。
ジ「…………」
ジュンは無言で真紅を見つめている。
真紅は俯いたまま…ただ泣くばかりだった。
ジ「下僕だったら…何をしてもいいのかよ…!!心を…踏みにじっても……!」
……………。
二人は二年目の恋人同士だ。
高校一年の時に転入して来た真紅が、隣の席のジュンの優しさに惚れたのがきっかけだった。
当時の真紅は誰をも近寄れない孤高な雰囲気をもっていた。
彼女は両親に愛されずに育ち、人を愛する事を知らなかったのだ。
そんな真紅に『無償の愛』を教えたのがジュンだった。
二人の関係は『対等な恋人』では無かった。周りからみたら『主人と下僕』に見えただろう。
友人達には「今日も尻に敷かれてるなぁ!!」なんて言われても、
「敷かれ心地は最高だぜww」なんて笑い飛ばした。
……………。
手をあげたのは流石にまずかったと思う。
でも、悪いのは真紅。
僕を裏切ったのは真紅。
失望させたのは真紅。
ジュンは真紅にかける声を無くし、逃げるようにして家を飛び出した。
真「待って!!ジュン行かないで!!」
真紅の悲鳴にも似た声を無視する。
傘もささずに…土砂降りの中を当てもなく歩いた。
児童公園に入り屋根付きベンチに座るジュン。
しばらくして一人の女の子が傘もささずに走ってくる。
ジュンにはそれが真紅だとすぐに解る。
なぜなら、このベンチは二人の愛のスタート地点だから。忘れられるはずがない。
ジ(…解らない…自分の気持ち…真紅の気持ち……。)
真紅もずぶ濡れで、雨が涙を隠していた。一生懸命走ったのだろう、足がドロドロだった。
真「ごめん……なさい…。」
涙は隠せても、泣き声までは隠せない。
ジュンの目を見つめ、声を詰まらせながらも謝る。
だが、真紅のしたことは許せない。ただの浮気ならまだ良かった。
しかし、浮気相手がジュンの親友であるベジータだったのだ。
真紅は側に近付いて手を握った。そしてもう一度「ごめんなさい…」とつぶやく。
だが、ジュンは真紅の手を抜けて、家に戻る道へ歩き出す。
空に笑われている気がして……。
雨にバカにされている様で……。
家に着いた。
真紅は泣きながらジュンのシャツの後ろを引っ張りながらついてきた。
もうどこにも行かせたくなかったんだろう。
家に着くまで、ただ「ごめんなさい」を何度も繰り返して。
ジュンは振り返る事も応える事も無かった。
ジ(ごめんなさいだと?許せないだろ普通。立場が逆なら許すのか?)
シャワーを浴びながらジュンは頭の中で真紅を責める。
ジ(じゃぁ、水銀燈に浮気wwいや、そんな事あいつに出来るか?あいつは無関係だ。傷つけたらダメだろ!バカか俺は。)
頭を拭きながら自問自答を繰り返して、新しいバスタオルを真紅に投げる。
真紅の肩はカタカタとふるえていた。ただ寒かったのか、別れに怯えていたのかは判らない。
まだ濡れたままの髪でジュンは布団に潜る。晩飯は食べる気にならなかった。
ジ「もう…疲れたな…。」
ジュンは誰にともなく呟いた。
その言葉は真紅に聞こえた様で、立ち上がって、そそくさとシャワーを浴びに行く。
シャワーの音に混ざって真紅の嗚咽が聞こえる。
ジ(真紅が浮気した原因ってなんだ?俺が昔より相手してやらないからか?なんだろう…わかんねー………ZZzz)
ドライヤーの音で目が醒める。
少しうたた寝してしまったジュンは時計に目をやった。
20分程寝てただろうか。
真紅が部屋に戻ってきた。ジュンは寝たフリをつづける。
すると真紅が布団に入ってきた。
ジ(!?!?ww!!!?)
少し驚いて体が反応するあたりは、まだまだ甘ちゃんだ。
真紅は背中からジュンに抱きついた。
真「好き…大好き……ジュンが好き…。下僕なんかじゃない。」
ジ「………………」
真「もう…しないから…お願い……」
いきなりジュンは体を返し、真紅を抱きしめた。
乱暴に…激しく真紅を求めた。
気が狂ったように……何度も唇を重ね……何回も体を重ねた。
真紅の名前を何度も呼んだ。存在を確かめる様に……
真紅はジュンの腕枕で眠っている。ジュンを信頼して、安心しきった寝顔だった。
そっと頬にキスする。
ジ「ふぅ。やっぱり俺は、真紅が好きなんだなぁ…。」
独り言をわざとらしく呟いてみる。
真「ジュン…だぁぃ好きぃ……」
寝言で返事され、笑いをこらえる。
ジュンは決意を固めた。真紅をずっと愛して行くと…。
~朝~
真「あら。ジュン。遅い目覚めね。紅茶淹れなさい。」
ジ「俺、下僕やめるわ。」
真紅の目が一瞬で不安に覆われる。
真「何故!?許さないわ。これは命令よ?」
ジ「イヤだ。自分でやれ。」
真紅の目が涙で潤む。
ジ「下僕じゃイヤなんだ。俺は真紅の恋人になりたいんだ。」
真紅の目が見開かれる。真「私で…いいのね?…うれしい……」
目から暖かい雫がながれる。
ジ「(////)『お願い』だったら紅茶、淹れてやるけど?」
照れ隠しに言ってみる。真紅はかわいい笑みで応える。
真「お願いします!!ジュン君♪」
~終・劇~
『真紅とギターさん』
「真紅! 会場は超満員だ!」
天才女子高生ギタリスト真紅。ジュンは彼女の控え室に駆け込んできた。
「…あれ、真紅。 今日はいつものギターじゃないんだな」
「ええ。私が初めて使ったギター。私の原点よ。今日は、コイツで行くわ」
「私は少し準備があるから、あなた先に行っていなさい」
「ああ」
真紅を見送り、控え室のドアを閉めようとしたそのとき、
(ついにこの時が来たか……)
「?」
中を覗いてみる。真紅のエレキギターが喋っていた。
(何百人もの人間が私の下に集まる。私に生命(いのち)を吸われるために)
「!?」
ジュンは驚いて一旦ドアを閉め、落ち着いてもう一度ドアを開ける。 控え室の中に変わったところは無い。
「(……なわけねぇよなぁ)」
考え直し、もう一度ドアを閉めようとしたその時
(待っていろ愚かな人間どもよ、一人残らず喰らい尽くしてくれるわ。 地獄のステージのスタートだ!)
「!!!111!っ」
ちょうど帰ってきた真紅が訝しげな顔でジュンに訊く。
「どうしたのジュン?」
「うわぁあああああああああああ!!!!」
「ジュン、どうしたの?」
ギターを持ち上げながらさらに訊いてくる。
「いやダメだ真紅! そのギターはダメだ! そのギターはずっとお前を利用してきたんだ! そのギター喋る!
いや喋るとかじゃなくて命とか狙ってる! マジで! とにかくそのギターはヤバイんだ!」
「何言ってるのあなた?」
「真紅さん、そろそろお願いしまーす!」
「わかったのだわ」
スタッフに呼ばれ、真紅がステージに向かって歩き出す。
(ククク、生血を啜ってやる。一滴たりとも残さずにな)
「(生命(いのち)吸い取るとかじゃない! コイツさっきと言ってること違う! ステージを血の海にするつもりだ! クソーッ真紅初の大舞台がぁーーー!)」
「うるさい下僕ね。ちょっと黙ってなさい。」
一人悶えるジュンの鳩尾に、真紅はキツイ一発を入れる。
そして倒れるジュン。ジュンはステージへ行く真紅の背中を見送ることしか出来ない。これまで二人でしてきた苦労が走馬灯のように駆け巡る。
「(くっそぉおおお、このままじゃ真紅のステージが…、真紅のステージが……!!)」
大歓声の中、ステージに立つ真紅。
「(…どこかで聴いているかもしれないお父様に届け、この歌)」
そして力強くギターの弦に指をかけ、演奏を始めようとしたその時、
ブチブチブチブチブチッ
(ぎゃあああああああっ!!!)
力が強すぎたのか、弦が切れた。
静まり返る会場。
「(ま、まずいのだわ…!)」
焦る真紅。と、そこへジュンがギターを持ったジュンが現れた。
「真紅! よかったら僕のギターを使ってくれ!」
「……ジュン」
うなずき合い、目で会話する二人。
「ありがとう。恩に着るのだわ」
ガシッとジュンのギターを掴む真紅。
「(……がんばれよ、真紅!)」
ジュンのギター「ふふふ…まさかこんなにも早くこの日がめぐってくるとはな……」
「って、お前もかぁーーーーーーっ!!!!」
真「JUM、紅茶をいれてちょうだい」
真「ぬるいわ。やり直し」
真「砂糖の量が間違っているようね。やり直し」
真「お茶っ葉が多すぎわよ。やり直しなさい」
J「味にうるさすぎだぜ……」
ベ「新しい喫茶店ができたんだってさ。行ってみようぜ」
銀「それナンパのつもりぃ?まあいいけどねぇ」
ベ「マスター、オススメのやつ2つ頼むよ」
J「へい、お待ち!」
ベ・銀「JUMじゃないか(の)!」
J「真紅の元で修行して、遂に自分の店がもてました」
銀「そ、そう。よかったじゃない」
柔らかな春の日射し。
桜舞う校庭を吹き抜ける風は、まだ冷たい。
今日から三年生。薔薇学で過ごす最後の一年。
玄関前に貼り出された、新しいクラス編成。
それを食い入るように見詰めていたジュンと真紅は、
ほぼ同時に、吐息する。
白くなった息が、春風に流されて、消えた。
紅「また、貴方と同じクラスになったのだわ」
真紅は下駄箱に続く階段を登りかけて、振り返る。
紅「――いつまでも、一緒に居られるといいわね」
よく見なければ気付かないほど小さな微笑み。
ジュンは彼女を追い掛けながら、心の中で囁いた。
君と、いつまでも――
ジ「あー耳が痒いー」
紅「五月蝿くてよ!耳掃除ぐらいなさい!」
ジ「やってはいるんだが...自分じゃ中々...」
紅「まったく!ジュン此処に来なさい!」
ジ「えっ?」
紅「だから耳掃除してあげるのだわ!」
ジ「お前がか?嘘だろ?」
紅「単なる気まぐれなのだわ(////)さぁ早くなさい」
真紅の膝枕で耳掃除をしてもらう。最高に気持ちが良い!
紅「どう?終わったのだわ!」
ジ「ありがとう!これで真紅の声も良く聞こえるよ!」
紅「馬鹿(//////)」
真紅だったら、きっとこんな風に起こすだろうなぁ。
真「起きなさい。学校に遅刻するのだわ」
ジュン「…もうちょっと寝かせてくれよ…」
真「…ダメよ。早くしないと紅茶をかけるわよ」
そう言って、死ぬほど熱い紅茶を顔にかける真紅。
ジュン「あ、あっつ!もうかけてるじゃないか!」
真「あら?手がすべってしまったのだわ」
じゃあ、蒼星石はどんな風に起こしてくれるだろう?
蒼「もう、いつまで寝てるつもりなのさ?」
ジュン「…もう良いよ、今日はサボる」
蒼「…じゃあ、僕もサボっちゃおうかな」
そう言って、ベッドに潜り込んできた。
ジュン「お、おい!いきなり入ってくるなよ」
蒼「ジュン君が起きないからだぞ?ほら、一緒に寝よ?」
いろんな意味で目が覚めるな。
薔薇学の面々は修学旅行で奈良に来ていた。
自由行動ということで引率の先生もいなくなる。
となれば、当然の如くはっちゃける輩も出てくるわけだ。
「おおっ!!スゲェな奈良の大仏!!」
叫びながら班別行動に従わずベジータが一人走っていった。
「おーいベジータ、そんなに慌てると」
注意するまでもなかった。
側面から暴れ鹿が突撃し、地面に伏せったままベジータは動かなくなった。
「馬鹿なのだわ……」
完全に呆れた表情で、真紅が呟いた。
そして皆、ベジータを放置して先に行った。
都合よく鹿が現れ、ベジータを踏みつけては消えていく。
ベジータが全治1ヶ月だと知らされたのは、修学旅行終了後だった。
歴史的建造物やら大仏やら見て周った。
そして生徒たちが興味を持ったのは――結局鹿だった。
「お土産に鹿のフンチョコなんていうのはどうかと思うのだわ……」
「いや、じゃあ買うなよ」
溜息をつきながらもわざわざ買っている真紅にツッコミを入れる。
真紅はそれと一緒に、しかせんべいも買っていた。
「ん?喰うのか」
「殴られたいのかしら。餌付けするのよ」
餌付けって……なんだか嫌な言い方だと思った。
決して間違ってはいないのだろうが、何か違う。
「気をつけろよ。結構シカって凶暴だぞ。さっきのベジータ見たろ」
遠くに救急車のサイレン音が聞こえたのは気のせいだったろうか。
気のせいだと思う。そういえばベジータがいない。気のせいでいいか。
「あんな馬鹿と一緒にしないでほしいのだわ」
そんな風に冷静を装ってはいたが、真紅の表情は硬い。
実は結構大きな鹿。近づいてみると恐怖が出てきたのだろう。
せんべいを指先でつまみ、肘を伸ばすその姿は牽制にしか見えない。
「……ちょっとビビりすぎじゃないか?」
「うるさいのだわ!!邪魔しないで頂戴」
どうやら苛立っているらしい。溜息をついてそれを見守る。
相手側も緊張しているのか、餌を前に容易には近づいてこない。
「ほら、さっさと来なさい……人間様の手ずから食べるのだわ」
妙に偉そうだが、鹿にはそんなことは関係ないらしい。
やがてゆっくり、ゆっくりと歩を進める。
よく言えばつぶらな、悪く言えば意思の読み取れない瞳が近づいてくる。
震えている。真紅の指先が震えている。アレでせんべいが割れないのが不思議だ。
なんだか、いい加減見ていられない。
「ちょっと落ち着け」
言って、軽く真紅の頭を撫でる。
「な、何をす」
「あ」
反論は聞かなかった。僕の声に真紅が振り向く。
鹿が、真紅の指に挟んだしかせんべいを食べていた。
「……あ、食べたのだわ」
「あー、食べたな。うん。おめでとう」
呆然としている真紅に、ただそう応えた。
こんなのはガキでも出来る事だ。別段褒めるような事でもない。
「食べたの……だわ」
だというのに馬鹿みたいにそんな風に呟いて。
だんだん笑顔になっていくこの娘が、少し可愛く思えた。
「……頭、撫でてみたらどうだ」
「そうするのだわ」
せんべいを持った手はそのままで、空いた手が鹿の頭に伸びる。
特に嫌がる素振りも見せない。食べるのに夢中といった風だ。
「……撫でたのだわ」
楽しそうに、鹿にせんべいをうありながら頭を撫でる真紅。
子どもみたいにはしゃいで、童心に還るとでもいったところか。
せんべいがなくなるまで、ずっとその鹿と真紅は遊んでいた。
僕も特に何をするでもなく、じっとそれを見ていた。
夜。気分が悪い。寝苦しい。
疲れが妙な具合にたまっているのかもしれない。
それとも、旅行の高揚感の所為なのだろうか。
「……温泉でも入ってくるか」
消灯時間はとっくに過ぎているが、まあ構わないだろう。
相部屋の男たちを起こさないように、教師に見つからないように部屋を出た。
流石にこの時間となると誰も人がいない。
何の気兼ねもなく、一人でゆっくり入れそうだと思う。
「ぁー、極楽極楽」
そんな爺むさい言葉が自然に出てくるほどに、気持ち良い。
「老人のようなのだわ」
「うっさい……って真紅?」
衝立の向こうから、聞きなれた少女の声がした。
「お前も、風呂か?」
「覗いたら殺すのだわ」
「覗くかよ……」
別に口げんかでもない。単なる会話の流れだった。
夜。気分が悪い。寝苦しい。
疲れが妙な具合にたまっているのかもしれない。
それとも、旅行の高揚感の所為なのだろうか。
「……温泉でも入ってくるか」
消灯時間はとっくに過ぎているが、まあ構わないだろう。
相部屋の男たちを起こさないように、教師に見つからないように部屋を出た。
流石にこの時間となると誰も人がいない。
何の気兼ねもなく、一人でゆっくり入れそうだと思う。
「ぁー、極楽極楽」
そんな爺むさい言葉が自然に出てくるほどに、気持ち良い。
「老人のようなのだわ」
「うっさい……って真紅?」
衝立の向こうから、聞きなれた少女の声がした。
「お前も、風呂か?」
「覗いたら殺すのだわ」
「覗くかよ……」
別に口げんかでもない。単なる会話の流れだった。
そして無言で温泉に浸かる。真紅もあれ以来何も言ってこない。
上がったのなら水音くらいしただろうから、まだそこにいるのだろう。
と、少しだけ向こう側のことを想像してしまった。
恐らくは、タオル一枚の真紅が僕と同じように温泉に浸かっている。
「変な想像してないでしょうね」
「ごめんなさいちょっとしました」
テレパスかと思うほどの勘の良さだった。頭が上がらない。
「はぁ……まあいいわ。私は先に上がるのだわ」
「おう。風邪引くなよ」
夜空の下、水音とぺたぺたという足音が小さく聞こえて、止まった。
「……今日は、楽しかったのだわ」
「んー。そうだな。僕も楽しかったよ」
「……そう。湯冷めしないようにね」
がらがらと引き戸が開いて、閉まる音。どうやら帰ったらしい。
ふと夜空を見上げると、都会では見えないような綺麗な夜空。
「ああ、そうだな。楽しかった」
真紅と一緒にいられて、楽しかった。
――さあ、もう少しだけのんびりして、湯冷めする前には部屋に帰ろう。
「おやすみ、真紅」
誰にともなくそう呟いた。おやすみ、と返事が聞こえた気がした。
おわり
「手を出してちょうだい」
「今日は何だ?」
「いいから」
「はいはい」
何気無く左手を真紅へとさしのべた
「何だこれ?」
自分の指を見つめながら疑問に思う
「下僕の為の鎖よ」
「鎖? この指輪が?」
「知らないの? 左手の薬指は第弐の心臓と言われていて」
「だから鎖ってことか?」
「そうよ、だから……絶対に外さないのよ」
「絶対って風呂の時もか?」
「そうよ、けどそれは可愛そうだから私も同じ事をしてあげるわ」
「別にお前がしなくても」
「いいから私の分の指輪を買ってきなさい」
「はいはい分かりました」
「゙はい゙は一回」
「買ってきますよ」
ジュンは渋々と指輪を買いに向かった
「本当に鈍感ね(///)」
JUM「なあ真紅?」
真紅「あら?何かしら?」
JUM「お前、いつも登下校の時にはヘッドフォンしてるよな?」
真紅「ええ、まあ…」
JUM「あのさ、一体何聞いてるんだ?」
真紅「べべべ、別にJUMには関係ないのだわ!ほっといて頂戴!」
JUM「む…そこまで言わなくても…分かったよ。」
真紅「ふう…さっきはさすがに危なかったのだわ。あら、メール…」
携帯<マッダーイワーナイデー(ry
from 薔薇水晶
タイトル 今度の日曜なんだけど
本文 ドームで来日コンサートがあるのは知ってるよね?
…………チケット二枚、getしました。
ヘッドバッキングの練習しといてね
真紅「!!!!!!11!!111!!!!1!!!!!!」