文化


 階級を問わず共通の慣習として、女性はスカート、男性はズボンが基本となる。
 更に女性は、年齢に応じてスカート丈や髪の結い方を変える。
 10歳までは膝まで、10~15歳は裾位の長さと決まっており、15歳で成人したら足首も見えない長さが推奨される *1
 更に髪を完全に結い上げるのは成人女性の証とされ、成人前の女子は結い上げず *2 、成人後は基本的に寝台の上以外では髪を解かない *3
 実際には、平民の労働階級の成人女性のスカート丈は足首あたりまでであり *4 、女性の貴族が騎獣に乗ったり採取に赴いたりする場合はズボンを着用する。
 また、ボディスが存在し、身体の線を綺麗に見せる目的で、(裕福な)平民の女性は10歳から身につけるようになる *5
 その一方で、魔石による簡易鎧を衣装の下につける習慣がある *6 ことから、貴族女性は、身体を締め付ける目的の補正衣服を身につける必要がない。

 洗礼式、成人式、星結びの儀式の衣装も、基本的には階級をまたいで共通となっている。
 洗礼式は白の服 *7 を、成人式や星結びの儀式では生まれた季節の貴色の服 *8 を身につける。
 例外的に、農村では、秋の収穫祭で一括して、洗礼式・成人式・星結びの儀式を行うこともあり、成人も星結びも秋の貴色の服をまとう *9

 階級差は、服の清潔さをはじめとし、継ぎ接ぎも含めた布の質、布の量、袖の長さに現れる。
 貧民は、晴れ着以外は、生地の厚さと丈夫さが最優先 *10 、週一程度の洗濯 *11 と、おさがり、継ぎ接ぎ *12 でしのぐ。
 布の量の問題から、女の子の服はワンピースに限定される *13
 富民になると、布の質があがることは勿論、清潔さを重視した高頻度の着替え *14 、布の多用したデザイン性重視 *15 へと移る。
 デザインには身分や立場が顕著に表れる。
 自分で動かなくても、側仕えが動いてくれるので、服の汚れを気にしなくても良い立場だと示す場合は、邪魔なくらいに袖が長くなる *16
 但し、貴族であっても、袖が長いのは自分が働く必要がない時に限定され、騎士や文官などの仕事服や神官の普段着は長くない。
 通常の仕事時とは逆に、儀式に臨む青色神官や、給仕の存在が前提となる食事時間の貴族は、袖の長い服を着る。
 その為、汚さないように食べる練習が必須で、洗礼式を終え、見苦しくなく食べられるようになるまで親と食事ができない *17

 身分や貧富の差は、服の下や靴にも表れる。

 富豪や貴族階級では、素足を見せるのは恥ずかしいことだとされているので、男も女も必ず靴下を着用する。
 これは身嗜みとか礼儀のようなもので、靴下を履いていないのはとてもみっともないことだとされている。 *18
 富豪や神殿関係者、貴族階級の者は、薄い布製の、太股の半ばまであるような長い靴下を履く。
 ゴムが無い為、靴下には長い紐がついており、靴下をはく前に腰にまいた布の帯に紐を結びつける。
 靴下を着用した後、膝より長くて、薄くて余裕がたっぷりあるドロワーズを履く。
 スカートが捲れた際にドロワーズしか見えないように、ドロワーズの長さは、スカート丈、ひいては年齢に応じて変わる。
 お腹の辺りに紐が通されていて、結ぶようになっている。10代未満の子供用は膝の辺りにも紐があったが、それ以降も紐なのか、年齢に応じて変わるのかは不明。
 靴下とドロワーズを身につけた後に、上のシャツを着る。 *19

 一方、下町の人間にとって靴下は防寒具である。
 その為、夏は履かないし、冬は毛糸で編んだ巾着のような袋状のものに足を突っ込んで、紐を縛る。
 この袋は足首までなので、その上に毛糸で編んだレッグウォーマーを膝の辺りまでつける。
 見栄えではなく防寒重視なので、ズボンを数枚重ねて履き、その上に装着する。 *20

 貴族階級は、足元の防寒対策を靴で行う。
 冬は裏が起毛した膝くらいまでの深靴(ロングブーツ)を *21 中心に、夏は短靴(ショートブーツ)を中心に履き分ける。
 靴の生地も、用途や見た目で使い分けられており、外出は、硬めの馬皮製や柔らかめの豚皮製を、屋内では布製を使用する *22
 貴族院で、魔石を変形させて鎧の靴を作る練習をする為、貴族は、緊急時や魔力の伝達を重視する場合に、魔石の靴を作って履くことができる *23

 下町の靴は、動きやすさを重視した皮製のショートブーツと、フランスのSabotのような木靴の二種類が存在する。
 上(富豪)から下(貧民)にいくにつれて、革靴、木靴、ぼろ布を巻くだけ、素足となっていく。貧乏人は素足であることも珍しくない。 *24

 同一色、相似色、補色、中差色、彩度、明度などのカラーコーディネートの概念が存在し *25貴色を纏うことが決まっている儀式以外では、季節や髪や目の色等にあわせて、色の組み合わせを変える。
 デザインを重視する一方で、貴族や富豪は流行を重視する。
 領主一族や上級貴族は流行を発信する側である必要があり、下位の後追いは身分的に相応しくないと考えられている *26
 その一方で、エーレンフェストでは下位の貴族は上位の貴族の流行を後追いしなくてはいけないという暗黙の前提があった *27
 その前提の結果、体格に全く合わない服を着るという個人的な問題 *28 から、均一な染の布を貴ぶという大領地の流行が持ち込まれた結果、それまで存在した蝋結染めや絞り染めが廃れる *29 という大きな問題まで存在した。
 ローゼマインが領主の養女となった以降は、ローゼマインの薫陶の結果、各々に似合った服を身にまとったり、技術が流行で廃れないよう記録に残したりするように変化している *30

 特殊な衣装例として、貴族院での服装、騎士階級の服装、青色神官・巫女の服装が存在する。
 貴族院では、黒を基調とした衣装に領地の色のマントと専用のブローチをまとうことが規定で決まっている *31
 全てを吸収する闇の神に敬意を示し、貴族院での教えを貪欲に吸収する姿勢を見せることから黒の衣装 *32 を、所属する領地を示した上で、領地別の寮の入室選別を行う目的でマントとブローチを身につける *33
 騎士は、いつでも戦えるように、魔石で作る鎧の基本となるものを衣装の下に着込む。
 防弾チョッキのような役目を果たし、荒れている領地では、突然の攻撃を防ぐために、文官や側仕えさえ身に付けておくのが常識になっている *34
 青色神官や巫女は、最高神への信仰と、これから常に成長し続けることを誓う立場であることから、成長を促し、助ける火の神の貴色であり、最高神の司る高く亭亭たる大空の色である青をまとう *35 。青の衣の下は各自で適当に変えられるが、儀式の際には、青の衣の上から季節毎の貴色の飾りを身につけることになる *36
 特に儀式用の服は、晴れ着に相当し、縁取りの刺繍や家の紋章の刺繍のある特別仕立てのものを用意する必要がある *37 。更に衣装にあわせる帯も、白地に聖典の祈り文句を銀糸か金糸で刺繍したものを用いる。見習いは銀糸、成人は金糸と決まっている *38
 青色神官・巫女は青の衣だが、神殿長は白の衣をまとう *39

 局所的な慣習として、アーレンスバッハの女性は、公式の場において必ずヴェールを身に付けるというものもある *40
 また、シャツやズボンの上から、マントではなく、薄くて大きな一枚布を体に巻き付けるようにまとうのが、アーレンスバッハ風の男性の装いとされている *41

 ローゼマインのスープが広まるまで、平民・貴族問わず、スープは一度完全に茹でて茹で汁を捨てる調理法が定着していた *42
 小さいゴミや砂などが入っていることがあるというのも茹で汁を捨てていた理由の一つだが、平民の料理人内で、良い子が恵まれなくなるとか、子供が生まれなくなるとか言われていることが大きい *43
 貧民は非常に固い雑穀パン *44 、富豪は小麦だけで作られている白パン *45 という差異はあるが、天然酵母の発見はなされておらず、ローゼマインが天然酵母パンを導入するまで、パンは固いものというのが基本概念だった。
 アーレンスバッハ経由で、ランツェナーヴェより砂糖が輸入され始めている *46 が、普及率は依然低く、調理方法は確立されていない *47 。中央の砂糖菓子も見た目は素晴らしいが、味は完全に砂糖の塊となっている *48
 その為、ローゼマインが導入したお菓子の数々は、富豪は勿論、貴族社会にも非常に高く受け入れられている。

 水分補給の際は、水は勿論、水以外に、ハーブティ *49 をはじめとした様々なお茶 *50 や濃い茶色の何か *51 や、果汁水(コルデ水) *52 なども飲まれている。
 食事の意味合いが強いが、母乳の代用で山羊の乳 *53 が、パン食補助で牛乳 *54 やスープが飲食されている。
 なお、ミルクは紅茶に入れる形でも飲まれている *55

 お酒が存在し、平民から貴族まで愛飲している。
 発泡酒(べレア) *56 、果実酒(ダンケルフェルガーヴィゼ他) *57 、蜂蜜酒 *58 、蒸留酒(クラッセンブルクや、エーレンフェストの北方産) *59 など種類も豊富に存在する。

 お酒、チーズ *60(ワインビネガー) *61 が存在し、貧民でも手に入れられることから、発酵技術は普及している。

 平民と貴族では食事のレベルが全く異なる。
 平民の富裕層でも、食事の量が多くなるだけで、それ以外の平民層と料理自体には大差ない。
 その一方で、貴族の食事は腕の良い料理人が、平民が使わない食材や調味料と、貴族の家でしか作らないレシピを用いて調理する為、味も品数も完全に違う *62
 品数の違いを反映し、貴族社会では、コース料理によく似た順番で料理が出される。
 飲み物が注がれて、前菜の次にスープで、メイン料理が続き、果物やデザート、食後のお茶へと続く *63
 更に料理の飾り切りや盛り付けも工夫がなされており、レベルが高い *64

 平民と貴族の差は大きいが、貴族院や領主会議で毎年お茶会交流をしている影響か、中央と各領地間での、料理の種類やレベルの差は比較的小さい *65
 その一方で、アーレンスバッハの料理はランツェナーヴェから入ってくる調味料や香辛料の影響で、酸味が強く、辛みの強い物が多い。
 その結果、他領に受け入れられやすい味に疎くなる傾向がある為、他領から来た配偶者が他領に受け入れられる味を示す役割を担う *66

 平民と貴族では食事の作法も異なる。
 食前の挨拶は、平民はいただきますと告げるだけだが、神殿や貴族階級は、両手を胸の前で交差して、食前の祈りを捧げる *67
 食事中の食べ方も、階級が高くなるほど、優雅な仕草が要求される。
 貴族社会では、長い袖を汚さず食べられるようになるまで親とすら同席しないし *68 、中級貴族と上級貴族ですら仕草や作法にレベル差が存在する *69

 貴族社会では、毒殺の危険回避を重視した習慣や礼儀が多い。
 まず、食器やカトラリーは、招待された客が持参する上、壊したり、盗まれたりする危険がある食器は自分の従者が扱い、他のものには触らせない *70
 更に、客が持参した物はその場で客の手で開封されて、毒見のために客自身が食べて見せることが礼儀となっている。同様に、招待主がお茶に口をつけ、毒が入っていないことを示してから、客側もお茶に口を付ける *71

 貴族社会では、食事中に給仕を受けることが当たり前である為、身分差や職分・階級差に応じて食事の時間がずれる。
 身分の高い者から順に食事をとると共に、先に食事をする者から後に食事をする者達へと下げ渡す習慣がある *72
 その一方で、上位者が下位者の料理に興味を示した場合、自分の皿を差し出し、相手が下げ渡すのを待たないといけない *73

 食堂に求める清潔さも、貴族と(エーレンフェストの)平民で大きく異なる。
 エーレンフェストの平民は、街の汚れ度合の影響を受けて、ごみのポイ捨てが当たり前となっていた。
 その結果、カチカチの固いパンを皿代わりにして、いらなくなった食べ物は床に落として、犬に食べさせることで片付けとする文化を持っている *74
 更に、大量の料理を運ぶせいで、平民の給仕は、乱暴だろうが、零れようが気にしない *75
 その一方で、貴族は教育の行き届いた側仕えによって給仕されることが前提であり、更に衛生面の向上から、貴族の間ではテーブルクロスではなく、ナプキンを使うようになっている *76

 神殿や貴族社会には貯蔵用氷室(冷蔵庫) *77 や時を止める魔術具 *78 が存在する為、そこで食材や料理を保管することは可能だが、魔力が必要になることから、平民も貴族も、秋に収穫したものを保存食に加工した上で、暗室に保管することが冬支度の基本となっている。
 魔力節約目的で使用は控えられているものの、他領へ嫁ぐ際に、懐かしくなった時に食べられるようにと、故郷の料理を時を止める魔術具に保管して持参したりすることもある *79

 食に関する特殊事例として、アウブの命令によって騎士団が遠征する際は、転移陣で城から食事を送る慣習もある *80

住居

 貴族が住む住居、神殿、平民の住居の2階程度までは、領主が創造魔法でつくる白い建物でできている *81
 下町では白の建物の上に、自前で木造の建物を建造している *82 。貧民街は隙間の多い木肌そのものが露出した木造建屋だが、富豪が住む建屋は色とりどりに塗装されている *83

 下町の建屋はかなり高層で、7階建てが存在している *84
 水の入手が通りの井戸に限定されることもあり、下町では、1階は店舗で、その上の2階は大体店の持ち主の家族が住んでいる。3~6階が貸し出され、7階は店の住み込みの見習いや従業員の部屋になっていることが多い。通りに近く、井戸に近い階ほど家賃が高くなる *85
 基本的に最上階は屋根裏部屋であり、夏は暑くて、冬は寒い。雨漏りをすることも、鳥を飼っていることも珍しくない *86

 貴族街は下町と貴族街の境界にある門から遠いほど高級住宅地になる。
 一軒一軒が公園のような規模を持つが、冬のみ貴族街で暮らすギーベ達の家の庭のサイズは、一年中貴族街で暮らす者の家では庭のサイズより小さい。
 騎獣か馬車が基本なので、道を歩いている者はいない。 *87
 領主の城の敷地内には、三階建てや四階建ての建物と庭園、農園、果樹園、騎士団の訓練場が存在している。
 点在する建物は、城の本館、領主の子らが暮らす北の離れ、領主の第二夫人や第三夫人が暮らす西の離れ、騎士団の寮、庭師の住まいや森の管理人の住まいなどである。
 城の入口は、仕事用と領主の家族やごくプライベートな客人用に分かれており、エーレンフェストでは仕事用が南、家族用が北となっている。 *88
 城や貴族院の寮や神殿は、性別によって使う階が分けられており、女の子は上の階を割り振られている *89
 貴族の館でも、女主人の部屋は上の階に存在する *90 ことから、貴族社会一般的な慣習である可能性が高い。

 貴族街や下町は白の石畳に覆われているが、農村は土がむき出しになっている *91

 創造魔法の建物は魔力では傷が入らない *92 が、魔力の維持が絶たれると崩壊する *93 上、セキュリティの設定が製作者単位なので、守りの強さの異なる建屋を製作する場合は、領主以外の領主一族が担う必要がある *94
 なお、領主が製作した場合の建造物の守りの強さは、親子喧嘩や夫婦喧嘩をしたものが入れなくなるのを避ける為に、魔力攻撃に特化している *95
 その為、物理攻撃で壊すことは可能 *96

トイレ

 八十年程前に、ドレヴァンヒェルがネバネバの有効活用として下水道の作成や利用方法を領地対抗戦で発表するまでは、周囲に汚物を捨てるのが常だった *97
 ドレヴァンヒェルの発表の後、領主会議で申請→権利を金銭で買い取り→許可取得→魔術改造実施という流れで上位領地から順に、下水処理とトイレの改造が進んだ *98
 新式のトイレは深い穴が開いた落下式で、穴の底には、排泄物を分解するねばねばしたものがうごめいている。 *99
 アーレンスバッハからの嫁入り騒動の波紋で、エントヴィッケルンによる下水施設の整備が行きわたらなかった結果、エーレンフェストにおけるトイレと下水の整備は、貴族社会と神殿の集合捨て場のみに限定され、下町では、貧民から富豪まで、汚物を窓から道へポイ捨てすることが当たり前の習慣として続いていた *100

風呂

 水場事情もあり、平民には風呂の習慣はないが、貴族社会では大理石の風呂が流行している *101
 外国から入ってきたもので、貴族の間で美容と健康に良いと貴族社会では評判になっている *102
 湯船につかる形式で、側仕えに手伝ってもらって入る *103
 水瓶と水差しを繋ぐ魔術具である緑の魔石 *104 の存在が、貴族社会で普及した要因と考えられる。

 平民は一部例外を除き風呂を持っていないが、水浴びの習慣(冬はお湯浴び)はある。
 商人は清潔さを重視する為、高頻度で水浴びをする。
 工房も、指名されていない限り、お客に面接するものは、身体が清潔なものを優先する *105
 髪は水につけて汚れを落としているが、身体は、マイン達がしているように、水で濡らした布で体を拭いているのか、水を張った盥に完全につかっているのかは不明。

日常生活

 時間と暦は、平民から貴族まで広く共有されている。
 長さの単位としては、鐘(一日内の時間の区切り) *106 、日 *107 、週 *108 、月 *109 、季節 *110 、年が存在する。
 概念としての年は存在するが、〇〇王歴X年というような年号は使用されていない *111
 詳細は、を参照。

言語

 貴族院や領主会議で一同に会する機会をもつ影響か、ユルゲンシュミット国内では言語が統一されている。
 その一方で、貴族社会は婉曲表現を用いる習慣がある為、言葉は通じているが意味が通じていない場面が発生する。
 特に貴族と平民の間では、その差が顕著に存在する。

 建国期から現代までの間に言い回し *112文字 *113 が変遷している為、貴族でも古い書物を読めるものが限定されている。
 特に政変による粛清や中央への召し上げによって古い文字を読める者が急激に少なくなった *114

 必要性と教育費の問題から、門番(兵士階級)、平民富裕層、貴族や貴族の側仕えは、文字の読み書きができるが、それ以外の平民は文字が読めない。
 その一方で、市場で値段が木札表示されていることから、数字は読める *115
 なお、基本文字は全部で35種類ある *116

 話し言葉には、「丁寧な表現」・「普通の表現」・「くだけた表現」が存在し、生活階層や話す相手によって使い分けられている。
 ただし貴族の女性は、基本的には、親しい者や下位の者に対しても丁寧な表現を使用し、敬称や態度で差異をつけている。

 一人称は、平民内では多少の多様性が存在するが、貴族内では、男性が「私」、女性が「わたくし」で統一されている *117

挨拶

 階級や場面に応じて様々な所作がある。
 特に対人の挨拶は多岐に渡る。
 兵士・騎士階級は、姿勢を正して右手の拳で二回左の胸を叩く。 *118
 平民同士で、丁寧に挨拶をする場合は、軽く膝を曲げて腰を少し落とす。 *119
 商人同士が春になって初めて会った場合は、胸の前で右手を拳にして、指を揃えた左手の手の平に付けながら、軽く目を伏せて春を寿ぐ挨拶を告げる。 *120
 商人が貴族に、あるいは、下位の貴族が上位の貴族に挨拶する際には、左の膝を立てて跪き、軽く首を垂れた状態で挨拶の言葉を告げる *121
 貴族同士で初めて会った場合は、上記の挨拶を行い、相手の許可を得た上で、指輪に魔力を込めて祝福の魔力を贈る *122
 貴族が最大の感謝の意を示す際には、相手の前に跪き、相手の手を取り、手の甲に自分の額を押し付けた状態で礼の言葉を述べる。 *123
 食前の挨拶は、平民はいただきますと告げるだけだが、神殿や貴族階級は、両手を胸の前で交差して、食前の祈りを捧げる。 *124
 神事では儀式毎に様々な所作があるが、神に祈りを捧げたり、神に感謝を捧げたりする動作は、(神殿内または神殿関係者内では)儀式に関わりのない日常習慣と化している。 *125
 なお、ユルゲンシュミットでは、挨拶をする際に頭を下げたり腰を折ったりする習慣はない。 *126

仕事

 交代勤務である兵士や騎士を除き、基本的には土の日は休みとなっている *127
 貴族階級は思い思いの休暇を過ごすが、平民の、特に下働きなどいない貧民階層は、一週間分の家事に励む *128

 洗礼式前の子供に仕事をさせることは禁じられている *129
 その為、洗礼式前の平民の子供は、手伝いと言う名目で、平民用の森での食べ物採取や、教育を兼ねた家業手伝いをしている。
 一方、神殿や貴族社会では、洗礼式前の子供は人間として認められていない *130
 その為、基本的には家の外にでず、母親の友人が連れてきた子供と遊んだり *131 、教育を受けたりして過ごす。

 洗礼式を受けることで、社会の一員として認められる *132
 洗礼式を受けた平民の子供は、親から与えられた仕事着と仕事道具を使って見習いの仕事を行う。これには各職種に必要な教育も含まれる。洗礼式直後は教育の割合が多く、雇用側の負荷が大きいこともあり、見習いの就労時間は週に半分程度である *133
 エーレンフェストの下町の子供は、基本的に親や親戚の紹介で、見習い仕事を始める。その為、大体は親の仕事に関連した職種につくが、甘えが出やすいので、同じ職種でも親の仕事場に行くことは少ない *134
 貴族の子は、洗礼式の後、社会に関わり始める。城でのお披露目をした後、冬の社交期間は、城の一角に7~10歳の子供達が集められ、集団生活を送る *135 。冬以外は、騎士希望の子が騎士の訓練を受けたり *136 、側仕え希望の子が親戚の上で実地演習をしたり *137 する場合もあるが、各家庭内の教育が中心となっていると思われる *138

 商人向の文字や計算の教育費は、週に三日、鐘一つ分だけの授業で、月に最低大銀貨一枚、10万リオン必要となる *139
 その為、教育費が不足する下級貴族と、教育にお金をかけられる上級貴族で、教育のレベル格差が存在する *140
 自領の歴史に至っては、領主一族や領主一族の傍系レベルしか詳しく知らない *141

 商人や職人の見習いは、店長との雇用契約のダルアと、将来的に店や業務を任せるための徒弟契約のダプラの二種類が存在する *142
 将来独立して工房や店を構えたい者や、終身雇用を望まない者、能力的にタプラ契約の打診を受けられなかった者は、ダルア契約でつなぐが、そうでない者は、大体が洗礼時のダルア契約が切れる10~11才時点で、実家や将来働きたいと思う工房や店とタプラ契約を結ぶ *143
 タプラの見習い期間は8年で、見習い期間が終了すると給料があがる *144
 貴族は、10~15才の間が見習い期間となる。該当する年齢の冬は全領地の学生が集う貴族院に通い、国内の地理や国の歴史、一般教養的な共通知識および技能と、文官・側仕え・騎士・領主候補生という職種に応じた専門知識と技能を学ぶ。
 それ以外の期間は、各領地で見習いとして訓練を受けたり実務を行ったりする。

 成人後は、基本的に週休一日体制であり、土の日以外はフルで働く。
 平民の職種は、農民、商人、側仕え、下働き、職人、門番(兵士)に大別され、貴族の職種は、領主、領主候補生、文官、騎士、側仕えに大別される。

男女交際

 貴族社会において男女間に求められる節度は、実年齢ではなく外見で変わる。
 身体的な成長に伴い、周りの反応が完全に変わり、今まで許されていた関係や距離感を見直すように求められる。 *145
 少なくとも片方が未婚の場合は、外聞への影響が大きくなる。
 他領からきた女性が、独身の下級騎士を故郷から連れてきて重用すると、変な噂を招きかねないし *146 、側近や親戚であったとしても、未婚の女性が仮縫いを行う時に同じ館の中にいるのは外聞が良くないとされる *147

 その一方で、娼婦に相当する者も存在し、下町では酒場の女給 *148 が、貴族社会では神殿の灰色巫女が *149 該当する役割を負っている。
 特に貴族社会では、花捧げという呼び名で隠喩されている *150

孤児

 下町では、洗礼式を終えた子供は基本的に就職している為、両親が亡くなった場合は、住み込み見習いという形式で、店が面倒を見る *151
 親が農民の場合は、死んだ時点で畑が接収され *152 、子供は町や村の共有財産として、町長や村長が預かる。
 成人する前に、町長や村長によって人身売買対象とされなかった場合は、成人と同時に畑が与えられる。
 ただ、女性は与えられる畑の面積が小さいため、一人で生きていくのは難しく、結婚相手が必要となる。
 親がいない男性を取り込むのは、自分の娘を手元から離さずに一族の数が増えるという意味で歓迎されるが、親のない女性は結婚資金もないため、悲惨な結婚になることが多い。看護の必要な老人の後添えになったり、乱暴な扱いをされたりすることも珍しくない。 *153
 神殿の孤児は灰色神官、灰色巫女となり、成人後も孤児院に残ったり、貴族の下働きとして買われていったり、青色神官や青色巫女の側仕えとなったりする *154
 貴族の孤児は、親族の判断で処遇が変わる。魔力を供給する下働きになったり、政略結婚の道具になったり、餓死するにまかせられたりと様々である。

独自常識

 階級毎に独特の言い回しがある。商人が価格を口にすることなく指のサインで示したり *155 、貴族が非常に分かりにくい婉曲表現を用いたりと、相手の常識を知らないと会話が成立していない場合も存在する。

 貴族社会で正式に面会を求める場合は、例えお互いに他の用事がなくても、本人が目の前にいたとしても、数日前に書面でお願いしなければならない *156
 その一方で、緊急時には、オルドナンツを用いて直接伝言することができる。
 また、貴族が平民に面会を要求する場合は、相手の都合を確認することなく、一方的に召喚状を送り付ける。

 上級以上の貴族の面会やお茶会の調整は、基本的に側仕え同士で実施する。
 急な事でも主が決定せず、側仕えに任せることが正しいとされている *157

 貴族の場合、騎獣での移動の方が容易だが、よほど訪問を知られたくないような間柄や気安くて仲の良い者でなければ、貴族の館を訪問する時は馬車を使用する *158

 対人の挨拶は階級や職種、場面に応じて変わる。
 詳細は挨拶の項を参照。

 身分が下の者が上の者に対して敬意や恭順の意を示す場合は、両腕を胸の前で交差させる *159
 敬意や恭順の度合いに応じて、軽く首を項垂れたり、軽く腰を落としたり、跪いたりという動作が加わる。

医療

 平民社会における医者の存在は明確にされていないが、および薬を売買するものは存在する *160
 貴族社会における医者は、人の体内に流れる魔力を調べる魔法陣を用いて健康診断をしたり *161 、状態を診て適切な投薬をしたり *162 、戦闘等で精神的に不安定になったものに向き合って心のケアをしたりしている *163
 中には研究好きな変わり者もいて、珍しい事例を聞きつけると飛びついたりもする *164
 病院の存在が示されていない一方で、主治医の概念はあり、少なくとも領主一族の階級には専属医が存在する *165

 医者が存在する一方で、常時は医者にかかることなく、自作または側近に作らせた薬で対処している。
 魔力や体力を回復させる薬(回復薬)や、解毒薬、体内での魔力凝固の抑制と溶解を行う薬(ユレーヴェ *166 )が存在し、素材の収集から薬の製作までを、自前または側近や同僚に依頼して行っている。
 ユルゲンシュミットの貴族は全員が、回復薬やユレーヴェの作り方を貴族院で学ぶが、個人研究や一族の秘法により、より回復力の強い回復薬のレシピを使用している者もいる。

 魔力を多く消費する為、使用場面や使用者は限定されるが、必要に応じて癒しの呪文が使用される。
 傷を清めたり、魔力を満たしたりする場合は、フリュートレーネの癒しが使用され *167
 体力的な疲労を回復させたり *168 、傷を塞いだり、炎症を治めたりする *169 場合はルングシュメールの癒しが用いられる。
 ただし、癒しでは流れた血は戻らない *170 為、多くの血が流れた場合は、十分な休養を必要とする。

 近視や老眼は存在するが、近代的な眼鏡は普及していない。
 貴族は訓練すれば視力強化の魔術が使用できるようになるが、魔力の消費が大きいことから、モノクルのような形状をした魔術具を使用している。 *171

契約

 羊皮紙での文書契約を基本とする。
 ダルア契約・タブラ契約・売買契約等、各種契約を基本とした社会形式になっている。
 ユルゲンシュミットが魔力を基幹とした国であることから、魔力関係の特殊な契約が存在する。
 従属契約、街限定の契約魔術、領地全体の契約魔術、領地をまたがる契約魔術、名捧げ等、魔力的な行動の縛りが存在する。

通過儀礼

 年齢は季節区切りの満年齢で数える。

出産・生誕

 新生児誕生時の対応は、平民と貴族で大きく異なる。
 平民のお産は男子禁制で、産婆と近所のご婦人方の手伝いの元、専用の椅子に座って行う。
 更に、誕生後すぐに、出産を手伝ってくれた人々を労い、赤子と赤子の名を披露する「命名会」を行う。
 記録に残す文化がない為、多くの人に披露し覚えてもらって、記憶に残すことを目的としている。
 同じ理由で、職場も含めなるべく多くの人に報告し、一人でも多くの人におぼえてもらうよう心がける。
 お祝いのお返しは、お祝いをくれた人に子供ができた時に返せばよいという考えであり、貰う都度にお返しをしたりはしない *172
 貴族はお産の際に、魔力を与えることがある。夫や実子といった血族でないと魔力の反発が大きい為、血族の立ち合って行う *173
 貴族社会では魔力を重視し、魔力が家格に会わない場合は、格下の家に養子に出したり神殿に預けたりする。
 その関係上、正妻の子供ならば生まれた時に祝いをするが、第二夫人や第三夫人の子になると、生まれた知らせをわざわざしないことも珍しくはない。貴族社会にその家の子供としてお披露目されるのは洗礼式の時である為、それまでは、子供がどれだけいるのか、よほど仲の良い友人でもなければ、知られることは少ない。 *174

洗礼

 7歳は階級によらない共通の節目年齢となっている。
 神殿で季節毎に、収穫祭で一括して、各家庭に招いて、城の冬の社交時に等、場所や季節は異なるものの、どの階級でも7才時点で洗礼式を行う。
 更に、貴族の場合は、洗礼式を迎えた年の冬の社交時に、王族の場合は、洗礼式以降初めて行われる領主会議時に、お披露目がなされ、貴族社会の一員と認められる。

 貴族社会では洗礼式の際に正式に対応した親兄弟を、実の親兄弟と見なす。
 生さぬ仲なので良好な関係を結べることは珍しいが、愛人の子が優秀なため、第一夫人の子として洗礼式を受けるということも珍しくはない。 *175
 その一方で、血のつながりがあっても、孤児院に入ったり、兄弟として洗礼をしなかったりすると、以降、実の兄弟として接することが難しくなる *176

 洗礼式の際に、各個人の魔力が領地に登録される。
 平民は血をメダルに押し付けることで、血中に含まれる魔力を登録する *177
 貴族は魔術具の棒に魔力を注いだものを神官に渡し、神官が棒に注がれた魔力をメダルに登録する。メダルに魔力を移す際に、何に適性があるのかが示されるため、通常はその際に適性を知らされる *178
 洗礼式の魔力登録用の魔術具を光らせられない貴族の子は、貴族として認められない *179
 エーレンフェストの平民のメダルは神殿で、それ以外は城で管理している *180

10歳の節目

 7歳の次の節目年齢は10歳となる。
 平民の10歳は、見習いとしての三年間の契約が切れる年で、別の工房と契約するのか、契約を更新するのか、はたまた、才能を見出されてダプラ契約を行うのかを決める、ある意味区切りの年となる *181
 貴族の10歳は、貴族院に入学する年である。貴族院は冬限定の教育機関である為、春から冬までを同じ年と見なし、春になった段階で年が切り替わる。
 なお、貴族院の学年設定における、春の開始時期の基準は不明である。

成人

 ユルゲンシュミットにおける成人年齢は15歳である。
 神殿で生まれ季節毎に、収穫祭で一括して、貴族院の最終日に一括してと、場所や季節は異なるものの、どの階級でも15歳で成人式を行う。
 貴族社会では、貴族院の卒業式が成人式を兼ねている。入場にはエスコートが必須とされ、エスコートの相手は婚約者もしくは一目で対象外と分かる親族が務める *182

結婚

 平民の女性と貴族は二十歳まで、平民の男性は二十歳前半が適齢期となる *183
 平民の男性のみ遅いのは、家族を養っていける頃合いを加味するとその頃が妥当という判断による *184
 平民は両親の合意を得て、貴族は両親の合意と魔力的相性を確認する色合わせ *185 を得て、星結びの儀式(結婚式)を受ける。 
 星結びの儀式は各階級別に一年に一度のみ執り行われる。
 下町の平民は夏に神殿で、農民は収穫祭で一括して、貴族は夏に城で、領主候補生や王族は春に領主会議の場で行う。

 平民――特に貧民と、貴族では、結婚相手に求める基準が異なる。
 貧民街における良い嫁とは、まず、健康で丈夫であること第一条件で、次いで気立てが良くて働き者であることが続く。美人条件に裁縫の腕ややりくり上手などが加わる *186
 一方、貴族は魔力的なつり合いが取れないと子供ができない為 *187 、魔力のつり合いが第一で、次いで身分や派閥関係の調整が挙げられる。

 魔力量は魔力を受け入れられる器の大きさにより、器の大きさは妊娠中の母親が注ぐ魔力量によって異なる *188
 母親の魔力が、子の将来の魔力量に大きな影響を及ぼす為、妊娠中はなるべく子に魔力を与えられるように、妊婦は魔力の使用を控える。
 この為、一般の貴族女性は妊娠、出産、子育て期間は丸々職から離れることになり *189 、女性領主もに魔力を注げなくなる。この制約から、女性が領主となる場合は、必ず夫も領主候補生でなくてはならない *190
 なお、夫婦関係が良好な場合は、互いに染めあって、魔力が近い状態になるが、離れると互いの影響が薄れる *191
 子供を父親の魔力に近付けるには、妊娠期間中になるべく頻繁に夫から妻へ魔力を流すようにした方が良い。この辺りの事情もあって、妻が妊娠中に他の妻を娶らない方が良いとされている *192

 子供の魔力に大きな影響を与えるのが母親である為、貴族の結婚の血統禁忌は、同じ母親につながるか否かで異なる。
 同母の場合、兄妹(第二親等)での結婚は許されないが、異母の場合は許される。なお養女は異母妹と同じ扱いになる。
 血筋を遡った際に、同一の女性に至る場合、従兄妹(第四親等)から結婚を許可される。 *193
 同母の年の離れた妹を養女にした場合の息子と養女の結婚可否や、父娘間の可否、洗礼式で戸籍変更した場合の血筋上のみ兄妹間の結婚可否等は不明。

 通常の貴族で、他領からの輿入れがある場合、それぞれの領主の許可を得た後、親族だけで領地の境界にある門へと迎えに行き、お互いに挨拶をして、花嫁や花婿を連れて帰ってくる。この時点ではまだ儀式を終えていない婚約者の状態で、正式な婚姻は夏の星結びの儀式を待つことになる。 *194
 王族や領主候補生の婚姻は、領主だけでなく、王の許可が必要になるため、領主会議の時に中央神殿から神殿長がやってきて、星結びの儀式を行う。貴族院の祭壇のある礼拝室で星結びの儀式を執り行い、その後、領地ではお披露目のみが行われる。 *195
 いずれにせよ、他領に輿入れする場合は、洗礼式の際に登録したメダルを持参する *196

離婚

 所定の手続きを踏むことで、離婚することができる。
 ただし、星結びの儀式で最高神の祝福を得たのにも関わらず離婚した場合、それから先は最高神の祝福を得にくくなり、普通にお祈りしても半分くらいしか祝福を得られなくなる。 *197

葬式

 近しいものが死んだ場合は、葬式を執り行う。
 貴族は時を止める魔術具を持つため、死亡時期と葬式の時期の間に乖離が存在することが多い。
 領主が死亡した場合は、領主会議で次期領主が承認された後、周辺の領地を招いて葬式を執り行う。

 貴族の葬式は青色神官を呼び、遺体から命の神の神具を使って魔石を取り出し継承を行う。
 魔石を取り出すと遺体が消える為、遺体の埋葬はしない。
 魔石も埋葬せずに各家庭で保管される。魔石は代々受け継ぐが、保管し続けるか使用するかは継承者次第である *198

 一方平民は、死後すぐに葬儀を執り行う。
 家族とその近所の住民は、黒い布を腕に巻くことで、葬儀に関係していることを示す。
 死者の国の扉が開くのは、闇の神と光の女神が出会う夜明けであり、無事に朝日が昇る時、夫婦神の導きで死者の国へと迎え入れられると考えられている。
 その為、井戸の広場に黒の布を腕に巻いて結んだ近所の人達が集まり、故人が無事に死者の国に迎え入れられるまで、故人の思い出を語りながら夜を明かす。
 葬式が終わるまで、肉の類は口にしてはならず、2の鐘が鳴り響く頃に婦人方が配るパンとお茶で朝食とする。
 朝食後に、近所の皆で板を担いで、神殿へと向かい、死亡したという届出をして、埋葬に必要なメダルを受け取る。
 洗礼時に登録したメダルが埋葬の許可証となる。金をかけて墓石や墓碑を準備できない者は墓石代わりに使う。
 神殿でメダルを受け取ったら、街の外にある墓地へと向かい、木箱を埋め、板を土に差し込む。
 板にメダルを押し付けると、メダルがピタリとくっついて離れなくなる為、この板を墓標とする。
 街の外にある墓地への埋葬が済めば、葬式は終了になる。
 死んだのが一家の主であれば、遺産相続についての話し合いやこれから先の一家を支える跡継ぎの決意表明のようなものがある *199

 神殿が近隣にないことから、エーレンフェスト以外の平民の登録証(メダル)の受け渡しは直ぐにできない。
 その為、死者を神殿に運ぶ代わりに、葬式時に死者の血を木札に取っておき、秋の収穫祭時に文官(徴税官)に報告して木札(血)を渡す *200
 文官は徴税の品物と一緒に、木札(血)を発送専用の魔法陣 *201 で、登録証が保管されている城に送る。
 死者の登録証は、血にこもった魔力 *202 を目印とした魔術で取り出され、木札に貼り付けられた状態で送り返される *203
 従って、遺族が受け取った登録証付きの木札を墓標につけるのは、送り返された木札を受け取った後となり、葬式から相当日数が経過する。 *204

 青色神官は魔力を持つので、遺体の性質的には貴族に近いが、墓参り対象となることから、儀式で魔石を取り出すことなく墓に埋葬されると推測される *205

 反逆者は葬式がなされず墓標も存在しない。
 領主と領主候補生のみ使用できる闇の神の魔術があり、洗礼式のメダルを用いて処刑を行う *206
 処刑されたものは灰すら残らない。

 魔力を持つものは、死んだら魔力を溜める器官へと魔力が流れ込んで固まり、魔石の元になる *207
 死後どのような形態になるのかは、肉体の部位が身体から切り離される際に、魔石になる部位がどういう状態だったかでかわる。
 死ぬ前かつ魔石を傷つけられる前に剥ぎとられたものは生前の状態で、死後や魔石を傷つけられた後は、魔石以外の部位はどろりと溶けてなくなる *208
 政変の後にランツェナーヴェに魔石が送られたり *209 、洗礼式前のアダルジーザの子がアダルジーザの実(魔石)としてランツェナーヴェに送られていたり *210 、魔石狙いで襲撃されたり *211 、一瞬で魔石になる毒が存在したり *212 、死後に魔石化が始まったり *213 していることから、魔石化する速度は遅いものの、貴族も死後魔石になる。
 戦闘の死ぬ、即死毒で死ぬなどの特殊な例を除くと、死んですぐさま魔石になるということはない。魔力が器官に集まっていき、血液凝固のように固まって魔石が形成される *214


交易

 中央と領地、領地間、ユルゲンシュミットと他国間で交易が存在する。

 中央と領地、領地間の交易は、貴族院の領地対抗戦で交易対象物を示し、領主会議の場で具体的な取引量と取引内容を決める。
 その取り決めに従い、平民の商人達が、領地間を移動して商品を入手・輸送する。

 ユルゲンシュミットと他国間は、領主が境界門を開き、王が国境門を開けることで可能となる。
 他国では魔石があまり存在しない珍しい物らしく、ユルゲンシュミットと交易する国々が何よりも欲しがった。
 その為、平民でも狩れるような弱い魔獣の小さい魔石でも高価で取引できた。 *215
 実際には王であることより、グルトリスハイトを取得しているかどうかが重要で、グルトリスハイトを取得していれば国境門も国境門内にある転移陣も起動が可能となる *216

 交易実績のある外国として、ボースガイツランツェナーヴェが存在する。
 先代ツェントの治世時は、それ以外の国とも交易していたが、ツェント・トラオクヴァールの治世時はランツェナーヴェに限定されている *217

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  • 結婚:農民は祈念式で→農民は収穫祭で(197話) (2016-11-04 17:06:53)
    • 一括修正しました。
  • 結婚のところ、同母では結婚出来なくて、異母なら兄弟でも結婚できる() - 2016-09-11 18:56:23
    • ミスった。(440話 来訪者と対策) - 2016-09-11 18:57:06
    • …ところで、異母ならokって、父と娘だとどうなるんだろう? - 2016-09-11 19:00:12
    • あと洗礼式で別の親が付いた時に、元親の兄弟との結婚も気になる。 - 2016-09-11 19:02:08
    • 追加しました。 - 2016-09-11 20:10:40
  • 平民でゆで汁を飲むと子供が生まれないとか良い子に恵まれないってのは魔力でも増えるのかな? 夫婦間の魔力差の問題で子供ができなかったり子供が身食いになったりするとか - 2017-08-02 03:35:30
    • 2016年 11月11日活動報告で、「Qスープの煮汁を一旦捨てる習慣は、やはり魔力絡みの由来があったのでしょうか? Aはい、そうです。」とあるから、魔力が絡んでることは間違いないかと。生でも食べてるし、他の調理は特にケアしてないしなので、誤差レベルな気がしないでもないのですが、魔力が水溶性で、かつ、水溶状態の方が身体に取り込みやすいのなら、多少の有意差はあるのかもしれません。 - 2017-08-02 07:04:47
      • ローゼマインのユレーヴェ状態かな? - 2017-08-03 23:06:08


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*200 第232話 処分

*201 第197話 収穫祭の打ち合わせ、第213話 収穫祭

*202 第346話 魔術具のインク

*203 第213話。徴税官が、発送専用の魔法陣と受け取り専用の魔法陣の両方を持参しており、その場で、魔方陣の描かれた布を、発送専用から受け取り専用に交換して待機し、多少の時差で城から戻されたものを引き渡す……というのが一番効率が良いが、効率より儀礼的な手順を重視する為仕事の進め方が非常に遅い、城付貴族の文官がそれをしているかどうかは不明。従って、最速で収穫祭翌日、最遅で翌年の収穫祭時の返却となる

*204 第232話 処分

*205 第245話 領主夫妻の帰還、第252話 ゲオルギーネの来訪、第253話 閑話 お茶会

*206 第232話、第523話

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