ドワーフ民族史、あるいはテテッタの半生について手短に語るのであれば。


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ドワーフ民族史、あるいはテテッタの半生について手短に語るのであれば。

 

 

 

 タートテッタ族――この一族は旅と探求の民、または流浪と居留の民と呼ばれる。タートテッタという姓が最も多数派であるが、テテタタ、トーテンタ、タトテットなどの派生した姓も多い。これらの姓については同一と見なし、この項で説明する。

 タートテッタ族は独特の文化を有しているが、あまり一般に知られていないという事実がある。これはタートテッタ族が一種の閉鎖的なコミュニティーを形成しており、また他者に対してその理由を話すことが滅多にないからである。こうした彼らを取り巻く環境は、タートテッタ族の誕生の経緯にあると言われている。

 タートテッタ族の伝説的な開祖の名をタルタランという。彼の偉業や経歴はタートテッタ族の記した碑文や詩歌に残され、数多くのパターンが伝えられるが、根幹をなすエピソードはほとんどが共通している。概要は以下のようなものだ。

 タルタランはある国の王子であった。武勇に長け、義に富み、仁は厚かった。国は思慮深い彼の父であり王、機知と知恵に優れた兄、そして彼による治世のもと、長きに渡る安寧と平穏を享受していた。しかし、ある邪悪なる魔導士の侵略によって父王は打倒され、国を奪われた。都を追われた兄弟は年月をかけ各地を巡って兵を整え、国を取り返すべく攻め込んだ。結果、兄の犠牲によってタルタランは魔導士に勝利するが、最後に呪いをかけられ、気を失う。目覚めるとそこは見知らぬ荒野であり、帰るべき都の場所と名を忘れてしまっていた。彼は再び、故郷を探す長い旅に出ることとなった。

 故郷の地、かつての国の都を探し出すことがタートテッタ族にとっての悲願であり、またそれがこの一族を特徴づけているといえる。彼らの生活基盤、生涯はみなこの願いの上に成り立っているといってもよい。

 

タートテッタ族は各地を歩いて回る「移動グループ」と、ある地域に居座る「定住グループ」の二つに分けられる。

移動グループは世界各地を巡り、故郷の場所や痕跡、情報を探す。ある者は冒険者として遺跡にその名残を求め、ある者は商人として噂話を聞き集める。また詩人や渡りの職人など、その職業はありとあらゆるものである。彼らはそうして集めた情報を定住グループに受け渡し、新たに得た情報を異なる定住グループへと伝達する役割を持つ。

 定住グループは一つの都や町に住みつき、古書や歴史資料、あるいは移動グループや冒険者ギルドからもたらされた情報を整理し、分析する。その性質上学者や研究者、著作家といった職に就いていることが多いが、生活のため兼職をすることも多い。彼らによって精錬された情報を得て、移動グループは旅立ってゆく。また移動グループの者が町にいる間、その住居を確保するのも大きな役目である。

この二つのグループは明確に区別されておらず、自由に交換可能なものである。全体として若いうちは移動グループに属し、老いては定住グループに属するという傾向にあるようだ(当然、専門的な工職・研究職の者は生涯町を出ないこともあるし、熟練の冒険者として老境まで旅を続ける者もいる)。

タートテッタ族は、一族としての一体感が非常に強い。例えば定住グループの夫婦の間に生まれた子が旅を望めば、その子は次に町に来た移動グループの者とともに旅立つ。そうしたとき、二つのグループはある種の親族関係で結ばれるのだ。同じ道行きを共にした移動グループも然り、同じ町に住む定住グループも然りである。また、師弟関係は親子関係か、それ以上に強固な結びつきとされる。婚姻も、同族内での結婚がほとんどのようである。

タートテッタ族は各地に散らばっているため、文化や外見、姓の分化や言語の方言などは分類することができないほどである。これを彼ら自身は、ある種の作法や装身具、特定の語の発音、姓の特徴的な音韻によって判断しているらしい。そうして同族であることが分かれば、互いに生来の知己のように接するという。

 こうして内的に強いコミュニティーを持っているせいか、他者に対する干渉や他者から受ける影響が非常に弱いとされる。彼らが積極的に関わるのは、自身の生活に関わることか、同族に関する事柄のみである(この事実は、商人や冒険者を職にする者にとってはそれほど当て嵌まらず、学者や職工にはとても当て嵌まるといえる)。これが彼らの存在や目的を秘密裏にしている原因である。しかし、別段隠しているわけでもなく、これらのことを公にすることで一族の輪を乱されることを彼らが危惧しているというわけでもないようだ。

さらに付け加えるのであれば彼らは故郷の復興を志しているため、既存の政界や権力には興味がないようだ。宗教に関しては、生業とする職が多岐に渡るためかなり開放的といえる(また研究職の者のように興味がない場合も多い)。

 彼らは外からは不愛想に見えるかもしれないが、親交を結ぶことができれば必ずや心強い味方となるだろう。

――――ドワーフ民族史より

 

 

 

 テテッタ・タートテッタは実に典型的なタートテッタ族として生まれ、育った。幼い頃枕元で聞かされたタルタランの物語に胸をときめかせ、彼について書かれた多くの本を読み、読書の歓びを知った。両親や兄弟、多くの仲間との旅を重ねつつ、弓の腕を磨いた。ある都で家族に別れを告げ、アカデミーで知識を学んだ。そして見知らぬ古書や歴典を探して移住を繰り返し、今度はここ、バルナットの地にたどり着いた。何はなくとも飯の種。そうして、輪唱する炎亭の戸を叩いたのだ。