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人の想いが永遠に続かない事くらい解ってる。
いつか別れが訪れる事も理解していた。

だけどまったく矛盾した気持ちもあった。
ずっと寄り添って生きていきたいという想い。
明日が消える日まで同じ時を刻みたいと願う気持ち。

いつからか君は違う男の香りを身に付け僕の部屋へ来るようになった。
最初は微かなものだった。しかし日が立つにつれ次第に香りは強くなっていく。

その事に気付いた時にはもう手遅れだったのかもしれない。
だけど僕は違う男の香りをかき消そうと君を抱いた。
僕の香りを君に染み込ませるために。君の本当の香りを思い出すために。 

必死だった。

今思えば僕は嫉妬していただけかもしれない。自分の恋人を奪おうとするその男に。
愛を交わす行為がいつしか、ただの”日課”となっていった。
違う男の香りを消す行為。自分の香りを染み付ける為の行為。
そこに愛や優しさはない。
結局、最後まで君の本当の香りを嗅ぐ事はなかった。

今なら解る。

あの時の僕は君ではなく、君の胸元に見え隠れする男の陰しか見ていなかった。
僕は君の香りを嗅ごうとはしていなかったんだ。

いつか僕が言った

「時は冷たい。優しさも愛情も、思い出も無常に流していく」

その時君は言ったね。

「そうかな。温かいと思うよ。だって辛い別れも憎しみも、怒りさえも洗い流してくれる」

その言葉を聞いた頃からかもしれない。別れを意識し始めたのは・・・・・・・・・・・・。

そんな事を思い返しながら日課を終えた時、君に一通のメールが届く。
それを見た途端、一瞬表情を変えながらも何もなかったかのように返事を打つ君。

「ごめん。用事が出来たから帰るね。」

僕には見せる事の少なくなった表情をしながらドアを開ける君。
そして矛盾した気持ちを抑えながら見送る僕。
その嬉しそうな表情からは想像できないほどの冷たい「さよなら」を君の背中から感じた・・・・・・・。


それから幾つかの香りを覚え、いくつもの”日課”をこなし、矛盾した気持ちを一人抑える夜を越えた。


僕はあいかわらず冷たい時と共に流れていく。
少し躓いて流れが止まった時、振り返ると君の顔はすでにかすんでいた。
  

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