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「さよなら」

ゲームの音がうるさく鳴り響く。それももう慣れた。
気になるのは煙草の煙くらいだろうか。
僕は缶ジュースを飲みながら、いつもの場所に寄りかかる。いつもの感じに落ち着く。
昨日と何も変わらないゲームセンター。ここは僕の息抜きの場所。

僕がここに来て、やろうとしているのは格闘ゲームだ。
目当てのゲームはなかなか人気があり、頻繁に対戦が行われている。
残りのジュースを飲み干し、僕は百円玉を入れる。
あっという間に負けて、さっきの場所にまた寄りかかる。

ゲームセンターも定期的に行っていると知っている顔も増えるものだ。
来ている人たちはいつも朝の通勤電車のように決まっている。
さっき対戦した人も顔は知っている。相手も多分、僕の顔を覚えているだろう。
僕はさっきの対戦を思い出す。理想のパターンを想像して、再び百円玉を入れる。
あっさり負けて、さっきの場所に寄りかかる。

僕がここに来るときはいつも一人だ。
いつだか、学校の友達と一緒に来たことがあったが、ゲームセンターはあまり好きじゃないみたいだった。
友達はゲームが下手だったし、お金が掛かるのは嫌だったみたいだ。僕もそれ以来誘わなかった。
僕は純粋に対戦相手を求めてここに来ている。強い相手と対戦できるのはいい。
僕は両替代わりに千円札でジュースを買った。缶を手元に置き、僕は三度百円玉を入れる。
やっぱり負けて、缶ジュースを一気飲みする。


しばらくゲームセンターには行けない日が続いた。
文化祭の準備を無理矢理手伝わされていた。行きたくて、うずうずしていた。
今日は用事があると嘘をつき、ゲームセンターに行ってみよう。
百円玉をジャラジャラ鳴らしながら、僕は自転車をこぐ。



ゲームセンターはやっていなかった。閉まっていた。
張り紙がはってあり、諸事情により~と書いてあった。
「潰れたのか・・・」
自転車に腰かけ遠目からあの張り紙を見ていると、俺しかいない駐輪場にもう一人やってきた。
見覚えのある顔だ。このまえ勝てなかった人だ。
自転車に鍵をかけ、歩いていく。僕は声をかける。
「・・・・潰れたみたいですよ」
「ん?潰れた?」
「入り口の所に張り紙貼ってありましたよ」
「ああ、これか・・・・確かに・・・そう・・・・・みたいね」
「さよならか、このゲーセンとも」
「ここ、近くてよかったのに」
「おれもなぁ、ここが一番居心地よかったな」
「しょうがない、○○まで行くか。君も一緒に行くかい?」
「いえ、いいです。遠いですし、僕はもう帰りますから」
「そうか、ここでお別れだな。またどっかであったらよろしくな」
「んじゃ、さよなら」
「さよなら」



○○はここからかなり遠い。しかしこの近辺にゲームセンターはない。
彼も対戦相手を求めているのだろう。
僕も帰るとしよう。
もうここに来る事はないだろう。
ポケットの中の百円玉を握り締めて、僕は言った。

「さよなら」

百円玉をジャラジャラ鳴らしながら、僕は自転車をこぐ。
  

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