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おおきないっさつのほんがありました。
題名は「さよなら」。
はじめからそこにあったように。
されど決してそんなことはなく。
よってそれは単なる幻想。
ならば、果たして、そこに、意味は、ないのだろう。
らぴすらずりの世界のなかの、真白い本の物語。

まるでおとぎ話のよう戯言。
とでも言った感想をその本を読みながらぼくは思った。
もともと本好きでもなんでもなく、ただ暇つぶしに図書館を散策していただけ。
なのに、その本はぼくの目に留まった。
物の弾みで読み始めると、それは思っていたよりもぼくの心を惹きつけた。
なぜかその本は、丁寧な装丁に反して中は小奇麗ではあるものの、手書きだった。
どの世界よりも淀んでいて、どの世界よりも澄んでいるその世界。
到達すべきは破滅。
底に流れるはふたつでひとつの愛憎劇。
書き出された物は耽美な退廃に満ちていた。
けれど不思議と悲しさは感じ取れず。
まるでそのこと自体を楽しんでいるかのように、ぼくには思えた。
せかいはざんこくなまでにやさしいはずだ。
ぬるま湯に浸っているようなそんな日常においては。

故に、この本の世界は幻想に満たされていたはずだった。
にわかに物語が変調の兆しを見せ始める。
どうしたことか、モノクロに彩られていたはずの世界が漆黒に染まる。
うみが傷口から噴出するように、そこには書き手の感情が吐き出されていた。
見るに耐えないくらい世界が歪む。
てのほどこしようがないくらいに酷く狂った情景。
もはや救いようはないほどに。
精神は腐敗し尽くし。
子細に及ばず、ぼくが心躍ったはずの世界は見る影を失っていた。
でも、ぼくはここで読む手を止めはしなかったんだ。
すると、すでに崩壊した世界にさらなる変化が訪れた。
本来ならそこに世界が描き出されるべき紙に、なにひとつ手が加えられていないのだ。
当然のように、手がつけられていない項が続く。
にげ道のない、はけ口のない、そんな病。
あるがままを受け入れられずに壊れる人間は少なくない。
りんが自然に発火してしまうように、それこそ外気で簡単に。
が、もしそうだったとして、これはどうなのか。
とりあえずには普通とは言えない、そんな症状。
うかんだのは、おそらくは最悪であろうシナリオ。
ごまんとある選択肢の中において、おそらくはもっとも逃げた選択肢。
ざんこくなまでのやさしさは時に人をさらなる絶望の地へ追いやる。
いっきになにも書かれてはいないページを読み飛ばしていく。
ましろいだけのページはなおも続き続け。
しろずくめの終端たる最終項。
ただそこには「さよなら」という言葉だけがあり―――純白は重い朱色で染まっていた。
  

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