※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

『さよなら』

由衣の制服のポケットにはいつもビー玉が3個入っている。

幼い頃、事故にあった。
友達と3人で歩道を歩いていたら、突然黒い乗用車が自分たちの方に走ってきた。
一緒に遊んでいた2人の友達は、その事故で亡くなった。由衣も重症だったが、命を取り留めた。
後で聞いた話では、運転手の居眠り運転だったらしい。
由衣にとってはどうでもよかった。ただ自分の周りにいた人がいなくなったという事実だけ。

意識不明の重態が3日続いた。
由衣が目覚めたとき、一番最初に見たものは、病室の棚においてあるビー玉。
全部で3個。2個は・・・割れていた。
親の話では、事故の時、手に握っていて離さなかったらしい。

なぜ2つだけが割れたのかはわからない。
由衣は、幼心にビー玉を自分たちに見立てた。
それから、3つのビー玉を必ず持ち歩いている。2つは割れたまま。

昼休み。考え事をしたい時は一人で屋上に行く。そして、ビー玉をそっと取り出す。
割れているビー玉を左手 割れていないビー玉を右手に。
光にあたったビー玉を見ると心がおちつく。
左手の4つのかけらは全て赤、右手のビー玉は七色に輝いていた。
昔は、全て透明だったはずなのに。

突然後ろから声がした。
「由衣ちゃん」
はっとして振り返る。そこには幼い少女が二人微笑んでいた。
昔よく見た光景。よく3人で遊んでいた・・・から・・・。

「もういいよ 由衣ちゃん」
いつも夢に出てくる二人は、最期の悲鳴。今日は違った。
「あたしたちの分まで必死に生きてくれたこと知ってる。
 もう背負わなくていいよ。これからは、自分の人生を生きて」
「私・・・・・」
いろいろ言いたいのに言葉がでない。
「ありがと」
そう言って、二人は笑った。二人の笑顔は、あの日のまま。

次の瞬間、七色の光に包まれる。
屋上、ビー玉を両手に持つ・・・私。
その時、左手に持っていたビー玉のかけらが斜め下からの強風にあおられ、手から舞い上がる。
赤い光。きらきらと。
そのまま屋上から赤い光のかけらは落ちていった。


「さよ・・・なら・・・」
由衣は一言つぶやく。
フェンスにしがみついた手には、後から後から涙がこぼれ落ちた。
  

更新履歴

取得中です。