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彼女の視界を覆うのは、闇。 彼女はテレビを前にして、ソファの上で微動だにしない。 三角座りをして膝と膝の間に額を埋め込み、なにも考えないように徹していた。 ふと、部屋にかけられていた時計が日付が進んだことを知らせる鐘を鳴らす。 怖気づいたように体を少し震わせて、顔を上げる。 彼女――遠坂凛を覆っていたのは、闇であった。 市ヶ谷の高級住宅地の一角にある豪邸内に、遠坂凛はいた。 明かりはつけていない。豪邸に誰もいないことを装えないから。 碌なものを食べていない。迂闊に外出したすることもできないから。 誰とも話していない。もう自分は追われる身で指名手配されているから。 無論、自身のサーヴァントとも少ししか話していない。下手に近づくと……その手にかかりそうだったから。 血の臭いと腐った生物の臭いが凛の鼻を刺突したが、何とも思わない。 もうこの臭いには慣れてしまった。もしかしたら嗅覚に障害を患っていて、もうこの臭い以外を知覚できないかもしれない。 三角に丸めていた脚を解いてソファに腰かける形になるが、足の裏には床の硬い質感ではなく足置きの柔らかい心地よさが伝わってくる。 足元を目を凝らしてよく見てみると、そこには死後間もない死体の背中の上に凛の足があった。 首から上はなく、切断面から流れ出した血が運河を形作っている。 そこら中に散らばった人間の死体の血で、部屋は文字通り血の海であった。 このどれもが、豪邸に元々住んでいた暴力団の構成員ではない。 ここに移り住んでから、新たに凛のサーヴァントがどこからともなく持って帰ってきた死体である。 黒贄礼太郎が虫取りに出かけて蝉がたくさん詰まった虫かごを手にした無邪気な子供のようにどさどさと死体を転がしていった。 黒贄礼太郎が新たに殺害した52名の内、約1/3が無関係な一般市民の骸である。 「…………」 それを見て目をしかめることもなく、凛は暗がりの中から群青色の光が輝いていることに気づき、死体の山につまづきながらもその光に向かい始めた。 その光に照らされた凛の顔には血がべっとりとついていた。 瞳に宿る光は今にも消えそうに弱々しかった。 服に血がつこうとももはや気にならないし、シャワーを浴びにいく気力も失せている。 遠坂家の家訓『どんな時でも余裕を持って優雅たれ』など、精神が擦り切れた凛の心からはとうに忘れられていた。 発光していたのは付近のテーブルに置かれていた、自身がマスターであることの証――契約者の鍵。 「あ………」 凛は何かの糸が切れたように、久々に声を出した。 『遠坂凛及びバーサーカーの討伐』 聖杯戦争の幕開けを知らせる通達と共に表示されていた、討伐クエスト。 ホログラムに投影されたそれを見て、凛の瞳から光が消え失せた。 しばらく呆然としていたが、理性をも手放したくなる自身を何とか抑え、動悸で肩を揺らしながら豪邸内にいるであろう黒贄を探す。 凛の中にある意地と遠坂の誇りが今にも崩れ落ちそうな彼女を繋ぎ止めていた。 凛と黒贄の討伐クエストが発令された今、新宿全域のマスターにはっきりと『遠坂凛がマスターである』ことが伝わった。 とはいっても凛は件の大量殺人で既に世界的に有名であったが、聖杯戦争が本格的に始まった今、 早期に対策を打たねば聖杯を勝ち取るどころか1日生き延びることすら難しくなってしまう。 マスター同士の1対1なら負ける気はしないが、それが1対多数なら話は別だ。 とにかく、腹立たしいことに今はこの状況を生み出した諸悪の根源である黒贄しか頼ることができないのだ。 床に散らばる死体を掻い潜り、なんとか黒贄を見つけた。 明かりのない暗闇で黒贄を探し出すことができたのは、グチョ、カチャといった音が豪邸内に響いていたからである。 一体黒贄が何をしているのかわからないが、黒贄にじりじりと接近する。 いつでも令呪を使えるように、集中を切らさないでおく。 殺人をするために生まれてきたような「異常」という言葉がとてつもなく生ぬるく感じるサーヴァントのことだ。 凛も無意識のうちにあの死体の山に仲間入りしているかもしれない。 いつしか凛は、なるべく黒贄に話しかけるときは令呪をいつでも消費できるよう万全の状態を整えるようにしていた。 それによる精神の疲弊が凛をより追い詰めるファクターの一つとなったことは言うまでもない。 「…くらに――」 凛が黒贄の名を呼ぼうとした瞬間、凛の首筋目がけて何かが飛来した。 「ッ!?」 それを見た凛は目を見開き、上体を逸らして間一髪で避けた。 令呪を使えるよう神経を尖らせていたことが功を奏した。 しかし無傷というわけにはいかず、凛の額の皮膚が少し削り取られて凛の鼻の頭を血が伝っていた。 鋭い痛みが凛を襲うが、右手で額を押さえて唸り声を出しながら怨みの籠った目線で黒贄を睨んだ。 ヨレヨレの黒い礼服を纏った腕の先には、彫刻刀が握られていた。 刃には凛のものと思われる血がポタポタと流れ出ている。 黒贄は机の上である作業をしていたようで、振り返った黒贄の顔には淡い笑みと共に幾分かの不機嫌さが含まれているような気がした。 机の上には死体からもぎとった生首が置いてあり、僅かに「中身」の残った頭蓋骨が置いてある。 彫刻刀で肉と皮、脳を全て掘り出して頭蓋骨だけを残す作業の真っ最中あった。 足元には中身と皮を除去された頭蓋骨が数個落ちていた。 「おや、凛さんじゃないですか」 「アンタねぇ…!」 「残念ですが、まだ受付時間ではありません。それ以外の時間では探偵として応対出来ない場合がありますって張り紙が――ああ、ありませんでしたねぇ」 今すぐ切り札にとっている長年練り上げた宝石を使って黒贄を消し飛ばしたくなる衝動に耐える。 「…サーヴァントに睡眠は必要ないってことは知ってるわよね?」 「それは本当ですか」 「本当の本当!!私のサーヴァントなんだから言うこと聞いてよッ!!」 相変わらず馬鹿にしたように微笑を浮かべている黒贄に耐えられず、凛は大声で怒鳴る。 仮にも世間から身を隠しているのにそれにも構わず凛の声は豪邸中に響き渡った。 「むう、こんな時間に依頼とはねぇ。サーヴァントは24時間労働だったのですね、初めて知りました」 「そうよ、サーヴァントは24時間労働!」 まるで子供に方便を並べて言うことを聞かせる大人のように凛は黒贄の言葉を肯定する。 黒贄が動いてくれるなら、それが間違っていようとも凛はどうでもよかった。 「困りましたなぁ、仮面を作る作業に打ち込めなくなる」 「いいから聞いて!後払いで百万でも二百万でも出すから!!」 「ほほう」 報酬の話を聞いた黒贄は先ほどよりも食いついた。 凛はこのまま押し切って依頼という形で指示を聞いてもらおうとして、続ける。 「私達の討伐クエストが発令されたわ。このままだと、他のマスターがここを嗅ぎつけてくるのも時間の問題よ」 「なるほど、討伐クエストですね」 「…知ってるのね?」 「いいえ、初耳です」 凛は溜め息をついた。 もう黒贄と一言二言交わすだけでも疲れるといった様子だった。 「もう、同盟を組める相手なんていないと考えていいわ。私達以外はみんな敵よ」 「ほうほう。それで、ご依頼は」 「私を殺そうとするマスターやサーヴァントがいたら、迎え撃ってほしいの」 「ふうむ、つまり依頼はあなたの護衛、ということになりますかな?」 「そうなるわね」 初めて黒贄が殺人を犯した時から分かりきっていたことだが、彼は殺人鬼である。 それもただの殺人鬼ではない、殺人という行為にある種のこだわりを持っているようで、「殺す」ことに関してはパラメータも併せて最強ともいえるだろう。 また、黒贄と数少ない言葉を交わすうちにわかったことだが、彼は正真正銘の不死身であるらしい。 通りすがりの人を殺害するという魔術師を泣かせるどころか卒倒させてしまうような外れもいいところなサーヴァントだが、戦闘能力はどのサーヴァントを相手取っても引けを取らない。 だからこそ、凛は黒贄を自分を守る盾にしてなんとかやり過ごそうと考えた。 その場しのぎの策だが、今のところ下手に動くよりかはこうした方が安全だ。 現在の凛の状況は、完全に詰んでいる。 討伐令が出され、同盟を組める相手もほとんど限られ、頼れるのは元凶の黒贄礼太郎のみ。 今の凛は聖杯どころではなく、自身の命を守って何とか生き延びることしか考えられなかった。 「聖杯の捜索とは別に、護衛、ですか。私、こう見えて人を守ることが苦手なんです。過去に何度かそういう依頼を受けたことがありますが、 私が殺人に夢中になっている間に依頼人が殺されたり殺してしまったり、あるいは私の殺人を見て発狂してしまったりと芳しい結果が得られていませんので。 それでも宜しいのでしたら頑張ってみますが」 「……もう頼れるのはあなたしかいないのよ」 「了解しました。では、この箱の中から選んでください」 そう言って、黒贄は四角い箱を凛に差し出した。 あの忌まわしい日に見た、上面に手が入りそうな丸い穴の開いている立方体だ。 (…誰か、助けてよ…) いつもの彼女とはかけ離れた弱音を心中で吐きながら、『狂気な凶器の箱』に手を入れてくじを引いた。 ---- 【市ヶ谷、河田町方面(暴力団から奪った豪邸)/1日目 深夜(午前0時半)】 【遠坂凛@Fate/stay night】 [状態]精神的疲労(極大)、疲労(小)、額に傷(流血)、半ば絶望 [令呪]残り二画 [契約者の鍵]有 [装備]いつもの服装(血濡れ) [道具]魔力の籠った宝石複数 [所持金]遠坂邸に置いてきたのでほとんどない [思考・状況] 基本行動方針:生き延びる 1.バーサーカー(黒贄)になんとか動いてもらう 2.バーサーカー(黒贄)しか頼ることができない 3.聖杯戦争には勝ちたいけど… [備考] ・遠坂凛とセリュー・ユビキタスの討伐クエストを認識しました。 ・豪邸には床が埋め尽くされるほどの数の死体があります。 ・魔力の籠った宝石は豪邸のどこかにしまってあります。 ・精神が崩壊しかけています。 【バーサーカー(黒贄礼太郎)@殺人鬼探偵】 [状態]健康 [装備]『狂気な凶器の箱』 [道具]『狂気な凶器の箱』で出た凶器 [所持金]貧困律でマスターに影響を与える可能性あり [思考・状況] 基本行動方針:殺人する 1.殺人する 2.聖杯を調査する 3.凛さんを護衛する 4.護衛は苦手なんですが… [備考] ・不定期に周辺のNPCを殺害してその死体を持って帰ってきます **時系列順 Back:[[Turbulence]] Next:[[夢は空に 空は現に]] **投下順 Back:[[全方位喧嘩外交]] Next:[[君の知らない物語]] |CENTER:←Back|CENTER:Character name|CENTER:Next→| |00:[[全ての人の魂の夜想曲]]|CENTER:遠坂凛|25:[[虹霓、荊道を往く]]| |~|CENTER:バーサーカー(黒贄礼太郎)|~| ----
彼女の視界を覆うのは、闇。 彼女はテレビを前にして、ソファの上で微動だにしない。 三角座りをして膝と膝の間に額を埋め込み、なにも考えないように徹していた。 ふと、部屋にかけられていた時計が日付が進んだことを知らせる鐘を鳴らす。 怖気づいたように体を少し震わせて、顔を上げる。 彼女――遠坂凛を覆っていたのは、闇であった。 市ヶ谷の高級住宅地の一角にある豪邸内に、遠坂凛はいた。 明かりはつけていない。豪邸に誰もいないことを装えないから。 碌なものを食べていない。迂闊に外出したすることもできないから。 誰とも話していない。もう自分は追われる身で指名手配されているから。 無論、自身のサーヴァントとも少ししか話していない。下手に近づくと……その手にかかりそうだったから。 血の臭いと腐った生物の臭いが凛の鼻を刺突したが、何とも思わない。 もうこの臭いには慣れてしまった。もしかしたら嗅覚に障害を患っていて、もうこの臭い以外を知覚できないかもしれない。 三角に丸めていた脚を解いてソファに腰かける形になるが、足の裏には床の硬い質感ではなく足置きの柔らかい心地よさが伝わってくる。 足元を目を凝らしてよく見てみると、そこには死後間もない死体の背中の上に凛の足があった。 首から上はなく、切断面から流れ出した血が運河を形作っている。 そこら中に散らばった人間の死体の血で、部屋は文字通り血の海であった。 このどれもが、豪邸に元々住んでいた暴力団の構成員ではない。 ここに移り住んでから、新たに凛のサーヴァントがどこからともなく持って帰ってきた死体である。 黒贄礼太郎が虫取りに出かけて蝉がたくさん詰まった虫かごを手にした無邪気な子供のようにどさどさと死体を転がしていった。 黒贄礼太郎が新たに殺害した52名の内、約1/3が無関係な一般市民の骸である。 「…………」 それを見て目をしかめることもなく、凛は暗がりの中から群青色の光が輝いていることに気づき、死体の山につまづきながらもその光に向かい始めた。 その光に照らされた凛の顔には血がべっとりとついていた。 瞳に宿る光は今にも消えそうに弱々しかった。 服に血がつこうとももはや気にならないし、シャワーを浴びにいく気力も失せている。 遠坂家の家訓『どんな時でも余裕を持って優雅たれ』など、精神が擦り切れた凛の心からはとうに忘れられていた。 発光していたのは付近のテーブルに置かれていた、自身がマスターであることの証――契約者の鍵。 「あ………」 凛は何かの糸が切れたように、久々に声を出した。 『遠坂凛及びバーサーカーの討伐』 聖杯戦争の幕開けを知らせる通達と共に表示されていた、討伐クエスト。 ホログラムに投影されたそれを見て、凛の瞳から光が消え失せた。 しばらく呆然としていたが、理性をも手放したくなる自身を何とか抑え、動悸で肩を揺らしながら豪邸内にいるであろう黒贄を探す。 凛の中にある意地と遠坂の誇りが今にも崩れ落ちそうな彼女を繋ぎ止めていた。 凛と黒贄の討伐クエストが発令された今、新宿全域のマスターにはっきりと『遠坂凛がマスターである』ことが伝わった。 とはいっても凛は件の大量殺人で既に世界的に有名であったが、聖杯戦争が本格的に始まった今、 早期に対策を打たねば聖杯を勝ち取るどころか1日生き延びることすら難しくなってしまう。 マスター同士の1対1なら負ける気はしないが、それが1対多数なら話は別だ。 とにかく、腹立たしいことに今はこの状況を生み出した諸悪の根源である黒贄しか頼ることができないのだ。 床に散らばる死体を掻い潜り、なんとか黒贄を見つけた。 明かりのない暗闇で黒贄を探し出すことができたのは、グチョ、カチャといった音が豪邸内に響いていたからである。 一体黒贄が何をしているのかわからないが、黒贄にじりじりと接近する。 いつでも令呪を使えるように、集中を切らさないでおく。 殺人をするために生まれてきたような「異常」という言葉がとてつもなく生ぬるく感じるサーヴァントのことだ。 凛も無意識のうちにあの死体の山に仲間入りしているかもしれない。 いつしか凛は、なるべく黒贄に話しかけるときは令呪をいつでも消費できるよう万全の状態を整えるようにしていた。 それによる精神の疲弊が凛をより追い詰めるファクターの一つとなったことは言うまでもない。 「…くらに――」 凛が黒贄の名を呼ぼうとした瞬間、凛の首筋目がけて何かが飛来した。 「ッ!?」 それを見た凛は目を見開き、上体を逸らして間一髪で避けた。 令呪を使えるよう神経を尖らせていたことが功を奏した。 しかし無傷というわけにはいかず、凛の額の皮膚が少し削り取られて凛の鼻の頭を血が伝っていた。 鋭い痛みが凛を襲うが、右手で額を押さえて唸り声を出しながら怨みの籠った目線で黒贄を睨んだ。 ヨレヨレの黒い礼服を纏った腕の先には、彫刻刀が握られていた。 刃には凛のものと思われる血がポタポタと流れ出ている。 黒贄は机の上である作業をしていたようで、振り返った黒贄の顔には淡い笑みと共に幾分かの不機嫌さが含まれているような気がした。 机の上には死体からもぎとった生首が置いてあり、僅かに「中身」の残った頭蓋骨が置いてある。 彫刻刀で肉と皮、脳を全て掘り出して頭蓋骨だけを残す作業の真っ最中あった。 足元には中身と皮を除去された頭蓋骨が数個落ちていた。 「おや、凛さんじゃないですか」 「アンタねぇ…!」 「残念ですが、まだ受付時間ではありません。それ以外の時間では探偵として応対出来ない場合がありますって張り紙が――ああ、ありませんでしたねぇ」 今すぐ切り札にとっている長年練り上げた宝石を使って黒贄を消し飛ばしたくなる衝動に耐える。 「…サーヴァントに睡眠は必要ないってことは知ってるわよね?」 「それは本当ですか」 「本当の本当!!私のサーヴァントなんだから言うこと聞いてよッ!!」 相変わらず馬鹿にしたように微笑を浮かべている黒贄に耐えられず、凛は大声で怒鳴る。 仮にも世間から身を隠しているのにそれにも構わず凛の声は豪邸中に響き渡った。 「むう、こんな時間に依頼とはねぇ。サーヴァントは24時間労働だったのですね、初めて知りました」 「そうよ、サーヴァントは24時間労働!」 まるで子供に方便を並べて言うことを聞かせる大人のように凛は黒贄の言葉を肯定する。 黒贄が動いてくれるなら、それが間違っていようとも凛はどうでもよかった。 「困りましたなぁ、仮面を作る作業に打ち込めなくなる」 「いいから聞いて!後払いで百万でも二百万でも出すから!!」 「ほほう」 報酬の話を聞いた黒贄は先ほどよりも食いついた。 凛はこのまま押し切って依頼という形で指示を聞いてもらおうとして、続ける。 「私達の討伐クエストが発令されたわ。このままだと、他のマスターがここを嗅ぎつけてくるのも時間の問題よ」 「なるほど、討伐クエストですね」 「…知ってるのね?」 「いいえ、初耳です」 凛は溜め息をついた。 もう黒贄と一言二言交わすだけでも疲れるといった様子だった。 「もう、同盟を組める相手なんていないと考えていいわ。私達以外はみんな敵よ」 「ほうほう。それで、ご依頼は」 「私を殺そうとするマスターやサーヴァントがいたら、迎え撃ってほしいの」 「ふうむ、つまり依頼はあなたの護衛、ということになりますかな?」 「そうなるわね」 初めて黒贄が殺人を犯した時から分かりきっていたことだが、彼は殺人鬼である。 それもただの殺人鬼ではない、殺人という行為にある種のこだわりを持っているようで、「殺す」ことに関してはパラメータも併せて最強ともいえるだろう。 また、黒贄と数少ない言葉を交わすうちにわかったことだが、彼は正真正銘の不死身であるらしい。 通りすがりの人を殺害するという魔術師を泣かせるどころか卒倒させてしまうような外れもいいところなサーヴァントだが、戦闘能力はどのサーヴァントを相手取っても引けを取らない。 だからこそ、凛は黒贄を自分を守る盾にしてなんとかやり過ごそうと考えた。 その場しのぎの策だが、今のところ下手に動くよりかはこうした方が安全だ。 現在の凛の状況は、完全に詰んでいる。 討伐令が出され、同盟を組める相手もほとんど限られ、頼れるのは元凶の黒贄礼太郎のみ。 今の凛は聖杯どころではなく、自身の命を守って何とか生き延びることしか考えられなかった。 「聖杯の捜索とは別に、護衛、ですか。私、こう見えて人を守ることが苦手なんです。過去に何度かそういう依頼を受けたことがありますが、 私が殺人に夢中になっている間に依頼人が殺されたり殺してしまったり、あるいは私の殺人を見て発狂してしまったりと芳しい結果が得られていませんので。 それでも宜しいのでしたら頑張ってみますが」 「……もう頼れるのはあなたしかいないのよ」 「了解しました。では、この箱の中から選んでください」 そう言って、黒贄は四角い箱を凛に差し出した。 あの忌まわしい日に見た、上面に手が入りそうな丸い穴の開いている立方体だ。 (…誰か、助けてよ…) いつもの彼女とはかけ離れた弱音を心中で吐きながら、『狂気な凶器の箱』に手を入れてくじを引いた。 ---- 【市ヶ谷、河田町方面(暴力団から奪った豪邸)/1日目 深夜(午前0時半)】 【遠坂凛@Fate/stay night】 [状態]精神的疲労(極大)、疲労(小)、額に傷(流血)、半ば絶望 [令呪]残り二画 [契約者の鍵]有 [装備]いつもの服装(血濡れ) [道具]魔力の籠った宝石複数 [所持金]遠坂邸に置いてきたのでほとんどない [思考・状況] 基本行動方針:生き延びる 1.バーサーカー(黒贄)になんとか動いてもらう 2.バーサーカー(黒贄)しか頼ることができない 3.聖杯戦争には勝ちたいけど… [備考] ・遠坂凛とセリュー・ユビキタスの討伐クエストを認識しました。 ・豪邸には床が埋め尽くされるほどの数の死体があります。 ・魔力の籠った宝石は豪邸のどこかにしまってあります。 ・精神が崩壊しかけています。 【バーサーカー(黒贄礼太郎)@殺人鬼探偵】 [状態]健康 [装備]『狂気な凶器の箱』 [道具]『狂気な凶器の箱』で出た凶器 [所持金]貧困律でマスターに影響を与える可能性あり [思考・状況] 基本行動方針:殺人する 1.殺人する 2.聖杯を調査する 3.凛さんを護衛する 4.護衛は苦手なんですが… [備考] ・不定期に周辺のNPCを殺害してその死体を持って帰ってきます **時系列順 Back:[[Turbulence]] Next:[[夢は空に 空は現に]] **投下順 Back:[[全方位喧嘩外交]] Next:[[君の知らない物語]] |CENTER:←Back|CENTER:Character name|CENTER:Next→| |00:[[全ての人の魂の夜想曲]]|CENTER:遠坂凛|25:[[虹霓、荊道を往く]]| |~|CENTER:バーサーカー(黒贄礼太郎)|10:[[ウドンゲイン完全無欠]]| ----

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