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 光があれば影があり、清が生まれれば濁も生じる。  それは人の営みのみならず、自然界に遍く敷かれた普遍の真理だ。  二つの顔は切り離せない。如何なるものにも浮かび上がる。どちらか一方を根絶やしにすれば、もう片方も諸共に消え去るのが定めというもの。  それは此処も変わらない。災害復興に景気向上、文明の発展と法の整備に伴う治安の安定化が進んではいるものの、それと比例するように歓楽街の欲望が活性化している。  かつてのように表立った悪逆こそ激減したものの、それらが抱える闇は目につかない深みへと潜り、より狡猾な方向へと密度を増しているのだ。  そう、それは紛れもない真実であり、此処〈新宿〉であっても変わることはない。  そのはずであったが。 【……やはり、この状況は異常だと思う】  鉄筋コンクリートのビルの壁に寄りかかって下を向き、腕を組みながら言う少年の姿があった。  特に変わったところは見受けられない少年だった。傍らに竹刀袋を携え、深夜出歩くこと自体が強いて言うなら奇妙ではあるが、それだって常識から外れているわけではない。  だが彼はまさしく異常なのだ。それは内包する魔力であるとか、常人では及びもつかないほどに鍛え上げられた肉体であるとか、確かにそれも含まれる。  しかし最大の異常とは、彼が持つ精神にこそ根差していた。それはある種の狂気にも似て、しかし闇とは無縁の光を放っている。  それは勇気という極大の異常性。御伽噺の英雄しか持ちえないそれが、そこにはあった。 【異常であることは確かだ。だが、お前は一体"どの異常"のことを言っている】  すぐ傍で霊体化していた少年の従僕が、巌のように重厚な声で尋ねた。 【"その手"の噂が、何もしなくても僕の耳に入ってくる現状が、だよ】 【……なるほどな、そういうことか】  バーサーカー……ヴァルゼライドは、その言葉に納得したように頷く。  少年―――ザ・ヒーローに、既に友人はいない。  唯一そうだったかもしれない者を他ならない自分の手で斬り捨てた今、彼に話しかける人間は皆無にも近い状態になっていた。  しかし、そんな状況でも尚、耳に入るのだ。"常識では考えられない事件の噂"が、それこそ大量に。 【遠坂凛の起こした大量殺人のように、日夜ニュースで報道されているようなものじゃない。それこそ表には出てこないはずの代物ばかりが噂として流布している】  それは例えばニュースでは報道されない大量虐殺だとか、猟奇事件という言葉ですら生ぬるい惨殺死体だとか、しっぽすら掴めない大勢の行方不明者だとか、夜ごと夢に現れる天空の御殿だとか。その内容は様々だ。  しかしそのどれもが共通している事項がある。それは非日常的なものであるということ。つまりは犯罪やオカルトといった類の噂だけが、ここ最近急速に濃度を増しているのだ。 【その手の噂は急速に広まっている。けど、"噂の種類"に限って言うなら、ここ数日で急激にその数を減らしているんだ】  そう、そこが最も奇妙な点であった。  一時は見本市の如く多くの種類の噂が存在した。その数は少年が把握していたものに限定しても数十種類にも及び、全体で言うならどれほどの数があったかすら定かではない。  だが奇妙なことに、ここ数日に渡ってそういった噂をとんと耳にしなくなったのだ。今日聞いたものなど、精々が数種類程度に収まっている。  まるで淘汰が進むように、噂は数を減らしていった。  それは一時の流行が廃れていったようにも見えたが、しかしこの傾向は輪をかけて奇妙なことに、オカルトじみた街の雰囲気が正常化しているわけでは断じてないのだ。  噂の種類それ自体は減ったが、街を覆うオカルト趣味、ひいては"闇"そのものはむしろ濃度を増していた。  聞かれる噂の数は減り、しかし頻度は濃縮されるように上がって。  例えるなら、有象無象の多様な噂を駆逐し、ある特定のいくつかの"闇"に収束していくような。  蠱毒のような闇の淘汰を、少年は感じていたのだ。 【考えられるのは、やはり聖杯戦争の参加者によるものということか】 【ああ。現実離れした噂の数々、そして本戦の開催が近づくにつれて数を減らしていった傾向。聖杯戦争に由来するものと見て間違いないと思う】  そして特定の噂に収束するからこそ、彼らとしてはやりやすい。  雑多な情報に惑わされることなく、少数の有力な情報のみを厳選するという作業が既に外野によって完了しているようなものだ。ならば後は、それら噂に違わぬ者を見つけ出し、鏖殺すればいいだけの話。  聖杯戦争の開始は近い。それは、二人が直感的に悟っているもので。  ああ、そして。現に少年の持つ契約者の鍵が光っている。それは通達のあった印だ。  取り出した鍵から投影されたホログラムは、少々の事務的な連絡を残して消え去った。  それは戦争の開始を告げるものであったが、同時に二つのクエストを参加者に与えるものだった。 【……討伐クエスト、二組のバーサーカーが対象か。バーサーカー、貴方はこれをどう思う?】  投射されたホログラムを前に、少年は一切の表情を変えずに尋ねる。  助言を求めたのは、単に経験値の違いだ。少年とヴァルゼライドの潜り抜けてきた修羅場の密度はほぼ等しいものであったが、主に悪魔を相手にしてきた少年と違い、バーサーカーは軍人として人間を主に相手にしてきたという違いがある。  故に、サーヴァントという化け物を使役するマスターについて少年が尋ねる側に回るのは、至極当然の話であった。 【語るに及ばん。役者不足が過ぎるというものだ】  そして、答える声は明瞭に、ヴァルゼライドはそう断じた。 【まず遠坂凛、あの大量虐殺の主犯とされる少女だが……これは最早言葉にするまでもあるまい。己が侍従すら御せんその有り様、何の障害になろうか】  何気なく聞けば相手を愚弄しているようにも聞こえるその言葉だが、しかしヴァルゼライドの内面は決して油断などしていない。  彼は誰が相手であろうとも一切侮らず、油断や慢心とは無縁の存在だ。だがそれとはまったくの別次元で、彼は遠坂凛のことを役者不足だと切って捨てる。 【かの大量殺人、あれは魂喰いと言った戦術上のものではない。報道された事実とその後の動向を見ても、あれは遠坂凛にとって不慮の事態であったことは容易に想像がつく。  彼女が自らの力量を見誤った愚者であるのか、それとも不運にも巻き込まれてしまった市井の民なのかは分からんが……狂戦士を引き当ててしまったこと自体が間違いだったのだろうよ】  どちらにせよ、バーサーカーを扱うような器ではなかったということ。ならば自滅は必至であるし、そもそも全世界規模でその所業が報道されている以上、彼女を取り巻く状況は最悪と言っていい。 【だからこそ、我々にとっては都合がいいと言えるがな】 【それは、つまり?】 【否応なく、遠坂凛は全てのマスターの注目の的となるだろう。必然、彼女を目当てに寄ってくる者も少なからず存在するはずだ。そして浮足立った動きは必ず何処かで綻びを生む。  端的に言って、捜索の手間が省けるのだよ。このようなくだらない闘争など長期間続ける意義はない故に、早期の終結は展開としては好ましい】  早期の終結。それはつまり、敵の姿が見つかりさえすれば自分たちが全て打倒するという決意の表れに他ならない。  侮るでもなく、見下すのでもなく、どこまでも純粋に自らの勝利を信じて疑わない。  例え一度死に触れようが、英雄の根本は一切変化しないのだ。 【なら、セリュー・ユビキタスは?】 【遠坂凛とは別の意味で話にならん。なにせ情報が不足している。だが一つ言えることがあるとすれば、こちらは遠坂凛とは違い、正しくバーサーカーを使役しているということか。  一切表沙汰にならないままに三桁ものNPCを殺害するなど、己が道具に振り回されるような者では為し得まい】  転じて、セリュー・ユビキタスに対する評価は極めて中立的なもの。否定もしなければ肯定もしない、情報不足による答えの保留。  だが分かることもある。それは隠蔽の有無であり、本来魔術師であるならば必ず行わなければならない基本中の基本だ。 【だとすれば、より厄介なのはセリュー・ユビキタスになるわけか】 【ああ。そして、表立った報道はされず、しかし噂として大量殺人が流布していることを鑑みれば、彼奴は暗示を備えた魔術師ではなく、物理的な隠蔽術を施していると予測できる。  いいや、もしかすれば最近減少傾向にある裏社会の住人の掃討を行っている者こそが、彼女なのかもしれんな】  表に名の出ない犯罪者、そもそも戸籍を持たない不法滞在外国人。そういった所謂闇の住人と言うべき人間が急速に数を減らしていることを、彼ら二人は感じていた。  それは権謀渦巻く帝国をのし上がった経歴と、裏社会すらも超越する闇を渡り歩いてきた実績が成せる業か。  そして、それら犯罪者を公的機関が摘発ないし排除したとあらば、確実に大々的な報道が成されるはずだ。権威や面子の関係上、そうしない理由はない。少なくとも、他ならないヴァルゼライドは生前そのようにしてきた。  だからこそ、減少しつつある彼らは闇から闇へと葬られていると考えて間違いない。かといってそれをセリュー・ユビキタスの仕業であると断じるのは早計であるが、可能性の一つとして頭に入れておくべきことではあった。 【そうだね。今はまだ推論しか出ないけど……それでも、僕たちがやるべきことは定まった】  一言だけ呟き、少年は壁についていた背中を離してその場を立ち去る。  人気のない路地裏の一角、そこから一歩抜け出せば、途端にネオンの光が眩く乱反射する繁華街の通りに出た。  ここは歌舞伎町。人の欲望渦巻く繁華街。それは深夜でも変わりなく、多くの人を擁する不眠の城だ。  雑多な人通りをするりとすり抜け、少年はひたすらに感覚を研ぎ澄ませる。それは極小の気配すら見逃さないと言わんばかりに、超常たる者を探し求めている。 【さあ行こう、バーサーカー。僕らが負けるわけにはいかないんだ】 【無論だ。この都市に蔓延るサーヴァントの全て、我等が残らず殲滅するのみ】  彼らは決して止まることがない。  それは明日への希望を原動力として、あらゆる機関を暴走させて駆動する規格外の怪物故に。  例えその身が砕かれようと、二人の意思が潰えることなど未来永劫ありはしないのだ。 ---- 【歌舞伎町・戸山方面(歌舞伎町一丁目)/一日目 深夜(午前0時5分)】 【ザ・ヒーロー@真・女神転生】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [契約者の鍵]有 [装備]ヒノカグツチ、ベレッタ92F [道具]ハンドベルコンピュータ [所持金]学生相応 [思考・状況] 基本行動方針:勝利する。 1.一切の容赦はしない。全てのマスターとサーヴァントを殲滅する。 2.遠坂凛及びセリュー・ユビキタスの早急な討伐。また彼女らに接近する他の主従の掃討。 [備考] 【バーサーカー(クリストファー・ヴァルゼライド)@シルヴァリオ ヴェンデッタ】 [状態]健康、霊体化 [装備]星辰光発動媒体である七本の日本刀 [道具]なし [所持金]マスターに依拠 [思考・状況] 基本行動方針:勝つのは俺だ。 1.あらゆる敵を打ち砕く。 [備考]
 光があれば影があり、清が生まれれば濁も生じる。  それは人の営みのみならず、自然界に遍く敷かれた普遍の真理だ。  二つの顔は切り離せない。如何なるものにも浮かび上がる。どちらか一方を根絶やしにすれば、もう片方も諸共に消え去るのが定めというもの。  それは此処も変わらない。災害復興に景気向上、文明の発展と法の整備に伴う治安の安定化が進んではいるものの、それと比例するように歓楽街の欲望が活性化している。  かつてのように表立った悪逆こそ激減したものの、それらが抱える闇は目につかない深みへと潜り、より狡猾な方向へと密度を増しているのだ。  そう、それは紛れもない真実であり、此処〈新宿〉であっても変わることはない。  そのはずであったが。 【……やはり、この状況は異常だと思う】  鉄筋コンクリートのビルの壁に寄りかかって下を向き、腕を組みながら言う少年の姿があった。  特に変わったところは見受けられない少年だった。傍らに竹刀袋を携え、深夜出歩くこと自体が強いて言うなら奇妙ではあるが、それだって常識から外れているわけではない。  だが彼はまさしく異常なのだ。それは内包する魔力であるとか、常人では及びもつかないほどに鍛え上げられた肉体であるとか、確かにそれも含まれる。  しかし最大の異常とは、彼が持つ精神にこそ根差していた。それはある種の狂気にも似て、しかし闇とは無縁の光を放っている。  それは勇気という極大の異常性。御伽噺の英雄しか持ちえないそれが、そこにはあった。 【異常であることは確かだ。だが、お前は一体"どの異常"のことを言っている】  すぐ傍で霊体化していた少年の従僕が、巌のように重厚な声で尋ねた。 【"その手"の噂が、何もしなくても僕の耳に入ってくる現状が、だよ】 【……なるほどな、そういうことか】  バーサーカー……ヴァルゼライドは、その言葉に納得したように頷く。  少年―――ザ・ヒーローに、既に友人はいない。  唯一そうだったかもしれない者を他ならない自分の手で斬り捨てた今、彼に話しかける人間は皆無にも近い状態になっていた。  しかし、そんな状況でも尚、耳に入るのだ。"常識では考えられない事件の噂"が、それこそ大量に。 【遠坂凛の起こした大量殺人のように、日夜ニュースで報道されているようなものじゃない。それこそ表には出てこないはずの代物ばかりが噂として流布している】  それは例えばニュースでは報道されない大量虐殺だとか、猟奇事件という言葉ですら生ぬるい惨殺死体だとか、しっぽすら掴めない大勢の行方不明者だとか、夜ごと夢に現れる天空の御殿だとか。その内容は様々だ。  しかしそのどれもが共通している事項がある。それは非日常的なものであるということ。つまりは犯罪やオカルトといった類の噂だけが、ここ最近急速に濃度を増しているのだ。 【その手の噂は急速に広まっている。けど、"噂の種類"に限って言うなら、ここ数日で急激にその数を減らしているんだ】  そう、そこが最も奇妙な点であった。  一時は見本市の如く多くの種類の噂が存在した。その数は少年が把握していたものに限定しても数十種類にも及び、全体で言うならどれほどの数があったかすら定かではない。  だが奇妙なことに、ここ数日に渡ってそういった噂をとんと耳にしなくなったのだ。今日聞いたものなど、精々が数種類程度に収まっている。  まるで淘汰が進むように、噂は数を減らしていった。  それは一時の流行が廃れていったようにも見えたが、しかしこの傾向は輪をかけて奇妙なことに、オカルトじみた街の雰囲気が正常化しているわけでは断じてないのだ。  噂の種類それ自体は減ったが、街を覆うオカルト趣味、ひいては"闇"そのものはむしろ濃度を増していた。  聞かれる噂の数は減り、しかし頻度は濃縮されるように上がって。  例えるなら、有象無象の多様な噂を駆逐し、ある特定のいくつかの"闇"に収束していくような。  蠱毒のような闇の淘汰を、少年は感じていたのだ。 【考えられるのは、やはり聖杯戦争の参加者によるものということか】 【ああ。現実離れした噂の数々、そして本戦の開催が近づくにつれて数を減らしていった傾向。聖杯戦争に由来するものと見て間違いないと思う】  そして特定の噂に収束するからこそ、彼らとしてはやりやすい。  雑多な情報に惑わされることなく、少数の有力な情報のみを厳選するという作業が既に外野によって完了しているようなものだ。ならば後は、それら噂に違わぬ者を見つけ出し、鏖殺すればいいだけの話。  聖杯戦争の開始は近い。それは、二人が直感的に悟っているもので。  ああ、そして。現に少年の持つ契約者の鍵が光っている。それは通達のあった印だ。  取り出した鍵から投影されたホログラムは、少々の事務的な連絡を残して消え去った。  それは戦争の開始を告げるものであったが、同時に二つのクエストを参加者に与えるものだった。 【……討伐クエスト、二組のバーサーカーが対象か。バーサーカー、貴方はこれをどう思う?】  投射されたホログラムを前に、少年は一切の表情を変えずに尋ねる。  助言を求めたのは、単に経験値の違いだ。少年とヴァルゼライドの潜り抜けてきた修羅場の密度はほぼ等しいものであったが、主に悪魔を相手にしてきた少年と違い、バーサーカーは軍人として人間を主に相手にしてきたという違いがある。  故に、サーヴァントという化け物を使役するマスターについて少年が尋ねる側に回るのは、至極当然の話であった。 【語るに及ばん。役者不足が過ぎるというものだ】  そして、答える声は明瞭に、ヴァルゼライドはそう断じた。 【まず遠坂凛、あの大量虐殺の主犯とされる少女だが……これは最早言葉にするまでもあるまい。己が侍従すら御せんその有り様、何の障害になろうか】  何気なく聞けば相手を愚弄しているようにも聞こえるその言葉だが、しかしヴァルゼライドの内面は決して油断などしていない。  彼は誰が相手であろうとも一切侮らず、油断や慢心とは無縁の存在だ。だがそれとはまったくの別次元で、彼は遠坂凛のことを役者不足だと切って捨てる。 【かの大量殺人、あれは魂喰いと言った戦術上のものではない。報道された事実とその後の動向を見ても、あれは遠坂凛にとって不慮の事態であったことは容易に想像がつく。  彼女が自らの力量を見誤った愚者であるのか、それとも不運にも巻き込まれてしまった市井の民なのかは分からんが……狂戦士を引き当ててしまったこと自体が間違いだったのだろうよ】  どちらにせよ、バーサーカーを扱うような器ではなかったということ。ならば自滅は必至であるし、そもそも全世界規模でその所業が報道されている以上、彼女を取り巻く状況は最悪と言っていい。 【だからこそ、我々にとっては都合がいいと言えるがな】 【それは、つまり?】 【否応なく、遠坂凛は全てのマスターの注目の的となるだろう。必然、彼女を目当てに寄ってくる者も少なからず存在するはずだ。そして浮足立った動きは必ず何処かで綻びを生む。  端的に言って、捜索の手間が省けるのだよ。このようなくだらない闘争など長期間続ける意義はない故に、早期の終結は展開としては好ましい】  早期の終結。それはつまり、敵の姿が見つかりさえすれば自分たちが全て打倒するという決意の表れに他ならない。  侮るでもなく、見下すのでもなく、どこまでも純粋に自らの勝利を信じて疑わない。  例え一度死に触れようが、英雄の根本は一切変化しないのだ。 【なら、セリュー・ユビキタスは?】 【遠坂凛とは別の意味で話にならん。なにせ情報が不足している。だが一つ言えることがあるとすれば、こちらは遠坂凛とは違い、正しくバーサーカーを使役しているということか。  一切表沙汰にならないままに三桁ものNPCを殺害するなど、己が道具に振り回されるような者では為し得まい】  転じて、セリュー・ユビキタスに対する評価は極めて中立的なもの。否定もしなければ肯定もしない、情報不足による答えの保留。  だが分かることもある。それは隠蔽の有無であり、本来魔術師であるならば必ず行わなければならない基本中の基本だ。 【だとすれば、より厄介なのはセリュー・ユビキタスになるわけか】 【ああ。そして、表立った報道はされず、しかし噂として大量殺人が流布していることを鑑みれば、彼奴は暗示を備えた魔術師ではなく、物理的な隠蔽術を施していると予測できる。  いいや、もしかすれば最近減少傾向にある裏社会の住人の掃討を行っている者こそが、彼女なのかもしれんな】  表に名の出ない犯罪者、そもそも戸籍を持たない不法滞在外国人。そういった所謂闇の住人と言うべき人間が急速に数を減らしていることを、彼ら二人は感じていた。  それは権謀渦巻く帝国をのし上がった経歴と、裏社会すらも超越する闇を渡り歩いてきた実績が成せる業か。  そして、それら犯罪者を公的機関が摘発ないし排除したとあらば、確実に大々的な報道が成されるはずだ。権威や面子の関係上、そうしない理由はない。少なくとも、他ならないヴァルゼライドは生前そのようにしてきた。  だからこそ、減少しつつある彼らは闇から闇へと葬られていると考えて間違いない。かといってそれをセリュー・ユビキタスの仕業であると断じるのは早計であるが、可能性の一つとして頭に入れておくべきことではあった。 【そうだね。今はまだ推論しか出ないけど……それでも、僕たちがやるべきことは定まった】  一言だけ呟き、少年は壁についていた背中を離してその場を立ち去る。  人気のない路地裏の一角、そこから一歩抜け出せば、途端にネオンの光が眩く乱反射する繁華街の通りに出た。  ここは歌舞伎町。人の欲望渦巻く繁華街。それは深夜でも変わりなく、多くの人を擁する不眠の城だ。  雑多な人通りをするりとすり抜け、少年はひたすらに感覚を研ぎ澄ませる。それは極小の気配すら見逃さないと言わんばかりに、超常たる者を探し求めている。 【さあ行こう、バーサーカー。僕らが負けるわけにはいかないんだ】 【無論だ。この都市に蔓延るサーヴァントの全て、我等が残らず殲滅するのみ】  彼らは決して止まることがない。  それは明日への希望を原動力として、あらゆる機関を暴走させて駆動する規格外の怪物故に。  例えその身が砕かれようと、二人の意思が潰えることなど未来永劫ありはしないのだ。 ---- 【歌舞伎町・戸山方面(歌舞伎町一丁目)/一日目 深夜(午前0時5分)】 【ザ・ヒーロー@真・女神転生】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [契約者の鍵]有 [装備]ヒノカグツチ、ベレッタ92F [道具]ハンドベルコンピュータ [所持金]学生相応 [思考・状況] 基本行動方針:勝利する。 1.一切の容赦はしない。全てのマスターとサーヴァントを殲滅する。 2.遠坂凛及びセリュー・ユビキタスの早急な討伐。また彼女らに接近する他の主従の掃討。 [備考] 【バーサーカー(クリストファー・ヴァルゼライド)@シルヴァリオ ヴェンデッタ】 [状態]健康、霊体化 [装備]星辰光発動媒体である七本の日本刀 [道具]なし [所持金]マスターに依拠 [思考・状況] 基本行動方針:勝つのは俺だ。 1.あらゆる敵を打ち砕く。 [備考] **時系列順 Back:[[月光宴への招待状]] Next:[[Turbulence]] **投下順 Back:[[僕は、君と出会えて凄くHighテンションだ]] Next:[[ウドンゲイン完全無欠]] |CENTER:←Back|CENTER:Character name|CENTER:Next→| |00:[[全ての人の魂の夜想曲]]|CENTER:ザ・ヒーロー|13:[[DoomsDay]]| |~|CENTER:バーサーカー(クリストファー・ヴァルゼライド)|~| ----

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