背中と尻から伝わるコンクリートとアスファルトの感覚が、冷たかった。
夏も盛りのこの時期は、其処に突っ立っているだけで体中から汗が噴き出る程暑いものなのだが、北上が今いる場所は、日の当たらない路地の影の中である為、
それ程暑くはないし、寧ろ涼しい位であった。しかし、体感温度が低いのは決して、日陰の中にいるだけではなかった。
きっと今、自分の身体の血の巡りは、相当悪くなっている。だからきっと、こんなにも自分の身体は冷たいんだと、彼女は思っていた。

 肘から先が消失した、自分の右手を北上は眺める。
やはり、ない。本当ならば下腕があった場所には、物足りない空白の部分が存在するだけであった。
どんなに上腕の神経を動かそうとも、指も無ければ手もなくて。そんな状態で、腕が動かせる訳もなかった。
この腕を見る度に、自分は泣きそうになる。そして、己の身体に氷でも押し付けられたかのような恐怖感が、身体を包み込む。

 忘れたくても忘れられない、人外の美貌を誇るあのアサシンの姿。彼を思い出す度に、北上は例えようもない恐怖を感じてしまうのだ。
瞼の裏どころか、大脳の奥底にすら刻まれ焼き付き、脳が死を迎えるまで忘れる事はないのではないかと言う程の美しいアサシンだった。
そんな男が齎した、圧倒的な残虐性を誇る暴力の数々。許せないと思うと同時に、全く抵抗も出来ずにいた事による虚無感が、今の北上の心を、
色水が混ざり合うようにして撹拌されている。

 ――だがそれ以上に、自分は今でも、あの男の美を忘れられずにいる。
敵なのに。自分の右腕を細切れにし、あまつさえアレックスを痛い目にあわせた、許し難い相手の筈なのに。
今でも、あの男の美を忘れられない。天使の美貌に、悪魔の性根。その二律相反性に惹かれる自分がいる事を、北上は嫌悪していた。

「……馬鹿な女」

 これだけ痛い目を、主従共にあわされたと言うのに、何て馬鹿何だろう。
今の北上はそんな事を考えていた。申し訳なく思わないのか、自分を助けてくれた、あのモデルマンのサーヴァントに。

 そのモデルマンのサーヴァントである男、アレックスはまだ戻って来ない。
近場にサーヴァントがいると厄介な為、クラスをアーチャーに変更させ、それなりの高さの建造物の屋上から、近隣の様子を監視している、らしい。
真意の程は解らないが、北上も疑っていない。危機的状況の最中に陥って初めて、普段は自分のパソコンでエロゲをtorrentで落としてプレイしている自称勇者の男の、
危機判断能力とその性根を理解した。確かに、俗物的な人物だったのかも知れないが、聖杯戦争に呼び出されるサーヴァントに相応しい側面も、有していたのだ。
勇者と言う言葉に、勇ましい者と言う意味があるのならば、確かに彼も、その条件を満たしている。北上の中ではアレックスは、自分を守る勇者なのだ。
だから彼女も、彼を信じる事とした。今は彼は、自分に危機が舞い込んで来ないよう、予防線を張ってくれている。そう、北上は思っていた。

 ――そして、それが真実であった事を、今知った。

「……よう、無事だったか」

 北上の聴覚が捉えたのは、よく知ったる己のサーヴァントの声。
少しダウナー気味になっていた今の北上には嬉しい声だった。急いでその方向に顔を向け――血の気を失った。

「そんな目で見るなよ……照れる、だろ……」

 槍を地面に突き刺した状態でなければ、直立する事が難しいと言った風に、アレックスが言った。
彼の右脇腹は綺麗な円形に抉られており、其処からジクジクと血液が流れ出ている。
傷の割に出血量が大人しいのはきっと、自分を治したような治癒の魔術を懐にあてたからだろう。
しかし痛みと苦しみは完全に消せないらしく、身体中から脂汗を噴出させ、苦しそうに喘ぎ声を漏らしながら、彼はアスファルトの上に膝を付いた。

「あ、アレックス!!」

 美貌のアサシン、浪蘭幻十への様々な感情で占められていた脳内が、今のアレックスを見た事で真っ新な空白状態になり、
一種のフリーズめいた様子を見せていた北上であったが、片膝を付いたアレックスを見るや、直に正気を取戻し、彼の方に駆け寄って行く。

「な、何で……!?」

 傷が酷くなってるのか、と言おうとする。

「そりゃお前……戦ったからだろ。ヤバそうなサーヴァントと、一戦交えたんだが……向こうの方が強くてな……」

 今もアレックスは考える。正直、戦って生きていられるのが不思議な程強いサーヴァントだった。
灰胴色の巨鬼に変身出来る、少年のサーヴァント。その速度は音の様に速く、腕から放たれる一撃は稲妻の様な破壊力を内包する。
如何して自分は、サーヴァントの巡り合わせがこうまで悪いのか。戦う度に、傷だらけじゃないかと自嘲する。
一日所か、半日すら持たないと、頭の何処かで冷静な自分が告げている。本当にその通りである、このまま行って、本当に北上を護り通せるのだろうか?

「だ、大丈夫なの!? 死なないよね!? そうだよね!?」

 涙目になりながら、膝を付いたアレックスに安否を尋ねる北上であったが、明らかに大丈夫でないし、そもそも死なない方がどうかしてる程のダメージだ。
艦娘として経験を積んで来た、頭の中の北上が、恐らく無理かもしれないと計算していたが、直に、そんなネガティヴな思考を彼方に吹き飛ばした。
此処で死なれたら、絶対に嫌だ。聖杯戦争に勝ち残れないとか、元の世界に帰れなくなるとか、この勇者に死なれるのは絶対に嫌だとか、その様な感情が色々入り混じった、伏魔殿の如くに複雑な感情であった。

「死なないように気張るが……やー……ハハハ、痛ぇわ」

「駄目駄目!! こんな中途半端な所で……元の世界に戻って大井っちに会って、それで、手痛いビンタを貰って、私を笑わせてくれるんでしょ!?」

「そんな予定、立てたつもりはねーよ……ただ、元の世界には、戻すつもりで……ぐっ……!!」

 強い電流が流れた様な、シャープな痛みに苦悶を漏らした。
気を抜けば気絶する程苦しいし痛いのだが、今は歯を食いしばってアレックスは耐える。
此処で気を失ったら、勇者の沽券に係わる事もそうだが、何よりも、北上が無防備の状態に晒される。それだけは、防がねばならない事柄であった。

「アレックス!!」

「心配するなって、一応時間を置けば――!!」

 言葉の途中で、ハッとした表情を浮かべ、慌てて北上の襟を掴むアレックス。
「えっ、えっ!?」と、何をするのかと北上が訊ねるよりも早く、彼は北上を己の背中に回らせ、ドラゴンスピアの穂先を路地の先へと突き付ける。
アレックスは感じ取っていた。決して速い速度ではないが、此方に向かって確実に近付いてくる、サーヴァント達の気配を。
そしてそれは事実、此方が狙いだったらしい。言葉を交わせる距離まで、その一組は近付いてきた。

 鍛え上げられた身体つきと筋肉量が、黒い紳士服の上からでも解る、高い身長のアングロサクソンだった。
走り難い恰好であるのに、実に健康的で若々しく、理想的なフォームで、彼は此方の方に走って近付いてくる。
ジョナサン・ジョースター。身体の裡に黄金の意思を宿す本当の貴族であり、本当の紳士である。

 槍の先から、殺意が水滴となって落ちるのではないかと言う程の気魄を滾らせて、アレックスがジョナサンを睨む。
それを受けて、ジョナサンは、槍の先端から三~四m程離れた位置で停止。それと同時に、ジョナサンのサーヴァントである、アーチャー。
ジョニィ・ジョースターも霊体化を解き、実体化。人差し指の照準を、アレックスの額に向けて構えた。「ひっ……」、と言う声が、アレックスの後ろから聞こえて来た。

「……アーチャー」

 数秒程の間を置いて、ジョナサンが言葉を発した。
ジョニィは明らかに、アレックスに対して、爪の弾丸を放とうとしている。威嚇でも何でもない、此方に対して攻撃を仕掛ければ、即、動く。
ブラフでも何でもなく、その本気さを、ジョナサンは感じ取っていた。先程まで共闘した相手にも、お前は牙を向くのか、ジョニィ・ジョースターよ。

「マスター、君にも解っている筈だ。彼が向ける殺意を」

 そう、ジョナサンだって能天気な馬鹿じゃない。
アレックスが此方に向けて放射しているものが、敵意と殺意である事は、理解している。
無論、アレックスが此方にそう言った感情を向ける気持ちは、解らなくもない。今のアレックスは、ステータスの上では一段二段も劣るジョニィですら、
殺し切れる可能性がある手負いの状態である。あのバーサーカーの少年と戦った時は必要に駆られて共闘しただけ、と言う側面が否めない。
となれば、アレックス達の側からしたら、ジョニィ達を頭から信用するのは、難しいのは当然の事。必然、このような状況に陥ると言う訳であった。

「……落ち着いて欲しい、ランサー。少なくとも僕には、君と争う気概はない」

 と、ジョナサンは語るが、これで敵意が薄らぐとは、彼も思っていない。現にアレックスは、怪訝そうな顔で此方の顔を睨むだけであった。

「信用出来るかよ」

「嘘じゃない。僕らは聖杯を破壊して、聖杯戦争を止めに――」

「馬鹿かお前、何でも願いの叶う杯を破壊する何て、正気じゃねぇだろ」

 ジョナサンは事此処に及んで、自分の思考がどれだけ顰蹙を買う考えなのかを理解していなかった。
当人の意思など関係なく、契約者の鍵に触れただけで此処に呼び出され、願いが叶えられる杯が手に入るぞ、さぁ殺し合ってくれ。聖杯戦争の本質はこれである。
これは到底許される事柄ではない、正義に反する。だからこそ、その裏に潜む主催者に制裁を与え、参加者の犠牲と血肉で出来た聖なる杯を破壊する。
論理の帰結としては納得しやすく、寧ろ共感を得るのも容易い考えであるが、ジョナサン達のこの考えに賛同する人物とはあくまでも、聖杯戦争に接点のないNPC或いは、
この聖杯戦争自体に怒りを抱く者だけなのだ。聖杯を用いて願いを叶えたい人物が相手では、ジョナサンの説得など滓程の効力も持たないどころか、
最悪聖杯戦争自体を台無しにしてせっかくのチャンスを水泡に帰させる人物として、排除される危険性すらあるのだ。
故に、他参加者を説得する口上としては、聖杯を破壊すると言うスタンスの表明は、下の下。ジョナサン・ジョースターは、あの時十兵衛がして見せた指摘の意味を、理解していなかったのだ。

「少なくとも俺達は聖杯を利用して、元の世界に帰るって言う目的があるんだよ。聖杯を破壊されて……痛ぅ……ッ!!」

「アレ、ッ、モデルマン!!」

 精神の均衡を欠いた状態にある北上は危うく、真名を言いそうになるが、慌ててクラス名に修正する。
モデルマンと言う言葉の意味する所を理解出来ずにいるジョナサンとジョニィであったが、少年のバーサーカー、
高槻涼が放った荷電粒子砲に貫かれた部位が齎す痛みに苦しむアレックスを見て、その疑問は吹っ飛んだ。

「大丈夫か、ランサー!! ……いや、ちょっと待て、其処のマスターの君……腕が」

 気付いたのだ。北上の右腕の肘から先が、完全に消えてなくなっている事に。
その指摘を受け、ビクリ、と、露骨な反応を見せる北上。剥き出しの骨を触られたようであった。

「成程、な。あのバーサーカーと戦う前から、いやに魔力を消費していると思ったが……僕らが戦う前に、既に手痛いダメージを受けていたのか……」

 ジョニィの言葉に、アレックスは歯噛みする。一から十まで全て、その通りの事柄であったからだ。

「……何しに、此処に来た」

 此処で初めてアレックスが、ジョナサン達に、自分達を追って来たその意図を問うた。

「聖杯を破壊しようにも……僕らだけじゃ心許ないのは事実だ。同じ考えを持った仲間を探してるんだが……」

「それを俺らに求めるのか? 言っておくが俺らは――」

「聖杯を求めている、と言うんだろう? それは確かに僕としても許せない事柄かも知れないが……そうだな、確かに君達みたいに、切実な願いを抱く者も……いるんだよな」

 少しだけ、残念そうな表情をし、ジョナサンは言葉を続ける。

「だが、聖杯戦争の果てに手に入る褒賞の聖杯が、本当に願いを叶えるそれなのかも疑わしいだろう? 元の世界に戻るだけ……と言うのならば、超常存在のサーヴァント達だ。
それ位出来る存在、一人や二人、いないとも限らない。どの道、僕ですらもこの先何が起こるか解らないんだ。ある時期までは、一緒に行動する事は、間違いじゃないと思う」

 言葉に詰まるのはアレックスの方だった。正直な話、その通りだと思ったし、同盟自体が、魅力的な提案であったからだ。
同盟のメリットは、サーヴァントが二体になる事で単純に戦闘状況に直面した場合、事を有利に運べる事だ。
無論最終的には、聖杯を求めて戦うと言う未来がある事も否定できないし、そもそもジョナサン達は聖杯を破壊する側の人間だ。
聖杯を求めるアレックス達とは確実に最後の最後で争う事は目に見えている。それでも、この提案が魅力的に思える理由は、一つ。
それはアレックス及び北上が、聖杯戦争を勝ち抜くには非力な主従であるからに他ならない。北上は魔力の総量が少なく、アレックスは器用貧乏。
美貌のアサシン・浪蘭幻十、核熱のバーサーカー・ジャバウォック。この二人と戦って解った事だが、彼の戦闘能力は、かなり控えめだ。
とどのつまりは、自分達だけの力では、聖杯を勝ち取るどころか、生き残る事すら解らないのである。生存率をせめて上げる方策として、同盟はかなり理に叶った選択なのだ。

 アレックスは考える。
此処が、この聖杯戦争における自分達の最大の分水嶺なのではないか、と。
自分達は今手負いの状況だ。魔力の消費も馬鹿に出来ない上に、マスターである北上の状態も最悪を極る。
そもそもそんな主従を見つけて、同盟を組もうだなどと、婉曲的な言葉を用いたとしても、持ち掛けるマスターの存在など、稀何てレベルの話ではない。
人が良すぎて、何か裏があると勘繰る方が正常な反応な程である。そして、今自分達の目の前にいる男は、そんなマスターであった。
此処で選択を間違えてしまえば、自分達は間違いなく、聖杯に辿り着くどころか、今日の一日を乗り越える事もなく死んでしまう。
普通に考えれば、乗るべきだろう。しかし、アレックスはまだ疑っている。

「……一つ、条件がある」

 重苦しい様子で、アレックスが言った。

「マスターの腕か、俺の傷を治して欲しい」

「君のマスターと、君自身を?」

 ジョニィがオウム返しに返事を行う。

「見ての通りだ、マスターは前の戦いで腕を失った。日常生活も不便だろうよ。……んで俺がこのまま消滅すれば、間違いなくマスターはのたれ死ぬ。……それだけは、避けたい」

「……モデルマン」

 提案としては、尤もな所である。が、厳しいものであるのは事実だ。
ジョナサンの波紋は傷を治す事は出来るのだが、欠損した身体の部位までは修復できない。ジョナサンからして見たらそんなもの魔法か何かだ。
次に、アレックスの身体の治療だが、これ自体は、魔力を分け与えれば済む話であろうが、魔力が黄金より重い意味を持つ聖杯戦争で、それを分け与えるのは、
余程信頼した主従以外にはやりたくない。無論、アレックス達を信頼していない訳ではないが、全幅の、と言う言葉を用いる程ではない。
それ以上に、たった今ジョニィから釘を刺された。【貴重な魔力を割くべきではない】、と。ジョナサンの性格を鑑みたら、やりそうであると踏んだのだろう。

 困ったな、と言う風に考えを巡らすジョナサンであるが、一つ。賭けに等しい妙案が思い描かれた。
それは、自分達が拠点としている新宿御苑周辺でも特に目立ち、そして――恐らくは、<新宿>の聖杯戦争に馳せ参じた人物達なら、皆が気付いているであろう病院であった。
ドイツが生んだ誉れ高き詩人であるヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの名作、ファウストに登場する誘惑の悪魔、メフィストフェレスと同じ名をした病院。

「――『メフィスト病院』だ」

 ぴくり、と、アレックスも北上も反応を示した。そして、ジョナサンのサーヴァントである、ジョニィでさえも。

「君達の傷を治せる所は、メフィスト病院以外に存在しないと僕は思う」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 十九世紀の精神分析家であるジグムント・フロイトが、人の心の中に無意識の領域を発見し、その世界にアプローチする方法として、
夢分析と呼ばれる手法を確立してから、百年以上の年月が経過していた。人は眠りに入ると、夢を見る。誰に教えられるでもない。
古の昔から、人間が知る不変の知識の一つである。しかし、何故人が夢を見るのか、その原因と、メカニズムを発見出来た人間は、未だ現れていないと言うのが実情だ。
今日に於いてすら、肉体から抜け出た意識或いは魂が夢を見せている、夢自体が神や悪魔と言った上位次元の存在が見せる予言或いは神託なのだと、
本気で主張する者もいる。何故、科学が世を統べていると言っても過言ではない二十一世紀の世界に於いても、斯様な前時代的な思想が幅を利かせているのか?
誰も科学的に、夢と言う事象の全てを解体出来ていないからに他ならない。

 夢とは人の『身体』が生きている時にしか見られない。
人の『心』が見せる虚像であり実像である。『現実』に体験し、獲得した知識が『空想』の世界に反映される、『意識』の中に生まれた一つの世界である。
『身体』と『心』、『現実』と『空想』、そして『意識』が、パッチワークキルトの如く織り交ぜられた夢の世界は、深層心理学と言う学術分野が確立され、
解体の為のメスの刃を此処まで研ぎ光らせても、未だにその全貌を切り拓けずにいる。

 ――この病院は、そんな、『夢』の領域すらも扱っていると言う事を、此処の<新宿>の住民の誰も知らない。
誰も知らないと言うよりは、誰も知る事がなかったと言うべきか。いや、知る必要性がなかったと言うのが、一番正鵠を射ているだろう。
――人の身体が、蛋白質から『夢』で構成されてしまう現象。恐らくこの意味を理解する人間はいないし、あまつさえ、魔術師ですら理解不能であろう。
現実の肉体にまで影響を及ぼす魔術的な悪夢、身体が夢で構成される奇妙な現象。そう言った患者を治す為に、メフィスト病院のとあるフロアには、
通称夢科と呼ばれる診療科が存在するのだ。但し、今は閑古鳥が鳴いている状態に等しい。
理由は単純で、此処<新宿>には、“魔界都市<新宿>”で頻々と起る奇病や魔疫の類がゼロであるからに他ならない。魔術的な奇病など滅多に起こらない。
必然、夢科は使われなくなる。現在のメフィスト病院は、魔術的な治療が絡む診療科は一切使われておらず、代わりに、一般の病院にもある様な診療科がフル稼働している状態であったのだ。

 そう――ほんの一日前までは。

「先生の見解を、御伺いしたい」

 細身の刀身を思わせる老人であった。
背丈も体格も、特筆するべき所はなく、皮膚の張りも既に身体からは失われ、若々しさとは無縁の、そんな男だった。
しかし、その瞳に宿る光を見るが良い。蛮刀の荒々しさではなく、剃刀に似た鋭い光を湛えたその瞳は、呆けた老爺の瞳とは一線を画する。
例えるならその男は、倭刀の剣身。例えるならばその男は、引き絞られた鋼の糸。
戦士としての風格を身体から醸し出して居ながら、纏う白衣から放たれる知性の香りが、全く損なわれていなかった。
名を、不律。頭に黒いものが一本としてないその老人の名であり、此処メフィスト病院の専属医の一人として働く、聖杯戦争の参加者であった。

「大脳、脳幹、代謝共に異常なし。脳波は勿論の事、脈拍から循環系の全てに至るまで、取り立てる所もなし」

「つまり」

「先生の見立ての通りですよ。これは、ただの昏倒ではありません」

 不律に対してそのような言葉を投げ掛けるのは、年の頃にして三十代半ばの白衣の男であった。
掛けた鼈甲縁の眼鏡が、メフィスト病院の給金の高さと言うものを窺わせる。中原と言う名前のこの男は、メフィスト病院夢科に所属する医者の一人。
そして、綾瀬夕映の担当医の『一人』。一人、と言ったのは、彼の少女の病状は複雑怪奇であるらしく、複数の診療科の腕利きが、担当分野を分けて見ているからだ。
その複数の診療科の医者と言うのが、近頃は全く患者が来ないので医務室で暇をしていたらしいのだが、ある時を境に患者を回された為に、途端に、嬉々として職務を遂行しているわけだ。

「ただの昏睡、昏倒の類ではない事は儂にも解る。だが、脳にも身体にも異常がないとすれば……やはり、このような場所の領分かと思うてな」

「正しい見方ですね。脳にも身体にも原因を見いだせない昏睡は、我々に言わせれば、霊障か、魔術によるものと相場が決まっておりますので」

 うんうんと首を縦に振る中原。

「ですが、カルテやレントゲンを見せて貰っただけでは、この手の症状は何が原因なのか断定しづらいのも、また事実です」

「何故か」

「霊や魔術はそれ自体が神秘に拠るものだからですよ。それ故に、科学ではその異変を感知し辛い。古の昔より、霊や魔が成した障害を観測、解消するには、霊や魔、聖(ひじり)が宿った器物で見るのが確実なのです」

 サーヴァントのファウストも言っていた。神秘の塊であるサーヴァントに人間が直接攻撃を行い、損傷を与えるには、神秘を纏った攻撃でなければならない、と。その法則の延長線上にあるのだろうかと、不律は考える。

「だが、此処の病院の施設であれば、霊や魔の成す障害も観測出来る筈では?」

「ははは、それは院長が手掛けたシステムですから。院長が手掛けた科学は、容易く神秘を征服し、解体する。だからこそ、魔界医師であり、この病院の院長なのですよ」

 「つくづく凄い方です」、と中原は言葉を切った。
実際不律の目から見ても、メフィストと言う男の医術は凄い……と言うよりも、神業なんて言う言葉では尚足りない程の医療技術の持ち主であった。
まるで、ケイローンの下で育てられた、死者を蘇生させる医術の持ち主として有名な、アスクレピオス宛らであった。
きっとあの男ならば、死者すら蘇らせる事が出来るのでは、と、不律は思わずにはいられない。

「それで、中原先生。この綾瀬夕映の症状は、見当が付くだろうか?」

「他の診療科の先生の意見を仰がない限りは、何とも言えませんな」

 首を横に振りながら、中原はカルテを横のデスクに置いた。
其処には患者である綾瀬夕映の顔写真と一緒に、彼女の病状や現在の体長等々が仔細に書き込まれている。

「一口に霊障や悪魔憑き、狐憑きと言いましても、色々あるのです。もっと言えば、齎される障害は実に様々です。
同じ悪魔でも、例えば夢魔の類に干渉された場合は我々の分野になりますが、患者の性格を大きく改変させる悪魔に取りつかれた場合は我々より寧ろ心霊科や魔術科の領分になるのです」

「綾瀬夕映が区内の病院から、メフィスト病院に搬送されてから既に二日は経過している。それでもまだ結果は出ぬ、と」

「お恥ずかしい事ですが、相当難航しております」

「何故か」 

「魔術科の先生達の見解によれば、これが極めて大掛かりかつ高度な呪いの類であるとの事なのですよ」

「ほう」

「私もそれについては同意です。問題は……」

「問題は?」

「高度すぎると言う事ですな」

 かぶりを振るった。

「綾瀬夕映さんの魂が、別の所まで抜き去られている。『昏睡の正体』はこれなのですよ」

「魂を?」

「今の彼女の状態は、仮死状態に近いそれ、と言った方が宜しいのかも知れません。脈もある、呼吸もある、脳波も安定している。だが、魔術的に見れば死んだ状態。それが、今の彼女なのですよ」

「専門外の故に、初心者の様な質問をする事を許してほしいのだが、魂を抜き取られる事は、死ぬ事とほぼ同義ではないのか?」」

「間違ってはいません。ですが、事と場合による、と言う所でしょうか」

「事と場合に……?」

「単に魂を抜き取られただけであるのならば、その魂を元の肉体に戻せば、当該人物は復活します。ですが、心臓や大脳を破壊された状態の肉体に、魂を入れたとしたら、どうなります?」

「常識的に考えれば……元の肉体がそんな状態なのだ。戻った所で、どうしようもないと思うが」

「事と場合と私が申しましたのは、そう言う事ですな。元の肉体が生命活動を維持出来ない状態の肉体には、魂は戻れないのですよ。いや、戻っても意味がない、と言うべきでしょうか」

 確かに、そう言う事ならば論理に矛盾はない。

「では綾瀬夕映は、その魂を肉体に戻せば」

「えぇ、理論上は九割の確率で蘇生するでしょう。ああ、残りの一割と言いますのは、肉体を離れている間魂が摩耗していたり損傷していたり、と言った事態を想定してです」

「肉体に戻せるか?」

「戻せませんねぇ」

 凄まじくあっさりと、中原は匙を投げた。

「『昏睡の正体』は、我々は突き止める事が出来ました。ですが、その魔術が『如何なる術であるのか』、それが全く解らないのですよ」

「それが、高度過ぎると言った理由か」

「はい」

 ポリポリと、側頭部を人差し指で中原がかいた。

「魔術の世界も結局の所、異界の法則や特定の理の下でしか効力を発揮出来ません。呪いと呼ばれる奴も、それが如何なる類のものなのかを判別させない事には、打つ手立てもないのです」

「医療と同じだな」

「えぇ」

 苦笑いを彼は浮かべた。

「この病院の施設でも特定し難い呪い……相手は余程高度な魔術を扱う術者に他なりません。難航の正体が、それなのです」

「では進捗は、ないと言う事か?」

「一概にそうとも言えません」

 言って、机の上に置いてあった、外で開発された物とは違う、PCタブレットを手に取った。
今は所持していないが、不律にもそれは配られている。ただのタブレットではない。魔界都市の技術と、メフィストの悪魔の智慧が混ざり合った器物である。
人類が開発した量子コンピューターの数万倍の演算速度を叩き出す事を可能としていながら、タブレットのレベルにまで小型化する事に成功した、科学の最先端の先を行く電子機器であった。

「今から見せるものは、綾瀬夕映さんの夢を映像化して、このタブレットに出力したものです」

「夢を、映像化……。何を使った?」

「まぁ噛み砕いていえば、夢たしかめ機、って奴ですよ」

 ハハハ、と笑いながら、中原は目当ての映像のサムネイルをタッチし、それを不律の方へと見せつけた。
映像はおよそ一分ほどの長さである事がシークバーから窺う事が出来るが、動画自体の長さよりも目を引くのが、映像そのものだった。
綾瀬夕映が、確かにそこにいる。先程見て来た患者の顔を見間違える程、不律は耄碌していない。間違いなく彼女が動画に映っている。
しかも、動いている。動画である以上当たり前だと思われるが、先程まで何をしても動かなかった少女が、全く問題なく活動していると言うのだから、
不律としては驚きを隠せない。だが、それ以上に奇妙だったのは――

「此処は、何処だ?」

 疑問に中原が答えてくれる事を期待して、不律は言葉を発した。
綾瀬夕映は、見知らぬ街角で生活を送っていた。この見知らぬと言うのは、行った事のない都会や村落とか、集落とか言う意味ではない。
本当に、知らない街なのだ。建造物の様式が、明らかに二十一世紀よりも千年、いや、事によったらそれ以上昔のそれなのである。
街行く人間の服装は古代ローマのそれを踏襲した様な、麻の軽装であったり白いトーガであったり。舗装された街路には当たり前の如くに荷馬車が走っていた。
動画の中の夢世界は青空であるらしい。一瞬だが、その青さに不律は目を奪われた。工業地帯も地球上になく、汚れた物を人類が海に流し空に昇らせていなかった太古の世界の情景とは、きっと、こんな物であったのだろうか、と、連想せずにはいられなかった。

「此処は、何処か。結論から言いましょう。解りません」

 残念そうな口ぶりで、中原が言った。

「周囲の建造物の様式。ローマ様式にもエジプト様式にも取れますが、これと言った特徴が掴めない。地球上に存在しなかった文明です。なのに、この異様なリアリティ。
よく見て頂ければ解りますが、綾瀬夕映さんの見る夢に出てくる建物から青空、道行く人間全てに至るまで、かなり精緻に形作られています。
まるで……そう。『実際にこのような場所を何処かで見聞している』かのようなリアルさです」

 夢は、当該人物が経験した体験や、獲得した知識とリンクする。
その人物が知らない事柄の夢は基本的に曖昧かつ抽象的な姿として映像化されるのだが、この映像。
もしも中原の言う事が本当であるのならば、綾瀬夕映は何処から、この夢の中に不思議な世界を見聞きしたのか?
疑問に思っても、映像の中の綾瀬夕映は答えてくれない。宮崎のどかの通う学校と同じ制服を身に纏いながら、オロオロと街道を歩く綾瀬夕映は。

「解決の糸口は、間違いなくこの夢の世界にあると私は思うのですが……これ以外に手がかりがありませんので……」

 やはり、心底残念そうな口調を隠しもせずに彼は言った。それ以上に残念そうだったのが、不律の方である。
この老侍には、綾瀬夕映が、聖杯戦争に参加したサーヴァント或いはマスターの毒牙に掛かっている事を、既に見抜いていた。
中原の様な専門の診療科に属していなくても、今の彼女の身体状況から、そんな事、容易に想像が出来る。
綾瀬夕映を救うと言う目的もあるが、それと同じ位、この呪いを施したサーヴァントの正体を知りたい、と言う心持ちも不律には存在する。

 打つ手なしか、と落胆しかけた不律であった。
――その時であった。氷で出来た蛭が、何百匹も身体を這い上がって行くような、総毛立つような感覚を覚えたのは。
バッと自動ドアの方に向き直りながら、懐に差した刀の柄に手を掛ける。半秒程遅れて、診療室に、チャイムが鳴り響いた。
慌てて中原は、自動ドアの入室許可スイッチを押す。音もなくドアは左右にスライドして行き――その美しい男が姿を見せた。
標高七千mと言う極寒かつ超高度の霊峰の頂にしか積もらない万年雪で形成されているとしか思えない程の白さを誇るケープを身に纏う、
自然界の法則をも、『美』と言う概念的な要素で支配しかねないその男。メフィスト病院の主であり、聖杯戦争に参加した魔術師のサーヴァント。ドクター・メフィストが。

「い、院長!? な、何の御用でしょう……?」

 この病院に於いてはカースト制度と言う前時代的な身分区分が、暗黙の了解的に存在する。
但し史実の様な、バラモン・クシャトリヤ・ヴァイシャ・スードラ、更に不可触民であるアチュート、と言った様な生まれや職業別のそれではないし、
寧ろ職場における上下関係の延長線上のものであり、其処まで酷いものではない。しかしそのヒエラルキー意識はこの病院の職員の、
不律を除いたほぼ全員に徹底して刷り込まれており、それが絶対的な関係であると彼らは認識している。
即ち、院長であるメフィストが上であり、それ以外の職員は下。この関係は徹底されており、如何な超常的な力を持った医者や職員ですら、このヒエラルキーを壊せない。
それだけ、メフィストと言う男が誇る魔術の腕前と、知識の量が、次元違いであるから。そして――そんな文句も吹っ飛ぶ程に、美しいからだ。
恐ろしく中原と言う男はおろおろとしていたが、それを小ネズミめいているとは、不律も思わない。その様な反応も、むべなるかなと思ってしまうのだ。メフィストと言う男を見てしまえば、誰だって、そんな反応を取るのではなかろうか。

「夢科以外の、綾瀬夕映氏を担当していた診療科の先生から、このような患者がいる、と言うカルテを送られてきてね。興味が湧いたので、足を運んだ次第だ」

「では……、院長自らが?」

「無論、君に打つ手立てがあるのならば、それを尊重しよう。私は夢科の所属医である、中原巧先生を信頼しているからな」

「……も、申し訳ございません。正直な事を言わせて頂くならば……、私には綾瀬夕映氏を治療する事は……」

「構わん。そう言う患者が運ばれる事は珍しくなかっただろう。下がりたまえ。中原先生。後は此方が受け持つ」

「了解しました……」

 言って中原は、メフィストに対する畏敬の念を抱きながら、素直に医務室から退室。
後には、メフィストと、刀の柄に手を掛けたまま動かない不律だけが残された。

「出てきやすいのではないかな、ランサー」

 言って不律の方に、ではなく、部屋の片隅に目を向けるメフィスト。
ゴミ箱も置かれていなければ、書類棚すら存在しない完全なる部屋のデッドスペースの一角に、その男が姿を現した。
ナナフシの様に細長い身体つき、茶色の紙袋を頭から被った奇怪な出で立ち。不律が従えるランサーのサーヴァント、ファウストとは、この奇人の事である。

「数十分ぶりですな」

 と、ファウストはさしあたって挨拶を交わす。
不律は己のサーヴァントが此処にいる事に気付かれている事も、彼がメフィストと話している事も、全く驚いていなかった。寧ろ、当たり前だと思っている感すらある。

「件の患者を診たかね」

 言うまでもなく、その件の患者とは、綾瀬夕映の事だ。

「時間の都合上、触診も診察もしておりませんな。霊体化した状態で、少しカルテを拝見させて貰った程度ですが……」

「君の意見を伺おう」

「サーヴァントが裏で糸を引いている以上の事は解らない、と言うのが正直な所です。何分私、魔術の分野が消え去った世界から来ましたので」

 これは、半分は事実である。そもそもファウストがいた世界は、魔術と呼ばれる術理は科学的に証明、解体され、法術と呼ばれる形態に変化(進化)した。
科学によって説明された魔術は、性能は上がったかもしれないが、およそ全ての魔術が有している神秘と言うものが極限まで損なわれた。
そのせいで、心霊が絡む領域やスピリチュアルな現象が齎す奇病と言うものはほぼ絶滅寸前にまで追い込まれてしまったのだ。

 そして、半分は嘘である。
ファウストは実際には、魔術的な要素が絡んでいると思しき奇病を知っている。知ってて言わなかった訳は、シンプルに二つだ。
一つ、その病気を治せなかった事。そしてもう一つ、ファウスト自身が現代医学にカテゴライズされる病気だと認めていない事。
幽霊が憑依しているとか言うのならばまだしも、偶発的にタイムスリップしてしまう病気など、ファウストは絶対に病気と認めたくないのであった。

「……何故、此処に足を運んだ? 院長、いや。ドクター・メフィスト」

 何百トンもある石を動かすかのような労力を以て、漸く不律は口を開いて、言葉を発する事が出来た。
目の前の神医を相手にコミュニケーションを取るのは、並々ならぬ労力がいるのである。

「偶然、その患者を診ていた人物に、不律先生が含まれていたと聞いてな。優れた医術をお持ちのサーヴァントを従えているのだ、君の意見も伺いたかったのだがな」

「御力になれず申し訳ない」

「患者をまだ見ていないのだろう、仕方がない事だ」

 と言いながら、メフィストは、先程中原が机の上に置いたカルテを手に取り、それを眺めた。

「此処の病院の腕利きですら、その全貌が明らかにならない呪い、か。成程、相当の手練だな」

「Dr.メフィスト、それでは貴殿は、この呪いの類にどう対処するおつもりで?」

「私の目で診察してから決めよう。百万文字にも渡る仔細なカルテより、一分の触診だ」

 其処でメフィストは、不律らに背を向け、始めた。翻るケープが、オーロラの様であった。

「不律先生の案内に従い、綾瀬夕映の所に先に向かっていたまえ」

「私達だけで、ですか? 先に診る事自体は、吝かではないのですが」

「用事を済ませてから私も追って向う。時間は掛からない」

 言ってメフィストは、医務室から足早に退室、後には不律とファウストだけが残った。
純白の美魔がいなくなったせいで、一切の色取りを失ったその部屋で、不律は、己が使役する槍兵のサーヴァントに問うて見せた。

「罠か?」

「罠に掛けたいのであればこの病院以外の所で既に掛けているでしょうし、既に我々も生きていないと思いますがねぇ……。違うとは思いますよ。あの方は……少なくとも、自分の医術に纏わる事柄に関しては、真摯です」

 それは不律自身も良く解っている事柄だった。
メフィストは患者を治す、と言う事柄を、聖杯戦争を勝ち抜くと言う事よりも重視している。その在り方は崇高とか高尚と言うよりも、最早狂気の域に達している程だ。となれば、これは恐らくは、罠ではないのだろう。

「一応、私もその患者を診て見たいですな。マスター、案内の程を」

「心得た」

 言って不律が歩き出すのを見て、ファウストも霊体化。腰に刀差す老侍の後をファウストは追った。
――この時、彼らは気付いただろうか。何故メフィストが、この二人だけを患者の下に向かわせたのか。
気付いていないのは、明らかであった。となれば必然、解る筈もない。病院の外に、魔力と霊気が蟠り、それの正体を確認すべくメフィストが其処に向かった事も。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 タクシーの運転手に指定の料金を払い、車外に出、メフィスト病院の入口近くで立ち尽くしているのは、一ノ瀬志希である。
見る者が見ても、今の彼女を、某プロダクションに所属するアイドルの一ノ瀬志希だ、と断定出来る者はほぼいないだろう。
貴女は一応、それなりに名の売れている人物であると言う自覚を持て、と言う永琳の指摘を受け、ステージ衣装ではなく、指定の学校制服を着用しているからだ。
だがそれ以上に、彼女を一ノ瀬志希だと判別を難しくしているのが、今の彼女の表情であった。
驚く程優れていない。マイペースで能天気と言うのがウリであるのに、今の志希の表情は、酷く精彩を欠いている状態なのだ。

 ――何故か。
それは、本格的に聖杯戦争が始まってしまった、と言う事実をいやがおうにも実感しているからに他ならない。

【一日目の時点から……随分と、ね】

【……うん】

 そもそもの切欠は、タクシーの運転手が流していたニュースラジオから流れた、緊急速報であった。
有体に言えばそれは、新宿二丁目のとある交差点に、外国人女性を抱えた異形の右腕を持った青年が現れ、大暴れ。
結果、一度舗装し直さなければ道路としての体を成さない程周辺が破壊されただけでなく、五十数車両以上もの自動車が爆発、壊された事。
現在は道路の消火活動を終え、警察が緊急捜査と現場検証にあたっていると言う。通行封鎖箇所も出来ており、運よく拾ったタクシーはそう言った交通事情を把握していた為か、渋滞を免れる事は出来た。

 トップニュースが、これだけならばまだ良かった。 
その速報を受けて急いで志希はスマートフォンを開き、ニュースアプリで更なる情報を得ようとして――固まった。
トップニュースは、それを含めて『四つ』あった。一つ、早稲田鶴巻町の某公園とその周辺地域が、竜巻が通った後みたいに破壊されていた事。
二つ目、落合のあるマンションの駐車場で、停めていたマンション住民の車の車体が融解、更にある一室が調度品から壁紙、トイレや台所に至るまで粉々に切り刻まれていた事。
三つ目、指名手配犯・遠坂凛の邸宅周辺の飲食店に放置されていた、巨大な怪物の死骸と、新大久保のコリアタウンのある建物で斬り殺されていた鬼の死体。
それらが、ニュースアプリのトップトピックスであったのだ。

 普通はこれらが何であるのかなど、普通の人間は知るべくもないであろう。
しかし、志希達は、この不可解な大破壊と死骸が、何によって齎されたものなのか、理解しているのだ。
そう、これこそは、聖杯戦争の参加者。座より招かれた超常の存在、聖杯を求めてこの街を跳梁する者達。サーヴァントの手によるものだ、と。

【マスター、私が思うに、事態は相当深刻よ。元々この街は狭いから、戦闘が頻々と起る事は予想していたけれど、此処までとは私も予想外だったわ】

【つまり……、あれだよね? あたし達ももう例外じゃないって事……】

【安全な場所なんて、ないに等しいわ。残念ながら】

 もともとそう言った事は志希も認識していたが、こうまでその現実を見せつけられると、内臓がキュッと圧迫されるような感覚を覚える。
そう、この街の平穏は最早死んだのだ。自分の身の安全は、最早保証不可能なのだ。生き残りたければ、相手を殺して、聖杯まで辿り着かねばならない。
棄権もサレンダーも出来ない、余りにも残酷なデスゲームに自分が参加している事を、志希はまざまざと実感していたのだった。
もう、泣きそうになる。大の大人ですら逃げ出したくなるような状況なのだ。まだまだ精神的には子供の域を出ない志希は、身も世もなく泣きだして逃げ出したい位であった。

【泣きたい気持ちも、わかるわ。マスター。だけれども、今は堪えてなさい。その時が来たら、痛みと苦労の九割程は、私が受け持つから。今は、成すべき事に集中して】

 厳しくも、志希への配慮が見え隠れする永琳の言葉に、少しだけ、志希は救われた。
こくり、と小さく頷き、改めて彼女らは、自分達の降りた場所である、メフィスト病院前を確認する。

【……何から何まで常識破りね、此処は】

 呆れた様な驚いた様な、そんな感情を永琳は隠せない。
純度の高い石英みたいな白く大きな、宮殿めいた大病院。百車両以上もの自動車の駐車を可能とする専用のパーキングエリア。
病院周辺には食事処やコンビニをカバーしており、如何にも、都会の最中の大病院と言った風情である。
サーヴァントの運営する病院、しかも、名前があの『メフィスト』病院だ。志希としては、外壁の色は黒一色で、入口の辺りに黒山羊の頭でも飾っているのかとすら思っていたが、余りにも普通の大病院過ぎて、拍子抜けする。

【寧ろ、そっちの方がまだ可愛げがあったかも知れないわね】

 そんな、志希が思い描く一般的な魔術師の根城のイメージに対する、永琳の返答がこれであった。
【どうして~?】と疑問をぶつけてくるマスターに、この優れたアーチャーはすぐにその訳を話し始めた。

【余りにも目立ち過ぎな上に、現代の多くのものを受け入れ過ぎよ此処は】

 永琳の言っている事を詳しく理解出来ている訳では志希はないが、確かに、その通りなのかも知れない。
駐車場に停められた車、病院が設置したと思しき自動販売機、今も病院を出入りする、入院患者の親族や関係者と思しき人々。

【恐らくこの病院はある種の巨大な陣地であり、この病院を管理するサーヴァントはキャスターだとは思うけれど……通常キャスターのサーヴァントの陣地は、解り難い場所に作製して、そして、信頼を勝ち得た存在しか通常は足を踏み入れられない所よ】

【全部のセオリーから外れてるね】

【だから不気味なのよ】

 霊体化しながら、恐らくかぶりを振るっているであろう事が志希には解った。

【誰の目にもハッキリ映る形で、都会の真ん中に神殿に匹敵する規模の陣地を作成するだけじゃなくて、病院として運営、患者を事実治療させて……余りにも、
現代の生活に馴染み過ぎている。仮にこの陣地に主がキャスターだったとして、常軌を逸してるわ。これならばまだ、貴女が言ったみたいに、
黒山羊の頭でも入口にデンと飾っておいた方が、よっぽどらしくて可愛げがあるわ。此処の主は、私に匹敵する天才か……】

【天才か……?】

【ただの馬鹿ね】

 バッサリと切り捨てた。何だか此処まで言われると、志希としても此処に足を踏み入れるのが怖くなる。
病院だと言う先入観が今まで強かったが、此処はまず間違いなく、サーヴァントの居城なのだ。
其処に、今から永琳と自分は入って行く。未だに二の足を踏んでいる志希であったが、入り口の自動ドアからロビーを透かして見ると、
自分よりも小さい子供や、年配の男性や女性が、待合席で座っているのが見えた。そうだ、彼らですら、この病院は受け入れているではないか。
仮に自分が聖杯戦争の参加者だとしても……、自分にはこの、聡明なアーチャーがいる。彼女がいれば大丈夫だと思い、志希が一歩足を踏み出した――その時だった。

「――私の後ろに隠れてなさい」

 永琳の声が、念話を通して、ではない。一ノ瀬志希と言う女性の聴覚を通して聞えて来た。
永琳はその手に、自身の身長の半ば程もある和弓を取り出しており、更に、弓を持っていない側の手には、鋭い鏃のついた矢を握っていた。

「え、な、何してるのアーチャー?」

「良いから隠れてなさいな。それと、私の指示次第では、病院の中に駆け込む準備もしておきなさい」

「あの、何を……」

「サーヴァントよ。近付いて来るわ。病院の側からじゃない、道路の方からよ。それも、二体もいる」

 嘘、と志希は口にする。が、冷静に考えれば珍しい事ではない筈だ。
此処は誰の目にも見ても明らかなサーヴァントの居城、其処がメフィスト病院である。
となれば、自分以外の参加者も様子を確認しに来たり、最悪、襲撃を掛けに来る者だって、あり得た話じゃないか。
他参加者とかち合うタイミングが、丁度自分達の訪問の時だっただけ。あり得た事態であるが、心の何処かで、志希は、自分達は大丈夫だろうと思っていたのだ。

「ね、ねぇ。こんな駐車場で戦って大丈夫なの?」

「人に見られて困ると言う意味なら、問題ないわ。NPCの目に私達の姿が映らないような、認識阻害の魔術を今張り巡らせてるから。これを無視して、一直線に向かって来る……ますます以て、サーヴァントか、その回し者ね」

「アーチャー、その……」

「言われなくても解ってるわ。最初に、戦わないで済むか、と言った交渉でしょう? 尊重して上げるから心配しないで」

 永琳は聡明だった、志希の意図する所をしっかりと理解していた。
ホッと胸を撫で下ろし掛ける志希だったが、事態は未だに危険な状況の最中にあると思い出し、直に気を引き締める。
「来たわ」、永琳が、あそこに石が転がっているとでも言うような口調で志希に告げた。永琳の後ろに隠れながら、そっと頭だけを出して、彼女の目線の先を確認する。

 クラシカルな黒い礼服を身に着けた、長身の外国人が先ず目立つ。
今<新宿>は愚か、日本に於いて、黒い礼服の男性と言えば、遠坂凛と一緒に行動していたあのバーサーカーの事を皆思い描くだろうが、
この男の礼服は遠坂凛のバーサーカーと違いよれよれのそれではなく、しっかりとアイロンがけをしており、シワ一つない。バッチリと着こなしていた。
そしてその外国人男性の後ろに、志希と大して歳の変わらない、<新宿>を所在地とする如何なる中学・高校とも違う指定制服を身に着けた女性が歩いている。
まさか彼女がサーヴァントな訳はあるまい。そして、事実それはその通りだった。駐車場内に、黒髪の外国人が足を踏み入れた瞬間、彼の両サイドに、霊体化を解いてサーヴァントが現れた。永琳の言う通り、二人いた。

【貴女の目には、あの二名のサーヴァントのステータス、如何映ってるかしら?】

【え~っと……あの特徴的な帽子を被った男の人は、アーチャーで、ステータス的にはこっちの勝ちかも。それで、鉢巻つけた男の人も『アーチャー』で、ステータスは、耐久と魔力以外は向こうの勝ち】

【二人で一斉に掛かられたらキツいわね。いざとなったら、帽子の方のアーチャーから狙うべきかしら】

 念話でそのような計画を立てる頃には、既に向こうのアーチャー達は、会話が交わせる程の距離まで近づいていた。
彼我の距離は、七m程。アーチャークラスは大なり小なりではあるが、飛び道具の適性が高いサーヴァントである。つまり、接近戦は通常仕掛けに来ない。
そう言った適性を無視し、此処まで近づいてくると言う事は、向こうも話をしたい事でもあるのだろうかと、永琳は考えた。

「心配しなくてもいい。僕らは戦いに来た訳じゃないんだ」

 先ず初めに、黒礼服のマスターである男性、ジョナサン・ジョースターが断りを入れた。

「此処の病院に、ちょっとした用があってね。だから、その弓はしまって欲しい」

「えぇ、構わないわよ。其処の、鉢巻を巻いたアーチャーが、身体に溜めた魔力を此方に向けさせなければ、の話だけども」

 ビクッ、と。何故か、ジョナサンの後ろにいた少女が身体を跳ねさせた。如何やらあの、鉢巻の方の男のマスターであるらしい。
数秒程経過してから、チッ、と舌打ちを響かせて、鉢巻を巻いたアーチャー、アレックスは身体の内部に溜めさせた魔力を身体の中で循環させる。
これで、攻撃に転用させる事は出来なくなった。まさか自分を相手に、魔術を用いて攻撃しようなどとはお笑い草にも程があると永琳は考える。
対魔力スキルが高い事もそうだが、永琳自身が研鑽し積み上げて来た、魔術の才覚は、神に等しい程のそれにまで達している。一般的なサーヴァントが、彼女と魔術で対抗するのは、無茶もいい所である。

 アレックスが溜めた魔力を如何にかしたのを見て、永琳も、弓矢を四次元と三次元の隙間にしまい込んだ。
魔術によって生み出されたその隙間は、余人の目には空間にクレバスが空いた様にしか見えないであろう。
弓矢をしまって大丈夫なのか、と言う懸念が念話で伝わって来たが、問題はない。弓矢が無くても、サーヴァントごとマスターを攻撃できる魔術など、
永琳は百や二百では効かない程保有している。つまり、万が一不意打ちをされたとしても、志希を護れるには充分だと言う事だ。

「ところで、貴方達が此処に来た訳と言うのは、その外傷が理由かしら?」

 チラリと、ジョナサン、アレックス、北上の順で目線を配らせて、永琳は口にした。
ジョニィに一瞥もくれないのは、彼が怪我らしい怪我を負っていない事を見抜いたからだ。

「黒礼服の貴方は、左腕に銃弾が埋もれてるわね。早く摘出しないと危険よ、銃弾の金属は人体には毒だから。後ろの女の子の貴方は、右腕がないわね。
遠目から見た限りじゃ何とも言えないけれど、恐ろしく鋭利な何かで切断されたようね。それで、その子のサーヴァントである貴方は……説明不要ね、脇腹がないもの」

 右腕の事を指摘された北上は、「うっ」、と声を上げた。
そして、ロベルタの銃撃によって負った、銃弾の傷の事を指摘されたジョナサンは、一瞬驚いた様な表情を浮かべた。

「驚いたね……。一応それと解らないように銃痕は隠したつもりなんだけれど」

「血の匂いまでは消せないわよ。良く此処までその状態で来れたわね」

「随分と苦労したよ」

 苦笑いを浮かべてジョナサンは口にした。
裏路地を主に移動し、人通りの在る所を通る際は、早歩きで、かつ人通りが普通の通りにくらべて少ない所を歩く。
しかも北上の装備している艤装もある。極力人目に触れないルートを選び、移動するのは、本当に本当に、苦労した。
最短ルート、しかもバスやタクシーと言った移動手段を使えば十分程度で到着する所が、その倍以上の時間を掛けてしまった。そんな艱難辛苦の道程が、永琳はその苦笑いから窺い知れた。

 永琳は考える。この主従達が、メフィスト病院の治療を受けに来たであろう事は明白だ。
メフィスト病院の事を知っていての行動ならば、大それた勇気だと思うが、その逆であるのならば、情報に疎すぎると言う他ない。
しかしどちらにしても、その判断は間違っていない、かも知れない。と言うのもメフィスト病院は、NPCの患者を必ず完治させた上で退院させると言うのは有名な話で、
少し調べればその裏は幾らでも取る事が出来る。つまり、こと医療に関しては、それこそスキルや宝具、或いは因果律の定めによる制約のレベルで、
真摯である可能性が高い。それを利用し治療を受けに来、なおかつ完治させた上で退院出来るのであれば、成程、此処ほど体の良い施設はない。
賭けてみる価値は、あるであろう。――そうと解っていて、永琳は一つ、カマを吹っ掛けて見た。

「如何かしら? その程度の傷なら、私が治してもいいけれど?」

 永琳の背中に隠れていた志希が、驚いた表情を浮かべる。
「アンタが……?」、と反応したのは、ジョニィの方だった。見た目相応の声だ。

「これでも医者の端くれなの。今の貴方達が負っているダメージ程度ならば、時間を置かずして治せるけれど。流石に、四肢がないのは無理だけれど」

 断られる可能性の方が高いと永琳は知っている。知りつつも、ダメもとで交渉に臨んだ。
理由は単純明快、恩を売りたかったからに他ならない。一言二言話して解った事だが、この紳士服の男は実直な青年である。
つまりは義理堅く――利用しやすい。と言う言い方は聞こえが悪い、つまりは、一緒に戦う、同盟相手としてはこれ以上となく適任だと考えたのだ。
では、制服の少女、北上は如何か? 結論を述べれば、彼女とアレックスの組は、永琳は切り捨てる算段でいた。
理由は単純で、アレックスが理由である。一目見て解った、アレックスの瞳の奥で燃える、理性と言う紗幕で隠された強い憎悪を。
同盟をあまり組みたくない相手であった、こう言う相手は自分から逸る行動を起こしかねない。ならば、多少リスクの低いジョナサンに交渉を、と思うのは無理からぬ事であった。

 ――さて、如何出る。そう思った、その時であった。
心臓を、氷で出来た手で掌握されたような、悪寒に限りなく近い寒気が、永琳のみならず、この場にいた全員の身体を襲ったのは。

「ならんな」

 その声は、ジョナサンらの頭上から聞こえて来た。
極楽浄土に響き渡る天琴の様な、オルフェウスが奏でる竪琴の様な、聞くだけで人の心を蕩かすような男の声であった。
きっとこの男が何かしらの聖歌を歌おうものならば、冥府の王(ハーデス)ですら涙を流し、万の悪魔ですらその聖性の前に塵と化すであろう。
声の方に身体を向けたのは永琳だった。百分の一マイクロ秒程遅れて、ジョニィがその声の方に人差し指を向け――

 両者共に、慄然の表情を浮かべた。

「我が病院を頼りに此処にやって来た以上、その患者は私の庇護下にある」

 胡粉よりも、卯の花よりもずっと白いケープを纏った、黒髪の男であった。
全身を覆うケープの下からでも解る、人体の黄金比そのものと言っても良い、均整と調和のとれた身体つき。
美を司る神が手ずから筆と差金を取り、紙に設計図を描き、その通りに寸分の狂いもなく創った人間こそが、この男なのだと言われても、万民は納得しよう。
だがそれ以上に恐るべきは、その顔付き。精子と卵子が有する遺伝子情報の交合。それによって形作られた奇跡とは、到底思えない程、男は美しかった。
永琳は一目で理解した、この男の美は、既存の人類が有する如何なるDNA情報にも刻み込まれていない、悪魔のそれであると。
そしてジョニィは驚愕する。自分を自分足らしめる漆黒の意思が、神韻を放つ男の美が放つ聖光を前に、一瞬ではあるが薄れた事を。

 宇宙に鏤められた星々の中の王たる日輪をも凌駕する圧倒的な存在感。
太陽天の様に光り輝く美を誇ったその男の名は、一対何なのか。この場にいる全員が等しく、それを理解した。してしまった。
カン、カン、と音を立てて、メフィスト病院の非常階段二階部分から、一階に下りてくるこの男の正体は。

「君が如何なる医者なのかは知らないが、この病院から患者を横取りする者は、相応の裁きを受けて貰おうか」

 患者の治癒の為ならば悪魔にだってなる事を厭わないこの男の正体は――ドクターメフィスト。
この白亜の大宮殿の院長であり、そして、魔界医師と呼ばるる白き魔人その人であった。



時系列順


投下順



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16:かつて人であった獣たちへ ジョナサン・ジョースター 24:満たされるヒュギエイア
アーチャー(ジョニィ・ジョースター)
18:Brand New Days 一ノ瀬志希 24:満たされるヒュギエイア
アーチャー(八意永琳)
20:求ればハイレン 不律 24:満たされるヒュギエイア
02:“黒”と『白』 ランサー(ファウスト)
02:“黒”と『白』 ルイ・サイファー 24:満たされるヒュギエイア
キャスター(メフィスト)
12:SPIRAL NEMESIS 北上 24:満たされるヒュギエイア
16:かつて人であった獣たちへ モデルマン(アレックス)