横断歩道の停止線直前で停まる、漆黒の車体が眩しいトヨタ・センチュリーがあった。
衆目を引く車である。国産車が今一恰好が悪いと言うバイアスが強い日本においても、流石にこのグレードの高級車ともなれば話は別である。
歩道を歩く通行人や、片側の車道に停まる乗用車や原付、対向、反対車線を往く車の運転手の目線を集めているような錯覚を、この高級者に乗る現代の貴族は憶えている。

 運転手は、小柄な体格をした、病的なまでに白い皮膚で、禿げた頭の男性だった。
白昼夢でも見ているかのように間抜けた表情をしているが、その実ちゃんと意識は覚醒状態にある。
が、如何にも危うさと言うものを隠せない。名をエルセンと言うこの男は、英財閥に所属する構成員の一人であり、その令嬢から直々に運転手を任せられた男であった。

 上座には、礼儀正しい姿勢で座る、エルセンと余り背格好の変わらない少女がいた。
貞淑として、それでいて如何にも育ちの良さそうな顔付きをした女性で、都会の雑踏の中には相応しくない、百合の花のような娘であった。
しかし何故、この女性の表情には、うずうずとした期待感のような感情が渦巻いているのだろうか? 
英純恋子は、何を楽しみにしているのだろうか?

 センチュリーの内部は、車の中と言うよりも、ある種の動くホテルの一室のような物であり、通常の乗用車の内部とは一線を画す。
空調の性能、シートの座り心地、カーテレフォンやカーテレビなど、食糧さえ持ち込んでしまえば、そのまま一日は過ごせてしまいそうな設備を搭載している。
とは言え、車の内装の素晴らしさは如何あれ、運転手と後部席の純恋子に会話がなければ、どうにも場の空気が悪くなりがちなのは、致し方ない。
故にエルセンは、適当なラジオにチャンネルを合わせ、それを流しているのだが、それがどうにも、エルセンの気付かない第三の乗車人物には耳障りでしょうがなかった。

「は~い、以上、モンスターさんからのリクエスト曲、プリマ☆ジカルでした~。やー、いい曲だったね~聞いてなかったけど。はいそれじゃ、とっととミュ~ジック二件目のお便り――」

 実に軽そうな若い女性がMCを務めるラジオ番組だった。
とっととミュ~ジックなるこの番組は、このような如何にも軽くて、頭に何も詰まってなさそうな女性がこのようなテンションで進めて行くラジオ番組であるらしい。
これからよく、生きるか死ぬかの殺し合いをしに行くのに、このような、聞いているだけで頭が悪くなりそうな番組で集中が出来るものだと、
霊体化したレイン・ポゥは純恋子に感心した。ひょっとしたら、何にも考えていないだけなのかも知れないが。それはそれで、大物か。自分のマスターとしては堪らない位困るのだが。

 停止したセンチュリーの窓から車外の光景を見つめるレイン・ポゥの気分は頗る憂鬱だった。
アサシンと言うクラスは原則、後手に敢えて回る事の多いクラスである。聖杯戦争の序盤と言うのは言うまでもなく、ほぼ全ての参加者が十全の状態である。
怪我も一切負っていない、魔力の量も万端。そのくせ、情報だけは揃っていない。このような局面では通常、アサシンのクラスは動く時ではない。
クラススキルである気配遮断で籠城や水面下行動を行い、盤面がある程度動くまで待ちつつ、情報を収集する。
皆が疲弊し、ある程度の情報が出尽くした所で動き、消耗した相手を影や闇からの一撃で直に葬り去る。これこそが、アサシンクラスの常道である。
アサシンであるレイン・ポゥが、ではどうして今、サーヴァントの暗殺にこんな序盤から向かいに行くのかと言うと、後部席の上座で上機嫌そうな、
英純恋子――馬鹿――の意向があるからに他ならない。勉強は出来る、金もある。だが、馬鹿なのだ。何故かは知らないが、だ。

 二人は今、英財閥の情報室が集めた、<新宿>に住む聖杯戦争参加主従の内、把握している四組。
その内の一つである、『遠坂凛と黒礼服のバーサーカー』が住んでいると言う市ヶ谷の某邸宅に向かっていた。
正気の沙汰では、ないだろう。何せ真正面からの小細工抜きでの戦いであれば、三騎士を凌ぐと言われているバーサーカーを相手に、
暗殺を旨とするアサシンクラスが戦いを挑むのだ。愚作、としか言いようがない。しかし、これに関して言えば、レイン・ポゥはある打算を織り込んでいた。
そう、今回、遠坂凛の主従に襲撃を掛けに行くと決めたのは、マスターの純恋子の意向を汲んだと言う事も勿論あるのだが、この虹の魔法少女の計算も其処にはあるのだ。

 先ず一つに、遠坂凛達は聖杯戦争のルーラー直々が指定した、成果報酬に令呪一画が与えられる正真正銘の賞金首である事が一つだ。
令呪一画が与えられると言うのは、財力にこそ優れるが、魔力量は聖杯戦争のマスターとしては落第点の純恋子には与えてやりたい代物だった。
令呪が一画増えると言う事は、レイン・ポゥの意思を無理やり捻じ曲げる鎖が一本増える事を意味するが、それでも、ないよりはあった方が良い。
ここぞの場面で令呪があるのとないのとでは、全く違う。令呪が欲しい、と言う事が一つ。
そしてもう一つ、これこそが一番重要なのであるが、遠坂凛の主従は聖杯戦争の参加者のみならず、一般のNPCからも、その扱いは賞金首のそれなのだ。
世界中を震撼させた、白昼堂々の大量殺人犯と、その共犯者。社会における遠坂凛達の扱いは、凡そこんな所である。
仮にそんな存在に純恋子達が襲われ、万一彼女らの方が下手を犯したとして、遠坂凛達と純恋子達。どちらの肩を、聖杯戦争の参加者及びNPCは持つだろうか。
言うまでもなく、後者の方である。相手は誰もが信じて疑わぬ、殺人鬼達。仮に襲われて敗走したとしても、相手の方がその魔の手を先に延ばして来た、
と多くの者は思うだろう。況してや遠坂凛が呼び出したサーヴァントは、一般人には御し難いバーサーカーである。
もしかしたらであるが、『一般人の遠坂凛』に制御が不可能になったバーサーカーに襲われた哀れな被害者と純恋子が認識され、聖杯戦争の参加者とは認識されないかも知れないのだ。仮に、一回失敗しても、セーフティの可能性が高い。だからこそレイン・ポゥは、敢えて遠坂凛の方を選んだ。

 残りの三組では、そうも行かないのである。
セリューらの主従は頭が回りそうな為、事後処理に失敗するかもしれない。メフィスト病院とUVM社の社長の場所を襲撃など、論外である。
後者二つは対外的にも極めて名の知れた場所であり、遠坂凛達と比べて悪評もまるでないし、情報面への根回しも英財閥に勝るとも劣らぬとレイン・ポゥは見ていた。
『暗殺者は暗殺者とバレていないその時に真価を発揮する』。名と顔の割れた暗殺者は事実上その時点でデッドだ。
だから、後二つの方は省いた。――以上が、レイン・ポゥが、遠坂凛が奪った邸宅に襲撃を掛けようとしたその理由である。

 ――とは言え、である。

「(ま、何時だって初陣はそれなりに緊張するもんね)」

 聖杯戦争の正規の七クラス、その中でもキャスターと並んで最弱を争うクラスが、真正面からの小細工抜きでの戦闘ならばほぼ最強に近いバーサーカーと、
事を争うのである。緊張をしていないわけがない。レイン・ポゥの踏んで来た場数は、決して少なくない。寧ろ歴戦の魔法少女の一人と言っても良い。
相手が余程の格上でない限り、戦闘には自信がある方であるが、それはあくまでも対魔法少女の時の話、況してや相手が全く違う世界観の強者となれば、話は別だ。
これで緊張をしない方がどうかしているが、レイン・ポゥはその感覚を大事にしていた。そもそも彼女は暗殺に臨む時は何時だって、緊張をしていたものだ。
恐れからではない、暗殺任務の遂行上必要な心構えであったからだ。緊張感とは言い換えれば、警戒だ。
失敗した場合戦闘以上にリスクの大きい暗殺任務の遂行を行う際には、警戒や緊張感は重要な要素である。
実際これを抱いていない、馬鹿で無謀な鉄砲玉のような魔法少女程、カモな存在はいなかった。疑心や警戒心を忘れない存在こそが、一番やり難い。
経験でこれを解っているからこそ、自分も仕事の時はこれを忘れない。それはレイン・ポゥの演技力スキルに、如実に表れているだろう。

【マスター】

【何ですの?】

 目線だけを、レイン・ポゥのいる隣の座席に向けて、純恋子は念話で返した。
身体の向きを動かすどころか、体幹にも動きがない。この車内には自分と運転手のエルセン以外にいると言う事を、彼に悟らせない見事な配慮であった。

【アンタ、緊張とかはしてないの?】

【余り、そう言うのはしない性格ですの。貴女の方はいかがかしら、アサシン? 貴女のような腕利きでも、武者震いはしますのかしら】

【ま、多少はね?】

 この女はあいかわらず、そう言った緊張とは無縁の破綻者なようだと、改めて認識しながら、レイン・ポゥは窓から車外の光景を眺め始めた。
さっきからセンチュリーの進みが遅いのは、気のせいなどではなかった。センチュリー・ハイアットを出てから既に四十五分は経過している。
出る時に純恋子のスマートフォン経由で知った、新宿二丁目での大規模なサーヴァント同士の戦闘の影響であると見て、先ず間違いはなかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 朝昼を塩水で凌ぎ、夕食を元の邸宅の主に仕えていた人物達が予め買い置きしていたであろう食糧の数々でやりくりして、遠坂凛は解った事がある。
カップヌードルは早く作れてしかも美味い、と言う事である。これがラインの上で大量生産され、日に数十万個と生み出され、世のスーパーに並ぶと言うのだから、
つくづく人類の進歩と言うのは驚くべき所がある。ここ百年近い歴史の中で、最も偉大な発明の一つと、これについて言及した人間がいたそうだが、
今ならそれも頷ける。これがなければ、遠坂凛は当の昔に、餓えて狂っていたかも知れないのだから。

 ペリペリと、発泡スチロールの容器に成された蓋を剥がし、台所から借りて来た箸を右手に持ち構え、遠坂凛はそれを啜る。
遠坂家は冬木の御三家の中では、財政的に翳りを見せていた。それと言うのも、神学と魔術、武術の修行に明け暮れて財政学や会計学の初めの一文字すら知らない、
馬鹿な弟弟子にして現状における凛の後見人であるあの男のせいであった。尊敬する父が残した数々の利権を活かそうともしなかった結果が、あの冬木での生活だった。
往時のそれに比べれば冬木の遠坂の生活ぶりは、倹約に重きを置いたそれではあったが、それでも。此処の生活よりかは遥かにマシだった。
と言うよりも、廊下を出歩けば死体と遭遇する様な生活よりも酷い生活が、本当にあるのであれば今すぐにでも報告して欲しいものだと言うのが、今の遠坂凛の偽らざる本音である。

 最悪のバーサーカー、黒贄礼太郎を呼び出してからの遠坂凛の生活は、頗ると言う言葉でもなお足りない、最悪の中の最悪であった。
朝昼夜のニュース番組で、自分達の事を報道していなかった事など一つとしてなく、胸中で私は無実だと何度主張したのか、最早解らない。
人を殺さずにはいられないあのバーサーカーについてのストレスもそうだが、何時聖杯戦争の参加者及び警察組織が此処にやってくるか解らない為に、
警戒と緊張の糸を極限まで張り詰めさせる事による心労も、彼女にとっては凄まじい負担となっていた。
ピークの時は空腹や尿意、睡眠と言った人間としての宿命である生理反応ですら忘れる程、心の重圧は強かったが、とうとう聖杯戦争の管理者から直々に、
討伐令を下された瞬間、ドッと疲れが舞い込んで来た。黒贄に屋敷の門番を――心底不安だが――頼んだ後、遠坂凛は、久方ぶりに泥のように眠った。

 そうして現在に至って、彼女はカップヌードルを啜っていると言う訳だ。
これらの食糧は夜にしか食べないと心に決め、実際その通りの生活を送っていたのだが、事此処に来てそれまで抑えていた空腹感が一挙に襲い掛かって来て、
耐えられなくなったので、このように食事を摂っていると言う訳だ。

「……惨め」

 本当に惨め過ぎて、泣けてくる。あのバーサーカーは恨んでも恨み切れない、最低かつ最悪のサーヴァントだった。
しかし現状、自分に対して有効的な人物は黒贄を除いて他にいないと言うのも、厳然たる事実だ。
今の凛の境遇を招いたのは、間違いなくバーサーカー・黒贄礼太郎である。しかしタチの悪い事に、黒贄はその事を欠片も悪いと思っていない。
あの男と凛とでは、世界観が全く違うのだ。あの男の生きた世界は、彼に聞くに、殺人と言う行為が全く咎められない場所であったと言う。
咎められないと言うよりは、黒贄と言う男を咎める手段がないの間違いなんじゃないかとも思ったが、兎に角、あの男は自分の行為を全く悪いと認識していない。
魚が水中を泳ぐ事を、悪い事だと言う人間はいない。鳥が空を飛ぶ事を、邪悪だと叫ぶ馬鹿はいない。あの男にとっては殺人と言う行為が、
魚が行う所の水の中を泳ぐ事、鳥が行う所の空をはばたく事と、殆ど同じなのである。だからこそ、最悪なのであるが。

 あの時、宝石商が扱っていた契約者の鍵に触れていなければ、今頃は自分は、冬木の聖杯戦争に向けて様々な準備を行っていたのだろうと、夢想していた。
自分に相応しい最強のサーヴァントを呼び寄せて、志半ばで倒れた偉大なる父である、遠坂時臣の意思を継ぎ、聖杯を獲得する。
それこそが悲願であったと言うのに。現実に遠坂凛は異世界の新宿、いや、<新宿>に呼び寄せられ、考え得る限り最悪のバーサーカーと共に、
聖杯を目指さなくては行けなくなっている。これ以上の理不尽などあろうか。聖杯の獲得の為に、今まで一日たりともサボらず続けて来た聖杯戦争のシミュレート、
魔術回路を増やす修行、魔術に対する研鑽、万が一の時の為の八極拳。それらの努力が、神の気まぐれで一瞬で台無しになったような物である。

「あぁ、もう!!」

 言って凛は、勢いよく麺を大量に啜り、一気にそれを咀嚼し、飲み下す。
乱暴な食べ方だと思うし、これではすぐにまた空腹が訪れる。脳が、食べたと言う気にならないだろう。
解っていても、やってしまった。この和室に焼酎の一升瓶でもあれば、直に其処に素っ飛んで行き、それをラッパ飲みしてしまいかねない程度には、
今の凛にはストレスが溜まりに溜まっていた。本当に、何で、自分だけ。

 はぁ、と深い溜息を吐いて、凛は畳の上に仰向けに倒れ込んだ。
今凛の頭の中には、二人の遠坂凛がいる。ストレスに苦しみ続ける遠坂凛と、状況の割に冷静な遠坂凛の二人だ。
一つの頭に、二つの思考が並列して稼働しているのだ。その中の、冷静な方の遠坂凛が場違いに考えていた。
人の精神は擦り切れに擦り切れると、ある種諦観めいた悟りのようなものを啓くのだと。

 ――……もう、無理なのかな――

 平時の遠坂凛からは、考えられない思考だった。
聖杯を獲得する、と言う、普通であれば誰もが一笑に付すような望みに向かって、全霊の努力を続けて来た女の心は、
今や赤子がおもちゃを押す程度の力で軽く圧し折れてしまいそうな程脆くなり切っていた。
自分の脇を固める狂人のバーサーカー、NPCからもルーラーからも指名手配されていると言う現実。
この現状で、かつ、慣れない『<新宿>』を舞台にした聖杯戦争を、勝ち抜ける訳がない。魔術に聡く、聖杯戦争の何たるかを知っている凛でも、これは無理だ。

 ……そもそも『何故<新宿>で聖杯戦争を行う必要性』があったのか?
ふと、そんな事を遠坂凛は考え始めた。情けない話だが、今の今まで彼女はこのような思案に行き着く余裕がなかった。
サーヴァントは周知の通り、現在進行形で災厄を振り撒く殺人鬼である事と、それが齎す緊張感と、他のサーヴァントが襲撃に来るのではと言う警戒から、
そう言った事を考えようにも考えられなかったのだ。あらゆるしがらみから一度離れ、諦めにも似た冷静さが頭を冷やしている今だからこそ、このような思考に至っている。

 何を以ってして、聖杯戦争の参加者と言えるのか、と言えば、それは令呪である。
本来の聖杯戦争では、聖杯が見込んだ参加者に、予め令呪が与えられ、其処で初めて当該人物は、自身が聖杯戦争の参加者である事に気づくのだ。
通常その参加者と言うのは、聖杯が見込む程の腕の立つ魔術師であると相場が決まっているのだが、この聖杯の見立て言うのは実はかなりアバウトで、
魔力量や魔術の腕に乏しい三流魔術師、果ては魔術回路が死んでいるも同然の一般人にすら、令呪を与える事もあると言う。つまるところ、聖杯戦争参加者になるか否かは、聖杯の胸先三寸と言う事になる。

 ――だが、聖杯戦争を行う『場所』に関しては、そうは行かない。
聖杯戦争を行う土壌と言うものは、決して適当に選ばれている訳ではない。
この大掛かりな儀式を行うに相応しい土地と言うのは、極めて潤沢な霊地のみに限られると言っても良い。
霊地とは即ちマナの通り道である霊脈が大量に存在する場所とほぼニアリーイコールであり、冬木市などまさに典型的な霊地の一つだった。
何故か、と言えば、潤沢なマナを吸い上げられる土地でない限り、聖杯戦争を行う上で最も重要となる、大聖杯が起動出来ないからである。
冬木の聖杯戦争は、その土地の霊脈を殺さないよう、何十年と言う年月をかけてゆっくりとマナを溜め、ある程度溜まった所で、聖杯戦争を開催させるのである。
聖杯戦争を行う上で、その地が霊地であるか否かと言うのは重要な要素であり、仮に新しく聖杯戦争を他の土地で行おうと言うのならば、先ず吟味すべき最も重要なファクターである。

 一般人はそれと言う認識は薄いかも知れないが、東京は実は、霊地として見た場合、それなりの格がある土地柄である。
彼の江戸幕府の祖である徳川家康に仕え、百歳以上も生きたとされる老怪僧・南功坊天海。
彼は家康の江戸幕府を盤石のものとするべく、彼の統治していた江戸を、魔力やマナの満ちる霊地に改造した。
当時から世に稀なる祟り神として恐れられていた平将門を明神として祀り、幕府に仇名す可能性のある霊的存在を慰撫し、鎮めた後で。
彼は風水に基づき、江戸城を中心に北東に寛永寺、南西に増上寺を建て、江戸の表鬼門と裏鬼門に守護寺を置き、国家の鎮守を果たそうとした。
無論天海は、江戸のレイラインを見抜き、其処に敢えて寺を置いたのは言うまでもない。これを以て江戸幕府は二百数十年以上も存続し、今でも、天海が確約した霊地としての東京は、生きているのである。

 但し、霊脈として機能としているのは『東京全土』であり、間違っても『<新宿>一区』だけではないのだ。
其処が、おかしい。<新宿>は然程霊地としては優れておらず、聖杯戦争の舞台の候補からは真っ先に外されかねない場所であるのだ。
そんな所で、如何して、聖杯戦争を行おうとしたのであろうか。

 目が、冴えて来た。頭の回転が速くなる。
上体を引き起こさせ、姿勢をよくさせた後で、凛は再び思考の海に沈む――その前に。
和室を歩き回り、紙とペンを探してから、再び和卓の前に座り込み、己の考えを纏めようとする。

 <新宿>で聖杯戦争を行おうと、何故この世界の主催者は決めたのか。
世界中に点在する数多の霊地を蹴り、何故霊脈的にも優れないこの土地を、選んだのか?
――違う。紙に纏めた自分の考えを、ペンで乱暴に黒塗りにし、凛は思い直した。
そうだ、この世界の<新宿>は、凛が知る東京都二十三区の、副都心新宿区ではないのだ。『<魔震>』だ。
この街は、二十と余年以上前に、この区だけを襲った未曾有の大災害、<魔震>によって、他区を<亀裂>で隔絶された、本来の歴史とは違う道を歩まされた街なのだ。
となれば、彼女の知る新宿区の知識など、全く通用しない事になる。この街にはもしかしたら、自分の知らない、マナの溜まる場所が、何処かに在るのかも知れないのだから。

 そもそも、だ。
前述の通り、聖杯戦争を開催するにあたり、霊地が優先的に選ばれる傾向にあると言うのは、大聖杯、或いは、それに類するシステムを稼働させる為に、
マナや魔力を霊脈から吸い上げる為であるからに他ならない。この言葉からも解る通り、聖杯戦争は霊地であると言う事も必須条件であるが、それだけでは駄目なのだ。
そもそも聖杯戦争自体が、一種の魔術的な儀式と言うべきものであり、儀式と言うものには何時だって、御膳立てと言うものが必要になる。
この儀式を行う上で、必要となる物こそがその大聖杯である。これがなければ、聖杯戦争の核とも言うべき、サーヴァントを呼び出す為に必要な、
英霊の座にアクセスすると言う行為がそもそも不可能になる。必然、此処<新宿>にも大聖杯、或いは、それに類似したシステムが、何処かにある筈なのだ。
それが、全く何なのかが見当もつかない。一歩も足を運んだことのない土地で行われる聖杯戦争であるが故に、それも仕方がない事ではあるが、
凛は<新宿>に来る前から聖杯戦争の関係者の一人だった。知らないで完結されるのは、どうにも悔しかった。

 情報が、やはり足りない。
何を思い、この世界の主催者達は、聖杯戦争を開いたのだろうか。
そして、この<新宿>で聖杯戦争を運営出来る、基盤とは何か。それは、何処にあるのか?
謎は、尽きない。この際だが――この世界の聖杯戦争で、聖杯を勝ち取る事は最早捨てた方が良いかも知れない。
他の参加者とは違い、遠坂凛は、元の世界に戻っても聖杯戦争の機会が待っていると言う事が最大の相違点である。
此処で元の世界に戻っても、聖杯戦争が再び待っている。つまり彼女に限って言えば、『聖杯を手にするチャンスが二度用意されている』と言う事になる。
<新宿>で行われる聖杯戦争が聖杯戦争なら、凛の性質上何が何でも勝ちに行くのが通常であるが、今回ばかりは流石に状況が悪すぎる。
故にこれ以降は、聖杯を勝ち取る為、と言うよりは、<新宿>での聖杯戦争の謎を解き明し、元の世界に帰還出来る方法を模索した方が良いのかもしれない。

 だがその為には、名実共にお尋ね者、賞金首となった身で、外を出歩かねばならないと言うリスクがつきまとう。
如何したものか、と悩み始めた、その時であった。背後に気配を感じたのは。
自分のサーヴァントであっても、いや、あのサーヴァントだからこそ、背後を取られたくなかった。
引き当てたサーヴァントに一番警戒している現状を馬鹿みたいに思いつつも、バッと振り返って――顔から血の気が失せて行き、青褪めた様な顔に凛は変わって行った。

「おっと見つけた賞金首」

 そう口にするのは、如何にも可愛らしい桜色を基調とした服装を身に纏う、円形の虹環を背負う少女であった。
背負った虹の環を小さくしたようなリングが少女の頭上に浮いている。まるで天使の光輪(エンジェル・ハイロゥ)のようであった。
しかしその姿を見ても、凛は少女の事を天使だとは思わなかった。本やアニメによく出て来る、魔術の世界等欠片も知らない一般人が、
そのイメージだけで創造した様な、年端もいかない少女が変身する愛くるしい魔女――例えて言うなら、『魔法少女』、と言うイメージを、凛は抱いた。
そして目の前の魔法少女は、浚ったドブのような、腐敗した匂いがした。

「悪いけどさ、アンタ相当恨み買ってるっぽいし、このまま生きててもしょうがないみたいだから此処で死んでくれないかな」

 同じ女性の、しかも自他共に高い評価を貰う程整った容姿を持つ遠坂凛から見ても、可憐で可愛らしいと言わざるを得ない、
虹の少女のその顔に、笑みが浮かんだ。ハイエナが嗤えばきっと、こんな顔になるのだろうかと言う程に、狡賢く悪辣な笑み。
彼女が魔法少女ではなく、サーヴァントであると言う事は、最早明白な事柄であった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 夢もなければ希望もない、楽しい事だってありゃしない、自身に言わせればクソッタレな世界に生きて来たレイン・ポゥには解る。
能力にもよりけりだが、百数十名以上の人物を表の世界で殺すと言う事の意味を。
先ず、その表の世界の住民に事が露見する。現代の世界では至る所に公権力の仕掛けた隠しカメラが置いてある上に、その公権力の追跡力も凄まじい。
これだけで済むのであれば、魔法少女の力で逃げ果せる事が出来るのだが、今度は所謂魔法の国の追跡が待っている。これを振り切る事は不可能に近く、
それこそ裏仕事や汚れ仕事の腕利きが、地の果てまで追跡して来る事になる。こうなればもう殆ど詰みに近い。死を待つのみとなる。
百名を超す人物を殺すと言う事は、それはそれは大それた事であり、自身の破滅を早めるリスクが極めて高い行動なのだ。まるで、殺された人物の怨念や、殺してしまった因果応報が百人分、自身の運命にのしかかってくるようであった。

 暗殺は確かに人を殺す事が任務であるが、殺すべきなのは言うまでもなく標的と、その標的の身辺を警護する存在。
そして、自身の魔法の正体を知った者にのみ限られると言っても良い。殺し過ぎて事が露見するのは下の下。
この辺りの調整能力が、レイン・ポゥのような嘗て魔法の国の暗部を跋扈していた魔法少女には求められた。

 恐らく、あのバーサーカーにはそう言った調整能力や、物事に対する帰結を予測出来る力がなかったのだろうと、レイン・ポゥは解釈していた。
百歩譲って、バーサーカーが引き起こした大量殺人を、仕方がない、既に起きてしまった事だと割り切る事としよう。
――だからと言って、あれは信じられない。

 ――如何にも退屈そうな表情で、黒礼服のバーサーカー、黒贄礼太郎は、遠坂凛が拠点としているあの邸宅の周りをウロウロと、実体化した状態で巡回しているのだ。

「自分が百何十人も殺してるって自覚ゼロじゃん、アイツ……」

 仮に数百人も殺し、事実ルーラーからも指名手配を受けている身ならば、水面下で活動し、その姿を隠し通すのが常である。
全く、その事について勘案していない。それどころか霊体化すらせずに、実体化して邸宅の周りを見回っている始末。
これはもう馬鹿を通り越して、気狂いの領域だった。常識で物を考える、と言う事が、サーヴァントの方もマスターの方も、出来ていないのだろうか。

「マスターの遠坂凛が、近辺を監視させているのではないのかしら?」

「それがまぁ一番あり得る線なんだろうけど、それにしたって、あのバーサーカーに頼むかぁ?」

「……確かにそうかも知れませんわね」

 往来の真っただ中で、百人超の人間を殺すようなバーサーカーに、拠点の周りを警備させる。
常識的に考えればありえない話だが、遠坂凛の主従は実際そうでもしない限り危険な程追い詰められている。
放っておいても脱落するのは最早秒読み段階な事が、遠目から見ても理解出来る程だった。

 英純恋子とレイン・ポゥは、あるマンションの屋上から、黒礼服のバーサーカー、黒贄礼太郎の事を監視していた。
エルセンの運転していたトヨタ・センチュリーは、遠坂凛が拠点としている邸宅から離れた所の駐車場に待機させ、
二名は非常階段経由で、見晴らしの良い屋上までのぼり、黒贄の動向を逐次監視していた。
五感や身体能力が通常人類の埒外の所にある魔法少女であるレイン・ポゥは、肉眼でもこの程度の距離からなら黒贄礼太郎の姿は勿論、
表情すらも視認出来るが、マスターの純恋子はそうは行かない。双眼鏡を利用し、彼女は黒贄の姿を監視していた。

 エルセンが齎した調査資料を確認した所、遠坂凛の主従は『香砂会』と呼ばれる、日本でも有数規模の暴力団組織の邸宅を現在の本拠地にしていると言う。
この暴力団はかなり手荒な真似を平気で犯す事で、そのスジやカタギの人間からも有名で、調査部によると近年では、ロシア人のアフガン帰還兵で構成された、
ロシアン・マフィアとも繋がりを持とうとしていると言う噂もある。そう言った過激派の組の邸宅であるからだろう。
その邸宅の周りだけ、蚊帳でも下ろしたかのように人がいないのは。皆が仕事に行き、学校で勉強をしている真昼の時間と言う事を差っ引いても、いくらなんでも人気が少ない。

「で、よ。マスター」

「何でしょう」

「あのバーサーカーのステータス、如何?」

 聞いておきたい事柄であった。一応直接戦闘も出来るとは言え、自身より優れた身体能力の魔法少女など掃いて捨てる程存在した。
況してや今は、音に聞こえた英霊や猛将の類が平然と召喚される事もある聖杯戦争である。自分より優れたステータスの持ち主など、当然いる物とみている。
暗殺をしくじった時の為の、純恋子からこの情報だけは聞いておきたい所だった。何せ、相手のサーヴァントのステータスをその目で確認出来るのは、――心底不服だが――マスターだけなのであるから。

「貴女なら勝てる強さですわ」

「具体的に言えや」

 こめかみに健康的な血管を浮かべながら、ドスの効いた声でレイン・ポゥが返事をした。
如何してこのマスターは、やる事なす事がアバウトの極みなのだろうか。自分について全幅の信頼を抱いていると言うのであれば、それはそれで良いのだが、
流石にこれは抱き過ぎである。何せこの少女は本当に、三騎士やバーサーカーと真正面から戦っても、自分が勝つと思っているのだ。信頼と言うよりは、もう狂信の域に近かった。

 「信頼していますのに……」、と言う小言の後に、純恋子は具体的な黒贄のステータスを口頭で告げた。
結論から言えば、真正面から戦う相手ではないと言う事だ。当たり前だ、近接戦闘で特にモノを言う三つのステータスが、レイン・ポゥが何人居ても敵わない位に高いのだ。
まかり間違っても勝てる道理など何一つとしてない。やはり、此処は暗殺で決着をつけるのがベストだろう。
……だがそれにしても、耐久のEXが非常に気になる。想像を絶する程高いと言う事か、それとも、その耐久の高さにはカラクリがあると言う事か。
スキルは見えないのかと純恋子に打診した所、見えないと言う返事が寄越された。本当だろうなと脅した所、やはり返事は先程と同じ。
見えない、と言うのならば仕方がない。此処は先手必勝で、レイン・ポゥの有する最大かつ最強の勝ち筋を見舞ってやるしかない。

「マスター、一つ聞くよ」

「はい」

 粛々とした表情と声音で、純恋子が言った。

「アンタの価値観から言ったら、あの主従は、自分が出張って戦う程でもないんでしょ?」

 レイン・ポゥは、純恋子がハイアット・ホテルで口にしていた言葉をシッカリと記憶していた。
彼女は、自分に見合った誇り高い強者と戦う事を矜持にしており、無軌道で無思慮な、遠坂凛達の主従は歯牙にもかけない、と言う如何にも貴族的な性格だ。
だからこそ純恋子は当初、黒贄達と事を構える気概などなかったのだ。……実を言うと、レイン・ポゥが敢えて黒贄達を選んだ理由はこれもあり、
初めから興味の薄い主従であるのならば、百%レイン・ポゥと言うサーヴァントの計算に基づいて純恋子は行動させると、踏んでいたのだ。

「そうです」

「なら、戦い方についても、私の好きにやらせて貰っても構わないっしょ?」

「えぇ」

 短く、純恋子は即答した。自分の目論見は、正しかった。

「じゃ御言葉に甘えて」

 そうレイン・ポゥが告げたその瞬間。
何も無い虚空から偏平状の何かが現出、凄い速度で此方に背を向けた状態の黒贄目掛けて向かって行った。
その偏平状の長方形には、クッキリとした赤、橙、黄色、緑、水、青、紫色の七色が、筆でなぞった様に浮かび上がっていた。
聡い者がみれば、それが虹の七色である事に気づくだろう。これこそが、レイン・ポゥが有するただ一つの魔法にして、アサシンたる彼女の宝具。
実体を持った虹の橋を作る宝具だ。それは虹の橋(アーチ)と言うよりは道(ストリート)とも言うべき物で、見事なまでに一直線に、黒贄の下に向かって行き――

 ――――彼の心臓部を、抉るように貫いた。

 それだけでは飽き足らず、二本目の虹が腹部を斬り裂き。
三本目の虹が、鳩尾の辺りを打ち抜いた。魔法少女の顔には、上手くいった、と言うような笑みが刻まれている。

「……何時みても、小狡い戦い方ですのね」

 数秒程の時間をおいてから、純恋子は溜息交じりにそう言った。

「は? アンタが足手纏いにならないように配慮して戦っただけだよ。寧ろ光栄に思って欲しいね」

 何処か軽口を叩く様に――しかし、マスターである英純恋子に対する嫌悪を匂わせて。
アサシン、レイン・ポゥはそう言った。これ以上の言い合いをするのは得策ではないと、純恋子も思ったのだろう。
かぶりを二度ほど振ってから、双眼鏡で、虹の道に貫かれた黒贄の方を確認する。見る事の邪魔になると思った虹の魔法少女は、自らが生み出した七色の凶器を消してやる。
よく黒贄の姿は見えた。うつ伏せに倒れながら、胸から流した血でアスファルトを染め上げていた。耐久EXなど、飾りも同然。ピクリとも動いていない。
ああ、とレイン・ポゥが思い出す。あの倒れ方、誰かに似ていると思ったら。魔王等と言う大層な名前を冠していながら、自分の正体にすら気付けなかった、あの愚かな女そっくりではないか。

「生きてるわけないよ」

 レイン・ポゥが補足する。

「手ごたえあり過ぎてこえー位。もう即死だよ即死」

「の、ようですわね。ピクリとも動きませんわ」

「そ言う事。んじゃま相手のマスターの方に行きますか。サーヴァントの死体は時間を置いたら消滅するみたいだし? 
ルーラーから令呪を貰えるっていうんなら、その遠坂凛って奴の首を刎ねてそいつの所に持って行けば、流石にルーラーの方も、『殺したって証拠がないから令呪はやれない』何てナメた事言えないでしょ」

 令呪を貰うと言う事が一番ベストな結果であるが、手ぶらでルーラーの下に赴いても、シラを切られる可能性が高い。
だからこそ、殺したと言う証立てを用意する必要があった。中世の武人達が、斬り落とした首や耳をその証拠としたように。
レイン・ポゥ達は、遠坂凛の首をそのままルーラー達に見せる事で、一切の逃げ道を断とうとしていた。

「その辺りの手筈は、貴女に任せますわ、アサシン。早く、邸宅に向かいません事?」

「あいあいさー」

 と言ってやる気のなさそうな声で、虹の魔法少女は霊体化を行い、純恋子は元来た道を戻り、遠坂凛がいるであろう邸宅の方に向かって行った。

 虹の刃で切り裂かれた黒贄が、倒れる間際、「ありゃりゃ」、と口にしていた事など、二人は知る由もない。





【黒贄礼太郎@殺人鬼探偵 死亡】




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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ば、バーサーカーは!?」 

 声が裏返るのを抑えつつ、凛が叫んだ。
反射的に立ち上がる。カップヌードルの容器に入っていたスープの飲み残しが、踵が和卓の裏面に当たった衝撃で零れた。

「私の従者であるアサシンが葬り去りましたわ」

 第三者の声が、アサシンの魔法少女、レイン・ポゥの背後の廊下から聞こえて来た。凛の視界には、その姿は見えない。
如何にも育ちが良く、並々ならぬ教育を受けて来た声であると、直感で凛は悟った。一応凛も、世間上はそう言った少女に分類され、自身もそんな自覚があるからだ。
やがて、魔法少女のサーヴァントのマスターと思しき女性が、姿を現した。亜麻色の髪の乙女、と言う言葉がこれ以上なく相応しい女性で、
流した後ろ髪の優美さと、顔立ちそのものの優艶さの、如何にもな女性らしさよ。通っている学校が学校ならば、マドンナや高嶺の花のような扱いで、
蝶よ花よと生徒や教師を問わず愛でられそうな事が容易に想像出来た。レイン・ポゥの前では兎も角、英純恋子と言う少女は、対外的には、
英コンツェルンの令嬢に相応しい教育と帝王学を叩き込まれて来た、一端の女王である事を再認させられる瞬間であった。

 ――バーサーカーが。黒贄礼太郎が、死んだ!!
一瞬ではあるが凛は、凄まじく喜んだ。あの最低最悪のバーサーカーが殺されたと言う事は、今自分を苛む要素の一つが消え失せた事を意味するのだから。
だがすぐ後で、全く喜べない事を理解する。黒贄が死んだと言う事は、もう誰もこの<新宿>に遠坂凛の味方がいないと言う事を意味するのだから。
あんな男でも、一応は自分をマスターだと認識していたのだ。たまに勢い余って自分を殺そうとする事もあるが、それでも、味方なのだ。

「呆気のない物でした。そして同時に、貴女を哀れにも思いましたわ、遠坂凛さん。不意を打たれて殺されるようなサーヴァントを引き当てた程度で、
舞い上がり、白昼の往来の只中で大量の人間を殺してしまうなんて」

 「舞い上がってんのはお前の方だろ」と突っ込みたいレイン・ポゥであったが、此処は黙っておいた。
だが、そもそもお前は前線に出てくんなオーラを放出する事は、やめない。凛の方はと言うと、純恋子のこの言葉を受けて、激昂した。

「私は、誰も殺してもないし、舞い上がってもない!!」

 誰もが抱く誤解を真正面からきっぱりと言い放たれて、遠坂凛は久方ぶりに、自身のサーヴァントである黒贄以外に激昂の言葉をぶつけた。
冬木における聖杯戦争の参加者として遠坂凛は、魔術師としての非情さを時と次第によっては発揮するつもりであった。
敵は状況次第では殺すし、見られては行けないものを見られたら、サーヴァントを駆使して口封じだって行うつもりでもあった。
白昼の往来で、人目に付く程の大虐殺など、遠坂凛の望む所では断じてあり得なかった。神秘の秘匿を至上とする魔術師だから、と言うのも確かにある。
しかし実際には、遠坂凛と言う少女の本質は何処にでもいる少女のそれであり、感性自体は一般人のそれと大差がないと言う所に起因すると言っても良い。
殺したく何て、なかった。間が、悪すぎたのだ。狂った歯車のせいで、運行がおかしくなったのだ。全てはあの時、鍵に触れた瞬間から。
バーサーカー、黒贄礼太郎が彼女の元に導かれたその瞬間から。

「アンタがどんなに弁解した所でさ、恨みを買われてるし、首に掛けられた賞金首の札付きも消えないんだわ。此処で死んだ方が楽になると思うけど?」

 と言うのはレイン・ポゥだ。これ以上の会話は、もうする気はない。
虹の刃で相手の首を断ち斬り、そのままこんな状況を終わらせよう。彼女は確かに、そう思っていた。

 英純恋子のみならず。
魔法少女達が跋扈する世界で生きて来たレイン・ポゥですら、予測出来なかった事が、一つある。
いや恐らくは、彼女らだけでなく。他の聖杯戦争の参加者ですら、こんな事は予測は不可能であろうか。
遠坂凛を、バーサーカーの制御に失敗した一般人だと、恐らく多くの者は思っているに相違ない。しかし、その思い込みは半分しか合っていない。
遠坂凛は、確かにバーサーカーの制御には失敗した。しかし――

「――!?」

 慌ててレイン・ポゥが、純恋子の真正面の辺りに虹を伸ばし、七色のバリケードを作り上げる。
其処に、赤黒い色をした弾丸めいた物が幾つもぶつかり、水あめで塗り固めた砂糖菓子の様に脆く砕け散った。
この間、ゼロカンマ五秒。純恋子は、この間に如何なる攻防が行われていたのか、全く認識出来なかった。

 レイン・ポゥはプロである。ヤクザの邸宅を拠点に設定した以上、マスターである遠坂凛は、其処の構成員が所持していた匕首や、
縦しんば拳銃の類を護身用に用意している。純恋子は到底解らなかったであろうが、このアサシンはそう予測して行動をしていたのだ。
そして実際、弾丸は放たれた。――腕利きのアサシンのレイン・ポゥですら、予測が出来なかった事。それは、遠坂凛の放った弾丸が、『魔術に由来するもの』であった事だろう。

 遠坂凛は、バーサーカーの制御には失敗した。
しかし、彼女は一般人では断じてないのだ。そう、彼女は魔術師。将来の訪れが恐ろしくもある一方で、楽しみとすら人に思わせる程の、
天才的な才覚を持つ魔術師。それこそが、遠坂凛が有する本当の顔。一般人としてのペルソナで覆い隠した、真実の側面。

 マスターに向けて撃ち放ったガンドが防御されたと認識した瞬間、凛は和室の体裁を成させた居間から、脱兎の如く逃走。
レイン・ポゥ達が陣取る側の廊下方面とは別方向にかけだし、閉じられた襖を蹴破り、其処から逃げ果せる。
敵に背を向け、何とも情けない姿ではあるが、サーヴァントを相手に戦うと言う愚を犯すよりは遥かにマシ、と言うものだった。

「チッ、ミスった!! アイツ一般人じゃなくて魔法使えるのかよ!! 」

 盛大に舌打ちを響かせてレイン・ポゥが言った。
まさかこれまで無力な一般人だと思っていたマスターが、その実、魔術師だったなど、誰も予想出来る筈がない。
魔法少女である自分とは比べるべくもないが、人間が努力して得られる実力と言う範疇で見れば、あの魔術師はしかも相当な腕利き。
不意打ちのガンドを防げたのは、半ば運の要素もある。魔法少女としての優れた反射神経、そしてレイン・ポゥと言う個体が培ってきた経験がなければ、
間違いなく純恋子は凛の放った赤黒の弾丸に貫かれ即死していただろう。
今までの余裕ぶった言葉は、相手が一般人だと言うバイアスから出て来た言葉だった。相手がそっちの側の人物と解った以上、最早容赦はしない。
早急に、遠坂凛は殺されねばならなかった。と、認識した瞬間だった。魔法少女の感覚が告げる。壁を数枚程隔てた数m先で、魔力が収束して行くのを。
幅四十cm程の虹を横向きに幾つも展開させ、自分と純恋子を覆うバリケードを生み出す。
遠坂凛が放ったガンドが壁を打ち抜き、百を超えると言う圧倒的な物量でレイン・ポゥ達に殺到する。
狙いは完璧に適当で、やたらめったら撃ちまくっているらしく、見当違いの方向に向かうガンドが幾つも存在した。完璧に、当たれば良いの精神だが、今その判断は正解だ。
チィンッ、と言う音と同時に、ガンドが虹の障壁に衝突し、砕け散った。ガンドは人体に当たれば致命傷であろうが、
生憎、レイン・ポゥが生み出した虹を突き破るには威力が絶対的に足りない。こうなれば、虹を展開させていない背後でも取られない限り、凛のガンドがマスターを害する事はない。

「完璧に目測を誤ったようですわね」

 事此処に至って、純恋子は冷静だった。
買い物をして、牛肉と間違えて豚肉を買ってしまった、とでも言うような口調であった。声音からは緊張感が感じられない。

「全くだよ、情けないったらありゃしない!!」

「不測の事態が起きたのならば、如何するべきだと思います?」

「あん?」

 怪訝そうな光を宿した瞳で、純恋子の方をレイン・ポゥは見た。

「堂々と構えて、この程度の事態なんて何の支障もない、と言う顔でいるのですよ。混乱をしていては、相手の思う壺。ピンチの時ほどふてぶてしい笑みを浮かべるのは、帝王学の基本ですわ」

 一瞬ではあるが、レイン・ポゥは、純恋子のこの堂々とした威風に呑まれそうになった。
帝王学何て欠片も学んだ事がない所か、寧ろ生涯を掛けて学んで来た事柄は、それとは正反対の、小狡く生きる方法であったレイン・ポゥには、
生涯をかけても、純恋子のような威風堂々とした空気など醸し出す事は出来まい。考えてみれば、彼女は大物だった。
今の発言もそうであるが、気が滅入るどころか、常人ならば内臓ごと吐き出しかねない程グロテスクな死体がそこかしこに散らばる、香砂会の邸宅の内部に入っても、
純恋子はその態度を崩してすらいなかった。この程度で臆するようでは、女王は務まらない。念話で彼女はそう伝えていた。
ひょっとしたら、彼女は想定を超える程の大物であり、場合によりては、自分のかけている部分を満たす、正真正銘のパートナーに成り得るかも――其処まで思った、その時だった。純恋子が口を開いたのは。

「そして――」

 言った。

「『従者のミスを、嫌な顔一つせずに修正してやるのも、女王の務め。貴女の失策の帳尻を、私が直々に直してさしあげましょう』」

 レイン・ポゥが「は?」と言うよりも速く、純恋子は、凄まじい速度で畳を蹴り、走り出す。
凄まじい加速度を得た純恋子が、見事な白色をした和室の塗り壁を右拳で殴打し、粉砕。人一人は余裕で通れる程の大穴を作った後、そこを通って別所に移動する。
虹の魔法少女が、全てを理解したのは、自身のマスターがその穴を通って遠坂凛を追跡に掛かったのだと言う考えに至ったその時だった。
石鹸の様に白くてすべすべとした彼女の顔が、全身の血液が昇って来たのではないかと余人に知らせしめる程に赤くなっていったのも、殆ど同時だった。

「あんの馬鹿女ァ!!」

 生前の時代でも叫んだ事のないようなドスの効いた叫びをレイン・ポゥが上げる。
描いていた遠坂凛を殺す計画が、パーになった。弾丸を放った位置から、壁を貫いて相手を切り裂く虹の刃で相手を殺そうと言う計画が、おじゃんになってしまった。
純恋子がいては、彼女も巻き込む可能性が強かったからだ。苛々を募らせながら、レイン・ポゥも畳を蹴って移動する。
蹴られた畳が真っ二つに圧し折れたのは、彼女の怒りを如実に示すいい証拠であった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 さしあたっての急務は、この邸宅から逃げ果せる事だった。
逃げ果せる、つまりは、指名手配犯に等しい身分で日の当たる所に逃げると言う事であるのだが、これは凄まじいリスクを伴った行動と言える。
しかし、この屋敷にいては先ず間違いなく、遠坂凛は殺される。座して死を待つくらいならば、一波乱の中を泳いだ方が余程マシだった。
こう言った時、一秒と言う判断ミスが死に直結する。熟考する天才より、このような状況では行動する馬鹿の方が、存外生き残れるのだ。
己の才能と行動力、そして、自分の残ったなけなしの運を全て信じ、遠坂凛は香砂会邸宅から逃げようとしていた。

 ――そうはさせじと、凛の真正面数m先の、左脇の木製の壁が、凄まじい音響を立てて砕かれた。
唐突に起こった現象に、凛は急ブレーキをかけ、停止。空いた穴から、先程虹の魔法少女のマスターと思しき、亜麻色の髪の女性がその姿を現した。
如何なる力を用いてか、彼女は壁を破壊し、此処まで追跡して来たらしい。腕の立つ魔術師である、と言う可能性を先ず視野に入れ、凛は構えた。

「ごきげんよう、遠坂凛さん」

 ある晴れた昼下がりに、よく歩く散歩道で知り合いと偶然出会ったかのような口ぶりの、純恋子だった。
だがそれがなまじ、恐怖と不安をかきたてる。正真正銘の殺し合いの場において、純恋子の口ぶりは、場違いを極るそれであった。

「私のみならず、私の従者の裏をかくとは、成程、ただの少女、ではなかったようですね」

 その言葉の意味を凛はよく理解していなかった。
そもそも凛にとって聖杯戦争とは、『魔術師が参戦するもの』であり、魔力回路がそもそも存在しない一般人など、参加出来る可能性はゼロに近いと言う認識なのだ。
まさか、純恋子の言っている裏と言うのが、自身が魔術師であると言う事を指している事など、凛は夢にも思わない。
此処に認識の齟齬が生じていた。凛は聖杯戦争に魔術師が参戦するのは当たり前の事柄だと思っているが、純恋子はそうだと思っていない。
そして純恋子は――遠坂凛は、あのバーサーカーに大量殺人を命令したのは間違いなく彼女自身であり、『バーサーカーの制御に失敗した一般人と見せかけて、襲撃に来た人物を叩く抜け目のない女性』と、認識していたのだ。

「前言を撤回いたします。貴女は中々に強かな女性のようです。そして――女王の座を賭けて戦うに相応しい人物でも、あるようです」

「じょ、え、なに?」

 全く相槌を入れずとも、女王の勝手な思い込みによる会話は進んでいく。

「ならば、私の真の力を――」

 よく見たら隙だらけだったので、凛は人差し指からガンドを放った。
目を見開かせる事以外の一切の反応を許させず、赤黒いガンドは純恋子の右腕を肩の付け根付近から貫き、遥か向かいの壁に建て付けられたガラスを砕いて、
彼方に消えて行った。心臓や頭を狙えなかったのは、凛の本質が人間的にお人よしな所がある、と言うのも確かにある。
それ以上に、自分のサーヴァントが原因だった。自分は何があっても、あの男のような無軌道に人を殺す外道になりたくない。そんな思いが、心の中にあったのだ。
あったから、殺せなかった。令呪が刻まれているであろう位置を特定し、それを奪い去り無力化させようと言う、甘い以外の何物でもない判断。

 ――そしてそれが、本当に甘かったと知ったのは、口の端を吊り上げた、実に好戦的で血色が香る笑みを純恋子が浮かべたのを見た時であった。
痛がっていない!! いやそれ以上に、腕から血が流れていない!! 代わりに弾痕から走っているのは、血色の花ではない。白と青、橙色が織りなす、電気の花、スパークなのだ!!

「貴女の判断は間違っていないですわ、遠坂さん。ですが、半分は間違い。私を殺すつもりならば、頭か、心臓を狙わなければ!!」 

 言って純恋子は地面を蹴り、凛と彼女の彼我の距離数mを、格闘技の達人めいた速度で一瞬でゼロにする。
左腕で、前動作も何もない見事なフックを、凛の顎目掛けて放つ。普通であれば純恋子の拳が顎を捕らえ、脳震盪を起こすどころか、顎そのものを砕いていたであろう。
あの弟弟子から八極拳を学んでいて、今日程救われた日はないだろう。ボクシングにおけるダッキングの要領でこれを回避。けんけんの要領で、軽く後ろに跳躍。
純恋子の放った一撃から、彼女が格闘技の心得を習得している事を理解した凛は、迅速に行動を始めた。
距離調整で離した彼我の距離から、凛は思い切り踏込み、純恋子の胸部を右拳で撃ち抜いた。グッ、と言う苦悶が純恋子の口から漏れるが、お構いなしだ。
空いた左手で凛は彼女の左手首を掴み思いっきり引く。体勢の崩れた純恋子の、やはりまた胸部に、肘鉄を放つ。
身体を魔力で強化した一撃は、純恋子の身体を二m程も吹っ飛ばすが、どうにも、手ごたえが妙だ。
『重い』のだ。筋肉量と体格から想定される、英純恋子の全体重。それが、凛の想定よりも重い。まるで、身体の何処かに金属を仕込んでいるような――。

 其処まで考えて気付いた。今も純恋子の右腕から走る火花。
もしや彼女は身体の幾つかを機械に――

「良い腕ですわ、実に暗殺者らしい!!」

 痛みなど感じないのかと言わんばかりに、即座に床を蹴って純恋子が凛の下に駆け寄って行く。
左腕を思いっきり引き、凛の顔面にストレートを放とうとするが、余りにも動作が大振りなので、カウンター気味の一撃を放とうと待機する、が。
拳を突きだしたその途中で、純恋子の左腕の一撃が停止。フェイント、と気付いた時にはもう遅い。鋭い膝蹴りが、凛の下腹部に突き刺さり、十m程も吹っ飛んで行く。
吹っ飛んだ先の廊下の壁をクッションに、思いっきり背後から激突した凛は、肺の中に溜められていた酸素の全てを一瞬で吐き出して軽い酸欠状態になり、
余りにも鋭い衝撃と痛みで、視界が混濁とし始めた。

 凛の予想通り、英純恋子はその四肢を機械の物に挿げ替えさせた、ある種のサイボーグとも言っても良い人間で、生身の部分は胴体にしかないと言っても良い。
頭か心臓を狙わなければ殺せないと純恋子が言ったのは此処に起因するのだが、果たして其処をガンドで撃ち抜いたとて、純恋子が死ぬかどうか。
九十九階建ての建物から落下して、生存し、女王への執念を未だ捨て切れていないし諦めてもいない女性こそが、英純恋子だと、誰が認識出来ると言うのか。

 雄叫びを上げて、凛がガンドを純恋子の方へと殺到させる。
しかしその本質が、殆ど直線的な移動でしかない赤黒の弾丸は、スピードこそ速いが見切るのは容易い。今の様に、フェイントを交えていないのならば猶更。
純恋子は勢いよく左脇の壁に肩から体当たりをし、破壊。別の部屋への道を無理やり通じさせ、其処に移動する事でガンドをやり過ごす。
痛みに苦しむ身体に喝を入れ、無理やり立ち上がった凛は、玄関口の方へと走って移動する。其処までの距離はもう、十m程だ。
逃げながら、純恋子が移動したその部屋目掛けて、機関銃の如き威力のガンドを掃射させた、刹那。
ガンドの軌道上に七色のバリケードが何枚も張られ、それにぶち当たった、殺意と言う名前の加速度を十分に得切ったガンドが粉々に霧散して行く。
虹の障壁が消え失せたその先に、あの、虹の環を背負ったあの魔法少女がいた。顔面の全ての組織が凍結したような無表情で、凛を見据えた後に、彼女は口を開いた。

「ゲームオーバー」

 情け容赦なく、無色の殺意を内包した虹を伸ばそうとした、その時だった。
凄まじい勢いを立てて、玄関のガラス戸のガラス部が砕け散り、ガラス内部の基礎枠が全体的にその形を保ったまま、高速で天井に突き刺さった。

 嗚呼、来てしまった。
実を言うと凛は、本当は死んでいないのではないかと思っていた。それを百%信じ切れていなかったのはひとえに、ある筈がないと思っていたからだ。
本当の不死など、再現される筈もないし、英霊の身で到達出来る境地にないと、頭から決め込んでいたのだ。
自分のサーヴァントが傷らしい傷を負った局面など見た事がなかったから、凛は俄かには信じられずにいた。不死など、ある筈がないと。
ゆっくりと、己が引き当てた、最低最悪、しかし、確かに最強のバーサーカーの方を見て、疑いが確証に変わった。

「いやぁ、珍しい凶器を使われるのですねぇ」

 胴体から大量の血を流し、空いた黒礼服の隙間から、ぞろりと大腸を暖簾のように下げながら。
破壊された玄関のその先で、黒贄礼太郎はいつものように、何がおかしいのか解らないような薄い微笑みを浮かべていた。





【黒贄礼太郎@殺人鬼探偵 復活】








時系列順


投下順



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17:死なず学ばず、死んで学ぶ者は誰? 英純恋子 25:殺人最高永久不滅
アサシン(レイン・ポゥ)
06:笑顔の絶えない探偵です 遠坂凛 25:殺人最高永久不滅
10:ウドンゲイン完全無欠 バーサーカー(黒贄礼太郎)