千代田区は麹町に建てられているカトリック教会、聖イグナチオ教会で神父の一人として従事する男、賀来神父は、<新宿>のBIGBOX高田馬場前で、そわそわとしていた。
待ち人が来るのを待っているのである。普段は黒い法衣を身に纏い、勤勉な男であると司教や他の神父達からも尊敬され、カトリック信者達からの評判も良い男だ。
そんな男が今、白いシャツと黒いズボンと言う服装で、駅近くのファストフード店で買ったハンバーガーを口にしていた。
賀来は確かに神父ではあるが、彼にも普通人としての生活と言うものがある。故に、神父らしからぬ服装も、肉を食べる事も、さして珍しい事ではない。
言わなければ、誰も彼を神父だと認識しない。人と言うのは、そんな物である。どんな瞳を持とうとも、その内面を視覚化する事は、出来はしない。

 賀来は落ち着かない様子で高田馬場駅をたむろする学生達を目にしている。
W大学の御膝元に等しいこの駅は、昼夜問わず、その大学の学生達が散見出来る。夜になると飲み会帰りのW大学生の姿など、それこそ当たり前のように見られる。
ロータリーで嘔吐している大学生を、無感情に賀来は眺めている。あまりいたくない街であった。
<新宿>が有数の繁華街ではあるが、神に仕える道を志した賀来にとってこの街は、下品で、汚い場所だった。
もっと別の場所を待ち合わせにすれば良いのにと、包装紙に残った最後のハンバーガーの一かけらを口にした時であった。

「待たせたかな」

 男の声が聞えてくる。聞き覚えのある声だ。明らかに、賀来に対して向けられた声だった。

「今来た所だ」

「嘘ばっか、そうだったらハンバーガー何て食べてないだろ」

 賀来が包装紙をくしゃくしゃに丸める様子を苦笑いを浮かべながら見ている男がいた。
腕の良いテーラーに仕立てて貰ったであろう上物のスーツを身に纏った、如何にもなエリート風の男性である。
さもあらん、この男は事実、エリートそのものの男だった。日本各地に支店を置くメガバンクの<新宿>支店で辣腕を振るう銀行マン。
しかも色気を感じさせる整った顔立ちで、出世街道を真正面から行く成績の持ち主でもある。男はその銀行の女性行員の人気を一極に集めるプリンスだった。
名を『結城美知夫』と言うこの男は、誰もが認める人生における勝ち組に属する男性であった。

「すまないね、ぼくとしては急いで君に会いたかったんだが……ほっぽり出せない仕事があってさ、予定より一時間程遅れてしまった」

「構わない、君には君の仕事があるのだ、それを咎めるつもりはない」

「ハハハ、優しいねぇ、神父様。一時間も待ちぼうけ喰らわせちゃったら、怒って帰るのが当たり前なんだけど……やっぱり賀来は賀来だ」

 言うと賀来は赤面して、結城から目線を外した。

「一ヶ月ぶりだが、食事でもするのかな。結城」

「よせやい賀来。メールで連絡をしたじゃないか」

 大きな掌で顔を抑え、嘆く様なジェスチャーをする賀来。解っていた事ではあるが、惚けたって無駄なようだった。

「ぼくの職場から近いから毎度此処を待ち合わせにしてるが、ガキどもが煩くて馬場は敵わんな。次からは別の所を待ち合わせ場所にするか。早く行こうか、賀来」

 言って結城は、足早にBIGBOX前から高田馬場駅へと足を運ばせる。
彼の後をついて行く賀来の足取りは、絞首台に向かう囚人さながらに、鈍重なそれなのだった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「飲むかい」

「僕は飲まない」

 「固い事言うなよ」と言いながら、結城は空のバーボングラスにバーボンを注いだ。彼の手元には自分が飲む分のバーボンのオンザロックがあった。
結城の背後には、クラシカルなデザインの棚があり、その中には、酒類の知識を齧った者がいればすぐに高級の銘柄と解る酒の数々が沢山仕舞われていた。
所謂、ちょっとしたホームバーと言う奴である。御丁寧に凝ったカウンターテーブルまで置いてある

 新宿区の富久町に建てられた賃貸マンションだった。
地方に転勤された結城が、久方ぶりに都に戻って来た時に新しい住まいとしたのが、このマンションである。
一介のサラリーマンの月給、いや、今の景気状況では彼らの月給を軽く上回る程の家賃を要求されるマンションだが、
若くしてメガバンクの支店の貸付主任を任される、エリート以外に形容すべき言葉が見当たらない結城にとって、この程度の家賃など大した額ではなかった。

「いつまでこんな関係を続けるつもりだね」

 バーボングラスを二つ乗っけた銀盆を手に持って結城が、大きめのビーズクッションに座る賀来神父の下へと近づいて来る。
賀来はバーボンを結城から受け取り、それを口へと運ぶ。聖職者になってからは飲む機会がめっきり減ったが、やはりアルコールは美味かった。

「死が二人を分かつまで、かな」

「よしてくれ、それは結婚の宣誓で使う言葉じゃないか」

 男同士でそんな事を言われるとなると、流石に気色悪いにも程がある。
況してや賀来は聖職者だ。同性愛は認めるべき余地こそあれど、良い顔はしないのは、当たり前だった。

「結城、君もいい大人じゃないか。そろそろ独り立ちしたらどうだ」

「してるじゃないか」

 自分の稼いだ金で、自分のスペースを借り、そこで生活する。誰がどう見たって、結城美知夫は、自立した一人の大人であった

「僕を頼るのは止せと言う事だ」

 バーボンを一気に賀来は呷った。「良い飲みっぷり」、と結城が茶化す。

「結城。今の君は、誰もが羨むような立場の人間ではないのか? こんな良い所に住めるんだ、きっと稼いでもいるのだろう。順風満帆な生活、と言う奴だ。
君も私も、いい歳になったじゃないか。私の方は聖職者だからそう言う訳にも行かないが……君もそろそろ、いい女性の一人ぐらいは……」

「おいおい神父様、ありがたい説教は教会の中だけにしてくれ」

 ウンザリした様子で結城がそう言った後、彼はバーボンを口にした。

「ぼくらはもう代え難い友情で結ばれてるのさ。違うかい、賀来」

「切ろうにも切れない、の間違いだろう」

「それでも友情には代わりないよ」

「君は狂ってるんだ、狂気の住人だ」

「賀来は、僕との関係をこれで終わりにしたいの?」

 うっ、と賀来が言葉に詰まった。結城の手口である事は、賀来も承知している。
解っていてもなお、賀来は動揺してしまう。だって彼は、そんな人間だから。そして、そんな騙されやすい自分が、賀来は堪らなく嫌だった。

「酷いや賀来。僕を見捨てるつもりなのかい?」

「……メフィストフェレスめ……!!」

 唾棄するように賀来が言った。結城はもとより、自分に対しても言っているようにも見える。

「もっと気楽に生きようぜ、賀来」

 そう言った瞬間、結城は部屋着を脱ぎ始めた。するすると衣擦れの音が部屋に響き、着ていた服が床に落ちる音が聞こえてくる。
彼は、シャツとパンツだけの姿になった。その状態で、革張りのソファの上に横たわり始める。いやに、扇情的な座り方だった。

「昔のお前は、もっと人生を楽しんでたじゃないか。今時ストイック何て流行らないぜ、人生を楽しんで行けよ」

「よせ!!」

 賀来は結城から目線を逸らした。目線の先には、窓があった。
結城の部屋は、十四階。賀来の目には、足元に星空が敷かれているような、ネオンと電球が生み出す<新宿>の夜景が広がっていた。

「こっちを向いてよ、賀来」

 熱っぽい、甘えるような声で結城が言葉を投げ掛ける。

「黙れ、結城!!」

 賀来が声を張り上げた。悪魔の誘惑を、心を無理やり意気軒昂にさせる事で跳ねのけようとする修行僧のようである。

「時間ってのは不思議なもんだなぁ賀来。昔の君は僕の事を可愛い可愛いって言ってくれたじゃないか」

「昔の話はよせ!!」

 そう言って賀来が、バーボングラスをフローリングの上に置いた、その瞬間だった。
結城が賀来の胸の中に飛び込んで来た。「抱いて!!」、高校時代にサッカーで鍛え上げられた逞しい賀来の肉体に抱き着きながら、結城が叫ぶ。
何を、と言う前に、結城は賀来の口を唇で塞いだ。バーボンの味と唾液が混ざり合った物が、互いの口腔を行き交いする。
賀来は既に、股間のものを屹立させていた。口を離した後、賀来が「主よ、私を御裁き下さい……!!」と言うのも聞かず、結城は彼の服を脱がし始めるのだった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 五度に渡る性行為を終えた後、洋室のベッドで一緒に寝ていた賀来に、言葉をかける事無く部屋から退室。
リビングには精液や汗の臭いの混じり合った性臭がなかった。ふぅ、と軽く息を吐くと、結城は、ホームバーを演出するようのカウンターテーブルに近付く。
その上に置いてあった紙タバコを一本吹かそうとした為である。間接照明の照らされている薄暗い部屋の、掛け時計に目線をやった。短針は、もう直深夜の二時を刻もうとしていた。

「汚らわしい男だ」

 誰もいないリビングに、明らかに結城美知夫を嫌悪するような、棘を含んだ女性の声が響き渡る。
結城は、驚くでもなく、冷静に、紙タバコの箱から一本タバコを取り出した。

「人と人とが愛し合う行為を汚らわしいと言うのは失礼だろうよ」

「ロマンティシズムを気取るつもりか、恥知らずが」

 その言葉と同時に、その声の主は姿を現した。
上から下まで白一色の服装をした、黒髪の、内面の気の強さが外面ににじみ出ている、美女だった。
灰色の瞳には声音通りの、結城を蔑むような光が宿っていた。体中から性臭を漂わせるこの男を見て、女性は徹底して不快感しか現していなかった。

「『この部屋を陣地にするのは構わないが、今日まで待って欲しい』。どんな理由があるのかと疑問だったが、見損なったぞ。まさか男同士のセックスの為に、貴重な時間を無駄にするとはな」

「あの男はね、既に死んだ人間なんだよ」

 「何……?」、と、女性は面食らった様な表情をする。シュッ、とライターの火をタバコに近付け、点火した。

「何百万人もの人間が死ぬかもしれない毒ガスを抱いて、空から海へと落っこちた、英雄であり、ぼくの大事な友達(こいびと)だったんだ」

 タバコを吹かし、結城は紫煙をだらしなく吐きだした。

「心底驚いたよ。ぼくがいた世界じゃ過去の人物が、NPCとか言う身分で復活してるなんてね。しかもあの賀来は……ぼくの知ってる賀来と、本当に、よく似てる。生き写しだ」

「元の世界でも、あのような関係だった、と」

「悪いかい?」

 心底気色悪そうな表情を、女性が浮かべた。ケラケラと結城が笑った。

「だから、懐かしく思えてね。ついつい、賀来にちょっかいを出してしまったって訳だ。今日みたいな事はこれで最後にするよ、この部屋は君のラボにでもすればいいよ」

「当たり前だ、これ以上男の喘ぎ声など聞かされるのなら、貴様を殺していた」

「おーこわ」

 タバコを口元に運ぶ途中で、結城が言った。その様子を見て女性は、深い溜息を吐いた。

「貴様のようなマスターに従わねばならないとは、私も運がないな。聖杯戦争、貴様は勝ち抜く気があるのか」

「あるよ」

 女性がそう言った瞬間、結城は、直にタバコを口から離して、そんな事を言った。
彼女は彼の顔を見た。驚く程真面目な表情だった。そしてその顔つきには、常人であれば立ち竦みを起こしかねない程の狂気が彩られていた。

「何でも願いが叶うって言うのならば、ぼくはその願いをある事に使ってみたい」

「その願いとは」

「ぼくを含めた全人類に滅びて欲しい、って所かな」

 鉄面皮と言う言葉がこれ以上となく合致する程、表情が動かなかった女性の顔に、明らかな驚きの反応が刻まれた。

「子供の頃に、それはそれは凶悪な致死性を誇る毒ガスを吸った事があってね。苦しかったよ、本当に。今でも後遺症で、痛みが頻発する程度にはね」

 遡る事、十五年前。いや、今の<新宿>の時間軸で言ったら、それこそ下手したら半世紀以上も昔の話になるだろう。
沖縄周辺にある、本土の人間にすら知られていない程の小島、沖ノ真船島と呼ばれる島に、ヨットで遊びに来ていた時の事。
この小さな島には某国の軍隊が駐留する島と言う側面も有していた。そして、これは国民の殆どに知らされていない事実であったが、この小さな島は、
ベトナムやラオスの人間を無差別に攻撃する為の、ある兵器の貯蔵庫としての側面も有していた。それこそが、『MW』と呼ばれるガス兵器だった。
運命の悪戯か。そのガスがある日、漏れ出した。このガスの致死性は、驚くべきもので、家畜や禽獣、人間に至るまで等しく、島の生き物は死に絶えてしまった。
結城と、当時カラスと呼ばれる非行集団に属していた賀来巌の二名だけが、風上の洞窟の中にいた事で難を逃れた……のであるが。
下手に風下に向かったせいで、子供故に免疫のなかった結城は、ガスの残留を吸ったせいで、大脳や内臓を侵された。

 これが、結城美知夫と賀来巌のいた世界における、MWを巡る大事件の真相だった。
そしてこの時を境に、結城と賀来の、肉体関係が始まった。十歳にも満たない結城の身体に欲情したのは、今は聖職者として振る舞っている賀来の方からだったのだ。

「ぼくはね、もうじき死ぬんだ」

 短くなったタバコを灰皿に突き立てて、結城が言った。

「自分の身体の事だから、よく解るよ。後一ヶ月……いや、事によっては、一週間持たないかも知れない。MWはそれ程凶悪なガスだったんだ。兎に角、ぼくに残された時間は短すぎる」

「ならば、聖杯でお前の病気を治せばいいじゃないか」

「賀来のいない世界何て、つまらないだけだよ」

 真直な表情で、結城が言った。瞳に、狂気以外の、並々ならぬ執念が渦巻いている。
結城は、思い出していた。全人類に無理心中を強要させる為の足掛かりである、MW数kgを抱えて、小型飛行機に乗り込んだ時の事だ。
賀来は、結城にこれ以上悪事を重ねさせない為に、彼が持っていたMWを奪い取り、外へ逃げる為の非常口を開け、其処から太平洋に飛び込んだのだ。高度、数千m程の高さだった。

 ――結城!! 勝ったぞ、これで救われるぞ!!――

 追いすがる結城の頬を平手打ちにし、賀来は迷う事無く眼下の大海原へと飛び込み、MWごと散った。その時の事を、結城は思い出す。
彼は最後の最後まで、結城美知夫を救おうとしたのだ。彼に悪行を止めて貰いたかったのだ。
自分の若き過ちで、道を踏み外してしまった男を……神父の終生の友人でもあった男を、賀来は最期の瞬間まで見捨てる事がなかった。
海に散った賀来を見て、結城は、十何年かぶりに、涙を流した。体育座りをし、子供のように泣いていた。己の半身を失った様な喪失感。結城の心は、その日以降から、満たされぬ空虚で出来てしまっていた。

 自分を止めるべく国の警察機関の要請で戦闘機に乗り込んでいた、自分の双子の兄になりすまして司法の手から逃れた結城は、ふと、昔賀来が神父を務めていた、
地方の教会に足を運んだのだ。生前も悪事を重ねに重ねた時、結城は、彼の教会を隠れ家にして過ごしていた。
賀来の古い友人と司祭に説明し、賀来の私室に案内された時、奇妙な群青色の鍵を発見したのだ。不思議に思いそれを手に取ると――結城は、この<新宿>にやって来ていた。

 この世界の賀来は、確かに結城美知夫のよく知る賀来巌そのものだろう。
しかし、所詮はNPC。彼に問い質してみた事があったのだが、この世界の賀来はMWの事を知らない。彼が結城と今のような関係になったのは、もっと別の理由かららしい。
結城と賀来を結びつける絆は、このMWであった。MWを知らない賀来など、賀来ではない。だから結城にしてみれば、この世界の賀来など、よく出来た偽物以外の何物でもないのだ。だからこんな世界も、つまらない。

「なあ、キャスター。人が人生を楽しむ上で、最も重要な前提条件が何だか解るかい」

 キャスターと呼ばれた女性は、無言だった。数秒の沈黙の後、結城はその答えを言葉にするべく、口を開いた。

「『生きている』、って事だろ? 生きてなきゃ人生を楽しむ事も、クソだなんだと不満を漏らす事も出来やしない。近い内死んじゃうって絶対解ってる人間が、人生を楽しめる訳がない」

「何が言いたい」

 結城の口の端が、吊り上った。
きっとこの世に悪魔がいるのなら……、それは、彼の事を言うのかも知れないと錯覚せずにはいられない、邪悪な笑み。

「ぼくは聖杯にね、全人類に苦しんで死んで貰うよう願うんだよ。アッハハハ、死んじゃったらぼくにとって地球に用がある訳ないだろ? だから、全人類にはぼくの死に付き合って貰うのさ」

 道化のようにオーバーに手を広げて見せて、結城は語る、騙る。

「面白いだろう!! 長く続いた人類の歴史が、ぼくの手で幕が降りちゃうんだ。こんな面白い事、あるかいキャスター!!」

 凡そ、最低にして最悪の無理心中だった。自分の余命が短いから、それに付き合って全ての人間にも死んで貰う。
その願いを叶えるのが、よりにもよって聖遺物中の聖遺物である、聖杯と来ている。ああ、これ以上の悪徳があろうものか!!
そして、見よ。結城美知夫の、最低最悪の願いを聞いた、キャスターと言われた女性の浮かべた笑みを!! 実に愉快である、とでも言いたそうな笑みを浮かべて、彼女は結城の事を見つめていた!!

「成程、この私が呼ばれるだけの思想は持っていたようだ」

「フフ、当たり前だろう。ぼく達は性癖や趣向こそ違えど、聖杯に願いたい事柄は本質的には全く同じなのさ」

 ジッ、と。キャスターの事を射抜く様に真っ直ぐに見つめて、結城は口を開いた。

「初めてあの鍵から導かれた君を見て、思ったよ。こいつは、ぼくと同じ。世界に意味なんて全く見いだせていないって事にさ」

「人類の歴史などとうの昔に終わっていた。続くだけ無駄だ。地球が死んでも生き続ける、愚かな寄生虫。私が引導を渡してやりたいだけの事さ」

「ほーらみろ、やっぱりぼくと君は同じだ。だからさ、喧嘩なんてやめようぜ。賀来とは今後二度と会わない。だから気を直してくれキャスター。……いや――」

 結城美知夫は、言葉を言い直した。クラス名ではない。キャスターと名乗る妙齢の女性の、真なる名を口にするべく。

「『ジェナ・エンジェル』だっけ? 皮肉だねぇ。世界に破滅を齎す人間の名前が、まさか天使だなんてさ」

 口の端を、今度は、ジェナと呼ばれた女性が釣り上げた。美しくも、これ以上となく残酷で……そして、悪魔的な邪悪さに満ちた笑みであった。

「人類のまどろみを破る鐘を鳴らしてやるだけさ」

 「詩的な表現だなぁ」、と結城は茶化して見せた。
窓の外に広がる<新宿>の夜景は、未だ眠る事無く続いている。世界が永久の微睡に落ちるだろう最後の日は、着実に近付いていた。






【クラス】

キャスター

【真名】

ジェナ・エンジェル@DIGITAL DEVIL SAGA アバタールチューナー

【ステータス】

筋力C 耐久D 敏捷C 魔力B 幸運D 宝具A+

(ハリハラ時)
筋力A 耐久B 敏捷B 魔力A 幸運D

【属性】

混沌・悪

【クラススキル】

陣地作成:D
自らに有利な陣地を作り上げる技能。キャスターは自らの宝具を生み出す為の研究室の形成が可能。

道具作成:-
後述する宝具しか作成しえない。

【保有スキル】

破滅主義者:A
過去の出来事から、キャスターは人類は当に滅ぶべき存在であったと固く信じている。同ランクの精神耐性を保証するスキル。

飢餓:A+
抗い難い生物の本能。栄養素を摂取出来ない事による苦しみ。
キャスターを常に苦しませる生理現象であり、このランクの飢餓を発症させると、ステータス向上効果のない同ランクの狂化を獲得。
更に、後述する宝具を暴走させてしまう。完全なるデメリットスキルの上に、如何なる手段を以っても外す事は出来ない。

喰奴:A
『喰』らうと言う行為の『奴』隷。それがキャスターである。
魂喰いによる魔力摂取量の向上、及び日常的な食事からすらも魔力を獲得できるようになるスキル。

魔術:-(宝具発動時:A+ 宝具暴走時:D)
人間形態時には魔術を行えないが、宝具を発動した際には魔術を使用可能となる。
全ての魔術が一工程或いは一小節で発動する事が出来、その威力と効果も非常に高い。が、宝具を暴走させた場合には大幅にランクが低下。
正確な狙いが困難になり命中精度が下がる。

両性具有:B
キャスターは機能する卵巣と精巣の両方を併せ持ったエイセクシュアルである。過去にこの二つの機能を用いて子供も作っている。

星の開拓者:B
人類史においてターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。あらゆる難航、難行が“不可能なまま”、“実現可能な出来事”になる。
人間を生きたまま石化させる奇病、ギュヴィエ症候群の原因を太陽光にある事を突き止め、後述の宝具を太陽光の情報から作成する事に成功した。

カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。

【宝具】

『災禍の大渦(アートマ・メイルシュトロウム)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:自身 最大補足:自身
キャスターの胸部に刻まれた、アートマと呼ばれる痣が宝具となったもの。此処に力を込める事で、キャスターはハリハラと呼ばれる悪魔に変身が可能となる。
神話上ハリハラは、ヴィシュヌとシヴァが合体した最上位の神霊であるが、キャスターの変身するこの悪魔はその神霊とは直接的な関係はない。
彼女に限らず、アートマに覚醒した人間が変身する悪魔と言うものは、神格や魔性を有する本物の超常存在ではなく、どちらかと言えば、 それらと同じ名前と姿を持ち、かつ、それらに肉薄する身体能力と超常的な力の一端を振るう事が出来る『怪物(ミュータント)』に、その在り方は近い。

 ハリハラに変身する事で、キャスターのステータスは、ハリハラ変身時に対応したものに修正される。
これにより戦闘能力の格段の向上や、高い威力と精度の魔術の使用が可能となり、三騎士に匹敵する程の力を得る。
変身時に掛かる魔力も、変身を維持するのに必要な魔力も低い燃費の良い宝具。
但しそれは『飢餓スキルを暴走』させなかった時の話で、キャスターを含めた全てのアートマ覚醒者は、常に生体マグネタイトに餓えている状態を発症しており、
生体マグネタイトを経口摂取し取り込まない限り、この飢えは満たされる事がなくなる。
飢餓状態を暴走させると、消費魔力量がAランク相当の狂化持ちバーサーカーのそれへと跳ね上がり、魔術のスキルランクの大幅低下の発生。
更に敵味方問わず、その場にいる者を襲い、それらに喰らい掛かり、飢餓を抑えようとする本能が働く。
飢餓を抑えるには兎に角NPCやマスター、サーヴァントを喰らって生体マグネタイトを摂取すれば良いのだが、これを摂取し過ぎると、
ハリハラの本来の人格が『消滅』、それに代わって、神話上の『ハリハラ』の人格が彼の性格に成り代わり、マスターの命令を一切受け付けなくなる。
飢餓状態のデメリットは、『宝具を発動させている状態限定で発動する訳ではなく』、人間の時の状態、つまり、常に発動している。
つまり、霊体化している最中でも飢餓を発生させてしまえば、キャスターはハリハラへと変身し、その場で暴走してしまうと言う可能性を孕んでいる。

 仮初の煉獄、ジャンクヤードで、エンブリオンの者達に見せた、最終形態は使用不可能となっている。

『悪魔化ウィルス』
ランク:EX 種別:悪魔化宝具 レンジ:- 最大補足:-
生前キャスターが作成した、人間を悪魔化させるウィルスが宝具となったもの。キャスターはこれを陣地内で作成出来る。
このウィルスを取り込んだ人間は、身体の何処かにアートマと言うシンボルめいた痣が刻まれ、其処に力を込める事で悪魔に変身する事が可能なチューナーになれる。
悪魔に変身しても元に戻れないと言う訳ではなく、変身は可逆的な物で、悪魔から人間に戻る事も可能。
チューナーになった人間は、人間の状態でも凄まじい身体能力を発揮出来るだけでなく、悪魔に変身する事で、それを凌駕する身体能力と、魔術の数々を行使可能。
どのような悪魔になれるのかと言うのはキャスターを以ってしても予測不可能で、全く弱い悪魔になる事もあれば、
サーヴァントと互角以上に渡り合える強壮な悪魔になる事もあり、完全なアトランダム。
但し、このウィルスを取り込んだ人間は、上記の宝具、『災禍の大渦』と同じデメリットを孕んでしまう。これには例外がなく、必ずそのリスクを負う。

【weapon】

【人物背景】

カルマ協会技術部門総責任者。地球が荒廃する以前国際環境保険機構に属していた頃から天才と謳われ、太陽光に含まれる情報が与える地球環境への影響に警鐘を鳴らしていた。
太陽光に含まれる情報異常の影響で、先天的両性具有者になってしまう。物語のヒロインであるセラの遺伝的な両親。
神と交信する為のEGG施設で起った、人間が突如悪魔化し、施設内の人間の大多数を食い殺すと言う惨劇の後、悪魔化ウィルスを開発。
悪魔化ウィルスに感染した人間は、太陽光が含む、生きたまま人間を石化させる奇病、キュヴィエ症候群に耐性を持つ事が解っており、
これを利用し、表向きカルマ協会の長でありマルコ・キュヴィエの、『世界のエリートを悪魔化させ、残りの人間をその悪魔達の餌にする』と言う思想に尽くすふりをする。
しかし実際には、エンジェルの本当の目的は、世界を混沌と破滅の世界に導く事である。
過去に、キュヴィエ症候群の患者が収容されていた病院をテロリストに襲撃され、その事故の際に思い人のデイビッドを殺され、愚かな人間に復讐を誓った為である。

今回のエンジェルは、全ての蟠りが解決する前の時間軸からの参戦である。

【サーヴァントとしての願い】

全人類の滅亡




【マスター】

結城美知夫@MW

【マスターとしての願い】

全人類と無理心中

【weapon】

【能力・技能】

変声術・変装術:
結城は、人気歌舞伎俳優の双子の兄を持つ男で、彼に似た、女性寄りの美しさを持つ男。
結城は女装や変装、声を変える技術に天性の才能を持っており、少し化粧をし、服を変えるだけで、全く結城だと気付かれない程の変装術を持っている。
特に変声術の腕前は驚く程の物で、真似た声の人物と親しい者すらも騙し通せるだけでなく、女性の声も完全に模倣できる程。
<新宿>にやって来る前は、この技術を以て様々な悪事を働き、そして多くの人間を殺して来た。

【人物背景】

手塚治虫原作の漫画、MWの主人公。幼少の頃に足を運んでいた沖縄周辺の小さな島、沖ノ真船島に貯蔵されていた毒ガス兵器、MWが漏れ出てしまう大事件に巻き込まれ、
大脳を初めとした体中を毒で蝕まれてしまう。毒ガスの影響で大脳をやられてしまい、知能の発展にこそ異常はないが、倫理感やモラルが大幅に欠如してしまう。
また、同島にやって来ていた非行集団・カラスの一員であった賀来巌と身体を重ねてしまい、性嗜好も変化。バイセクシャルになってしまう。
その後、優れた顔立ちと知能を以て、関都銀行の新宿支店に勤めるエリート銀行員になるまで成長するが、彼はMWを手に入れ、
それを悪用したいと言う野望に駆られるようになる。以降、MWによって死んだ沖ノ真船島の住民の死に顔がトラウマになり、聖職者になってしまった賀来を脅し、MWを手に入れようと画策、作中で様々な悪事を運ぶ事になる。

 性格は最低最悪を地で行く男で、作中多くの人物が、結城の手にかかり殺されて来た。兎に角、良心や倫理観が欠片も無い、最悪の破滅主義者。
人を殺す事や同性とSEXする事に全く躊躇いがなく、男を含めた作中登場人物の多くと肉体的な繋がりを持っていた程。
そんな男の唯一の心の支えであり、友として依存して来たのが、賀来巌と言う男なのだった。

本編終了後の時間軸から参戦。

【方針】

キャスターと共に人類に引導を渡す。



時系列順


投下順



Character name Next→
結城美知夫 全ての人の魂の夜想曲
キャスター(ジェナ・エンジェル)