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魔界都市〈新宿〉という街には死が溢れていた。
道を歩くだけで、跋扈する人殺しも辞さない路上強盗や、抵抗されれば殺人に容易に至る性犯罪者に遭遇する─────この程度ならまだ命が助かる目が有るだけマシな方。
生贄を求める邪教徒、実験用の素体を求める狂科学者、人肉嗜好症の食人鬼に殺人淫楽症の狂人、寄生妖物や悪霊に操られた即席殺人鬼、購入した兵器や人体強化薬や変身薬、妖虫妖物、パワード・スーツやサイボーグ手術等の威力を試す相手を求める暴力人間etc…が襲ってくる。
それらに遭遇せずとも、飛行妖物や双頭犬といった妖物や、地下に縦横無尽に張り巡らせた通路を用い、地上の人間を前触れ無く連れ去る地底人、脳に寄生して人間を自分の餌や、餌の収集役に変える寄生妖物等が命を脅かし。
それらの危険生物を避けても、天空からの謎の落下物に潰されて死んだり、空間の歪みに呑まれてそれっきり。という事も有る。



今現在、聖杯戦争が行われている〈新宿〉には、それらの死が一切『無かった』。聖杯戦争が始まるまでは。
聖杯戦争は〈亀裂〉以外は平凡な街を、死産に終わった“魔界都市”を、再び現世に産み落とさんとする行為なのかも知れなかった。


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あれから正午になろうとしていた。


〈新宿〉中の動物から齎される情報で、その後の聖杯戦争の展開を把握していたパスカルは、〈亀裂〉を除いては平穏な街だった〈新宿〉が、彼が生前駆けた神魔の戦場に近づいていく事を、睦月の家に居ながらにして把握していた。
尤も所詮は小動物。パスカルがまともに理解出来たのは、瞬間移動を駆使し虚空から無数の剣を飛ばす青コートの剣士と、虹を操る少女、剣や槍を振るい魔術を行使する青年、爪を飛ばす騎手、高熱を纏う鋼の鬼。そして黒贄礼太郎の常軌を逸した身体能力と不死身ぶり。
これ以外は皆目見当が付かない。例えば青年を一蹴したサーヴァントなどは、見ていた筈の鳥も獣も唯々恍惚としているだけ、恐らくは強力な魅了を使うのだろうがそれ位しか判らない。
南元町で戦ったであろうサーヴァントに至っては豪雨により確認不能。
戦っていたところを動物達が見たサーヴァント達の大雑把な姿形は理解出来たが、ステータスも戦い方も不明だった。それでも何も無いよりかはマシだろうし、
青年のマスターを除いて、マスターの姿も把握した。これで不意を衝くも逃げるも自在。確認した者達に対しては充分なイニシアチブを確立できた。
居ながらにしてパスカルは充分な戦果を得たといって良い。
更にパスカルは知らなかったが、青年のマスターについての情報が無いのは幸いだった。同じ艦娘の北上が聖杯戦争に関係していて、しかもいきなり行方不明と睦月が知っては、睦月は更なる精神的な重みに苦しんだだろう。
その後の報告で、メフィスト病院に青年とそのマスターと思しき片腕を失った少女が現れたそうだから、結局のところ死んではいないが。


─────ソロソロ動クカ。

パスカルはあの後公園での戦いに居合わせた動物達に、『蝿の王のマスターと同じ服を着た人間が多く集まる場所を探せ』と命じて街に放っていた。
パスカルは刹那が制服を着ていた事に気付いていた。あの闘争は蝿の王とそのマスターにとっては恐らくは遭遇戦。最初から戦う気だったのなら、身元がバレる様な格好でやってくるとは思えない。
パスカルは蝿の王のマスターの通う学校を突き止めその行動を監視、隙を見てマスターを殺害することで、確実に蝿の王を葬るつもりでいた。
生前に二度戦い、その強大さを身に刻んでいる蝿の王。七大罪の一つ“暴食”を司り冥府を統べる、聖四文字により天より堕とされた神々の王。
そんな代物が聖杯への途上に居るのだ。原因は不明だが、存在が著しく矮化している今のうちに葬るのが最善というもの。
マスターを葬るという手段を用いるのは、冥府の番犬たる己が死者を呼び戻せる宝具を持つ様に、冥府を統べる蝿の王もまた、蘇生に関する宝具を持つかも知れぬと思ったからだ。
直接に蝿の王マスターを探させず、同じ服を着た者を探させたのは、直接にマスターを捜索・監視させると、聡い蝿の王に気付かれるからだ。
パスカルはあの蝿の王を決して侮ってはいない。いくら弱小化していても、魔界の副王は伊達では無い。
宝具が実質使えないパスカルにとって、動物会話スキルは切り札と言えるもの。その存在は確実に秘さねばならぬ。漏出のリスクは極小であっても避けるべきだろう。

結果としてかなり時間がかかったが、パスカルは蝿の王のマスターが通う学校を発見。後は適当な場所でマスター暗殺の機会を伺うだけだった。
パスカルには蝿の王と雌雄を決するつもりは無い。パスカルの姿は兎に角目立つ、あの難敵を相手に闘えば人目に触れるのは確実。パスカルの姿は宝具に等しいレベルでその正体を叫んでいるに等しい。
悪魔に関わりの有るマスターが居れば己の姿から正体を割り出すのは容易だろう、まして英霊ともなれば。
聖杯に至るまでに戦う者達の実力を認めるが故に、パスカルは確実さと隠匿の為に、暗殺という手段を用いる理由が有るのだ。
そしてパスカルはこの理由の為に、人目が有る時間帯は戦うことを避けねばならなかった。


此処で問題になるのは睦月だった。初戦で大きく心を痛めてしまった睦月を伴うのか、それとも置いていくのか。
妥当な線で考えれば、拠点がバレていない以上、自分がここを離れれば睦月が捕捉される可能性は極めて低い。
第一パスカルの方針はマスターの暗殺、睦月の方針に反している。

─────逃避シテイルナ。

パスカルは苦笑する。蝿の王を追い、睦月の事を気に掛ける。これを逃避と言わずして何と言う?
既に青コートの男と、蝿の王と、鋼の英雄との三つ巴の魔戦に於いて、鋼の英雄のマスター、パスカルが児童公園にて刹那の間目視した青年姿を動物達が視認し、報告を受けている。
あの多彩な戦技と熟練の戦歴とを併せ持つ蝿の王と、燃え盛る剣を以って渡りあったという青年。
パスカルが見たその姿とを併せて考えれば、ザ・ヒーロー、神魔の争闘する黙示録の世を戦い抜いたフツオに他ならない。
パスカルは聖杯に対して強い憤りを抱いた。

─────何故俺ヲフツオノモトニオクラナカッタ。

楯突いたものの願いは叶え無いというのか。
俺がフツオと殺しあうところを見たいのか。

─────フツオノ戦イヲ終ワラセズ、更ナル戦イヲ行ワセルノハ、逆ラッタモノニ安息ヲ与エヌトイウ意思カ。

聖杯に対して憤るのに比例して、パスカルのフツオへの思いは強まる。
時と場所を変えても闘争を強いられる主の力になりたかった。
だが、パスカルはフツオの捜索を命じなかったし、自分で探そうともしなかった。
命じたのは蝿の王のマスター捜索。

睦月による令呪の縛りがなければ、パスカルは即座に主を探しただろう。そうしていれば、パスカルはザ・ヒーローと共に戦い、結果として蝿の王と青コートの剣士を脱落させられたかも知れぬ。
だが、パスカルは束縛され、自由になるまでの間、行動では無く思考に時を費やした。
思考をするのは悪では無い。確実な行動の為には、確実な思考は欠かせない。
だが、この時は思考を後にして行動するべきだった。

─────フツオハ無力ナ少女ヲ躊躇ワズニ殺セルヨウナ人間ダッタカ?

パスカルの覚えているフツオは優しい青年だった。だが、出来ないかと問われればパスカルは否と返す。
人の世では無くなった時代と、人では無いものに為る事を強いた運命は、フツオから“人”を刈り取った。
フツオが聖杯を求めるのなら、女子供も斬り捨てるだろう。心の中で悼みながら。


─────フツオハ聖杯ヲ欲シテイル。

パスカルがフツオに会うことを躊躇う理由。もし聖杯を求めるフツオが己も敵と見做してきたら?
己はフツオに牙を剥けるのか?睦月を護ってフツオを斃すのか?
思考は堂々巡りを続け、答えは出ない。
運命は彼らに安息を齎す意志は全くと言って良い程に無いらしかった。

パスカルは思考の海を揺蕩っていた。ある気配─────生前では存在することがごく当たり前だった程に慣れた気配を感じるまでは。

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山吹町の路地裏に其奴は居た。原型を留めない人体が散乱した中に立ち尽くす中学生位の少年は、傍目には惨劇の場に遭遇して心神喪失状態になっただけの様に見える。
だが気配を辿ってやってきたパスカルは感じていた。あの黙示録の世界を覆っていたものと同じ空気を。

─────何奴ダ?

霊体化したまま様子を伺うパスカルの前で、ソレは起きた。

「ああ…ダメだ。全然たりねぇ……いや、喰えるものはそこいら中にある…………」

少年の身体が変わる。全身に緑色に光る筋が走り、少年は人ならざるものへと変わる。

パスカルはこの地が生前彼が主と共に駆けた神魔の戦場と錯覚した。
今やパスカル前に居るのは、人間では無い。パスカルに劣らぬ体躯を持つ、純白の身体の巨虎はまさしく……。

─────ビャッコ!?

地の四方のうち西方を守護する獣。それが何故ここに?あの少年は間違い無くNPCだった。それが悪魔に変わるとすれば。サーヴァントの仕業でしかあり得ない。
そしてパスカルには、こんな芸当が出来そうな手合いに心当たりがあった。

─────貴様カ!蝿の王!?

だとすればあの脆弱はこの事に力を割いていたが故か?
兎も角、周囲のNPCを襲う気でいるこの獣は放置してはおけなかった。

「オオオオオオオオオ!!!」

パスカルは霊体化を解き、猛速でビャッコの後ろから体当たりを見舞い、その巨体を宙に舞わせ、空中で動きの取れなくなった巨虎に、収束させた膨大な魔力を灼熱の火線として撃ち放つ。

「GYAAAAGAAAAA!!!」

10mの距離を瞬きよりも短い時間で飛んだ聖獣は、迫る焼滅の火線を、空中で身を捻って確認して避けようとするそぶりも見せずに咆哮。眼前に展開した水の壁が凄まじい蒸気を噴き上げながら火線を相殺する。
間髪入れず、立ち込める高熱の蒸気を貫いて、巨虎がパスカルに迫る速度で猛襲、これをパスカルは敢えて避けず正面から受け止めた。
大気が震え、大地が揺れる。暴走する大型車両衝突にも等しいビャッコの体当たりを受けたパスカルはの足元の路面が砕けるが、パスカルは聳え立つ巌の如く不動。
続けて振るわれた装甲車すら切り裂く爪撃を自身も右前脚を振るって迎撃。ビャッコの爪は愚か、前脚ごと砕いてのけた。

「GYAIAAAAAAA!!!!」

爆発音を思わせる咆哮と共に一気に5mも飛びすさった巨虎は、大きく口を開ける。その口腔に溜まる白い輝き、周囲に残っていた高温の水蒸気が一気に冷やされ結露して、路面や周囲の塀を濡らす。
上下に並んだ、鋼すら噛み裂けそうな牙の間から放たれるのは、凍滅の閃光。白く輝くアイスブレスは、その余波だけで周囲を濡らす水を氷結させて、パスカルへと音の速度で奔る。
白い輝光に挑むは、赫の閃光。音すらはるかに超える速度で飛ぶ鋼すら瞬時に気化する高熱の火線が白光を貫き霧散させ、再度出現した水の壁も、間断なく押し寄せる赫により遂に貫かれ、壁の後ろに居たビャッコを貫いた。

悲鳴すら上げる事無く、ビャッコは跡形残らず蒸発した。

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睦月の待つ家への帰路でパスカルは思考する。

─────アレハマガイモノナドデハ無イ。

あの速度、あの筋力、己のファイアブレスを一度は防いだ水の壁。全てがパスカルの知るビャッコのそれに近い。
全く同じ─────という訳では無いが、そうパスカルが思う程に、アレは“ビャッコそのもの”だった。

─────NPCヲ悪魔二変エテ、何ヲ目論ム。

決まっている。圧倒的な数の暴力による蹂躙だ。

─────サセヌゾ、蝿ノ王。

パスカルは決意を固める。睦月が聖杯に掛ける願いの為に。未だ邂逅せぬフツオの為に。生前と死後の主の為に。必ずあのランサー、蝿の王を葬り去ると。



魔界都市〈新宿〉という街には死が溢れていた。
獣に変身した男が、妖物に憑依され全身が奇怪な変貌を遂げた女が、遠い先祖から受け継がれてきた妖魔の遺伝子が〈新宿〉の妖気により覚醒した子供が、手術で妖獣と細胞レベルで融合し、人を超えた異形の肉体を得た老人が人混みに混ざり。
尽きぬ怨念を抱いて死んだ者達の怨霊や、魔導師により召喚された奇怪な“神”や、空間の歪みによりやってきた異界の様物が廃墟に巣食い。
新型の殺人ウィルスを植え付けられ、一山幾らで買える〈区外〉には存在しない狂猛にして凶悪な毒を持つ虫にやられ、ビルを容易く貫く熱線に灰も残さず消し飛ばされ、拳銃弾サイズの小型核弾頭の残留放射能に血反吐を吐いて倒れ。

これらの死は、嘗ての〈新宿〉、〈亀裂〉を除けば、人界に幾らでも有る平凡な街、死産に終わった魔界都市には存在しなかった。
しかし、今では、〈新宿〉にこれらの死が溢れつつある。
この聖杯戦争は、関わった者達の意図とは関係無く、新たな“魔界都市”を人の世に産み出そうとしていた。
街路を征くケルベロスもまた、実体化していれば“魔界都市”を彩るに相応しい存在だった。



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パスカルが出て行った家の中、睦月は驚愕に震えていた。
突如光だした契約者の鍵、映し出されていたのは、今朝、凶刃を振りかざして自分の命を奪おうとした男だった。
しかし睦月の意識を捉えたものは、ザ・ヒーローでは無かった。

「放射線……?」

初めて聞くが、どこか嫌な響きの言葉だった。睦月や如月が必死に護り抜いたものを、穢し傷付けられたかの様な、そんな響きの言葉だった。
その感覚が何なのか、睦月一人では答えは見出せそうに無かった。






【早稲田、神楽坂方面(山吹町・睦月の家)/1日目 午前12:30分】

【睦月@艦隊これくしょん(アニメ版)】
[状態]健康、魔力消費(中)、精神疲労
[令呪]残り二画
[契約者の鍵]有
[装備]鎮守府時代の制服
[道具]
[所持金]学生相応のそれ
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れる……?
0.……
1.如月を復活させたい。でもその為に人を殺すのは……
2.出来るのならば、パスカルにはサーヴァントだけを倒してほしい
3.この男の人…!?
4.放射線…?
[備考]
桜咲刹那がランサー(高城絶斗)のマスターであると認識しました
ザ・ヒーローがバーサーカー(クリストファー・ヴァルゼライド)のマスターであると認識しました。
パスカルの動物会話スキルを利用し、<新宿>中に動物のネットワークを形成してします。誰が参加者なのかの理解と把握は、後続の書き手様にお任せ致します
遠坂凛の主従とセリュー・ユビキタスの主従が聖杯戦争の参加者だと理解しました
ザ・ヒーロー及びクリストファー・ヴァルぜライドに対する討伐令を知りました。


【早稲田、神楽坂方面(山吹町・睦月の家の近所)/1日目 午前12:30分】


【ビースト(パスカル)@真・女神転生】
[状態]霊体化
[装備]獣毛、爪、牙
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯の獲得
1.ザ・ヒーローの蘇生
2.蝿の王が戦力を揃える前に殺す
3.フツオと遭遇したらどうするか……
[備考]
ランサー(高城絶斗)、バーサーカー(クリストファー・ヴァルゼライド)と交戦。桜咲刹那をマスターと認識しました
ランサーが高い確率で、ベルゼブブに縁があるサーヴァントだと見抜きました
戦闘中に行ったバインドボイスは、結構広範囲に広がってたようです。
ザ・ヒーローのことはちらっとしか見てません。なので自分の知る主と同一人物なのか確信に至っていませんでしたが、その後の情報でフツオとほぼ確信しました。
ある聖杯戦争の参加者の女(ジェナ・エンジェル)の手によるチューナー(ビャッコ)と交戦、<新宿>にNPCを悪魔に変える存在が居ると認識しました
NPCを悪魔化させているのがランサー(高城絶斗)と推測し、彼の弱体化をNPCを悪魔化させている為と推測しました。
桜咲刹那の通う学校を把握、現在は桜咲刹那の拠点を探っています。
桜咲刹那を殺害し、ランサー(高城絶斗)を確実に葬り去ると決意しました。
雪村あかり&アーチャー(バージル)・ジョセフ・ジョースター&アーチャージョニィ)・北上&モデルマン(アレックス)・ロベルタ&バーサーカー(高槻涼)・英純恋子&アサシン(レイン・ポゥ) の大まかな姿と各サーヴァントの大雑把な戦い方を『動物会話』スキルにより把握しました
北上が右腕を失い、メフィスト病院に行ったことは把握していますが、北上が艦娘とは知りません
『動物会話』スキルにより黑贄礼太郎の不死身さと身体能力を知りました
人目に付く時間帯は戦いを避ける方針です



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13:DoomsDay 睦月
ビースト(ケルベロス)