☆ライダー

  朝日が登る。
  ガラスが光を反射してきらきらと輝く。
  世界に光が満ちる。
  ライダーは、朝が大好きだった。
  胸に吸い込む空気が大好きだった。
  キラキラ輝く色々なものが大好きだった。
  朝の空気を胸いっぱいに吸い込み、居てもたっても居られなくなって。
  ランプから遠く、遠く離れて、空へ空へと舞い上がる。
  朝が始まっている。
  人が起きだして、煙が上がりだす。
  色んな音が流れだす。色んな色で街が染まる。
  こんな世界を知らずに死ぬ生涯があったのかもしれないと思うと、やっぱり、少し、不思議だった。
  ライダーは人間はよくわからないが、きらきらと輝く世界は大好きだった。
  だから、こういうきれいな景色を見るたびに、魔法少女になれたことを嬉しく思った。

  生活があふれ始めた街の向こう、鬱蒼と生い茂るビルの森のもっと遠くに目を向けると、地面と地面を切り分ける溝がある。
  溝は光を飲み込んで底知れぬ黒に変えている。どれほど深ければあんなに黒い溝ができるのか、ライダーは知らない。
  あの溝はなんなんだろう、というのが最近のライダーの謎だった。
  あんな溝はライダーの知ってる世界にはなかった。
  あの溝の中には何があるのか、というのを考えていて、一日時間が経ってしまっていたこともあった。
  少し前にマスターと一緒に溝の近くまで行って溝を見せてもらった。全く意味がわからなかった。
  でも、もう一回見てみたい。
  もう少し近づいてみてみたい。
  もう少しならいいだろう。
  ちょっとだけ、ちょっとだけと溝の方に揺られて飛んでいると。

『メイ』

  頭のなかに声が飛んできた。
  メイ、というのはライダーの真名だ。それを知っているのは、たぶん、今は1人しか居ない。
  ライダーはするすると泳ぐように空から地上に向かって降りて行き、今しがた目を覚ましたばかりであろうその人に声をかけた。

「ただいま、おはよう、ウェディン」

  ライダーが空に上るまでは木陰で寝ていた男―――たしかウェディン、は立ち上がり、降りてきたライダーにつま先立ちで器用に歩み寄って顔を近づけた。
  鼻息が少し生温かくて、むずむずする。でもライダーはそういう時に人間がどんな表情をするのかがよくわからないから、笑っておいた。

「飯を食いに行く」

  ウェディンは気にせずそうぼそりぼそりと呟くと、そのままするすると歩き出した。
  独特な歩き方は、遠目に見ても分かりやすい。ライダーはマスターのその歩き方がわりと好きだった。
  人間を覚えるのは難しい。人間には別の人間が服や顔なんかで見分けが付く、というのがライダーには未だに信じられない。
  ライダーは服や顔を見てもさっぱりわからないし、名前もさっぱりわからないから、他の人達が何者なのかがだいたい分からず生きてきた。
  でも、動きは違う。動きの優劣や癖なんかはライダーでもひと目で分かる。だからライダーは、人混みの中でもマスターを見失わない自信があった。
  ただ1つ気になっている点はあった。それは名前を呼んだのに返事が無かったことだ。
  名前、当たってたんだろうか。確か、当たっていたら答えてくれたはず。
  もしかしたら違っていたかもなあと思いながら、ライダーはふよふよとウェディンらしき人の後を追った。


  ウェディンらしき人は、特に住処を決めていない。
  日がな一日ぼーっとしていることが多い。ライダーと似ている。
  なにかを考えているのかもしれないし、なにも考えてないのかもしれない。
  ふらりふらりと街をぶらつくこともある、木陰で寝てることもある。そんな風に、毎日自由気ままに生きていた。
  ライダーの知っている人間とはまったく違う生き方だったが、ライダーからすればとても合理的な生き方だった。
  ライダーの見てきた人間は、とにかくよく分からないことばかりだった。
  キャプテン・グレースはいつも細かいことを注意してきて、好きじゃない人と『仕事』をして、仕事のたびに変な顔をしていた。
  ファニートリックはいつも怒っていて、でも時々泣いていて、忙しそうだった。
  人間はご飯を食べるために食事以外の仕事というものをしなきゃいけないし、仕事というものをするにはやりたくないこと・嫌なことをしなきゃいけないらしい。
  ライダーにはそんな人間の習性が理解できなかった。
  だから、そういう人間としての習性から大きく外れたウェディンらしき人は、ライダーにとってとても気のおけない相手だった。

「レイン・ポゥ」

  ライダーがウェディン改めレイン・ポゥに呼びかける。
  さっき名前を読んだ時に返事が帰ってこなかったのは、たぶん名前が間違っているからだと判断した。
  レイン・ポゥはがつがつと食事を続けている。
  今日の食事は、見たこともない色とりどりの食べ物だった。
  ライダーはレイン・ポゥに呼び出されて、赤や緑の色をした食べられるものがあるのを初めて知った。
  魔法少女は基本的に食事をしないので、ライダーが見たことあるのは変身する前に食べていたものだけだ。
  いい匂いがしているから、食べ物なんだろうけど。茶色い固形フードか黒っぽい草みたいなものくらいしか食べてこなかったライダーからすればレイン・ポゥが食べているものはなんだって不思議がいっぱい詰まっていた。
  色とりどりのものを食べ終わったレイン・ポゥは側にある紙のコップを手に取り、ぐびぐびと中身の黒い水を飲み干す。
  腐った水は緑色だ。淀んでいるし臭いもひどい。だが、その黒い水は透き通っているし、ぱちぱち弾けるような匂いがしている。
  あの水はどこにあるんだろう。海や河であんな水が取れる場所があるんだろうか。
  でも、幾ら透き通っていても臭くなくても、あの水の中では暮らしたくないというのがライダーの素直な感想だ。

「レイン・ポゥ、その水、美味しい?」

「メイ」

「なに」

「どこか行きたい場所はあるか」

「レイン・ポゥは?」

  返事はこない。
  三回繰り返して返事がないってことはたぶん、名前が間違っているのだろう。

「メイは、あの溝が気になる」

「そうか」

  レイン・ポゥらしき人は席をたってお盆をゴミ箱の方に運んだ。
  今日はやることがあるのかどうかわからないけど、またあの黒い場所を見に行けたら嬉しいなぁ。
  そんなことを考えながら、ライダーはやはりレイン・ポゥらしき人の後を追った。


  ふらふら、ふわふわ。
  二人でのんびりと道を行く。
  巨大なビルの森を抜けると、少しだけ見晴らしが良くなって、<新宿>と外界とを隔てる亀裂が家一軒分くらいの高さからでも見えるようになってくる。
  黒い溝には、今日も、やっぱり、何もなかった。
  ただ、全てを飲み込むようにぽっかりと口を開けてこちらを見つめ返している。
  一度降りてみたいが、吸い込まれて消えてしまいそうで、ライダーもほんの少しだけ怖かった。
  降りると死んでしまうかもしれない。死んでしまうと何も出来ない。それはリクガメも、人間も、魔法少女も、皆一緒。

「この先は」

  ウェディンでもレイン・ポゥでもマナでもプキンでもトコでもない人が喋る。

「何があるんだろうな」

  男の口をついて出た問い。それは、ライダーとも同じ疑問だった。
  溝で隔てられた先にある大陸は、どこまでも続いている。
  一度向こう側に行ってみようと思ったが、見えない壁のような物があって通り抜けられなかった。
  まるでライダーが昔暮らしていた水槽みたいだった、とライダーは思う。
  もしこの<新宿>という街が水槽だったら、誰かが、ライダーたちのことを見ているんだろうか。
  空を眺める。何もない。横を見る。男はいつもどおりの表情をしていた。
  笑ったり、怒ったり、泣いたりしないのは楽でいい。顔を変えられても、ライダーにはどうすればいいかわからないから。
  誰も見ていないのを確認して、もう一度溝の向こう側の大陸を眺める。
  もしかしたら、あの人が、この先にいるのかもしれない。
  ゴーグルをかけて、黒い『学生服』というらしい長袖の服を着た、大きな三つ編みが目立つあの人。
  繰々姫だったか、7753だったか、ピティ・フレデリカだったかは忘れたけど、ライダーはその人の近くに居るのが好きだった。
  本がいっぱいあって面白かった。暇な時は話し相手になってくれた。魔法少女の中で、特に仲良くしてくれた。

「ウェザー・リポート」

「どうした?」

  返事があった、ということはこれが当たりだったんだろう。
  ライダーはウェディン改めレイン・ポゥ改めウェザー・リポートの傍をふよふよと漂う。

「この先もどこかにつながってて、メイの居た魔法の国にもつながってたら、そこに7753が居る」

  名前があっているかどうかは分からないが、たぶん伝わるだろう。
  ウェザーは少し考えて、こう口にした。

「……それは……お前の帰る場所、か?」

「うん、そう」

「そうか……見つかるといいな。お前も、俺も」

  そこがどこかは分からない。
  そこにいるのが誰だったかも覚えてない。
  でも、ライダーも、ウェザーも、どこかを探している。
  そこがどこにあるのかは知らないけど、いつかはきっと帰れる場所。
  ライダーにとってそれは、あのゴーグルの少女の待つ家。
  ウェザーにとってそれは、ライダーとは別のどこかにある心温まる場所。なくしてしまった何かのある場所。
  それはきっと、たぶん、この黒い溝の向う側にある。ライダーはそんな気がした。

「そろそろどこか別のところに行くか」

「うん。どこかにいこう」

  溝に背を向けて、二人で道を戻る。
  ライダーはふわふわ漂いながら、また黒い溝の奥について考え始めた。

◇◇◇


  ライダー・テプセケメイはもともとリクガメだった。リクガメが魔法少女になり、魔法少女が人類の英霊として座に登録されたのがライダーだった。
  彼女の眺める聖杯戦争と、人間の世界は、やっぱりどこかがずれている。
  それでもマスターであるウェザー・リポートと歩くのは、楽しくて、過ごしやすくて、好きだった。
  同じくマスターであるウェザー・リポートも、テプセケメイとはそれなりに楽しくやれていた。名前は覚えてもらえていないが、それでも、だ。
  そうして二人は歩いて行く。
  どこか知らない旅の終わりに向かって。
  いつかたどり着きたい二人の帰る場所を探して。
  行く先はお天気次第、人とリクガメは、今日も気ままな風に吹かれて歩いて行く。






【クラス】
ライダー

【真名】
テプセケメイ@魔法少女育成計画limited

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:A 宝具:B

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:A-
彼女は宝具の性質上気体と同化することで直接ダメージを与える攻撃は全て無効化する。
現代魔術で彼女を傷つけるのはほぼ不可能と言っても良いが、空気自体を傷つける特殊攻撃には弱く、その特殊攻撃が魔法少女の防御を貫通するようであればダメージを受ける。

騎乗:B---
宝具の性質から大気中全ての気体に乗る事ができる。無風の状態でも空間を漂える。
更に追い風に乗ることで立ち回りを有利に進められる。
ただし、機械・動物問わず乗り物に乗ることは出来ない。

【保有スキル】
魔法少女:B
魔法少女である。ランクが高いほど高水準の魔法少女となる。
魔法少女は人間離れした戦闘能力と視覚聴覚を得、排泄や食事などの新陳代謝行為を一切行わなくて良くなる。
また、疲労の蓄積する速度が人間よりも遥かに遅く、長期の不眠不休にも耐えられるスタミナと常人離れしたメンタルを持つ。
更に、固有の魔法を1つ使える。ライダーの場合それは宝具となる。
ライダーは優れた魔法少女であるが、訓練と研鑽を続けた一線級の魔法少女には叶わないためBランク相当となる。
そしてライダーは魔法少女の状態で呼び出されているためこのスキルの発動は阻害できない。

野生:C
ライダーの培ったリクガメとしての野生。快不快に正直で、どんなことにも直球で対応する。
また、人間生活や人間の習性にギャップがあり、少し鈍感な部分がある。

直感:B
危機的状況などを感じ取る能力。
本能とでもいうべき直感で自身を傷付けうる危険な攻撃を察知して深手を負いにくいように立ち回れる。

名前の無い世界:―
名前の無い世界で生き続けてきたもののバッドスキル。
ライダーは相手の名前を覚えるのが苦手で、同棲相手だったキャプテン・グレース(7753)の名前もまだ覚えてない。
ウェザーのことも「キャプテン・グレース」「ファニー・トリック」「繰々姫」「ポスタリィ」「レイン・ポゥ」「ウェディン」「マナ」「プキン」「ピティ・フレデリカ」「トコ」「ウェザー・リポート」のどれかを言っておけば当たるしいいかと思ってる。
ただ、「7753」ではないことはなんとなく分かる(7753の名前が間違えずに言えるというわけではない)
このスキルは永続的なものであり、一度名前を教えてもしばらくすれば忘れてしまう。
そのため他者とのやりとりの際、名前関連でファンブルを起こしやすい。

追い風に乗る少女:EX
クラススキルである騎乗と宝具の性質から来るスキル。
周囲の大気の密度が高ければ高いほど、変動が強ければ強いほど宝具の展開が容易になり、結果として魔力消費が少なくなる。

【宝具】
『風に乗ってどこまでも飛んでいけるよ』
ランク:B 種別:対人 レンジ:1-20 最大捕捉:30
常時発動型の宝具。
自身の存在を周囲の気体と同化させることによって様々な現象を巻き起こす。
空気の弾丸を打ったり、空を飛んだり、竜巻を起こしたりできる。
更に密度の操作で巨大化、縮小化、分身も可能。
この宝具の効果によって斬撃・打撃・一部の魔法などを完全に無効化できる。
この宝具は彼女の存在自身と複雑に絡み合っているため発動を阻害することは出来ない。
また、この宝具の性質からスキル:追い風に乗る少女を得る。

【weapon】
魔法。
ランプは武器じゃなくてランプ。

【人物背景】
リクガメ科チチュウカイリクガメ属の魔法少女。
彼女は魔法少女だが彼(?)は人物ではないためこの欄に書くことはない。

特筆すべきことがあるとすれば、彼女が探している7753は英霊として座に登録されていない可能性が高い、ということ。
テプセケメイの帰る場所は英霊の座ではなくどこか別のところにある。
そこに帰ることができる、と彼女/彼は心の底から信じている。




【マスター】
ウェザー・リポート@ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン

【マスターとしての願い】
俺も、誰かのもとに帰りたいのでは?

【能力・技能】
ウェザー・リポート
スタンド能力。天候を操ることが可能。
ヘビーウェザーの使用は不可能。重酸素ウェザーも不可能。
スタンド持ちであるため精神エネルギー(魔力)が常人よりも豊富である。
また、ライダーの特性上天候操作をすればするほどライダー側の魔力消費が少なくなるので戦闘中も天候操作は可能。
ただしライダーの戦闘+半径50kmスコールのような荒業は確実に出来ない。

マスターと戦うには十分すぎる戦力だがサーヴァント相手には一切の戦力にはならない。
他人のサーヴァントを傷付けられるのはライダーだけなのでサーヴァントとの戦闘時は彼女のサポートをする必要がある。

【人物背景】
記憶のない青年。
誰かから預かっていた空色の鍵で参戦。
水族館収監~本編開始の間の二十年近い囚役生活の間から参戦。
時系列的にはエンポリオやアナスイとは出会えていない可能性が高い。

ホームレスのような暮らしをしているが、スタンドがあれば特に困ることはない。
金や食料といった生活に必要なものも、『ボヘミアン・ラプソディ』の時のように天候操作を利用して他者の悩みを解決すれば集めることができる。

【方針】
<新宿>を出て、ライダーを7753のもとに連れて行く。
ついでに外界でウェザーから欠落している『何か』を探し、『帰るべき場所』にたどり着く。

特に積極的優勝狙いというわけではないので、しばらくはライダーとぼちぼち暮らしていくだろう。
意識は常に<新宿>の外に向いており、二人の帰る場所がそこにあるのではないか、と両者ともに考えている。
マイペースに外に出る方法を探るのが当面の方針になる。
襲われれば自衛はする。
ライダーは風力補佐があればあるだけ魔力消費が少なくなるので、基本戦術としてはウェザーがスタンドによる風力補佐+牽制を行い、ライダーが仕留めるといった形になる。
両者ともに応用力の高い能力持ちであるため、どこまで自分の能力を理解して相手の弱点をつけるかが勝敗を分けるだろう。
なお、この二人はあまり交渉が得意ではないのでその点では心配が残る。
ちなみに、ウェザーの名前は一時的に思い出したがたぶん十分もすれば忘れてしまう。ライダーは所詮リクガメだから仕方ない。