どうしてこんなことになってしまったのだろう。
今まさに生命の危機に瀕した男は、次々と流れる走馬灯と同時に、そう思った。

男はこの歪な聖杯戦争への参加など望んでいなかった。
男には愛する家族も恋人もおり、満ち足りた生活を送っていた。
故に、誰かを殺めてまで叶えたい願いなどあるはずもなかった。
別の世界で送りたい人生など無かった。
ただ偶然、異彩を放つ青色の鍵を拾い巻き込まれてしまったのだ。

不幸中の幸いか、彼が契約を結んだサーヴァント、セイバーは優秀だった。
実力だけでなく人格にも優れ、自身の望みが聖杯にはなく元いた世界への帰還だと知っても協力的で、
他の参加者から襲撃を受けた際も力の限り戦い、守ってくれた。

そんな頼れるパートナーの協力もあり、男はこの世界を脱出する方策を見つけるため行動を開始した。
出来る限り戦闘を避けるため人目の付かない時間帯に行動し、街を散策した。
だが結果は著しくなく、早晩手詰まりになってしまった。
そして、唯一未だ調査していなかった、断崖に囲まれた新宿の街と他区を繋ぐ橋の調査に乗り出したのがつい先程であり、
そこで、襲撃を受け絶望的な状況に陥ってしまったのだった。

元より、橋は何者かの手で事前知識として記憶に刷り込まれた情報によって、
他区へ移動できないということは知っていた。
それ故調査に行くのも後回しにしていたし、例え調査に行ったとしても、
行くだけ無駄と思われる場所で他の参加者に襲われる危険性は低いだろうと多少気をゆるめてしまっていた。
その矢先に、敵は現れた。

橋を渡り始めてすぐの事だった。
突如空気が一変し、天候が異常な状態へ変化した。
まず霧が立ち込み始め、雷が鳴り始める。
そして橋の向こうには陽炎が立揺らめき始め、そこにはこちらに近づいてくる何者かの姿が朧気に見えた。
突然の事態に本能が危険だと訴えかけてくる。
自身のサーヴァントが迎撃のため臨戦体勢を取るが、脳内の警鐘は鳴り止まない。
逃げなければと体に命じるが、まだ遠くにいると認識していた敵が瞬間移動したかのように大幅に距離を詰めてきていた。
最早逃走も難しい。敵の放つ独特の足音がどんどんと近づいてくる。

カシャン カシャン カシャン カシャン

カシャン カシャン カシャン! カシャン!!

そして遂に男は敵の姿を見た。白金色の鎧に包まれた全身、煌めく真紅の双剣、仮面に浮かぶ深緑色の巨大な双眼。
月明かりがその身を照らし、恐ろしさと同時に美しさを覚えてしまう。
動揺と恐怖で動くことも出来ない間に、姿を現した敵に自身のサーヴァントが向かっていく。
心の底から頼りしていた己のサーヴァントだったが、今はただ止めたかった。
恐怖に支配された精神が、その敵には敵わないと警鐘を鳴らし続けている。
戦えば負ける、逃げなければ殺されると。
しかし、止められなかった。止める時間すらないほど決着は一瞬で付いてしまった。
敵はまるで自分のサーヴァントの動きを完全に読んでいたかのように一刀目の攻撃を受け払い、
隙を晒した所を一瞬で捉え、防具も身の守りも無視してセイバーを一刀両断した。
男は、セイバーと自分を繋ぐパスが消えていくことを自覚しながらも、
最早、どうしてこんなことになってしまったのかという一事しか考えることができなくなっていた。

これで男のこれまでの走馬灯が流れ切った。
敵は既に間近へと迫っている。
仮面に隠され表情の読めない白銀の剣士が、怪しく光る二振りの双剣を構えゆっくりと近づいてくる。
敵が自分を逃がす可能性など一欠片ほどもないことが、漏れ出る殺気から嫌というほど伝わった。

カシャン カシャン カシャン カシャンッ!

足音が止まる。すくんだ足がもつれて尻餅をついた自分を、敵は無感情に見下ろしている。
いよいよもって迫った死に、男は既に殆ど枯れ果てた勇気をなんとか振り絞り命乞いを始めた。

「おねっ、お願いです!見逃してくださいっ!今夜のことは全て忘れます!
 私はただ生きて元の世界に帰りたいだけっぇ!」

男の言葉が終わり切る前に、白銀の剣士はその手から念動力を放ち、男を宙へ浮かび上がらせた。
同時に放たれる緑色のエネルギーの光条が男の体を焼く。

「ああああああっ!だすっ、助げて、やめて……あ゛あ゛っ!」

男は磔の体勢で宙に固定された。
敵はこのまま急所を刺し貫くつもりなのだろう。
それでも、男は命乞いを止めなかった。
もうそれだけしか足掻く術はなかった。

「家族が……いるんです……妹が……恋人が待っている……帰らなきゃ……」

それが、男の最期の言葉になった。
紅く煌めく長剣で正確に心臓を一突きされ、男は絶命した。
白銀の剣士は無感情にその死体を投げ捨て、背後に控えていた己のマスターへと向き直った。

「終わったぞ。……これからどうするつもりだ?」

セイバーは平坦な声音で形式上の主へと尋ねた。

「どうするもなにもないさ、これからも同じ様にブッ殺し続ける。
 参加者がオレ達を除いて全滅するまでな。そうすりゃ願いが叶えられるんだろう?
 まあ、それをする前に少しリラックスしてもいいがな。
 アンタも一緒に来るか?ちょっと明るい街まで出れば、
 引っ掛けやすいそこらの『木』よりも頭の悪そうな女が溢れてるぜ」

長駆痩身の壮年の男性が暗闇から現れ軽口を叩く。
だがその口は笑っていれど、瞳には殺意以外の感情が一切宿っていない。

「貴様の冗談に付き合うつもりはない。
 それよりも、この男の死体はどうする。
 後始末をしなければ後々面倒になるやもしれん」

その問いを聞き、男は死体へと近づいていく。
そして自らの側に人型のビジョン――スタンドを出現させた。

「じゃあオレが後始末をするぜ。
 ……しかし以外だったな。アンタ、冷血無比な殺人マシーンのようなヤツだと思っていたが、
 ちょっとは情のようなものを持っているとは」

「……何の話だ?」

男の言葉にセイバーは低い声で反応した。

「アンタ、コイツが最後の命乞いをした時、一瞬、ほんの一瞬だが切っ先が揺れてたぜ。
 妹や恋人がどうとか言ってた時だ。
 もしかしてアンタにもそういうのがいたのか?
 だとしたらちょっと驚きだな」

男は冗談めかして両手で驚きを表現する。

「……昔のことは忘れた。俺は俺だ。再び蘇り一人の男を打ち倒すことだけが俺の宿命。
 それ以外に俺の感情が向くことはない。
 切っ先が揺れて見えたのは貴様の見間違いだろう」

セイバーはそう言い切り、男に背を向け虚空を見つめる。


「そうか。オレも昔のことは忘れていたがな、つい最近思い出した。
 オレにも絶対にブッ殺したい奴がいる。
 似た者同士、精々この戦いが終わるまで仲良くしようぜ」

そう言い終わると、男は側に立つスタンドを操り、雷雲を生み出しなんと雷を発生させた。
それもピンポイントに死体だけに向けて、何度も、何度も。
死体が完全に炭化するまで雷を振らせ続け、それが終わると今度は炭化した死体に向かって、
スタンドの蹴りのラッシュを叩き込んだ。
そして最後に強風を吹かせ、粉々になった死体は風に乗って何処かへと消えていった……。


「さて、具体的にこれからどうするかだが……
 アンタは何か意見はあるか、セイバー?」

良心があれば躊躇してしまうだろう残虐な後始末を終えても、
男の態度は何ら変わること無く平然としていた。
ただ無感動のまま己がサーヴァントに意見を求める。

「今回と同様の行動でいいだろう。俺もまたしばらく単独行動を執り、敵を探す。
 何かあれば呼ぶがいい」

今回、セイバーが敵のサーヴァントを瞬殺出来た理由がこの行動方針にある。
セイバーはその能力により、遠隔視で戦っている者の戦闘データを収集することが出来る。
此度の敵も事前に敵の戦闘を隠れ見、能力を全て把握していた。故に、勝つべくして勝ったのだ。

「了解。じゃあオレもオレで探す。アンタの方にも成果があることを祈ってるぜ」

「フンッ……」

セイバーは男の言葉を聞き終えると姿を消した。
同時に男も街の夜闇へと溶けていく。

男達はたしかに同類だった。一人の男は全てを失い、世界を憎み、兄弟を憎み、記憶を奪われまた取り戻し、
再び兄を殺す為に生きる男。
もう一人の男は、抗えない強大な力によりその身を異形へと作り替えられ、兄弟同然の男との争いを宿命付けられ、
敗北してなお記憶を犠牲に蘇り、再び宿敵を倒すため蘇った男。

彼らは呪われた運命を宿命付けられ、その地獄を突き進む者達。
彼らの行く先に光はない。それでも、彼らは戦うだろう。
ひとたび救われて尚、生ある限り彼らはその呪われた運命を生きる。






【クラス】
 セイバー

【真名】
 シャドームーン@仮面ライダーBLACK RX

【ステータス】
 筋力A 耐久B 敏捷A 魔力A+ 幸運E 宝具A++

【属性】
 混沌・中庸

【クラススキル】
 対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。

 騎乗:B
 乗り物を乗りこなす能力。魔獣・聖獣ランク以外を乗りこなすことが出来る。
 時速800km以上で走るバイクも容易に乗りこなす。

【保有スキル】
 千里眼:A
 改造により得た複眼・マイティアイにより遠隔視、透視、戦闘データ収集などが可能。

 単独行動:B
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 Bランクならばマスターを失っても2日は現界が可能。

 戦闘続行:A 
 戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

【宝具】
 『陰る月の霊石(キングストーン)』
 ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
 5万年周期の日食の日に生まれた運命を持つ者が、世紀王となるため体内に埋め込む霊石。
 腰につけたベルト、シャドーチャージャーの奥に埋め込まれている。
 太陽と月のキングストーンがあり、こちらは月のキングストーン。
 2つ揃えることで創世王の資格を得る。
 シャドームーンをシャドームーンたらしめている宝具であり、これがなければただのバッタ怪人に退化する。
 凄まじいパワーを持っており、身体能力の大幅な向上、サイコキネシス、怪光線、精神操作、剣の生成、
 時空間に関する能力への耐性など、多くの力をもたらす。また、生成された装備はA++相当の神秘を有する。
 常時発動しており、宝具自体が魔力を無尽蔵に生成しているため、魔力消費はほぼ無い。

【weapon】
 シャドーセイバー:キングストーンの力により作り出す双剣。
          長剣と短剣があり、長剣は攻撃用、短剣は防御用に使用される。
          凄まじい切れ味を持つ。短剣は投擲して使う場合もある。

 レッグトリガー :両足踵部分に装着された強化装具。超振動することでキックの威力を向上させる。
          また武器としても使用可能。

 エルボートリガー:両手肘部分に装着された強化装具。超振動することでパンチの威力を向上させる。
          また武器としても使用可能。

【人物背景】
 人類文明の破壊と世界の支配をもくろむ暗黒秘密結社「ゴルゴム」の次期創世王候補・世紀王として、
 青年・秋月信彦が洗脳・改造された姿。
 実の兄弟同然に育ち、共にゴルゴムに改造されながらも、ゴルゴムを脱走し反旗を翻した親友・南光太郎=
 仮面ライダーBLACKと死闘を繰り広げた。
 最終的に敗北し、崩壊したゴルゴム地下神殿内で死んだかと思われていたが、過去の栄光と記憶を代償に
 復活。
 その後再び仮面ライダーBLACK RXへと進化した南光太郎と互角の戦いを繰り広げたが、敗北する。
 最期は満身創痍の状態で、敵対するクライシス帝国によって人質にされていた兄妹を救い死亡。
 その死後、亡骸は元の信彦の姿に戻っていた。
 最後の行動から、信彦の人格と記憶が戻っていた可能性もあるが、本人はあくまで自分はシャドームーンだと
 貫き通した。

 戦闘力は凄まじいものがあり、宝具『陰る月の霊石(キングストーン)』による特殊能力だけでなく、
 徒手空拳による格闘、双剣による巧みな剣術など一分の隙もない。




【マスター】
 ウェス・ブルーマリン(ウェザー・リポート)@ジョジョの奇妙な冒険Part6 ストーンオーシャン

【マスターとしての願い】
 元の世界に戻り、プッチ神父を殺し、自分も死ぬ。

【weapon】
 なし

【能力・技能】
 スタンド:ウェザー・リポート
 天候を操る能力。人型の像(ヴィジョン)を持っており、至近距離では強烈な風を纏ったパンチを
 繰り出したり、より正確な天候操作を行うことが出来る。
 また、人間の深層心理に訴えかけ、見た者をカタツムリに変えてしまう虹を発生させる能力も有するが、
 これは何らかの理由により封じられている。
 高い物理的破壊力を持っているが、サーヴァントに対して有効なダメージを与えることは出来ない。
 スタンドという異能を持っているため、一般的な人間に比べて魔力量は多い。

【人物背景】
 記憶喪失の男、ウェザー・リポートが記憶を取り戻した状態。
 実の兄にして復讐すべき相手であるエンリコ・プッチ神父により記憶を奪われていたが、
 「DIOの息子」の一人、ヴェルサスがプッチを裏切ったことでその記憶を取り戻す。
 参戦時期は記憶を取り戻した直後、アナスイと共に街を散策していた時期。
 偶然鍵を見つけ拾った。
 特にロールは割り当てられていないホームレスのような社会的立場だが、
 非合法な手段を取ることに一切躊躇が無く、強力なスタンド能力もあるため生活に不自由はない。

【方針】
 優勝狙い。サーヴァントとしての己の能力を活用し、容赦なく他参加者を殺す。



時系列順


投下順



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ウェス・ブルーマリン(ウェザー・リポート) 全ての人の魂の夜想曲
セイバー(シャドームーン)