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  まさかもう一度目を覚ませるとは思っていなかった。
  病魔は完全に身体を蝕み終わっていた。
  あの日、あの時、有馬冴子は死んだ。
  そのはずだ。
  そのはずだった。
  だというのに。
  目が覚めてみると、冴子は全く見知らぬ部屋に居た。
  着ている服も簡素な入院着に着替えさせられており、少し前まで寝ていた物とは比べ物にならないほど高価なベッドに横たえられていた。
  そして、いつだって身体の真ん中に居座り続けず痛みをばらまき続けていた『何か』が居なくなっている。
  冴子が現状を理解できずに困惑していると、男性の声が聞こえてきた。

「気がついたか」

  上体を起こしてそちらを向くと、ベッドの向こう、ドアのすぐ側に全く見慣れない男が立っていた。
  服装は白いケープ。見ようによっては白衣に見えなくもないそれを、ばっちりと着こなしている。
  髪は男にしては長く、腰のあたりまで伸びている。その艶と輝きはブラック・クォーツを思わせるほどに高貴で、どこまでも深い。
  しかし、最も目を引くのはただ一点。
  それは男の貌(かお)。
  月明かりに照らされた男の貌はあまりにも美しく。
  それはまるで美という概念そのものが肉の器に閉じ込められているかのような。
  それはまるで遍く存在している『美』をその場に集めて形作ったような。
  そしてそれは、うら若き少女が畏怖を覚える程に―――美しい貌だった。

「どこか痛む場所は?」

  男は、特に意識したふうもなく冴子に近づていくる。
  対応を見るにどうも彼こそが冴子をこの病院に連れ込んだ張本人らしい。
  経過の確認に来ていることからには執刀を行った医師の可能性も高い。やはり白いケープは白衣代わりのようだ。
  冴子はそのあまりの美貌に声も出ず、ただ二度だけ頷いた。

「ならば、完治だ」

  男は特に感慨もなくそう口にする。

「……完治……どうして」

  男の『完治』という言葉を聞いて、美の衝撃からようやく我を取り戻して声が出た。
  だが、どうしてに続く言葉は決められない。
  どうして私は生きているの。どうして治せたの。
  どうしてあなたはここにいるの。どうして私はここにいるの。
  様々な謎の込められた『どうして』に、男はただの一言でもって答えた。

「君が<新宿>に選ばれた者だからだ」

「神宿?」

  脈絡のない言葉を鸚鵡返しで繰り返す。
  神宿は、冴子の居住区から程遠くない場所にある繁華街だ。知ってはいるが、今の会話に関係があるとは思わない。
  男はその問いには特別返答をせず、冴子の身体を引き起こす。
  そして何も言わずに冴子の入院着に手をかけ、左胸の側をはだけさせた。


  同年代の少女に比べてわりと達観したところのある冴子も、突然のことに少し身構える。
  が、男のこともなげな顔を見てすぐに平静を取り戻した。
  冴子は男の素性にも顔にも心当たりはなかったが、それでもひとつだけ分かる。
  男女の性や淫というものに近しい位置で根無し草のような生活を続けていた彼女だから分かる。
  男は冴子をなんとも意識していない。興奮だとか、情欲だとか、そんな感情を欠片も抱いていない。
  ならばきっとこれは男としてではなく、<医師>としての振る舞いだろう。
  男が冴子の乳房に触れる。位置はちょうど、心臓の真上の辺だろう。
  冴子の肌に、男の指先から熱が流れ込んでくる。
  触れた場所から心臓まで、緩く熱した燗を染み込ませたような感覚が広がる。
  皮膚から脊髄を通って脳に運ばれる嫌悪とも快楽とも取れぬその感覚に、身を捩りたくなる。

「令呪も現れたようだな」

  男がゆっくりと心臓の上を撫で、そのまま指が離れる。
  男が触れていた部分には、鍵のような不思議な形の蚯蚓腫れが浮き上がっていた。

「これで君は、この戦争の暫定的な参加者となった。
 以後、予選期間を事無く済ませることが出来れば予選を突破という運びになる」

  男の口走った参加者、という言葉で知らなかったはずの記憶を思い出す。
  『聖杯戦争』。それに付随する全ての記憶。
  この場所は冴子の知っている神宿ではなく<新宿>という都市であるという。
  そして冴子はその<新宿>で行われる戦争の参加者の一人として呼び出されたということらしい。
  だからこそ、男は死の際に居た冴子を救ったということか。天命にすら逆らい、戦争で死ねと。
  ずいぶん非道い話だ。ため息をつく。漏れた吐息にもう熱は篭っていなかった。
  男ははだけさせた冴子の入院着を正し、ベッドの上に投げ出されていた冴子の手に何かを握らせる。

「それは持っておいた方がいい。君のためになる」

  男が渡してきたのは、青い鍵―――透き通った、不思議な鍵。
  鍵のナンバーは「1303」。その鍵は、有馬冴子が「有馬冴子」だった証。
  なぜ男が持っているかは知らないが、もともとの持ち主は冴子だ。
  冴子は渡された鍵を強く握り、男と向き合う。
  あまりの美貌に再び眩みそうになり、息を呑む。何かを聞こうと思ったが何も聞けない。
  二人の沈黙の中を、夜風が通り抜けた。


  そよぐ夜風にカーテンが揺れる。
  同時に空間に橙黄色の粒子が満ち、一点に収束する。粒子は人の形を作り、次第に色を取り戻していく。
  現れたのは短髪の少女だった。
  『ランサー』という文字が浮かんで見える。どうやら彼女が聖杯戦争に呼び出された英霊の現身、サーヴァントであるらしい。

「……えーと、そっちは私のマスターだとして、あんた誰?」

「夜も更けた。あとは好きなようにするがいい」

  男はランサーの姿を認めると、それ以上その場に居る必要はないと言うように部屋のドアの方へ振り返り歩き出す。
  その離れていく姿に、冴子は自身の置かれた状況の特異さを思い出し、「あの」と声を出して男を呼び止めた。男は足を止め、振り返る。

「一つだけ聞かせて」

  男は、何も答えない。ただ、足を止めて冴子の方に振り返ったのだから、その沈黙が意味するところは肯定で間違いない。
  呼び止めてから考えた。なにか聞いておくべきことはないか、と。
  戦争に呼び出されたということは、今の彼のような中立の人物と話す機会はそうそう来ない。
  ここがどこか、とか。冴子の知り合いはどうなった、とか。どうして鍵を持っていたのか、とか。
  そういった全ての疑問がこの場で意味を持たないことは悟っていた。
  だから、冴子はひとつ、問いを投げかけた。

「あなたは……あなたも聖杯を……奇跡を望んでいるの?」

  口に出してから気づいた。男が参加者だとはまだ決まっていない。
  もしかしたら、管理者のような立場なのかもしれないし、全く無関係の善意の第三者なのかもしれない。
  少なくとも、冴子の目からは彼の身体に『令呪』のような痣は見えなかった。
  男は少考した後にこう答えた。

「私も君と同じだ。<新宿>が呼び、私はそれに答えた。私も、君も、『彼女』も、『彼』も、そこに変わりはない」

  その答えは、やはり曖昧で。だが、曖昧だからこそ本質に最も近しいだろう答え。
  無駄な問いに、無意味な答え。傍から見ればまったく価値の無い会話。
  だが、冴子には思いいるところがあった。だから既にドアに手をかけている男にもうひとつだけ、問いかける。

「……だとすれば、いつかはあなたとも戦うことになるのね」

「次に出会った時には、そうなるかもしれない」

  ドアが開き、廊下に満ちていた月光が男と室内を優しく照らし、男の影が伸びる。
  男は。
  その影すら美しく。
  彼女が見てきたどんな芸術作品よりも深く。
  魂すら奪われてしまいそうなほど優しく。

「気が向いたなら、その足で<新宿>を見てくるといい。いつでも出ていけるよう、鍵は開けておこう」

  振り返り、再び顔と貌があう。
  冴子はその美貌に再び身震いをした。


  男が部屋を出て数十秒か、数分か。
  もう足音も聞こえない。
  それを確認してから冴子はもう一人の闖入者に目を向ける。
  つまらなさそうに椅子に座って足を組んで寛いでいた少女―――ランサー。

「……それで、あなたは?」

  その声を聞いてランサーはようやく出番かとその黒光りする足をおろし立ち上がった。
  かちゃり、と音を立てて義足が地を打つ。ラバーの床に小さな傷が刻まれる。

「ランサー。あんたのサーヴァント。これからよろしく」

  全身を眺める。
  髪は黒の短髪。なんとなく黒猫を思わせる癖毛。
  服装はセーラー服。その体は英霊と呼ばれて想像するそれよりはるかに華奢で、肉付きもあまり良くない。
  目を引くのはやはり、左脚の義足だろう。腿の半ばから下が黒く光る異形にすげ替えられている。
  槍らしき物を携えていないが、もしかしたらあれが槍のかわりになるのかもしれない。

「有馬冴子。よろしくね」

  簡単な自己紹介を終えると、ランサーは幾つか質問をしてきた。
  「何か病気をしているのか」とか「先程の男は何者で、どんな関係なのか」とか、そういう、冴子としてもこんがらがっているところについて。
  冴子がありのまま知っていることを話すと、ランサーは「見張りをしとくから、少し休んでて」と言って姿を消してしまった。
  霊体化、というらしい。近くにいるらしいが、もう見ることはできない。
  そうして冴子は再び、一人きりになった。
  ひとりきりになった室内。薄暗い病室のベッドの上で情報を反芻する。
  冴子が患っていたのは紛れもない不治の病だ。
  現代医術の粋を持ってしても絶対に治せないはずの病だった。神の手を持つ医者も匙を投げるような病だった。
  それがまるで、盲腸かなにかのように。
  いや、手術も行っていないのだから盲腸よりも容易く。
  この街の医者は(おそらくあの男は)治してみせた。
  冴子自身、少し不思議程度のことなら経験したことがある。
  だが、ここまで常識離れしたことは流石に初めてで。
  その経験を何かと称するならそれは間違いなく。

「……奇跡、か」

  奇跡と呼ぶほかない。
  <新宿>の医者は冴子の目の前で、冴子に実感できる形で実現不可能とされた奇跡を起こしてみせた。
  そして、あの振る舞いを見るに、この程度の奇跡ならばこの<新宿>では日常茶飯事と考えていいはずだ。
  これ以上の奇跡が、この街には存在している。
  全ての運命に干渉できるほどの奇跡が、この戦争の果てにはある。
  まるでお伽噺のような話だ。
  ただ、心臓の真上に刻まれた蚯蚓腫れのような痣―――令呪だけが、そのお伽話の実在を語っていた。

  冴子は青い鍵を握った左手をしばし眺めて、そのままベッドにもう一度身体を横たえた。


―――

  どこかで虫が鳴いている。
  夜風の肌寒さに心が撫でられ、ぼんやりとした意識を徐々に徐々に揺り起こしていく。
  窓側の身体がこわばっているのを感じた。窓をあけっぱなしにして寝るのは、さすがに油断し過ぎだろうか。
  戦争の舞台ということもそうだし、そもそも冴子は身体が強い方ではない。
  完治したのは病気だけで、身体までいきなり健康体になるわけじゃないのだから、風邪を引いてしまわないように気をつけないと。
  上体を起こすと窓際に先ほど消えたはずのランサーが立っていた。
  ランサーは少し目を丸くし、ばつがわるそうに頭を指で掻きながら謝罪の言葉を述べる。

「様子を見に来ただけだったんだけど、起こしたならごめん」

「……気にしないで。私、人に比べて眠りが浅いから」

  少女・ランサーとやりとりをして、ようやく気付く。
  どうやら少し眠っていたらしい。
  時計を確認するに寝ていたのはニ・三時間ほどだが、少し前の冴子からしたら目覚ましい進歩だ。
  病気が完治したことが心のゆとりを生んだことで、こういう部分にも影響が出たのだろう。
  悪いことではない。少なくとも、聖杯戦争中に彼女持ちの男性を探してセックスする必要がなくなった、と考えれば大きなプラスだ。
  でも、なんだか寂しくもあった。少なくとも、冴子を形作っていた『何か』がまた1つ消えた。
  また少し、曖昧に。希薄になってしまった気がする。
  宙に手を伸ばすと、ランサーが冴子の手をとって引き起こしてくれる。

「また少し見張ってくるから、安心して寝てていいよ」

「ありがとう。でも、もう大丈夫。それより、ここから出たいの。手伝ってくれる?」

  男は好きなようにすればいいと言っていた。
  だが別れ際のあの口ぶりは、長居を求めてないふうだった。少なくとも冴子はそう受け取った。
  参加者を病人という形で匿い続けるというのは彼としても本意ではないのだろう。
  ならば、手をかけないようにできるだけはやく離れる。面倒事は少ない方がいい。
  本当は男と別れてからすぐに出ていこうと思っていたが、ランサーに切り出すきっかけが掴めないままランサーが見張りに行ったため、数時間だけ出発が遅れてしまった。
  ただ、数時間くらいなら見逃してくれるはずだ。

「……いいの? 治ったってもまだキツそうじゃない」

「大丈夫、少し前に比べればすごく元気になってるから。そうは見えないかもしれないけど」

  ランサーが冴子の顔を覗き込む。きっとランサーの目には幽霊のような生気のない顔が映っている。
  ただ、冴子の不健康な顔色はほとんど生まれつきのようなものだし、それまで積み重ねてきた不養生のせいでもある。
  決して病気だけのせいではないし、だからこそ病気が治ってもこれが治ることはない。
  ランサーもそのことを気づいてくれたのか、それ以上は追求せずに冴子の言葉を受け入れてくれた。

「こっから出るのはいいけどさ、宛はあんの?」

「……宛って言っていいのかはわからないけど、ひとつだけ」

  ここを出ても大手を振って向かえる場所もない。
  生前(というのはおかしいかもしれないが、これ以上にしっくり来る表現が見当たらない)病のこともあり、帰る場所を極力持たないように生きてきたのだ。
  ただ、帰れるかどうかは分からないが気にかかる場所はある。
  冴子は失ってしまった『何か』を埋めるために、手を握るランサーに少しだけワガママを言った。


「ねえランサー。ひとつお願いしてもいい?」

「なに」

「一緒にビル、探してくれない?」

  ランサーの手を握っているのとは逆側の手。
  寝ている間も握っていた手を解き、中に握りこんでいた『それ』を見る。
  青い鍵。ナンバーは1303。
  それは、冴子を……「有馬冴子」を受け入れてくれた唯一の場所の鍵。

「有馬第三ビル。十二階建てのビル」

  有馬第三ビル。あの場所は、冴子にとって特別な意味を持っていた。
  あの場所で過ごした数ヶ月はきっと「榛名冴子」が生涯得られず、「有馬冴子」だけが掴んだ幸福だった。

「この鍵、そのビルの十三階の部屋の鍵なの」

「十二階建てなのに十三階……なんかおかしくない、それ」

「そういうところ、らしいわ。皆……私も、誰も、どういうこと原理かは知らなかったけど」

  1302、八雲刻也。1304、桑畑綾。そして1303、絹川健一。
  この<新宿>の地で、あの場所があるかは分からない。
  そもそも場所が違うのだから、普通に考えればないに決まっている。
  だが、それでもあの時、男が渡した『鍵』の意味を、冴子はこう解釈した。
  『鍵を使うことのできる場所がある』のだと。
  きっとこの身勝手な解釈を、巷では未練と呼ぶのだろう。
  冴子には無縁だと思っていた感傷を気恥ずかしく思い、ベッドから降りてランサーの隣に立つ。

「じゃあ、手始めにそこ探そうか」

  夜風にカーテンが踊り、ランサーのセーラー服のスカートがはためく。
  セーラー服の裾が翻って顕になったランサーの左足がその存在を強く示す。
  黒く鈍く光り、哮く雄々しく聳え立つ。アンバランスな『力』と『美』を兼ね備えたランサーの『槍』。

「お願い」

  ランサーが義足に魔力を注ぎ、その中に宿された真の力を開放する。
  義足は瞬くほどの間もおかず鋭く尖り、脅威を穿つための形を取り戻した。
  収まりきれなかった魔力が光となって周囲を照らす。ランサーの白磁のような太ももが魔力の淡い光で照らされて艶かしく暗闇に映える。

「飛ぶよ。しっかり掴まってて」

  ランサーが冴子を抱き上げ、窓に義足の方の足をかける。
  そしてそのまま、冴子が傷つかないように気を配りながら、窓の外へと飛び立った。
  しばらくの浮遊感。静かな着地音、再び浮遊感。
  ランサーは家の屋根から屋根を飛び移る。まるで塀を渡る猫のように、新宿の夜を跳ねていく。
  ふと、ランサーの身体越しに病院の方を振り返ってみた。
  美しい影はもう見えず、それなりに大きな病院の向こうで満月だけが笑っていた。




「あの病院」

  ランサーがひときわ大きく飛び上がった後、冴子に耳打ちする。
  ランサーは身を切る風の音で声が届きにくいと思ったのか、少しだけ声のボリュームを上げて続けた。

「あの病院、メフィスト医院って言うらしいね」

「知ってたの?」

「いいや、見つけた。あの病院の中にあった資料、入院の手続き書? に書いてあった。
 あの男についても知りたかったけど、それはどうも上手く行かなくてね」

  メフィスト。
  冴子の知るメフィストとは、悪魔の名前だ。
  ファウストの魂の代わりに望みを叶える悪魔、メフィストフェレス。
  魂を捧げ。
  奇跡を起こす。
  これ以上聖杯戦争という舞台に似合いの名前があるか。
  ならばあの男の正体は。
  あの月すら霞ませる男は。
  金塊すらもくすませる美貌は。
  万人の心を掴み、正体不明の熱病にうかす存在は。
  そうしてようやく辿り着いた。あの男の美を示す単語に。
  『魔性』。
  そうか、あの男こそが。
  あの妖しく艶めく美丈夫こそが。



  ―――― 月すら妬み、海すら溺れるその美で人の心を奪う悪魔。



  ―――― <新宿>の地で有象無象に奇跡を齎す医者。



  ―――― <魔界医師>。



  ―――― ドクター・メフィスト。



  自然と至ったその名に聞き覚えがないことに、冴子は多少訝しんだが。
  彼のことも、左胸に浮いた『令呪』によって与えられた『聖杯戦争』の知識だろうと結論を下した。
  そして、それ以上考えるのはやめた。
  彼について考えて、何かが変わるわけではない。考えるだけドツボにはまってしまうだろう。
  それに冴子が生きていれば、またいつか会うかもしれない。
  再びどちらのためにもならない問答をする日が来るかもしれない。
  その時が来れば、その時に聞けばいい。
  ただ、心臓がどうにも心地が悪いからまだしばらくはあわなくていいか、と冴子はあまりらしくないことを考えながらランサーに身を任せた。
  くしゅん、と小さくくしゃみをする。夏とはいえ、やはり夜はまだ寒い。

「ビルもいいけど、まずは服からなんとかしようか」

  ランサーがそう言うのを聞きながら、冴子は心臓の上の令呪をドクター・メフィストがそうしたように撫でるのであった。






【クラス】
ランサー

【真名】
猫宮慶@あいつはヴァイオレンスヒロイン

【パラメーター】
筋力:E(B+) 耐力:E(D) 敏捷:E(A+) 魔力:A+ 幸運:C(D) 宝具:C

【属性】
渾沌・善

【クラススキル】
対魔力:-(B)
魔力に対抗する力。
通常状態では発動しないが装備を解放するとBランク相当まで向上する。

【保有スキル】
装備解放:A
義足に込められた魔力を解放し、義足を武器に変える。
この宝具を解放することで、ランサーは戦闘態勢に入る。
パラメータが()内のものまで向上する。

直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。

短気:―
バッドスキル。キレやすい。
特に義足のことを馬鹿にされれば相手が誰だろうとすぐに攻撃を繰り出す。

反応:A---
アーティファクト熟練者の攻撃発動を見てから蹴り落とすほどの超速反応。
相手の宝具や必殺技の類の発動に対して確実に先手を打てる。
先手を打って攻撃ができるが、先手を打っての逃走や奸計などは不可能である。もし逃走や奸計を行おうとするとこのスキルは同戦闘中に発動しなくなる。

総受け体質:―
受け・攻めで言えば受け。攻めにはほぼ回れない。
戦闘でもR-18展開でも劣勢に陥った場合の敗北率がかなり高い。
敵の数や自身のダメージなどの条件によって大きく劣勢に立たされた場合、筋力と耐久が一段階下降する。

笑う影:A
彼女の内に潜む使い魔。
莫大な魔力の塊であり、彼女の宝具の本体でもある。
魔力に恩恵を授ける代わりに影がデフォルメされた猫になる。あとしゃべる。
このスキルから居場所を感知されることも、真名を特定されることもある。
このスキルは宝具同様解放の阻害は不可能。


【宝具】
『魔法の呪文(バラバラにしてやる)』
ランク:D 種別:対人~対軍 レンジ:1-15 最大捕捉:10~30
3mほどの怪物の体を穿ちねじ切り殺した必殺の蹴り。
城門10枚程度なら軽く蹴破ることが可能という逸話を持つ。
一時的に筋力を一段階向上し、中度の貫通属性を纏って攻撃できる。

『その夜鳥の名は―――(トラツグミ)』
ランク:C 種別:対人 レンジ:― 最大捕捉:―
彼女の義足に宿る使い魔『トラツグミ』。
超強力な魔力を宿した『何か』であり、『装備解放』『笑う影』『魔法の呪文』『天蓋を覆うは漆黒の虎鶫』『あいつはヴァイオレンスヒロイン』の全てはこの宝具の存在が根幹にある。
全身真っ黒で猫のような見た目をしている。
彼女の精神と強く融合しているためこの宝具の解放を阻害することも、この宝具を破壊することもできない。

『天蓋覆うは漆黒の虎鶫(トラツグミ)』
ランク:C 種別:固有結界/対城 レンジ:50 最大捕捉:999
トラツグミの力を解放する。
周囲を局地的に夜にし、東京ドーム一個分以上はありそうな旧修練場を全壊させた逸話を持つ。
トラツグミの『影』によって天を覆い、『光』に関連する宝具の効果を消滅させる。
そして、トラツグミの魔力で空間を満たすことにより筋力・耐力・魔力を一段階向上する。
更に令呪を一画消費すれば対城宝具である人工ブラックホールっぽいものを展開することができる。
原作で確認できたのは『修練場が空中にある影の珠に引き寄せられて根本から浮き上がり』『浮き上がったものが粉々に砕け散り』『その後地面に叩き落とされた』という三工程。

『あいつはヴァイオレンスヒロイン』
ランク:B 種別:対人 レンジ:1 最大捕捉:1
ランサーの魔力が限界値を超えることによって、トラツグミとランサーが完全に融合した状態。
逸話から、相手のすべての補正を無視して本体に辿り着ける(≒最高度の貫通属性を得る)。
この宝具の発動はランサー単体では不可能であるが、唯一、令呪による魔力ブーストがかかった時に限り発動できる。
ただしこの宝具を発動した場合、トラツグミの魔力が一時的にほぼ枯渇状態になる。

【weapon】
変形した義足。鋭く尖り、槍のように敵を穿つ。
身体と融合しているため武器を剥奪することは不可能。また、魔力によって形成されているため破壊されても魔力消費で復元が可能。

【人物背景】

―――猫宮慶は魔法少女である
   左足を失い義足を余儀なくされた彼女のソレには
   あらゆる脅威をはねのける魔力が宿っているのだ!!(単行本二巻『スペルマニアックス』、前回のあらすじより)

ドリル汁著『スペルマスター』『スペルマニアックス』『イケないvスペルマビッチ!!!』収録作品『あいつはヴァイオレンスヒロイン』の主人公。
単行本名からも分かるようにエロマンガ。しかも九割くらいふたなり。
キャラの名前で検索して出てくる画像がたぶんいちばんマシな画像なので見た目はそちらで確認して欲しい。くれぐれも作品名で検索しないよう。
ネコミミのような髪型と左足の義足がトレードマーク。超短気だが受け攻めで言えば受け。淫乱を超えた何か。ぬこ宮さん。ちんぽに弱い。
粗野な性格をしている。わりとエロいことに奔放。生粋の男よりも女と盛りあった回数のほうが多い。作中数少ない男性器の生えない人物。




【マスター】
有馬冴子@Room No.1301

【令呪】
左胸、心臓の真上あたり(服を着ていれば隠せる位置)
鍵のような形をしている

【マスターとしての願い】
???

【能力・技能】
鈍感。
感覚が鈍い。辛さ苦さや暑さ寒さにあまり頓着する方ではない、というよりもそういったものに対する感覚が鈍い。
痛覚を我慢する方法も覚えているが、これは内発的な痛み(持病の痛み)だけなので外傷は普通に痛い。

不眠症。
眠りにつきにくく、また眠りが浅い。
<新宿>到着時に彼女を取り巻いていた問題の幾つかが解決したので少しだけ眠りにつきやすくなった。

不治の病。
不治とは言うがそれはあくまで現実世界レベルの医学での話。
とある美しい男の手によって完治。ただ、今までの積み重ねもあってあまり身体が強い方ではない。

距離感覚。
人間関係、特に男女の距離感に敏感である。
横に並んだ男女を一目見ればその二人が性交渉を行ったことがあるかどうか見抜くくらいはお手の物。

【人物背景】
Room No.1301のメインヒロイン。最終巻から参戦。
1303号室の住人の1人。『幽霊のよう』というのは主人公の言。
『一年前のあの日』からずっと眠りが浅かったせいもあり、生気を感じさせない顔色をしている。
ちょっとした理由から一年ほど様々な男性(彼女持ち限定)と床を共にしており、同じ学校の女生徒からは多大な恨みを買っていた。
決して貞操観念が薄いわけではなく、性欲が強いわけでも快楽を求めているわけえもない。
時系列では既にシーナが退出しているのでアパートの回想でシーナについては触れていないが、シーナのこともちゃんと覚えてる。
あと、漂流の際に失ったらしく、1305の鍵も持ち寄っていない。

原作は富士見ミステリー文庫「Room No.1301」シリーズ。
なぜミステリー文庫から出版されたのかがわからないというメタミステリーで勝負する青春エロコメ小説。
なお、ネットで「有馬冴子」と検索して出てくるキャラはだいたい「大海千夜子」。
ツインテールの子は大海さん、有馬さんは黒髪ストレートの死にかけ娘。気をつけようね。

【方針】
特になし。
できることなら死にたくはないのだが……
なお、現在は入院着を着ているが、朝が来る前にどこかで着替えるのでそうそう目立つことはない。

ランサーは単独行動こそ持たないがその豊富な魔力から決して冴子に負担はかけないだろう。
スキル嗤う影による安定した魔力供給があるため、連戦も可能。
ただし、疲弊したところを複数人に襲われれば総受け体質から一転窮地に陥る可能性も高い。
直感持ちや宝具に先手を打てる反応のスキルと敏捷を合わせればある程度思うように戦闘を運べる。
義足ゆえの射程の短さと令呪負担なしで攻撃に転用出来る宝具が『バラバラにしてやる』しかないのが短所と言えるか。
奥の手であるあいつはヴァイオレンスヒロインの完全貫通属性を使えばほぼ全てのサーヴァントに致命傷を与えられるが、令呪消費・魔力枯渇があるため使いどころは選ばなければならない。