本戦SSその1

『伝説の焼きそばパン盗難事件!自称怪盗ミルキーウェイはファックイエーと笑い
アナルパッケージホールドはトイレで二度散るタッグマッチのMVPは風紀委員の
お姉様で購買に到着するまでの攻防は以下略されちゃいましたこれというのも
大体一之瀬の魔人能力のせいなんですよそしてリングに下痢便走るみらいの
後頭部大打撃犯人はヤスゾンビのゲップは生臭い・出題編』




プロローグSSは基本的に互いに矛盾とならない部分は全て正史扱いとなる。
すなわち、伝説の焼きそばパンの正体は百年の時を超えて存在する悪の意識の
集合体であり、それを求める者を暴力に走らせ大いなる災厄を巻き起こすものである。
しかし、希望もある。今から6年後に当たり前の様に伝説の焼きそばパン争奪戦が
行われているという事は、今回の争奪戦は無事に終わる可能性が高いという事だ。
(一之瀬進・カレーパン・久留米杜莉子・霊能者雲水のプロローグSS参照)



( *)<アナルパッケージホールド!
超人 A・P・ホールド
バルカンキック、鉄拳パンチ、プリンパ、体当たり
打撃に強い、混乱に強い、魅了に弱い
( *)<アナルパッケージホールド!


「つまりだ、あたしとキミはこの戦いで焼きそばパンの悪意がどうにか解消される
方向へと導く必要がある訳だ。いっやあ大変だねえ!」

地の文を読む力で事のヤバさを真っ先に理解しまとめ上げた探偵、
フーロは昼休みのチャイムと共に校舎の外壁を駆け上がり、最上階の窓から
手を伸ばす相棒と合流し、購買部までの最短距離を飛びながら笑った。

「アナルパッケージホールド!」

もう一人の探偵はフーロの手を強く握りながら、空いている方の手でサムズアップし
心配ないさと告げる。そう、フーロの相棒となる探偵、アナルパッケージホールド!

フーロのプロローグSSではどのキャラクターでも相棒の可能性がある様に見える。
だが、じっくり読むと相棒の正体がおぼろげに見えてくるのだ。
プロローグでは相棒は声を発しなかったが、フーロとの地の文を使った会話の
様子から無口だが理性的な人間だと読み取れる。
アナルパッケージホールドはDFラインの司令塔であり、任務を与えられた際には
コスト問題を持ち出して断ろうとする程度には知性と理性を持ち合わせている。
そして、焼きそばパン目当てに外部から来たのもフーロとアナルパッケージホールド、
プロローグSSで唯一メタ対応したキャラもアナルパッケージホールド、
声を出すと一発で読者に正体がばれるのもアナルパッケージホールド、
地上から5000mの高さまで来て寒さと恐怖を感じるがそれ以外の不調を
感じないという条件に当てはまるのもアナルパッケージホールド。

これだけの条件が揃っておいて、アナルパッケージホールド以外のキャラが
相棒なわけがないのだ!!

「アナル!アナルルルッル!アナルッ、パッケージホールド!」

叫びながらフーロと共に空中階段を駆け降りる。
何度も体験した空中散歩をアナルパッケージホールドは完全にモノにしていた。
スタート地点までの数十メートルのハンデは無いも同然となり、地上を走る
先頭集団も抜き去り真っ先に購買部入口に到着した。


「この勝負、あたし達の勝利だ!」
「アナルパッケージホールド!」

力を合わせ購買部の扉に手に掛け引っ張る。
だが、思いに反して扉はギギギと嫌な音を立てるばかりでピクリとも動かない。

「ウムーッ、どうなってるんだよ。例え鍵がかかっていてもプレハブ小屋の扉程度
あたし達の力で簡単にこじ開けれるだろうに」
「アナルパッケージホールド」

アナルパッケージホールドが扉の中央に貼られた紙を指さす。
それにはこう書かれてあった。

『二人の男のつまらぬ対立から始まった焼きそばパンの闇の歴史。
真の友情を持った二人ならばこの闇を晴らす事が出来るだろう。
真の友情を示した二人のみにこの扉は開かれる。
希望崎の生徒よ、どうか俺に代わり闇を晴らしてほしいねん。ファー!明石家』

「アナルパッケージホールド~?」
「待ってて、あたしも今推理するよ」

探偵二人の推理は不要だった。二人に遅れる事十数秒で駆けつけた先頭集団がこの
メモの謎を次々と解き明かしていったからだ。

「なにーっ、こ、これは・・・美食神明石家からのメッセージじゃないの!?
『明石家のメモ』、未知の美食のある所に稀に出現すると言われる明石家からの
助言。とっくに故人になっているはずの彼のメッセージが何故現れるのかは未だ
解明されてないけど、これは焼きそばパン入手の手がかりに違いないわ」
「この文章を信じるならば調達部で語られている伝説の存在、明石家こそが
カレーパンを生み出した男!俺の祖先という事か!」

調達部の久留米とパン作り研究会のカレーパンが張り紙に書かれた明石家という
人物の正体を明かす。カレーパンの頭部は久留米に齧られ少し欠けていた。

「闇を晴らすのに真の友情を示す、これはどうすれば・・・
ああーっ、いつの間にか購買部横のグラウンドにリングが出現していますーっ」
「そうか、この地こそがカレーパンと焼きそばパンの創始者の対決の地か。
つまり、ここに辿り着いたメンバーでタッグを作り優勝しろという事だ」

霊能者雲水が指さすリングを見て黒天真言が趣旨を理解する。

「だったら話は簡単だね!私達に勝てるバンドなんているわけないじゃん!」
「う゛あ゛ー、頑張ろうねー」

MACHIは横に立っていた案出堂メアリと勝手にコンビ宣言する。
基本的に天然なメアリはこの提案にオッケーする。
というか、お互いコンビになってくれそうな存在は他にいなかった。

「そっ、そんな馬鹿なー!俺のリサーチでは伝説の焼きそばパンを手に出来るのは
一人だけ!故に【タッグマッチなんて起こるはずが無いのに】!想定外だぁー!」

張り紙とリングに気付いた一之瀬進ががっくりと膝をつく。
今回こんなルートになったのはこいつの魔人能力のせいである。

「良かったぁ…まだ終わってないや……」
「重いからいい加減降りて下さい」
「本来ならお姉様以外とは組む気はありませんが、この中では貴女が
一番信頼できそうですね」
「うん。よろしくね、テスラちゃん」
「うふふ、これは好都合ね。あのままだったらほぼ入手が無理だったもの」
「ヤンス?ヤンスヤンスー!」
「クオックオックオッ」
「クオックオックオッ」

そんな訳で購買部入口まで辿り着けていた十数人はある者は嬉々として、
ある者は仕方なくタッグを組み、焼きそばパントーナメントを開く事になった。


( *)<アナルパッケージホールド!
霊鳥 フーロ
羽ばたき、デカジャ、マハザンダイン、シバブー、
ハマ系無効、ムド系無効、ザン系無効、銃に弱い
( *)<アナルパッケージホールド!




そして十分後。

「さあ始まりました伝説の焼きそばパンを賭けたタッグトーナメント!
実況は俺、一之瀬進だ。くっそ、タッグにあぶれなければ俺も
あっちで戦えたのに!それでは全タッグ入場だー!」

「空から変態が女子高生と手を繋いで降りてきた!誰だてめえら!
伊藤風露&アナルパッケージホールドで『アナル探偵』だぁー!」

「最速ゴール候補が遅れてやってきたのはのんびり屋さんが乗っかってきたから!
つーか、戦えるのかこの人?未来少女メリー・ジョエル&須楼望紫苑で
『クイック・スローズ』!」

「闇に包まれた少年は闇を払う同級生と出会い少し救われたのだ!友情なら
こいつらが一番で間違いないが戦闘ならどうだ?黒天真言&霊能者雲水で
『ニュートラルパワーズ』だ!」

「パンある所俺は行く、美味ある所私は行く、そんな二人が手を取り合った!
間違いなく優勝候補!カレーパン&久留米杜莉子で『フードハンターズ』!」

「マイナスを掛け合わせればプラスになる!キチガイ同士がくっつき周りも一安心!
だが正直対戦したくねえ!MACHI&安出堂メアリで『死亡率300%』だっ!」

「混乱を止める為にここまで来た!今大会屈指の真面目コンビ!
天ノ川浅葱&天雷テスラで『スターサンダーズ』だあー!』」

「焼きそばパンが全く似合いそうにないお嬢様コンビが誕生だ!
可憐塚みらい&下ノ葉安里亜で『セレブガールズ』」

「正体一切不明の第二の刺客!アナル探偵とは別勢力からのアンノウンコンビ!
1号&2号で『ヘルミッショネルズ』だ!」

「以上、8組16名でタッグトーナメントを行う!
どこが勝つかはわからんが、一つだけハッキリしている。
それは【こいつらなら風紀委員なんか目じゃない】って事だ!!
購買部までの戦いを見てきた俺にはそれが分かる!
そしてこれがクジで決まった組み合わせだー!」

購買部の壁にトーナメント表が貼りだされる。

第一試合 アナル探偵VSクイック・スローズ
第二試合 フードハンターズVSスターサンダーズ
第三試合 ニュートラルパワーズVS死亡率300%
第四試合 ヘルミッショネルズVSセレブガールズ

「さあ組み合わせが確定しました。さっそく第一試合・・・スタートだあぁ!!」



( *)<アナルパッケージホールド!
愚者 イチノセ
マッパー、デビルアナライズ
特に弱点は無い
( *)<アナルパッケージホールド!



カーーーーーン!!

ゴングが鳴り響きアナル探偵とクイック・スローズの代表がリングインする。

「アナルパッケージホールド!」
「よ~し頑張るぞぉ」

最初にリングインしたのはアナル探偵側がアナルパッケージホールド、
クイック・スローズは須楼望紫苑。両チームリーダーは温存して様子見といった所か。

「アナルパッケージ!」

アナルパッケージホールドは先手必勝とばかりにブリーフに指をかける。

「ふえっ…!?」

のんびり屋の紫苑でも先の展開の予想はつくぐらい分かりやすい攻撃だ。
狙いはアナル一点、ならば両手でアナルをガードすれば大丈夫!

「ホールド!」

パチーン、ドガッ!

来たのは右ストレートだった。ブリーフから指を離し、ゴムが腰に当たる音と同時に
高速の踏み込みで紫苑の顔面を捕えた。
サッカーでは審判にばれなければボールや相手を殴っても許される!
アナルパッケージホールド得意の死角からの高速パンチ炸裂だ!

「いった~い」
「アナルパッケージ!」

再びブリーフに指をかけるアナルパッケージホールド。

「今度はちゃんと……守ります……」
「ホールド!」

ズルン!ズボォ!

「あ……っ」

アナルを貫かれた紫苑が間延びした悲鳴を上げる。
アナルパッケージホールド、今度は素直にアナルファックで来た。

「アナルパッケージ!」

三度ブリーフに指を掛ける構え。
紫苑はもうどっちが来るのか分からなくなっていた。

「取りあえずぅ…片手でアナルと顔面を同時に守れば……」
「ホールド!」

ゲシィ!

「いや~」

正解はブリーフから抜刀してのストレートパンチでもアナルファックでもない。
ブリーフに両手を入れたままの前蹴り。

「ああーっと、早くも一方的展開です!アナルパッケージホールドのフェイントに
紫苑選手為す術なしー!」
「突き・蹴り・セックスの三択ね。人型の触手の中に稀に同じ事出来る奴いるけど、
あれやられると辛いのよねー」

久留米が一之瀬の隣に座り解説を始める。

「解説の久留米さん、紫苑選手は三択を破れますかね」
「このままじゃあ無理ね。相手にゲーム展開を支配されているのを突破するには、
待ちに徹してカウンターのチャンスを狙うか、三択を正解する勘が必要なんだけど、
あの子の反射神経じゃあどっちも不可能だわ。でも、あの子はまだ能力を使ってない。
能力を見るまで魔人の勝負はどうなるかわからないわよ」
「解説ありがとうございます!おおっと、解説の間に試合も動き出したぞ!
こ、これは一体どうなっているんだー!」

紫苑の間合いから素早く出入りを繰り返していたアナルパッケージホールドの動きが
老人の如くスローになっている。そして、リング全体がなんかホンワカした空気に
包まれていた。

「アナル~パッケージ~」

『夢心地悠長空間(トロイメライ)』、半径10mを自分を除きスローにする能力!
リング一個分なら丸ごと紫苑の領域と化す!
彼女は昼休み開始直後、この能力を使いながら窓から飛び降りてロケットスタート
しようとしていたメリーの背中の上に運よく(メリーには運悪く)着地し
先頭集団に加わったのだ!

「動きが良く見える…、これならカウンタぁもラクラクですね…」
「ホ~ルド~!」

メタァ~

「痛いぃ…」

紫苑それでも被弾!彼女ののんびりペースはその辺の老人以上だった!

「むう、こうなったら最後の手段です。メリーちゃん、タッチして下さい」
「その判断遅い!」

アナルパッケージホールドのキックで吹っ飛ばされたのを利用して選手交代。
チームリーダーのメリーがリングイン。

「じゃあ頑張って…私は能力でアシストするから…」
「その能力は私もゆっくりになって意味ないからじっとしてて下さい!」
「はーい」
「・・・アナルパッケージホールド?」
「待たせましたね。それでは本当の戦いを始めましょう」


メリーの背中から昆虫の4枚翅が出現する。最初からマジモードだ。

「アクセル!」
「アナル!」

両者同時に飛ぶ。リングから数メートル上空で華麗な空中戦が始った。

「と、飛んだぁ~!!これは一体どういう事だぁ~!?」
「大げさに驚きすぎよ。飛行能力を持った魔人は珍しいけれど、これだけの猛者が
集まれば一人や二人はいるでしょ」
「メリーについてはそれでいいですけど、アナルパッケージホールドってセックス魔人
ですよね!うわーどうなってるんだこれー!推理する情報が足りねー!」
「本当にセックス魔人なのかしらねえ、あの変態」

一之瀬大パニック。種を明かせば非常に簡単な事だ。アナルパッケージホールドは
サッカー選手だから飛べる。ゴール前を守護するDFなら空中戦などはお手の物だ。
流石にフーロやメリーの様に持続して高速飛行は出来ないが、リング上数メートルでの
攻防ならばフーロの助けが無くとも容易くできる。
だが、空中戦で優位に立っているのはメリーの方だった。

「おーっと、アナルパッケージホールドの動きが鈍いぞー?」
「紫苑のせいね」
「先程の戦いでは彼はノーダメージだったはずですが?」
「緩急の差よ。クイック・スローズの二人はこの大会で一番速度差があるわ。
その二人と連続して戦ったからアナルパッケージホールドのフォームが崩れたのよ。
そして一度崩れたフォームはすぐには戻らない。下手すると大会中ずっと」
「なるほど、これはアナル探偵大ピンチだー!」

徐々に追い詰められていくアナルパッケージホールドはたまらず着地。
フーロに向けて手を伸ばすが、黙ってタッチを見守る程メリーは優しくは無かった。

「逃がすものか!」

ガシィィィ!

メリーの持っている箒が首を狩る様にアナルパッケージホールドに押し付けられ、
その状態で加速装置をフルスロットルで噴かす。

「アナルー!」

アナルパッケージホールドの身体が箒によって弓の様に引っ張られ、
背骨が悲鳴を上げていく。

「地獄のヒーロー固め!」
「アナルー!」
「こ、これは凄い!魔女の箒を使ってのキャメルクラッチだー!」
「このままだと一分足らずでアナルパッケージホールドはラーメンにされてしまうわ。
もしそうなったら分けてもらおうかしら?」
「凄い食欲ですね久留米さん!私はいりません!
さあ、アナルパッケージホールドはラーメンになってしまうのかー?」

『キャメルクラッチ』、完全に決まれば相手をラーメンにする超大技。
メリーの腕力はアナルパッケージホールドをラーメンにするには足りない。
だが、箒のアシストにより変則キャメルクラッチの威力は数倍となっていた。
アナル探偵一回戦敗退、ラーメンは人数割りにすると一人ドンブリ半分ぐらい。
参加者のほぼ全員がそう思っていた。

「君はそんなもんじゃないだろう?」

フーロは諦めていなかった。

「しっかりしなよ。君も探偵ならここからの脱出の答えは出ているハズ。
【この先】にもこれ以上の戦いが待っているんだからさ。こんなトコで躓くなって」

彼女は助手の勝利を確信していた。
アナルパッケージホールドはこの危機を一人で乗り越えられる手段を持っている。
だから、カットには行かない。

「どうやら、そちらのリーダーはやる気が無いみたいですね。
だったらこのまま一気に背骨を折りラーメンにする!」

メリーが箒を持つ手に力を込め後方に体重を預ける。
今大会は殺人は反則負けだがラーメンにするだけならギリギリセーフである。
ラーメン化した瞬間メリー達のKO勝ちになる。

「さあ、これで終わりだー!」
「アナルーーーー!」

アナルパッケージホールドの頭部が人体の間接の限界を超えて後方に引っ張られた。
ラーメン化によって全身が麺化したから・・・否ッ!

「マ、マスクだけ!?」

箒によって引き寄せられたのはマスクだけだ!
箒を使ってのキャメルクラッチはパワーが強い反面、直接手で引っ張る時より
密着度合で劣る!アナルパッケージホールドはマスクを緩める事で箒を滑らせたのだ!

「アナルパッケージホールドー!!」

首の引っ掛かりを失ったマリーはマスクを持ったままバランスを崩す。
その隙を逃さず、アナルパッケージホールドは腰の力でメリーを跳ね上げて脱出する。

「地獄のヒーロー固め破れたり~!だが、アナルパッケージホールドのマスクが
脱げてしまったぞー!変態の素顔を知るチャンスだー!」

一之瀬を始めとするその場の人々がアナルパッケージホールドの顔に注目する。
素顔を見られたらアナルパッケージホールドは社会的に死ぬ。
そして、相手が社会的に死んでも実際の殺人ではないので今大会ルールでは
ギリセーフ。なので素顔判明の時点でメリー達の勝利が確定する。

「一体どんな素顔なんだ!・・・うおっまぶし」
「まぶしっ」
「まぶしっ」

準備期間が一カ月もあったアナルパッケージホールド。
当然こういう時の対策もしてるぞ!
アナルパッケージホールドは顔中の筋肉を総動員し、鼻の穴を目一杯広げ
眉毛と耳を上下に動かしながらホッペタを膨らませていた。
プロアスリートの全力の変顔は見る者の視力を奪うほどに眩かった。
これぞ、素顔隠しの奇面フラッシュ!

「アナルパッケージホールド!」

奇面フラッシュの効果が無くなって正体がばれる前に決着をつけたい
アナルパッケージホールドはメリーの身体を抱えてロメロスペシャルに近い体勢で
固定する。この体勢はアナル探偵のツープラトンの合図だった。

「ここで決めるんだね!」
「アナル!」

フーロがコーナーから飛び上がってメリーの上に足から落下する。

「これはただのフライングプレスじゃないよ!」

接触の瞬間、フーロはメリーの数センチ上空に足場を作り固定する。
そこに間を置かず、アナルパッケージホールドがメリーを蹴り上げる。
フーロの足場によって逃げ場を失ったカタパルトキックのエネルギーは
メリーの全身を駆け巡り破壊する!

「天!地!」「アナル!」
「ギャアアアア!」

メリーはアナル探偵に挟まれた状態で上下に何度もシェイクされた後リングに倒れた。
誰が見ても戦闘不能なのは明らかだった。

カンカンカーン!

試合終了のゴングが鳴らされる。


( *)<アナルパッケージホールド!
妖精 シオン
休む、スクンダ
物理全般に強い、それ以外に弱い
( *)<アナルパッケージホールド!



「決着ー!第一試合はアナル探偵がツープラトンでクイック・スローズを下しました!
『天・地・アナル』恐ろしい合体技でしたね!
久留米さん、準決勝で戦う相手としてあのコンビをどう見ますか?」
「確かに素晴らしいツープラトンだったわ。それにチームリーダーのフーロさんは
実力をほとんど見せずに勝ってしまったのも怖いわね。でも、攻略法は見つけたわよ」
「おおー!凄い、その攻略法とは一体!?」
「後のお楽しみってやつ。まずは次の勝負勝たないとね」
「そうでした、次はこの久留米杜莉子さんの試合です!この次の勝負も嫁さんを質に
入れてでも見て下さいね!」

すっかりアナウンス係が板についた一之瀬の隣には久留米と入れ替わりで紫苑が座る。

「ふわあ…、負けてしまいましたので解説をします」
「続いての解説役は先程の試合まるで良い所の無かった紫苑さんです!」
「むう、ちょっとは頑張ったんですよ」
「そう言えばメリー選手がやられそうな時何でカットに行かなかったんですか?」
「地獄のヒーロー固めの時に勝ちを確信したら、今迄の疲れが来て居眠りしてました」
「やっぱ駄目だこいつ!さあ、第二試合は実力派の四人が揃いました!
赤コーナー、今大会随一の正義魔人勢、スターサンダーズ!」

まずは浅葱とテスラの二人が観客に手を振りながらリングイン。

「青コーナー、優勝候補ナンバーワン、本格派コンビ!フードハンターズ・・・?」

スターサンダーズの反対側から入場する久留米。カレーパンの姿は無い。
相棒が見当たらないせいか久留米の顔色は良くない。

「ゲプゥ」

久留米のゲップはカレー臭かった。誤魔化す様にそっぽを向く久留米。

「だって凄く美味しかったのよ!控室で二人きりになった時我慢できなかったの!」

対魔人用の手錠が久留米に掛けられ、風紀委員によって生徒指導室に連れて行かれた。

「また予想外したよ俺ー!優勝候補とか言っちゃったよー!
解説の紫苑さーん!笑えよ!こんな俺を笑えよー!」
「スヤァ…」
「せめて起きてろよー!」

さんざんリーダー的オーラを放っていた久留米のまさかの逮捕オチに取り乱す一之瀬。
彼が冷静さを取り戻すにはマイクを自分の顔面に数度、
紫苑の顔面に一度叩き付ける必要があった。


( *)<アナルパッケージホールド!
造魔 メリー・ジョエル
スクカジャ、飛び蹴り、ザンダイン、エストマ、龍の眼光
ザン系反射、ジオ系に弱い
( *)<アナルパッケージホールド!


「えー、大変見苦しい映像があった事をお詫びします」
「オデコ痛い」
「お待たせしました!ただいまより第三試合を行います!
善悪混在ニュートラルパワーズとダブル悪な死亡率300%!
時間が押していますので同時入場です!」

会場の両側から三人がリングに向かってくる。

「おいぃ、また一人足りねえんですけどー!?」
「ゲプゥ」

安出堂メアリの肉体は試合前だというのに返り血に染まっており、
自身も満身創痍だった。そして、ゲップは生臭かった。

「違いますよー、正当防衛ですよー!控室で音合わせしてたら突然、
『音楽性の違いから解散!ファックイエー!』と言ってMACHIちゃんが襲ってきて
紙一重の攻防の末にギリギリで勝てたけど私は被害者なんですってばー!」

対魔人用の首輪がメアリに掛けられ、風紀委員によって生徒指導室に連れて行かれた。


( *)<アナルパッケージホールド!
鬼神 カレーパン
炎の壁、ファイアブレス、ヘルズフィスト、飛び蹴り
アギ系吸収、ブフ系に弱い
( *)<アナルパッケージホールド!


「お前らいい加減にしろ!パートナーを殺すな!つーかパートナーを食うな!
焼きそばパン食いに来たんだろうが!当初の目的忘れてるんじゃねーよ!
あーもう、早く来いよ第四試合の奴ら!四人揃ってな!」

急かされたセレブガールスの二人とヘルミッショネルズの2号が入場する。
ヘルミッショネルズ1号の姿は見えない。

「またかー!また相棒食ったのかー!」

実況席に頭突きをする一之瀬。

「一之瀬君落ち着いて…あの人ゲップしてないよ」
「あ、ホントだ。早とちりしてすみません。それで2号選手、1号選手はどこに?」
「ファー!俺ならここにおるがなー!」

リングとは反対方向から引き気味の笑い声が聞こえる。

「ファー!ファー!」

噴水の上、ヘルミッショネルズ1号が腕を組み独特の笑いを発していた。
1号はマスクと衣装に手をかけ、一気に剥がす。

「ヘルミッショネルズ1号こと美食伸明石家見参や、ファー!」

鍛え抜かれた筋肉質の肉体にカレーパンにしか見えない顔、だがその中心には
カレーパン(キャラ名)とは違い出っ歯が生えている。
調達部に飾られている像と瓜二つ。間違いなく彼は明石家その人である。

「げぇー!我が祖先明石家!まさか、生きてたのか!」

百年以上前に故人になったはずの明石家に驚くカレーパン!

「げぇー!カレーパン!久留米選手に食われて死んだはずでは!」

数分前に死亡が確認されたカレーパンが元気な姿で登場した事に驚く一之瀬!

「確かに俺は一度死んだ。だが、後輩が新しいカレーパンを頭に乗せてくれたのだ」
「その設定って完全にアンパンマ」
「華麗拳!」

カレー全く関係ないパンチが一之瀬を殴り飛ばす。このカレー関係無さっぷり、
間違いなくカレーパン本人だ。そしてそのカレーパンが噴水に立つ人物を明石家と
呼ぶのなら間違いなくあっちにいるのは明石家なのだろう。

「しかし祖先よ、貴方はすでにこの世を去っていたのでは?」
「アホか、死んだ人間がなんでメモ用紙貼ったり出来るねん。まあ、死んでると
思われてた方が自由に動けるから黙っといたけどな」

明石家は噴水から降り、リングへと歩きながら過去を語り始める。

「かつてこのリングで焼きそばパンを生み出したライバル、村上って奴と
千日に及ぶ戦いをしたんはもう知っとるケのケ?
俺はライバルを闇へと落としてしまった自分の罪に耐えきれず傍にあった噴水へ
飛び込み自殺を図った。そこでこいつに出会ったのが俺の運命を変えたんや」
「そう、俺の事や」

ヘルミッショネルズ2号も変装を解除する。ヘルミッショネルズ2号の正体は
野球のキャッチャーの格好をした大男だった。

「ドゥーン!、俺の真の名はストライク・ザ・球道!そこの噴水の底で
10万年間、真のパン職人が来て私とタッグを組みパンによる平和が実現するのを
待ち望んでいたんですわ。そして百年少し前にこの噴水に飛び込んで来た明石家様
こそが俺の願いを叶える存在だと確信したんや。
それ以降この噴水の底でチャンスを待っていたのやねん」

10万年間噴水の中で真のパン職人を待ち、さらに百年チャンスを待っていた男!
なんという気の長さだと全員が心の中でツッコんだ。

「そいつの言う通りや。焼きそばパンの力が最高潮に高まる年と
強い魔人が揃う年を上手く調整し時には調達部やパン研究会をメモ用紙で影から操り
ようやく今年、このタッグトーナメントを開催できるに至ったわけや。
ここに集まった連中の中、優勝したチームならきっと友情パワーで
焼きそばパンの悪意を浄化できる。それが俺の目的であり贖罪や。
無論俺ら自身も全力で優勝を目指すんやけどな」

明石家達の言葉を信じるのなら彼らは元凶でありラスボスでもあるが他の参加者と
変わらない扱いで良いという事だ。問題なしと判断し、開始のゴングが鳴らされる。


( *)<アナルパッケージホールド!
魔獣 トリコ
噛みつき、タルカジャ、ハンマーパンチ、デビルアナライズ
打撃に強い、睡眠無効、魅了に弱い
( *)<アナルパッケージホールド!



カーン!

「ヘルミッショネルズのインパクトのせいで私達の影が薄くなってしまいましたね。
しかし、これは大物喰いのチャンス、セレブガールズの力見せてあげます」
「ドゥーン!この程度の相手、明石家様の手をわずらわせるまでもあらへんわ~」
「セレビガールズはみらい選手、ヘルミッショネルズは球道選手が先鋒を務めます。
実況は引き続き俺、一之瀬」
「解説はカレーパンでお送りする。うーむ、明石家の戦いを見たかったのだが」

みらいと球道はお互い様子を見る事なく一直線に相手に迫る。

「ドゥーン!くらえーメガトンヤキソバ落としー!」
「そんな古いセンスの技くらったりするものですか、マキマキー!」

飛び上がった球道の両足が大量の触手に変化しみらいを襲う!
だがみらいの首から下が瞬時に黒い霧に!触手はむなしくすり抜けていった!

「なにぃ!」
「これぞ吸血殺法ブラックミスト!続いては私のターン、くらえぇー、キバ地獄ー!」

頭部だけの姿で縦横無尽に飛び回るみらい。球道は両腕もヤキソバ化し触手を
振り回すがほとんどの攻撃がかわされていく。そして一瞬の隙をつき、みらいが
球道の首元に噛みついた!

「グワーッ、ウェルカム腕噛むどこ噛むねん!」
「どこを噛んだと言われたら頸動脈としか言いようがありません。
私は二分ほどで致死量の血液を飲む事ができます。
その前にギブアップをするのをお勧めしますよ」

『希望崎のモケケピロピロ』と恐れられ数多の血を吸って来た
みらいのキバ地獄が決まった。
明石家がタオルを投げ込み早くも決着・・・とはならなかった。

「ドゥーンドゥーン」
「な、なんですか!?その余裕の笑いは!こうしている間にも貴方の血液は
失われているのですよ」
「こんなキバで俺は死なへん、明石家様もそれを知っとるからタオルを投げへんねん」
「くっ、そんな強がりすぐに言えなくしてあげます。
ヤスさん!例のツープラトンお願いします!」
「ウヒョーがってんでヤンスー!」

一瞬の出来事であった。美女の姿がゆらめき、なびく髪が球道の視界を横切った。
なんやこれ、ごっつうエエ匂いや。
そう思った時には既に、ミライのキバが彼の首を貫通し反対側の肩にまで突き刺さっていた。
瞬き一つの間にブロンド美女の鉄拳がみらいの後頭部を打ち抜き、
その衝撃でみらいのキバが50センチ伸びたのだ。

「セレブパイルバンカー!!」「でヤンス!」

なおその際、ちょうどリングにいた一年生、可憐塚みらい(かれんつか・みらい)が
後頭部に大ダメージを負った事を我々は忘れてはならないだろう。
彼女はキバ地獄で球道を攻撃している所だった。
ああ、可憐塚みらい!

しかし、これだけの威力の必殺技を放ち、みらいが後頭部のダメージで意識を
失いかけてもまだ球道は表情を崩さなかった。

「小娘よ知っとるか?一部のマスクレスラーはメインマスクの上にオーバーマスクを
着とる事を」

球道の全身に亀裂が入り衣装と皮膚が剥がれていく。キャッチャーの肉体の下から
出てきたのは球審の肉体。

「俺は・・・メインボディの上にオーバーボディを着ていたんやねん!ドゥーン!」
「ど、どういう事!」
「醤油うこと」
「グワ~ッ」

メインボディの強度によってキバが砕け、その激痛によりみらいはついに失神!

「もうだめでヤンスー!」

感受性の強いヤスもつられて失神!

カンカンカーン!

「なんという事でしょう!我々がほとんど実況する暇も無く、チーム内で格下と
思われる球道選手一人で、それも防御行為一つで!
セレブガールズを全滅させてしまいましたー!」
「圧倒的としかいいようがないな。明石家は一体どれだけ強いのだ・・・!」
「これで一回戦は全て終了しました。
準決勝は第一試合がアナル探偵VSスターサンダーズ、
第二試合がニュートラルパワーズ対ヘルミッショネルズとなります。
それでは十分間のトイレ休憩の後またお会いしましょうー!」
「俺も今のうちにトイレ行っておくか」


( *)<アナルパッケージホールド!
妖魔 テスラ
マハジオンガ、ジオダイン、マッパー、エストマ
ジオ系無効
( *)<アナルパッケージホールド!



「う~トイレトイレ、今トイレを求めて全力疾走している俺はカレーパン。
ごく普通のタッグマッチ参加者、しいて他の選手と違う事をあげるとすれば
相棒の暴走で脱落したけれど機会があれば明石家と戦いたいと思っている事カナー。
そんな訳で選手用トイレに到着したのだった」

カレーパンがトイレのドアを開けると、今まさに力尽きんとしている男に出くわした。

「げぇー、誰かが倒れている!」
「・・・アナルパッケージホールド」

男の声にカレーパンは聞き覚えがあった。マスクこそしておらず、
素顔も変顔で分からなくなっているが、その声はアナル探偵の
アナルパッケージホールドで間違い無かった。

「あアナルパッケージほーるど」
「何を言ってるんだ!ヘルミッショネルズはあんたを襲ってはいないぞ!」
「アナルパケー・・・じ」
「なんだって、伝説の焼きそばパンにそんな秘密が!?」
「アナル、アナルパッケージホールド」
「そんな事を言うな、あんたはまだ若いじゃないか」
「あなる」

アナルパッケージホールドの変顔が解除され素顔が明らかになる。
その正体は膝の大手術を終えたばかりの30近いサッカー選手だった。
本人の言う通り、いつ引退してもおかしくないベテランである。

「ああ、あなる」
「この中に予備のマスクが入ってるのだな」

カレーパンはアナルパッケージホールドのブリーフに手を突っこみ、
予備のマスクを引っ張り出すとそれを広げて顔に被った。

「うむ、ピッタリだ。後は靴下とパンツ以外全部脱げば完璧だな」
「あな・・・」
「任せておけ、あんたのパートナーは俺が守って見せる」

カレーパンが着替えを終え、気絶したアナルパッケージホールドを掃除用具入れに
隠した直後、トイレのドアが開きフーロが顔を出してきた。

「こんな所にいたのか!もう試合の時間だぞ」
「華麗パッケージホールド」
「・・・ん?まあいい、行くよ助手」
「華麗パッケージホールド!」

初代アナルパッケージホールド、一回戦でマスクを奪われた後、変顔を維持するのに
体力を使い果たしリタイア。彼がブリーフの中にある予備マスクの存在を
思い出したのはカレーパンに会った時だった。

そして二代目アナルパッケージホールドの戦いが今始まる。


( *)<華麗パッケージホールド!
堕天使 ミルキーウェイ
デビルアナライズ、ヒールドロップ、羽ばたき、トラフーリ、マッパー
特に弱点は無い
( *)<華麗パッケージホールド!



「おせーぞアナル探偵!皆様お待たせしました、只今より準決勝第一試合
アナル探偵VSスターサンダーズの試合を行います。実況は続いて俺一之瀬」
「カレーパンのアニキがトイレから戻って来ないので解説する事になりやんした、
ヤスでヤンスー!」

実況者一之瀬達のリアクションを見てアナルパッケージホールドは安心する。
中の人が変わった事はまだ誰にもばれていない。
      • いや、横にいる探偵がすっごい目で見ている。
ばれてない、ばれてないよね?そう祈るアナルパッケージホールド。

「んー・・・」
「か、華麗パッケージホールド?」
「よし、引き続き一番手よろしく」
「華麗パッケ~」

どうやら戦術を練っていただけのようだと、セーフと胸を撫でる。

「華麗パッケージホールド!」
「一回戦で出番が無かったぶん暴れまくってやりますから!」
「アナル探偵は再びアナルパッケージホールド選手、スターサンダーズは天雷テスラ。
さあ試合開始です!」

カーン!

「華麗パッケージ!」

アナルパッケージホールドは初戦と同じくブリーフに指をかけて三択を迫る!

「取りあえず電撃!」
「華麗ー!」

テスラの指先から青白いスパークが走る!
小規模の爆発と共にぶっ飛ぶアナルパッケージホールド!
フェイント戦術は飛び道具持ちに不利だ!

「華麗パッケージ!」
「さらに電撃!」
「華麗ー!」
「追撃の電撃!」
「華麗ー!」
「置きあがる前に電撃!」
「華ー!」
「ずっとテスラのターン!」
「華・・・」

一方的だった。出の早い飛び道具を持つ事での圧倒的優位がそこにはあった。

「テスラ選手の電撃連打にアナルパッケージホールド為す術なしー!」
「確かに相性の問題でヤンスけど、アナルパッケージホールドさん
一回戦の時よりフェイント下手になってないでヤンスか?
あの時はもっとシュバパーンって動いていた気がするでヤンス」
「一回戦で崩されたフォームがまだ直って無いのでしょうね」
「そういうもんでヤンスか」

一之瀬の推理は間違っていた。このアナルパッケージホールドは
プロサッカーレベルの高速フェイントスキルは持ち合わせていなかった。
全身を電撃で焦がされながらアナルパッケージホールドは決意する。
以前のアナルパッケージホールドを真似ても目の前の相手には通用しない。
ならば、多少のバレるリスクを冒してでも自分の戦い方をするしかない。

「華麗パッケージ…」
「まだ立ちますか、でもこちらにだけ飛び道具がある以上テスラの方が速い!」
「華麗パッケージ砲ルド!」

ブビビビビィ!!
アナルパッケージホールドの口元、マスクのアナル模様の部分から勢いよく
カレーが放出され、電撃を散らしながらテスラにかかる。

「ンギャー!アツアツの下痢便がテスラの顔にー!」

案の定誤解された。

「か、『華麗』パッケージ砲ルド!」

ウンコじゃなくて口に含んでいたカレーをぶちまけただけだと説明した。だが・・・。

「下痢便だよな」
「女の子に下痢便ぶっかけってどんなプレイだ」
「カレー?そんな訳ないでしょ。あれだけの量を出すなんてカレーパン
じゃなきゃ無理よ。よって下痢便」
「アナルから出たんなら下痢便やなファー」
「ウンコでヤンスー!」

満場一致で下痢便説採用。

「うわーん!身体洗ってきますー!」
「華麗パッケージホールドー!」

テスラとアナルパッケージホールド、双方莫大な精神ダメージにより退場。
勝負はフーロと浅葱のリーダー対決で決まる事になった。

「情けない助手め、まあ厄介なビリビリちゃんを退けただけでも良しとしよう。
さあ来い、怪盗ミルキーウェイ!」
「な、なーにを言ってるのか分からないんだけど~?」

リングイン直後いきなり正体を言い当てられて浅葱に動揺走る。

「シャバババ~、あたしの探偵アイはあらゆる地の文を読み取り相手の正体を
暴く事が出来るのだー!あたしは変身などしなーい!だが、お前は隠しているだろう?
あたしは嘘が嫌いなのだぁ~、さあ正体を見せるが良い!」
「地の文うんねんは意味が分からないけれど、そこまで言われたら本気を出さない
訳にはいかないね。変ー身!」
「うおっまぶし」

浅葱の全身が光に包まれると一瞬でツインテールの怪盗の姿に変身した。
この早着替えスキル、正に浅葱こそが怪盗ミルキーウェイである証である。

「怪盗ミルキーウェイただいま参上!予告上通り伝説の焼きそばパン奪っちゃうわよ」
「ああーっと!浅葱選手の正体は怪盗ミルキーウェイだったー!」
「こいつはお釈迦さまでも気づかないビックリ仰天展開でヤンス!」
「さあ、ここから勝負はどの様な展開を迎えるのかー!?」

ミルキーウェイに対魔人用手錠がかけられ、生徒指導室に連れて行かれた。

「ですよねー。はいはい決着です。決勝にコマを進めたのはアナル探偵でーす」
「ちなみに本日魔人確保に大活躍している風紀委員は車口文華さん、
テスラちゃんからお姉様と呼ばれているオヤブン度の高いお方でヤンス」
「準決勝第二試合ニュートラルパワーズとヘルミッショネルズこいやぁ!」

このパターンにすっかり慣れた一之瀬は気にせず大会進行する。


( *)<華麗パッケージホールド!
悪霊 クロアメ
スクカジャ、ヒートウェイブ、テトラジャ
物理に強い、ムド系無効、ハマ系に弱い
( *)<華麗パッケージホールド!


「それは本当かい?」
「はい、口では良い事を言っていますが、ヘルミッショネルズからは
強い悪意を感じます。彼らのどちらか、あるいは両方が伝説の焼きそばパンの
邪気と共鳴しているのでしょう。彼らと焼きそばパンを出会わせてはなりません」
「その悪意を払うのは?」
「彼らのどちらが黒幕か、それを特定できた上で私の全力を尽くせばあるいは」
「それなら僕が先にリングに立つよ。雲水君の能力は直接戦闘には向かない。
僕が出来る限り相手の悪意を見極めつつ力を削ぐ」
「行けません!真言さん!貴方はここまでの戦いでかなり消耗しています」
「それでもやらせて欲しいんだ、ここに来るまでの間に僕の心は君に救われた。
だから、さ」
「わかりました、でも決して死ぬような真似をしないで下さい」
「うん、危なくなったらタッチするよ。それが無理そうに見えたらタオル投げて」

黒天真実の抱えていた闇は、焼きそばパン争奪レースの中で霊能者雲水によって
ほぼ完全に晴らされていた。その経緯を描写すると長くなる、長くなるので書かない。
まあ、こんな美味しいネタ十数人いる他の作者の誰かが拾ってくれているだろうから
そちらに頑張ってもらおう。このSSではそういう事があったものとして処理する。


( *)<華麗パッケージホールド!
ガイアーズ ウンスイ
パララディ、ポムズディ、ペトラディ、パトラ、ディアラマ、ハマオン
ハマ系反射、ムド系反射、物理全般に弱い
( *)<華麗パッケージホールド!


カーン!

「準決勝第二試合、ニュートラルパワーズからは黒天真実、
そしてヘルミッショネルズからは遂に明石家が出陣です!」
「こんな時にカレーのアニキは何をしてるんでヤンスかねー」

黒天は明石家と距離をとり金貨を一枚取り出す。

「ここに到着するまでの戦いで剣の金貨は使ってしまった・・・。
僕はこの王の金貨に全てを賭ける!」

金貨が黒天の肉体に装着される。能力発動の音声が鳴り響く。

『キングメダル、イーン。キ・ン・グ!ハ・エ・の・王・者ァー!』

王の金貨の効果が無事発動し黒天はハエの集合体へと姿を変えた。

「ファー!一回戦の霧になったお嬢ちゃんといい、この学校にはおもろい子おるやん。
ほなら・・・うん。取りあえず落とすか。元祖華麗砲!」

ドバババババーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

美食神の名は伊達ではない。明石家は華麗流五段の使い手だった。
その出っ歯の下の方から放たれる華麗砲の熱量たるやカレーパンの数倍!

黒天の肉体から生まれたハエの大部分がカレーに飲み込まれていく。
過半数のハエが死ぬ事で本人にダメージがフィードバックしてしまう。
だが、それは即死を意味するのではない。

他のハエが壁となり生き残ったハエが明石家の上空に集まると、
それは黒天の姿へと戻り明石家の首を全力で踏みつけた!

「ハエ式誉れ落としー!」
「ファー!」

頭部がカレーパン化している事と年齢が原因で明石家は首の接続が
普通の人間に比べてかなり脆くなっている。
首へのハエ式誉れ落としは非常に効果的だった。

「ファーやるやんけ。まさか俺がこんな風に不覚ととるなんてなあ」
「明石家様、一旦お戻りください。貴方に万一の事があってはなりません」
「おう、任せたで球道」

明石家は球道とタッチしてリングアウトする。

「黒天さん、こちらも交代です」
「そうだね・・・正直もう限界だよ」

黒天はよろめきながら雲水にタッチする。

「先程の戦いを観察する限りでは明石家さんは純粋に戦いを楽しむ美食家でした。
しかし、貴方はどうでしょうか」
「ドゥーン!わけの分からん事を~!お前の様なデブ一気に蹴散らしてくれるわ~」

球道の四肢が同時にヤキソバ触手と化し雲水に迫る!
運動の苦手な雲水はあっさりと触手に縛り上げられた!
その見た目たるやチャーシューの如し!

「ドゥーン、このまま絞めあげてくれるわー」
「ふふふ、良かった。私は魔人としては体術はさっぱりでしてね。
これで直接払う事ができる」

雲水は大きく呼吸をし触手を握りしめる。

「セイッ!」
「な?し、しまったでー!」

雲水の魔人能力により球道のプロテクターとマスクにひびが入り崩れ落ちていく。
マスクが崩れ落ち明らかになった球道の頭部、それは焼きそばパンの形をしていた。

「お、お前村上やないけ!どういう事やねん!」

リングサイドの明石家が彼の正体に真っ先に気付き、そして混乱する。
球道の正体は彼も知らなかった様だ。

「ドゥーンドゥーン!その通り、俺はかつてお前のライバルだった村上。
10万年間希望崎の噴水の底にいたなどというのは真っ赤なウソよー!
俺は憎かった!俺達は互角の存在だったのにお前は美食伸と呼ばれ、
俺はお前に破れた魔王の如く扱われた事に我慢ならなかった!
百年程度の短い間だったがお前を騙している間は楽しかったで!
せやけどそれも終わりやー!ここにおる奴ら全員しばいた後、
悪意を詰め込まれた伝説の焼きそばパンと融合し俺は真の神となるねんよ!!」
「あの、村上さんちょっといいですか?」
「なんやぽっちゃり系」
「大変いまさらなんですが、四限目の授業受けましたか?」
「授業?なんで受けなあかんねん?明石家は最上階の予備教室で
わざわざ受けたみたいやけど何か意味あるんかそれ?」

ストライク・ザ・球道改め村上は対魔人用の手錠をかけられて生徒指導室へゴー。

「あ、悪意消えました。生徒指導の先生に絞られて反省したんですね」
「ファー!この時代の風紀委員と生徒指導凄いな!」


( *)<華麗パッケージホールド!
屍鬼 メアリ
噛みつき、暴れまくり、パニックボイス、消化液
物理及び魔法全般に強い、ムド系無効、精神系無効、ハマ系に弱い
( *)<華麗パッケージホールド!

「うートイレトイレ。今トイレを目指して全力疾走しているオイラは
どこにでもいる三下でヤンス。しいて他と違う所をあげるとすれば
周りが三下と認めてくれない事でヤンスかねー。名前は下ノ葉安里亜でヤンス。
そんな訳でオイラは選手用トイレに辿り着いたのでヤンした」

女子用トイレはテスラが全身にこびりついたウンコ(本当はカレーだけど)を
落とす為に使っている。なので男子用トイレを使うしかなかった。
国民的美少女が男子トイレに入る、一つの大事件だが、性根が三下なヤス。
その辺については全く気にせずトイレに入っていった。

「ウヒョー!お邪魔するでヤンスー!」
「華麗パッケージホールド・・・」
「ひょげー!アナパケさんボロボロでヤンスー!」

このアナルパッケージホールド、国民的アニメのキャラ扱いされると怒りで強くなるが
ウンコ呼ばわりされるとこの様にめっちゃへこむのだった。

「取りあえず呼吸しやすい様にマスクをとらせていただくでヤンス」

ダメージから未だ立ち直れないでいたアナルパッケージホールドのマスクを
ヤスは強引に奪い取る。

「げぇー、中の人はカレーパンのアニキ!どういう事でヤンスか!」

カシャカシャカシャチーン

帝王学以外の成績は本当に優秀なヤスは瞬く間に真実に辿り着く。

「アナルパッケージホールドは途中で入れ替わっていたでヤンスか」
「華麗~」
「分かっているでヤンス。空気読んで黙っておくでヤンスよ」
「華麗!華麗!華麗パッケージホールド!」
「えっオイラが代役に?そりゃあ色々と無理があるでヤンスよ。
オイラみたいな性別も服装も体格違うのには無理でヤンス」
「華麗、パッケパッケー!」

必死で首を振って否定するアナルパッケージホールド。
いいから被っておけ、そうすれば分かるとカレーで黄ばんだマスクを
強引に被らせてそのまま満足したかのような顔で力尽きた。

「ヤンスパッケージホールド・・・」

どうしたものかと考える新たなるアナルパッケージホールド。
取りあえず先代のアナルパッケージホールドを掃除用具入れに隠そうとすると
扉を開けると同時に全裸の初代アナルパッケージホールドが転がり落ちた。

「や、ヤーンス、ヤンスヤンス?ヤンスー!」

ちょっと驚いたがまあいいやと二人のアナルパッケージホールドを纏めて
掃除用具入れに押し込むと、正にその直後、フーロが男子トイレを覗き込んで来た。

「だから君トイレ長いってば!・・・ん?まあいいや、早く来てよ」
「ヤ、ヤンスパッケージホールド」

二代目アナルパッケージホールド、自分のカレーが下痢便扱いされトイレにて散る。
そして後の事は三代目アナルパッケージホールドにたくされた。


( *)<ヤンスパッケージホールド!
外道 MACHI
暴れまくり、パニックボイス、ムド、ハマ、コンセントレイト、テンタラフー
精神系に強い
( *)<ヤンスパッケージホールド!



「ヒョーショージョー、アナル探偵どの。お前らは最高のタッグとして
トーナメントを乗り越えた。まあ、半分ぐらいのタッグが自滅しとった気もするけど。
とにかく最後まで残ったのはお前らや。俺も納得したし、村上も反省した。
今なら購買の扉も余裕で開くやろ。ファー」

戦う理由も戦う力も残ってはいない、そう言いニュートラルパワーズは決勝戦を棄権し
アナル探偵がタッグトーナメントの覇者となった。
フーロが明石家から賞状を受け取りガッツポーズするとリング上のアナル探偵に
大きな拍手が送られた。

「ヤンス~」

アナルパッケージホールドは観客が怪しんでこないのを見てほっとした。
変態が女子の服を着ても変態のベクトルが多少変わっただけとモブ達は
判断していたのだろう。マスクさえ被っていればアナルパッケージホールドは
アナルパッケージホールドとして認識される。いや、むしろモブ達にとっては
マスク部分こそがアナルパッケージホールドの本体なのではなかろうか。
そう考えているアナルパッケージホールドの手を握りしめてくるものがいる。
この大会を共に戦い抜いたフーロだ。

「さあ、行くよ。今度こそあたし達の勝利をこの手にするために」
「ヤンス!」

購買部の入口の扉を二人で引く。扉はさっきの強固さが嘘の様にあっさりと開き、




中 で は 惨 劇 が !!!!!!!!!!!!!!


( *)<ヤンスパッケージホールド!
夜魔 ミライ
吸血、エナジードレイン、アカシャアーツ、ランダマイザ、セクシーダンス
ムド系無効、魅了無効、ハマ系に強い
( *)<ヤンスパッケージホールド!


血だまりに沈む生死不明のレジ店員。
そしてシルクハットを被った怪盗ファッションの人物が行儀悪くレジ台の上に立ち
『でんせちゅ』と書かれたラベルの付いた焼きそばパンを握りしめている。

「ファック!店員マジ糞野郎だよぉ・・・、孤立無援なのに最後まで抵抗してきて
マジ大変だった・・・。おかげで逃げ切れずにこうやって見つかるしさぁ」

怪盗っぽい人物は自分がキチガイかつド下等な存在である事をたった二行で
その場にいる全員にアピールしてみせる。

「見つかっちゃあしょうがない!ヘーイ、もう皆知ってると思うけど自己紹介するよ!
『God Wind Valkyrie』のボーカル/ギターのMA・・・、
じゃなくって怪盗ミルキーウェイ予告通りに只今参上!」
「いや、お前MACHIだよな」

アナル探偵に続いて購買内に入って来た全員を代表して一之瀬が確認のツッコミをする。

「いやー、大変だったわーこのレジ店員マジファッキン強敵だったわー、
私にゴッヴァル魂無かったらじゃなきゃ死んでたわー。でも大勝利ファックイエー!
後はこのズタボロの連中を振り切って逃げるだけ、最初にくたばるのは誰かなー?」

一之瀬のツッコミは無視して自称怪盗ミルキーウェイはレジ台の上から全員を
見下ろすと焼きそばパンを強く握りしめる。

「最初にブッコロすのはお前だ伝説の焼きそばパンー!」

怪盗っぽいのはドレスをまくりあげ、焼きそばパンを自分の尻に何度も叩き付ける!

「ファック!ファック!焼きそばファック!ファック!ファック焼きそばファック!」

ぽこぺん!ぽこぺん!ぽこぺん!ぽこぺん!

パンツだけど恥ずかしくないもんとばかりに尻を左右に振りながら焼きそばパンを
叩き付け間の抜けた音を鳴らし続ける。

伝説の焼きそばパン、それに対する思いは様々だったが、手に入れたそれを
自分の尻をスパンキングする為に使うなんて誰が考えただろうか。誰も居ない!
あまりに予想外の行為に誰もが金縛りにあったかのように動けないでいた。
だが、怪盗らしき人物の行為はまだエスカレートする!

「ファック焼きそばパンファーック!」

焼きそばパンのラップを剥がすとパンツをずりおろし、股間に焼きそばパンを密着!

「伝説の焼きそばパンめぇー!お前みたいのがいるからっ!アンッ!アンッ!」

焼きそばパンの背中をギターの様にかき鳴らす。ヤキソバが右手の動きに連動し
股間の表面でウネウネと動く。まさに焼きそばパンオナニーだ!
全員がその様子を見守る事しか出来なかった。その思いは一つ。
『なんてエロイ光景なんだ』・・・否!
『取り返さねばならないのに身体が動かない』・・・否!
『お前頭おかしいだろ』・・・正解!

「ファック、イクっ、ファックイクー!そしてお前は地獄に行けぇー!」
「グワーッ!」

怪盗風味の謎の人物がオーガズムに達し全身を震わせると、
股間に密着していた焼きそばパンが悲鳴をあげながら黒ずみ腐敗し朽ち果てた。
そして、自分達の探し求めていたものが失われた事により、硬直していた
メンバーはようやく我に返る。

「焼きそばパンが・・・私の目的が腐って無くなってしまった・・・」
「私の格好をした偽物のオナニーに使われて腐って消えた・・・」
「つーかMACHIだろ。MACHI じゃなかったらどうしようってレベル・・・」
「僕たちの戦いはなんだったんだ・・・」
「ヤンスパッケージホールド・・・」
「う゛あ゛ー・・・」
「お姉様早く来て・・・」
「悪意に満ちています・・・私が言わなくても皆わかってますね・・・」
「食への感謝に反する最低の行為だわ・・・」
「この子の血だけは吸いたくない・・・」
「やっと追いついたらぁ、酷い事になってますね・・・」
「どないオチやねん・・・ファー・・・」
「ドゥーン・・・俺が見たかったのはこんな焼きそばパンやない・・・」
「アナルパッケージホールド・・・」
「華麗パッケージホールド・・・」

顔にトイレットペーパーを巻き付け合流してきた二人のアナルパッケージホールドを
含め全員が絶望に染まる。いや、絶望どころかワクワクした表情でそちらを見ている
存在が一人いた。
探偵伊藤風露、彼女はそちらを、これを読んでいる貴方達の方を見ている。

「さあ、読者への挑戦状の時間だよ!」


( *)<ヤンスパッケージホールド!
地霊 ヤス
タルカジャ、ラクカジャ、ディアラハン、パトラ、ポムズディ、ハンマーパンチ
混乱に弱い
( *)<ヤンスパッケージホールド!



「読者諸君待たせたね。ここまでが出題編の全て。え?言ってる意味が分からない?
やだなー、最初のタイトルを見てごらんよ。ちゃんと出題編と書いてあるでしょ?
過去のSSでこういう形式にしていたものはもれなく負けているけれど、作者が
一度やって見たかったんだってさ」
「おい、明後日の方見て何わけわかんねえ事いってるんだよ」
「一之瀬君ちょっと黙っていてね。あたしは読者さんに語りかけてるのさっ」
「そうか、無理もねーな。伝説の焼きそばパンがあんな失われ方したら
頭おかしくなる奴が出てきてもしょうがねー。あの怪盗は俺らでふんじまっとくから
保健室行ってこいよ」
「やれやれ、失礼な男だなあ。まー推理物にはこういう一之瀬君みたいな
探偵のかませになる存在が不可欠だし許容しなきゃね。
さて、話を戻そう。君達に推理して欲しい点は以下の通りだよ」

  • 怪盗ミルキーウェイを名乗るキチガイの正体と動機
  • 入口が締まってる中、どうやって潜入したのか
  • アナルパッケージホールドはここからどうやってレースの勝者になるのか

「まずあれはどう考えてもMACHIだ。ゾンビ女に殺されたと思ってたけれど、
殺したとか食ったとか一言も言って無かったんだよな。あいつのゲップが生臭いのは
いつもの事だし。MACHIはゾンビ女に喧嘩売って自分を死んだ事にして、
全員の視界から外れたのを確認後、試合に熱中している奴らの後ろを通り
焼きそばパンを腐らせたのと同じ方法で鍵穴なり窓なりを破壊して潜入。
レジ店員を倒した所で俺らに見つかったってところだろう。
動機?良く分かんねーけど焼きそばパンに恨みでも持ってたんだろう。
頭おかしいがそういう点では俺に近い動機か?」
「君達は一之瀬君の推理を参考にしてもいいし、どうせ一之瀬だから外れだろうと
完全無視してもいい。ただこれだけは言えるんだ。あたしと同じく地の文を参考に
できる皆ならきっと正解できるって。それじゃあ裏レース結果発表後、
幕間スレに掲載予定の解決編でまた会おうね!」











幕間スレにつづ・・・かない。





うおー!俺はこの裏レースに勝ちたいんじゃー!だから全部出し尽くすんじゃー!
このまま解決編を続けて投下するんじゃー!というわけでフーロさんよろしく。

「アッハイ、読者の皆は推理を固めてから続きを読んでねっ!」


( *)<ヤンスパッケージホールド!
クニツカミ アカシヤ
マハラギダイン、炎の壁、菩薩掌、飛び蹴り
打撃以外の全てに強い
( *)<ヤンスパッケージホールド!


『伝説の焼きそばパン盗難事件!自称怪盗ミルキーウェイはファックイエーと笑い
アナルパッケージホールドはトイレで二度散るタッグマッチのMVPは風紀委員の
お姉様で購買に到着するまでの攻防は以下略されちゃいましたこれというのも
大体一之瀬の魔人能力のせいなんですよそしてリングに下痢便走るみらいの
後頭部大打撃犯人はヤスゾンビのゲップは生臭い・解決編』


「焼きそばパンとカレーパンの因縁、美食神明石家の正体、黒天の背負った罪、
そして伝説の焼きそばパンにまつわる災厄、プロローグで語られていた伏線の
ほとんどは消化できたと言っていいだろう。だが、最後に残った謎がここにある。
予告状を出した怪盗ミルキーウェイは一体誰なのか?」
「MACHIだって言ってるだろ」
「ぶれないなあ一之瀬君は。でも地の文が読めない君の限界はそんなものか」
「さっきからすげえムカツクんですけどー!地の文って何だよ」
「そうだね、これからの推理を説明するには地の文の情報を共有する必要があるね。
助手ー、今から全員に地の文伝達するから手伝ってー」
「「「アナル・華麗・ヤンスパッケージホールド」」」

アナルパッケージホールドとアナルパッケージホールドとアナルパッケージホールド
によって全員が整列させられ、フーロとの握手会が行われた。

「作者さん!MACHIが偽ミルキーウェイの正体ではありえない理由を
下の段落にプリーズ!」

はいなー。
プロローグSSを全員分読んでもらえればわかる事だけど、偽の予告状が届いたのが
5月1日。伝説の焼きそばパン入荷が一般生徒に知らされたとほぼ同時だ。
一方でMACHIが伝説の焼きそばパンに興味を示したのが5月5日。
よって、彼女が予告状を出したという事は絶対にあり得ないのだ。

「ね?」
「ね?じゃねーよ!何だこれ!プロローグSSとか意味分かんねーよ!」

一之瀬大混乱。他のキャラも多かれ少なかれ動揺している。

「一之瀬君の隠しておきたい過去とか学校休んでいて焼きそばパンの情報入手が
遅れた事とかが書かれたSSだよ。この情報を地の文で出して共有すれば
一之瀬君は容疑者から外れるけどやって見る?」
「すんな!頼むからやめろ!」
「チッ、残念。でも、あたしの探偵としての凄さは分かってもらえたかな?」
「嫌な程わかったよ」

一之瀬に納得してもらい他の面々からも反対が無いのを確認したフーロは
犯人にビシリと指を突きつける。

「君はMACHIちゃんでは無い!」
「ファァッック!!!!」

真実を告げられた犯人は苦しみだし、変装が剥がされていく。
犯人に向かって突風が吹き荒れ怪盗の衣装が飛ばされ下着姿になった。
だが、その外見はまだ怪盗ミルキーウェイから下着姿のMACHIになっただけだ。
完全に正体を暴くには具体的にその名を告げなければならない。

怪盗に扮した犯人とっとと逃げろよと思っている読者もいるだろう。
だが、探偵の推理中とラスボス戦では誰も逃げられないのだ。
今は探偵の推理中かつこの犯人はラスボス。お互い逃げ場は無い。

「5月1日に予告状を出したという事は準備はそれ以前に行われていたという事。
よって、入荷情報を事前に知る事の出来ない生徒は容疑者から外れ、さらに
久留米さんと一之瀬君もプロローグSSでの地の文により犯行が無理だと証明される。
カレーパンは少し怪しいけれど彼は脳筋だ。結局のところPCの中で予告状が
出せるのは二人、事前に入荷情報を知っていたアナルパッケージホールドとあたし。
モロチン探偵のあたしノックスに誓って犯人じゃないよ」

全員の視線がアナルパッケージホールド達へと向く。

「華麗パッケージホールド」
「ヤンスパッケージホールド」

自分達は違うと二人のアナルパッケージホールドが中央のアナルパッケージホールドを
指さす。

「ア、アナル!アナルー!」

アナルパッケージホールドは手をぶんぶん振り自分じゃないと否定する。

「モロチン分かってるさ。心配しないでよ助手。君を犯人だと思った事は無いよ。
ただ、君が一番犯人の可能性が高い事を説明する必要があったんだ。
さて、アナルパッケージホールドはPCの中で一番犯人の可能性が高い人物だ。
だが、それ以上に犯人として相応しいNPCがいる!」

フーロは再び犯人を指さし宣言する。

「その人物は誰よりも早く伝説の焼きそばパン入荷情報を知っていた!」
「オウッ!」

犯人のブラジャーが外れる!

「その人物は希望崎に自由に出入りする事が出き、購買の内部も熟知していた!」
「オカッ!」

犯人のパンティーが脱げる!

「その人物は妻子のあるノンケを狂わせる程の女装の達人にして
ミルキーウェイの研究第一人者、夜魔口悪童55歳!」
「オカマァァァァァ!!!」

犯人の股間から隠していたチンチンが飛び出す!
そしてその肉体はオッサンの姿に戻っていった!
ほぼ完全に全裸のオッサンだが頭部にMACHIの髪型のヅラが乗っかったままなのが
どこか物悲しい。
購買内の多くの人物が改めてアナルパッケージホールドを見る。

「アナル!アナルー!」

アナルパッケージホールドは手を振って否定する。

「アナルパッケージ!アナルパッケージホールドー!!」

最初は社長が連れてきた企画物AV女優だと思ってアナルファックしていたけど
数をこなすと段々オッサン化していき気づいた時には老若男女のアナルをファック
出来る様になってしまっていたと弁明する。

「取りあえずこの変態が奥さんを裏切って浮気したのは確定でいいんだよな?
しかも女装したオッサン相手に」
「アナルー!」

一之瀬の心無い一言でアナルパッケージホールドはその場に倒れ込み動かなくなる。

「ああっ、助手が死んだ!この人殺し!」
「知るか、そんなのより犯人の追及が先だろ。おいオッサン、この探偵の推理
合ってるんだよな?」
「くっくく、その通り!バレては仕方がない。俺が偽怪盗の正体、悪童だーっ!」


( *)<ヤンスパッケージホールド!
邪神 ムラカミ
ダークブレス、マハムド、デスバウンド、タルンダ、テトラカーン
ムド系反射、銃無効
( *)<ヤンスパッケージホールド!


悪童は自分が今日してきた事を話し始めた。探偵に真実を突きつけられた犯人には
自白の義務が存在する。探偵と犯人の間に存在するルールの一つだ。

「アナルパッケージホールド一人では伝説の焼きそばパン入手の可能性が低いと
思った俺は、夜魔口パンの商品配送者として昼前に購買内に入りその場に留まった。
争奪戦が購買内までもつれ込んだ時に密かにアナルパッケージホールドのアシスト
をする事が目的だったんだが、お前らが入口を封鎖してタッグトーナメントなんて
始めたじゃないか。この時店内はレジ店員と俺だけで残りは締め出されていた。
チャンスだと思った。下見の時に不可能だと諦めていた、俺一人で
伝説の焼きそばパンを奪う計画が実現可能になった。怪盗ミルキーウェイの
予告状は学校側を混乱させる為だけに用意したものだったが、この状況なら
ミルキーウェイの偽物として焼きそばパンを盗む事が出来る」
「ミルキーの下にさらにMACHIに変装していたのは何でだよ?」
「俺はすぐには行動を実行に移さずタッグマッチを窓から覗いていたんだ。
そして村上という男のオーバーボディをヒントにこの策を思いついた。
口調が特徴的な彼女に化ければ偽怪盗の正体は希望崎学生という事に出来る」
「ナルホド、つまり逃げ遅れて俺達に見つかったというのではなく、
姿を確認させる為に留まっていたのか」
「ああ。だが、探偵のお嬢さんがここまでとは思わなかった。
犯人をMACHIって子に誤認していればそのまま逃げるつもりだったんだがな」

能力の限界、それが悪童の敗因だった。悪童の能力『メタ漏るチェンジ』は
自分の見た事のある女性に化ける事ができ、その副作用としてメタな内容を
知る事が出来る。しかし、それで知る事が出来るのは能力名の通りこぼれ話のみ
であり、欲しい情報を自由に得られる能力では無い。
だからMACHIが五月一日には焼きそばパンに全く興味を持っていないという事を
知らずに怪盗ミルキーウェイを演じてしまい、そこを指摘されるハメになったのだ。

「むふふーん。どうだまいったか!あたしの探偵力がお前の野望を打ち砕いたのさ!」
「・・・確かに推理合戦ではお前の勝ちだ。しかし、俺にはまだ切り札がある」

犯人として、偽怪盗として敗北はした。だが、悪童はまだ諦めてはいない。
MACHIのヅラを乗せたまま醜悪な笑みを浮かべるとアナルパッケージホールドに
向かって叫ぶ。

「起きろアナルパッケージホールド、俺と一緒にこいつらを殺すぞ!分かってるだろ、
俺が捕まればお前も破滅だ!こいつらが死んでもそれは焼きそばパンの仕業
という事にすれば大丈夫だ!」
「アナルパッケージホールド!」

アナルパッケージホールドは起き上がると悪童に駆け寄り、そして右ストレート!

「ンゲー!」
「アナルパッケージホールド!」
「な、何故だぁ!俺の合図一つでお前の家族は・・・」
「あー、その事なんだけど」

フーロは悪童の言葉を遮り、懐からスマホを取り出して画面を見せる。
アナルパッケージホールドの家が映されており、玄関にはヤクザ数人が気絶して
積み重なっている。そしてその横ではモヒカン達がピーズサインしている。
このモヒカン達の顔、争奪戦参加者の何人かは彼らに見覚えがあった。

「華麗パッケージホールド!!」
「ヤンスパッケージホールド!!」
「狼瀬先輩、私を助けてくれないと思ったらこちらにいらしてたんですね」
「こっちにいるのはギョロ子さんじゃないですか。そう言えば今日は会ってなかった」

画面の端に写ってピースしているのはモヒカン十傑と校則違反四天王だった。
ボロボロになって壁にもたれかかっているのは鳥巻兄弟と群田悪九斎。
画面を切り替えると裏口の前でヤクザを次々撃破している狼瀬白子。
家の中でアナルパッケージホールドの子供達と遊んでいる緒山文歌に
首飾ギョロ子。
最後の画面では小松純が傷の回復を促す料理を配っていた。

「と、言うわけ。あたしの助手は今日の時点から自由に動ける様になっていたのさ」
「アナル!」
「助手も今迄演技ご苦労さま。いやー、アンタも多少は地の文が読めるっぽいから
バレずにここまで来るのは苦労したよー」

肩を組みあいハッハッハと笑うチームアナル探偵。だが、変顔で死にかけたのは
演技じゃなくってマジだ。あの時は本当に危なかった。
悪童はワナワナと震えている。自分の駒と思っていたアナルパッケージホールドに
出し抜かれていた事もそうだが、その怒りの大部分は別の所にあった。

「探偵!貴様どうやってこれだけの戦力を揃えた!!」
「一カ月以上の準備期間があったのはそっちだけじゃないんだよ?
アンタがチマチマ下調べしている頃、あたしは生徒会に交渉していたんだよ。
焼きそばパンを奪おうとしている奴をギャフンと言わせる為に校則違反者と志願者を
戦力として貸してほしいってね。
外部からの刺客の中でも一番厄介になるだろうアンタとアナルパッケージホールドを
封じ込める事が出来ると説明したら生徒会は喜んで協力してくれたよ」
「俺がこう動く事を予測していたというのか」
「アハ、だってアンタ地の文見ると怪しすぎだもん。事情を知ってる他のキャラが
焼きそばパンを危険なものとして見ているのにアンタだけ商売の話しかしていない。
モロチン、パンの道三十年以上のアンタが焼きそばパンの秘密を知らないはずはない。
つまり、アンタが組や助手に本当の事を伏せていたのは、自分の為に焼きそばパンを
使おうと考えていたから!!」

パッキーン!

最後の謎が明かされ、悪童の頭に乗っていたヅラが割れる。
剥きだしになった頭部の上には『でんせつ』と書かれたラベルのついた焼きそばパンが
乗っかっていた。

「やはり、あたし達の前で腐らせてみせたパンは偽物だったね」
「・・・こうなっては仕方がない。ここで焼きそばパンの力を使うとしよう」

悪童は伝説の焼きそばパンのラップを剥がし始める。明らかに彼はレジを通して
おらず、そして4限目の授業も受けてはいなかった。これまでの推理でそれは
全員が理解する所だった。

「覚悟するがいい!村上の悪意が失われたというのなら俺が新たな焼きそばパンの
悪意となり、この場に新たな伝説を――――――――」

風紀委員によって悪童に対魔人用の手錠がかけられ、生徒指導室に連れて行かれた。

「うわ、お姉様つよい」
「いやいやいや、強すぎだっての!何の補正がかかってるんだよ!」
「主に君のせいだよ、一之瀬君」
「はあ!?」
「あーあ、本来なら豪快なラストバトルが行われ、あたしの大活躍だったのになー。
まあ楽できたしいーかな」

キーンコーンカーンコーン

「あ」

昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。
グダグダしているせいで結局誰も所有権を得ないまま昼休みが終わってしまった。

( *)<ヤンスパッケージホールド!
魔王 ロキ
セクシーダンス、エナジードレイン、マハムドオン、デスバウンド
魔法に強い
( *)<ヤンスパッケージホールド!


こうして伝説の焼きそばパンを巡る戦いは終わった。

フーロは自分のパンツの中に手を突っこみ十数枚の覆面を出し、
「本当はこれを皆に被ってもらって全員アナルパッケージホールド化して主役補正で
ゴリ押し勝利する予定だったんだけど。うんっ、みんな一之瀬君に感謝!」
そう言って空を駆け上がり何処かへと去っていった。
結局彼女の目的は最後まで明かされなかった。しかし事件が解決した今それを聞くのは
ヤボというものだ。アナルパッケージホールドと協力しタッグトーナメントを
勝ち抜き、夜魔口悪童の野望を阻止した。そのどこかで目的は達成していたのだろう。
「彼女は優秀な探偵なのだから。って締めでヨロシク!」
はいはい、かのじょはゆーしゅーなたんていなのだから~。


アナルパッケージホールドの正体は争奪戦翌日あっさりマスコミに暴かれてしまった。
日本サッカー界を代表するDFが変態の格好で高校の購買で暴れる、そのニュースは
スポーツ新聞の三面記事を飾ったがそれ以上の発展は無かった。
夜魔口パン社長の突然の辞任と夜魔口FC売却のニュースが上塗りしてしまったからだ。
夜魔口組は暴走した悪童を切り捨て、焼きそばパン絡みの件からいち早く手を引いた
結果こうなったのだ。アナルパッケージホールド、いや、片春人は家族とファンへの
謝罪の後、夜魔口が売却したサッカークラブに選手兼コーチとして就任した。
復帰へは遠回りになり、年棒も半分以下になってしまった。信頼も大きく失った。
だが、もう片とその家族を縛る存在はどこにも無かった。


「もう俺らに出来る事はないわな」そう言って明石家と村上は消滅した。
彼らの肉体は首から下もとっくに失われていて、パン作りの技術で仮の肉体を
作っていたそうだ。彼らが去る前に残したレシピはパン研究会と調達部を
驚かせるものばかりだったという。


紫苑、みらい、ヤス。この三人はパン作り研究会に入部した。
みらいは食べ損ねた伝説の焼きそばパンを自分の手で作り出す為に、
ヤスはオヤブンの口に合うパンを研究する為に、
紫苑は取りあえず打ち込める事を探していたら研究会が賑やかだったから。
彼女達の独特の発想からは新たなパンが次々と生まれてきた。
「10秒チャージをヒントに作った10秒で食べられるパンですよぅ…」
「血のしたたる、レバー丸ごと一個入りドッグでございます」
「パシリ用に包装紙を持ちやすくしてみたでヤンス~」
「華麗パッケージホールド!」
アナルパッケージホールドは新入り達のパンを厳しく時には優しく評価する。
「へへ、もーらった」
「う゛ぁー」
「華麗パッケージホールドー!」
そして、つまみ食いに来る久留米とメアリには厳しく厳しく接する。
「あの人いつまでアナパケでいるのでしょう」
「何か…気に入ったみたいですよぉ…」
「オイラはダセーから止めろってオヤビンに言われてすぐに戻ったでヤンスのに」
アナルパッケージホールドがカレーパンに戻ったのは一週間後、
後輩から衛生面を指摘された時だった。


「彼女にメルアド教えてもらったよ!」
「それは何よりです」
黒天はウジウジ考える暇があったら行動に移す事にした。
今の所それは上手く行っている。
焼きそばパンは手に入らなかったが黒天に貼りついていた悪意は薄れている。
それは彼の友人となった雲水にとっても好ましい事だった。
「それでさ、デートに誘う時のコツとか教えてくれないかな?」
「あ、いえ、それは私の専門外なものでして」


伝説の焼きそばパン争奪戦以降、車口文華は校内最強候補として学園中の
不良から恐れられていた。しかしテスラはいつも通りだった。
「・・・・・・困ったものです。あの時のあれは私の力ではないと言うのに。
思い返すとあの時どこからか強化付与を受けていた気がするのです」
「どっちにしろ風紀委員の中でも最前線に立って戦っていた
お姉様はステキです!!テスラ鼻血が止まりません!!
      • 話は変わりますけど、アナパケさんの家族を救うのに不良達が
力を貸したじゃないですか。あいつらがよく素直に手伝ってくれましたよね?」
「生徒会は彼らの減刑をしたそうですよ。功績に応じて購買使用禁止日数を
減らすと交渉していたそうです。校則違反者でない志願者、小松さん達には
伝説の焼きそばパン以外の品薄高級パンの引き換え券を与えたそうです」
「へー」
「まあ大多数の校則違反者は焼石に水だったり、翌日には新たな違反をしていたり
していましたけれど」
「へー、テスラから話を振っておいてなんですが、凄く興味ないです。
テスラの目にはお姉様しか映っていません!テスラの瞳は万華鏡お姉様眼です!」
車口文華は学園最強レベルの存在となった。それ以外はいつも通りの風紀委員だった。


一之瀬は過去のケースを参考とし、今回の焼きそばパンも大いなる災厄を
引き起こすと予想した。そして、焼きそばパン自体は何の災厄も起こさなかった。
この争奪戦は間違いなく個人戦になると予想した。そしてタッグマッチが始り、
最後には探偵の推理で犯人が捕まった。参加者達は風紀委員では止められないと
予想した。風紀委員の中でも目立っていた車口という女子がルール違反者相手に
無双していた。
「俺って一体・・・」
何でもありな探偵フーロからも太鼓判を押された一之瀬のとんでもない魔人能力。
彼がそれを完全に自覚する日は果たして来るのか。そして、それを自覚した時、
彼の能力はどの様に作用してしまうのか。


浅葱は転校した事になっている。怪盗という正体がばれた彼女は悪童との勝負の後に
改めて生徒指導室に連れて行かれるはずだったが、一瞬の隙を突いて逃げ出していた。
彼女の行方は誰も知らない。もしかしたらどこか別の場所で探偵相手に勝負を
繰り広げているのかもしれない。



( *)<探偵パッケージホールド!なーんてね。
覚醒者 サブイネン
テトラジャ、スクカジャ、菩薩掌、テトラカーン、ハマ
物理に強い、ハマ系無効
( *)<ここまで読んでくれてありがとう!!あと少しだよ!


もうこの学校には絶対入学してやらん。保健室で目覚めた少年は未だ状況を理解
出来なかったが取りあえずそれだけは決意した。
彼が目を覚ました直後、校長なのか教頭なのかは分からないが偉い人っぽいのが
早口で焼きそばパンがどーの、梅田の守護天使と敵対するつもりは無いだーの、
色々まくしたてた末、焼きそばパンが入った袋を手渡して出て行ってしまった。

「人にあんな事しといてお詫びが焼きそばパン一個って。
つーか焼きそばパンって。東京ではこれが常識なんか?」

その焼きそばパン、よく見るとラップが一部剥がれかけている上に、
『でんせつ』なんてふざけたラベルが貼り付けてある。

「・・・怒る気も失せたわ。怪我も保険医の能力かなんかで治ったみたいやし、帰ろ。
で、出口どっちやねん?おーい、誰か案内してくれまへんかー?」

入口→最上階→気絶→保健室というルートを強制的に進まされた少年は希望崎の地理を
全く理解できていなかった。分かっているのはここが一階だという事ぐらいである。
どっちに歩けば出口に着くのか。このムダに広い校舎をいくら歩けばいいのか。
少年は夕日の沈みかけた校内を歩きながら助けを呼び続ける。

「誰かー、誰かおらんのでっかー。体験入学者のお帰りやでー、ワイ案内ないと
ホンマに出口わからへんのですけどー?」

少年が校舎の広さにウンザリして涙目になった時、ようやく人影を発見。

「おったー!すんませーん、・・・あれ?おかん!?おかんなんでおるねん?」

そこにいたのは少年の母、では無かった。

「なんや、近くでみたら全然違ったわ」

年齢が違った、体型が違った。というか少年とほとんど変わらない年齢だ。
ここの生徒なのだろう。なんでこんな少女を遠目に母と間違えたんだろう。

「君どうしたの?」
「すんません、なんかオーラとかがうちのおかんに似てたもんで。ワイ迷子です。
正面出口まで案内してくれませんやろか」
「いいよ。私も後片付けの手伝いしてただけだし。それも終わったし」
「おおきに。せや!もらいもんやけどこんなんあるんやけど、半分やるわ」

少年がエライ人から渡された焼きそばパンを懐から取り出す。
それを見た少女の様子が変わった。びっくりした様な顔で焼きそばパンを見ている。

「何で?」
「は?」
「・・・あ、ああ、そういう事になったんだった。タイムアップして、
誰も手に出来なくてそれで一旦学園側が管理する事になって、
無関係な中学生を巻き込んだとかいう事が発覚して、それじゃあこの子が」

少女がブツブツ呟きながら少年の方を強く警戒している。
少年自体を敵視している様ではないが、東京モンは本当に焼きそばパンが
好きなんだなと、今日の出来事について何も知らない少年はそう結論づけた。

「それじゃあ、君が関西から来た子?」
「せやで、珍念や。サブイネンとかいうあだ名で呼ばれたりもしとるで。
おねーさん、これ欲しいんか?やったら出口まで歩きながら食べようや」
「えーと、嬉しいけど私一人がそれを貰うのはちょっと。
それはお母さんに渡してあげてね」
「んじゃ二人で食べようや、おかんここにおらんし。おねーさんワイのおかんに
全然似とらんのに似とる気がするし」

吊り橋効果の一種だろうか、母との共通点を何かした感じたからだろうか。
少年はようやく会えたまともっぽい少女に好意を抱いていた。

「ふふ、それってナンパのつもりかな?」
「ちゃ、ちゃうねん!おねーさん訳わからんこともちょっと呟いとるけど
親切でマトモやし。あ、そや。おねーさんの名前」
「私?私はメリー・ジョ」

ガシャアン!!




「 エ ル」

少女のフルネームを少年は聞き取る事が出来なかった。
自己紹介の途中に横から飛んできたベースがメリー何とかさんの頭に直撃し、
彼女を何メートルもぶっ飛ばしたからだ。

「ゴッヴァ~ル、だ・ま・し・い~!イエー!」

ベースが飛んできた方を見ると投球動作を終えた少女、メリーと同年代と推測できる
少女が奇声を上げていた。少年は直感する、このわからなさはアカン方のわからんだ。
焼きそばパン云々じゃなくてアナルパッケージホールド側のわからんだ。

「アンコールにお答えして『God Wind Valkyrie』のMACHI、
メンバー全員の楽器を手にして帰ってまいりました!
只今の曲は亡きTIARAに捧ぐ、TIARAストライクでーす!
昼休みはまだまだ終わらないよ!ファックイエー!」
「べ、ベースは人に投げるもんやない!ワイのおとんがそう言ってた!」

少年は目の前の怪物に意識を飲まれかけていた。この場でとれるベターな選択肢は
メリーを連れて校内に舞い戻り助けを呼ぶ、あるいは戦闘モードに切り替え殴り倒す。
少年はどちらも出来ず意味の無いツッコミをしてしまっていた。
ベース投擲の威力から推察してこの少女はアナルパッケージホールド程ではない。
だが、色んな意味で勝てる気がしなかった。

「ヘイボーイ!君が誰で何でそれを持っているかは知らないけれど、
その焼きそばパンは大人しく惣菜としての役目を終えさせる訳にはいかないんだ。
私がこの手でギッタギタにして!全ての尊厳を奪った上で抹殺するんだよ!オケー?」
「なっ・・・」
「答えは聞かない!」

少年に向かってドラムステイックを構え二刀流で突撃するMACHI。
少年はやや遅れて焼きそばパンを取り出しそれを食べようと行動する。
こういうパターンでは自分が焼きそばパン食べれば良い方に物語が動くもの。
ラノベで知った王道展開からの行動だった。

「勝った!君がラップを剥いて食べるよりも私の方がが早いんだから死ねぇー!」
「うおー!」

MACHIの耳にミチリミチリとラップが噛み切られる音が聞こえてくる。

「あ、あんた何考えてるのこのファッキンボーイ!」

少年はラップごと一気に焼きそばパンを平らげていた。
命の危機が少年の限界を突破させていたのだ。

「すぐ吐き出して、死んじゃうよ!」

さっきまで命を獲る勢いでいたMACHIから一気に狂気が消えていく。
かつて仲間が全滅した時と同じ、いやそれ以上の喉に詰まりやすい状況を目にしたの
だから無理も無い。だが、その躊躇が勝負を分けた。

「ふんぬーーーーーーーーー!!何や知らんがパワー溢れてきたでー!」

焼きそばパンは少年の喉に詰まらなかった。伝説の焼きそばパンだからである。
そして自分の身と後ろで倒れているおねーさんの安全を願った少年の肉体は
2メートル程の巨体に成長していた。この一戦で終わりで良い。
伝説の焼きそばパンの力をこの瞬間だけに完全燃焼する!
細かい事は最後まで分からなかったがなんかそういうノリで行く事にした!

「せ、成長した!?私を倒せる年齢にまで?」
「往生せいー!」

目標の喪失と友人の死の状況の再現を見せつけられ、MACHIにはもう戦闘意志は
残ってはいなかった。でも少年にそれを確認する手段は無いし、取りあえず
ベース投げの分は仕返しする権利がある。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお秘技!
サブイネン電車道やあああああああああああああああああああああああああああああ」

サブイネン電車道!今思いついた溢れるパワーで相手をどこまでも押し続ける技だ。
正直技と呼べるものではないし、いつもの彼の戦い方とあまりにもかけ離れている。
だがそれでいい、時間制限のある無敵パワーを存分に相手にぶつけつつ殺しはしない。
これがベストだ。

ギャリギャリと靴底をすり減らしながらMACHIはとんでもない速度で後退する。
少年は器用に壁や人を避け、どこまでもどこまでも寄り切り続けた。

「許してえええええええ」

がっぷり組み付かれた状態。
今ならMACHIの特殊能力『KILLER★KILLER』が使い放題だ。
触れているなら殺せる、殺せば止まる。しかし出来ない。
脳内で相手を殺すイメージをする事が出来ない。殺せる気がしない!!

『梅田~梅田~』

地下鉄のアナウンスが聞こえる。電車道の果てに少年は故郷に帰って来たのだ。

「さよなら東京(ひにちじょう)、ただいま大阪(にちじょう)って感じやな」

気絶したMACHIの片足を持って少年はハンマー投げの要領で振り回す。

「サブイネン遠投!」

東京の方に向かって飛んでいくMACHIを見送ると、少年の全身から蒸気が吹き出し
身体が元の大きさへと戻って行く。

「んじゃ帰ろ!」


伝説の焼きそばパン争奪戦。
勝者、サブイネン。
願い、もうさっさと帰りたい。

伝説の焼きそばパンは今回も奇跡を起こした。
希望崎から梅田ビル前までの移動に掛かった時間・・・46分!

おしまい