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本戦SSその8

◆本文

焼きそばパンを買うやり方の話

~~~0、焼きそばパンの入荷のやり方~~~
???
希望崎学園の夜
~~~~~~
ほら、耳を澄ませてみなよ。
聞こえるよね。
獣の咆哮が。

「わおーん、あおーん」

血に飢えた獣の声が。
ゴアでスプラッタな夜はおしまいさ。
みんながお腹を空かせてる。
どいつも、こいつも焼きそばパンを狙ってる。
ごはんの時間が近いから、お腹を空かせて待ってるんだ。

~~~1、世界認識能力者の殺し方~~~
伊藤風露
『天・地・則』通路作成。世界認識。
~~~~~~
最初に購買部にたどり着いたのは伊藤風露だった。
彼女は探偵である。
すごーく簡単に言うなら彼女はあらゆる場所に道を作れる魔人能力を持っている。
更に世界を認識するという能力がある。

伊藤さん本人は

「まあ、こんなのはオマケみたいなものさ」

なあんて言うんだろうけれど。
誰がどう見ても、おいおいそっちがメインじゃねえの?って感じ。
小説の地の文を読むという形式で。
つまり今この文章を読む形で世界の状況を認識できるってわけ。

そりゃまあ最強だよね。
自分以外の行動を把握し、どういう行動をとるのかも理解できるんだからさ。
不意の事態に巻き込まれても、現状を正しく認識できる。
究極の力。
その効果を使いこなせれば、人を出し抜いてレースに勝利するなんて容易い事。

「そう簡単な事じゃ、ないんだがね」

ほら、こっちを認識してるんだから。
まあ、いいよ。
一番は君さ。
でもね、見なよ。
争うことなんか無かったんだ。

伊藤さんの目の前には購買部、そこには。
『本日特売!!大量入荷!!』の張り紙が貼ってある。
山のように積まれた焼きそば…パン?

「一つだけ入荷の伝説の焼きそばパンって話だったと思ったんだけれど。真実なんて意外とこんな程度の事なのかもしれないね」

そう言って伊藤さんはパンに手を伸ばした。
でもね、伊藤さん。
伊藤風露さん。
君も探偵なら、知っていないといけないよ。

「…どういうこと?」

ザクリ。
ほらほら地の文なんて気にしている場合じゃないよ。
その時、伊藤風露の腕が噛みちぎられた。

「なっ!?」

地の文って時には読み手に不親切だったり意図的に情報を少なくしたりもするってことがさ。
あるんだよね!!
気付いたときにはもう遅い。
伊藤風露の体には無数のパンが群がっていたのだ。

ガブリ。
ザクリ。
ムシャムシャ。
わおーん。

「あ…な…なに…これ?」

教えてあげよう。

びゅーん!!まるでキャベツみたいな緑色の羽で飛行!!
しゅるるんるん!!まるで焼きそばみたいな触手で対象を捕縛!!
ガブリ!!まるでパンみたいな体に切れ目のような大きな口!!
むしゃり!!紅しょうがみたいな赤いギザギザの歯で相手にかぶりつく!!

焼きそばパンだと思った?
ざぁーんねぇーん!!
こいつは殺人生物焼きそばドッグ!!
まるで犬には見えないけれど鳴き声が犬っぽいから犬の仲間さ!!
ほらドッグだしさ!!

「さ、殺人…生物…焼きそ…ば…ドッグ」

それが伊藤風露の最期の言葉だった。
ああ、可愛そうな伊藤さん。
でも安心していいよ。
君一人では終わりはしないんだ。

アタックオブザキラー焼きそばドッグ!!
食べる方と食べられる方が逆になっちゃったけれどレースは今からが本番さ!!
さっさと逃げないと食べちゃうぞ。

~~~2、世界改変能力者の殺し方~~~
一ノ瀬進
『千丈一穴』当たらない予測
~~~~~~
目の前で最強の探偵が死んだ。

「や、やんすー!?」

誰かの悲鳴が聞こえる

(ああ、今日こそが大災厄の再来なのか)

一ノ瀬進は予測する。

~~~

誰にだってツイてない日ってのがある。
探しているものが見つからないとか。
ちょっとした事で電車に乗り遅れるとか。

年に一度くらいは、そういう小さな不運が積み重なったツイてない日がやってくる。
そういう時。

「ああ、ツイてないな」

と諦めたり。

「クソッタレ!!」

と怒りに燃えるかは人それぞれだけど。
あまりに度が過ぎると一線超えちゃったりもするって話。

一ノ瀬進は中学2年生で魔人に覚醒した。
魔人に覚醒する時期としては普通くらいなのかな。

その日、一ノ瀬君は人生初のデートに臨んでいた。
そりゃあもう男子中学生の初デートっていやあ、ドキドキしちゃうよね。

同じクラスの女子に告白し、いい返事をもらい。
友人に冷やかされたりもしたけれど綿密な計画を練った上での初デート。
完璧な計画、初めてのキスくらいまでは行っちゃうかなとか思ったり。
リア充の絶頂、一ノ瀬君にとって最高の一日になるはずだった。
ま、そういう時に限ってツイてない日ってやつは襲いかかってくる。

結果として、デートは大失敗。
文字通り散々な結果。
いや、大惨事に終わった。

「大災厄」と言ってもいい。

そりゃ、男子中学生の人生最初のデートが。
自分なりに情報をかき集めて練りに練った初デートが。
失敗に終われば誰かのせいにもしたくなるでしょ。

一ノ瀬君にとって、もっとも不運だったのは。
彼がデートに失敗し、彼女に振られて(実際の所を言うと彼女は機嫌を悪くしただけで振られたわけではないのだが)しまったショックで魔人に覚醒してしまった事じゃないかな。

自分自身の完璧な計画が無残にも崩れ去る。
余りにも大きな衝撃が彼の魔人能力『千丈一穴』
一ノ瀬進の十分な根拠に基づく予測は必ず外れるという魔人能力へと繋がったのである。

能力に目覚めた魔人はしばしば暴走する。
タチの悪い事に一ノ瀬は自身の能力を完全に認識できていなかった。
うまく使えば、そう例えば魔人同士の抗争であるダンゲロスハルマゲドンなどでうまく使えば。
敵対勢力の最善手を潰すことすらできるほどの強力な能力が本人の気づかぬところで暴走した。

人間ってのは。
いつも予測しながら生きてる。
そりゃそうでしょ、次はこうだな、次はこうなるなって。
感覚として予測して生きてる。

赤信号なら車は止まるって予想できる。
仲の良い友達はいきなり殴りかかってこないって予想できる。
電子レンジや冷蔵庫は人を襲わないって予想できる。

当てずっぽうじゃない、日々の経験を根拠とした完全な予測。
それが全て外れていけば。

赤信号で車が止まらず事故になり。
仲の良い友人が殺し合いを始め。
安全な機械は全て危険な殺人兵器に変貌する。

街が滅びるまで3日とかからなかった。

最悪というのは気付かないって事だよね。
そんなのが自分のせいだなんて普通は思えないよ。
私だったら思いたくもない。
他人のせいにしたくなる。
でも彼が他人の責任だと思うほどに、予測するほどに、それは彼自身の責任なのさ。

一ノ瀬君が突き止めた大災厄の原因の予測なんて当然当たるはずもない。
焼きそばパンのせい?
馬鹿言っちゃいけないね。
だって全ては彼のせいなんだ。
予測や予知を現実にする魔人は、最凶だ。
かつて、妄想のような予言を現実にして関西を滅ぼした魔人がいるように。

一ノ瀬進。

彼は予測を外すという形で世界を書き換える最凶の魔人だったんだ。
本人は気づいていないかもしれないけれど。
今回の事だって原因を作ったのは彼だ。
彼が焼きそばパン争奪戦を平穏無事に終わらせようと計画さえしなければ。
こんな事にはならなかったんだろうね。
ただまあ、異常事態を加速させていくのは魔人の常だから。
責任が一ノ瀬君だけにあるとは、言えないよね。

~~~

目の前に焼きそばドッグの大きな口が迫る。
逃げることはできない。

「ああ、ここで俺は死…」
「アナル!!」

横合いから飛び出した怪人の蹴りが一ノ瀬に迫った焼きそばドックの頭を粉砕した。
一ノ瀬進の予測は外れたのだ。
凄まじいキック力。
その威力は魔人サッカー選手にも引けを取らないかもしれない。
怪人はまるでシュートを決めたサッカー選手のようなダンスを踊り。

「アナル!!ホールド!!」

とガッツポーズを決めて他の焼きそばドッグに襲いかかる。
見れば他にも焼きそばドッグに対し攻撃を仕掛けている魔人が見て取れる。
そのどれもが優位に立っているように見えた。
このまま戦いが優位に進めば、おそらくは。

「助かる、これは皆たすか…」
「がるるるるぅがばしゃーっ!!」

当然、一ノ瀬君の予測は外れてしまう。
焼きそばドッグの数は多い。
魔人たちの隙をついて一ノ瀬君に襲いかかる焼きそばドッグもいる。
頭を焼きそばドッグに噛み砕かれて。
結局、一ノ瀬進は自身の能力の本質に確信が持てないまま。
自分の能力に翻弄されて死んでしまった。

でも気にすることはないよ、一ノ瀬君。
まだレースは始まったばかりなんだから。

それに死ぬ間際に一ノ瀬くんが思い浮かべた。
『皆助かる』という予測が外れる事が確定したんだからね。

~~~3、即死能力者の殺し方~~~
MACHI
『KILLER★KILLER』即死。
~~~~~~
ファックイエー!!
ムカつく奴をぶっ殺してるかい?

世の中にいろいろある魔人能力の中で明確に強いもの。

即死。

如何に頑丈でも、殺す。
無限の力と無限の防御力を持つと言われる転校生ですら殺す。

それが即死能力だ。

「ファック!!」

無敵で素敵なガールズロックバンド『God Wind Valkyrie』通称『ゴッヴァル』。
泣く子もドン引きギターヴォーカルMACHI。

MACHIが最も憎んでいる相手を触れるだけで殺す。
MACHIは焼きそばパンを憎む。
バンドメンバーを殺した焼きそばパンを憎む。
その亜種である焼きそばドッグもMACHIにとっては似たようなものだ。

「イエー!!」爆殺。「ファック!!」毒殺。「イエー!!」焼殺。「ファックン!!」氷殺。
「ロール!!」電殺。「フ!!」斬殺。「ァ!!」圧殺。「ッ!!」水殺。「ク!!」削殺。
「イ!!」曲殺。「エ!!」断殺。「ー!!」刺殺。
「死ねクソったれの焼きそばファック!!」砕殺。

手で触れて風殺。
指で触れて絞殺。
蹴り潰し蹴殺。
ヘッドバット殴殺。
体当り捻殺。
悪殺正殺摩殺剛殺集殺轢殺天殺地殺人殺恋殺愛殺憎殺視殺噛殺聴殺歌殺螺殺虫殺獣殺流殺
海殺山殺森殺木殺機殺怪殺妖殺光殺赤殺青殺黄殺火殺炎殺月殺葉殺掘殺埋殺吊殺法殺闇殺
暗殺自殺他殺投殺転殺落殺鳥殺鏖殺塵殺謀殺忙殺翔殺溶殺刎殺刑殺潰殺命殺妙殺明殺々殺

MACHIに触れた焼きそばドッグは死ぬ。
直接攻撃しかできない焼きそばドッグにとってはMACHIこそが天敵。
焼きそばドッグが噛み付いてきたところで逆に死ぬのは相手なのだ。

このまま絶滅に…。
とはいかないのだよファックイエー。

「ファックにょわっ!?」

何かに躓いてMACHIは転倒する。

「おおっとォ!!うっかり足が出てしまったでヤンス」

MACHIの目の前にプラチナブロンドの少女がゲヒヒと下っ端笑いを浮かべていた。
彼女の足がひらひら揺れる。

「こぉーんなのに引っかかるなんて、バカ丸出しでヤンスー」
「ファック!!ぶっ殺…」

低脳短絡直情馬鹿!!
彼女こそはガールズロックバンド『ゴッヴァル』のギターヴォーカル!!
明白な挑発にノったのだ。
っていうかノらなきゃあダメだろ?
一瞬で怒り沸騰。
即死ターゲットが移る。

「わおーん」

ガブリ。
バクリ。
ムシャ。
グチャ。
バキン。

怒りの矛先をうっかり焼きそばドッグから、目の前の少女に移してしまった。
即死によって守られていたMACHIは。
あっさりと焼きそばドッグの群れに襲われ死んだ。

「馬鹿な奴でヤンス、オヤビンと一緒に行くはずだった『Boo! Do! Wasp!!』のライブを台無しにしてくれた報いでヤンス」

どんなに強くても、変なところで恨みを買っちゃあいつ寝首を掻かれるかわかんないよね。
ああMACHI、地獄でバンドメンバーと反省して新たなロックに励んでくれたまえ!!

~~~4、浄化能力者の殺し方~~~
霊能者 雲水
『行雲を留め流水に濯ぐ』浄化。
~~~~~~
「スゥゥ―――ッセイッ!」

丸顔の少年は気合とともに数珠を手にした拳を前に突き出した。
ピロリロリン♪
デジタル的な呪文発生音とともに浄化の光が溢れ焼きそばドッグを飲み込む。

邪悪なモンスターを光の中に消し去る除霊術。
人の良さそうなこの少年のホーリーネームは雲水。
焼きそばパン争奪レースに邪悪な気配を感じやってきた霊能者である。

「なんという邪悪な気配、これは一体!?」

周囲を緑色の翼で舞う焼きそばドッグの群れ。
希望崎学園の一般生徒も襲われている。

「くうっ、このままではいけない。しかし、この邪悪な気は異常だ」

雲水の浄化能力は邪悪な感情を雲水が吸収することで成り立つ。
雲水の霊的キャパシティーは絶大だがこの邪悪の量を吸収すれば最悪の場合、死に至るだろう。

「何を迷う必要があろうか」

彼にとって救いとは生き様である。
雲水は数珠を構え印を切る。

「たとえこの身が滅びようともッ!!スゥゥ―――ッセイッ!」
「新しきNEOスゥゥ―――ッセイッ!」
「ソイヤーソイヤー!!スゥゥ―――ッセイッ!」
「オカルトカルト!!スゥゥ―――ッセイッ!」

雲水の目から口から耳から光が溢れ出る。
特殊な呼吸法により邪気を吸い込み聖気を吹き出す。

(うぬぬー!!これほどの邪気とは!!もう一歩、あともう一歩で!!)

「ああっ」

極大浄化呪文完成の直前。
雲水の目の前で少女が尻餅をついている。
迫り来る焼きそばドッグ!!

「見捨てることは、できない」

身を挺して少女の前に仁王立ちとなる。
触手が体を貫く。

「逃げなさい!!早く!!」

コクコクと頷き少女は走りだす。
雲水の口からは血が溢れ出す。
致命傷だ。

「目の前の命救わずして何の救いでしょう」
「多くの命を救えなかった事は恥じねばなりませんが…」
「目の前で人が死ぬのを救うことができた」
「ならば悔いはありませんスゥゥ―――ッセイッ!」

最後の力を振り絞り浄化の光とともに雲水は爆発四散した。
いやあ流石は聖者、人を救って命を落とすなんて感動しちゃったよ。



~~~5、防御壁作成能力者の殺し方~~~
カレーパン
『華麗流 三段(かれいりゅう さんだん)』遠距離攻撃。防御壁作成。
~~~~~~
パンはパンらしく、食われてりゃーいいのさ。

「雲水ッ!!」

カレーパンと雲水は知らぬ間柄ではなかった。
一年生らしからぬ雰囲気を漂わせた後輩とは今までも何度かともに戦ったことがある。

出会いは中学時代林間学校。
カレー作りで大いに共感した

その雲水が人を助けて死んだ。
後を追うつもりはない。
感傷的な気分になったわけでもない。
だが、パンの本質は人を救うものなのだ。
空腹に苦しむものがいれば食を与え。
悪に苦しむ者がいるならば悪を倒す。
それこそがパンの生き様であると。
カレーパンは信じている。
焼きそばパンとの決着よりも、親友が救った命を救うことに。

「すまない…めろん」

それでも自分を慕う後輩の事を少しだけ思い出した。

「焼きそばパンを持って帰ってやることはできそうにない」

カレーパンは大きく口を開く。
本来口のない顔に大きな口を開く。

「皆逃げろッ!!ここは俺が食い止める!!」

その声に幾人かの魔人は反応し移動する。

「華麗壁(かれいへき)!!」

濁流のように流れ出したカレーが壁を作り周囲を覆っていく。
カレーパンにとってカレーとは己の体をながれる血に等しい。
それをこれほど失うということは、死を意味する。

「必ず!!こいつらを滅ぼしてくれ!!」

カレーの壁の一部となりながらカレーパンの意識は薄れていった。
はい、残念、カレーパンが焼きそばドッグに挑むのが間違いだったのさあ。

~~~6、弱点探索能力者の殺し方~~~
天ノ川 浅葱
『見抜く』弱点探索。
~~~~~~
怪盗って泥棒でしょ?

「生き残りはこれだけか」

浅葱を含めて部屋には9人の魔人。

「自己紹介したほうがいいんじゃないかなあ」

フルフェイスヘルメットを被った少女が手を挙げて提案する。

(激戦で足を失ったのか、片足は木の棒で代用しているが、痛みを感じているようには見えないが)

浅葱は観察する。

「とってもヤバイと思うんですよねえ。お互いの能力とか知っていたほうが。協力とかするにも良いと思うんですよお」

本来、魔人能力を他人に知られるというのはアドバンテージの放棄に等しい。

(しかし、この状況では協力するのもやぶさかではないか。)

「あ、ちなみに私の名前は安出堂メアリでーす。能力は不死身。って言っても頭を潰されると死んじゃいますけどね。あはは」

きわめて軽く笑いながらの自己紹介。

(信じて良いものか、しかしここで嘘を言う理由はないのかもしれない。)

「風紀委員の天雷テスラです。能力は」

とセミショートの金髪の女性がバリバリと手から放電する。

「見ての通りの放電という事になりますね」

「す、楼望 紫苑ですう。能力は、えーとモノの動きをゆっくりにできます」

風紀委員という立場の生徒が能力を明かしたことにより。
続いて幾人かの魔人が自己紹介を始める。

「可憐塚みらい、能力は不死身が近いのかもしれません。再生能力が高いといった感じです」
「黒天 真言です。能力はなんと言えばいいのかな。探索や攻撃はできます」
「私は久留米杜莉子です。肉体の一部を調理器具に変えることができます」
「アナル!!」

(なんか変なのが居るけど)

明らかに怪しい覆面にブリーフと靴下の変態。
希望崎学園では珍しくはないが。

「そちらのお二人は、お名前とか教えてもらえませんかあ?」

(どうする?バカ正直に話すか。)

浅葱の魔人能力『見抜く』は弱点を見抜くことができる能力である。
彼女はそれを使い、焼きそばドッグの弱点を既に掴んでいる。
しかし、それを公表することは、彼女の持っている情報を無為に手放してしまう事にほかならない。

「下ノ葉安里亜、ヤスと読んで欲しいでヤンス。能力は」

美しいプラチナブロンドの少女が立ち上がる。
腕に少し怪我をしているのか包帯を巻いている。

(そしてコイツだ。確かに見た。乱戦の最中にこの女は一人殺している。こいつが一番警戒が必要だな)

「情報の把握でヤンス」

と言ってヤスは浅葱の方を指差す。

「な、なんだ」
「こいつは泥棒でヤンス」
「な、何を」
「まあ泥棒だからダメって訳はないでヤンスが」
「隠し事をするのはよくないでヤンスねえ」
「だから、何を言っているんだ」

焼きそばパンを手に入れれば焼きそばドッグの発生を抑えられるとか、焼きそばドッグが水に弱いとか。
そういう情報まで隠している浅葱には。
自分だけのアドバンテージを奪われるのは痛い。
ならば。

「隠しているつもりはなかったのよ、私は天ノ川 浅葱。確かに怪盗だけど。悪い泥棒ってわけじゃないの。泥棒って言うと警戒されそうだったから」
「焼きそばパンの存在を隠していたでヤンスね」
「…そんなこと言われても。それは適当なこと言ってるだけじゃないかしら。あなたの能力が本当に情報の把握っていう証拠はないのじゃないかしら」
「信じるか信じないかは別でヤンスが、協力していく以上隠し事は迷惑でヤンス」

(くっ、コイツ…コイツの弱点は…)

浅葱の能力で探れない弱点はない。
ガシィ!!
ヤスの手が浅葱の頭を掴む

「モガッ!?」
「弱点を探る能力でヤンスね」
「そういうの困るでヤンス、いつ後ろから裏切られるかわからないでヤンス」
「いずれオヤビンの邪魔になりそうなら」

「待って!!下ノ葉さん、殺しは校則違反よ」

風紀委員の天雷テスラが制止する。

「ひゃあああッ!オイラ、ついうっかりでしゃばるところだったでヤンス」

急にオドオドと挙動不審になる美少女。

「あのう」
とフルフェイスの少女、安出堂が手を上げる。

「弱点を探る能力っていうのは?」
「え、ええ。確かに間違いないわ。隠してたわけじゃなくて今みたいに怖がられると困ると思って言い出せなかったの」
「それ、偵察とかすごく役にたちませんか?」

「偵察、確かに」
「今必要なのは情報でヤンス」
「アナル!!」
「一理ありますねえ」

こうして、浅葱はなし崩しに偵察に出かけることになった。
メンバーにヤスがいないのが浅葱にとって救いである。

(適当に流せば問題ないか)

浅葱、安出堂、久留米、須楼望。
目的は焼きそばドッグの弱点把握と焼きそばパンの探索である。
教室から出てカレーの壁へ向かう。
カレーの壁には幾つかヒビが入り始めている。

「少し崩せば穴があきそうですねえ」

と安出堂。

「そうですね、では手分けして…」
「ひゃあん!!」

浅葱がカレーの壁の弱点を探ろうとしたとき須楼望が悲鳴をあげた。

「何だ?きゃあッ」

そして久留米。

「どうしたの!!」

二人が倒れている。
倒れた二人の前にフルフェイスのヘルメットを被った少女。

「あ、安出堂さん?」
「いやあ、ちょっとですねえ。弱点とか探られちゃうと困るんでえ」

片足とは思えないスピードで安出堂が浅葱に襲いかかる。
しかし浅葱も銃弾程度なら避けられるスピードの持ち主であった。

「くっ、弱点?」

浅葱は安出堂を『見抜く』。

「そういう事か」
「でも、この状況ではもう遅いでしょうねえ」

天ノ川 浅葱は動けない。
体を掴まれてしまえば自慢の機動力は生かせないからだ。

「ちょっとお腹も減ったんで」

ヘルメットのバイザーをずらして少女は口を見せる。

「いただきます」

浅葱の意識はここで途切れた。

~~~7、時間操作能力者の殺し方~~~
須楼望 紫苑
『夢心地悠長空間(トロイメライ)』時間鈍化。
~~~~~~
ガブリ。
ムシャムシャ。

~~~8、肉体変化能力者の殺し方~~~
久留米杜莉子
『食戟のソーマ』肉体変形。
~~~~~~
パクリ。
モグモグ。

~~~9、カタパルト能力者の殺し方~~~
アナルパッケージホールド
『カタパルトキック』カタパルト発射。
~~~~~~
片春人はサッカー選手でアナル!!
何の因果か焼きそばパンを求めて変態のような格好をして学校に潜入したパッケージ。
「アナルパッケージホールド」としか喋れないホールド。

「アー…、ナル。アナル」
「あれから一時間…偵察部隊は戻らないようね」
「全滅したと考えるべきでヤンス」
「そう簡単にやられるでしょうか、たしか不死身の方も居たのでは」
「不死身といっても完璧ではないはずです。確か頭を潰されれば死ぬと言っていました」
「アナル!!」
「これからの方針を考えるべきではないでしょうか」
「ホールド?」
「どういうことでヤンス?」
「逃げるか、焼きそばパンを目指すかということよ」
「ヤスさん」
「なんでヤンス?」
「焼きそばパンがあるというのは本当なのかしら?」
「レースの相棒だった伊藤風露の能力がまだ僅かに残っているでヤンス、相方にも能力を付与することができるこの能力が」
「伊藤さんの…」
「アナル…」
「確かに浅葱は焼きそばパンが残っている事を隠していたでヤンス。探偵の能力を欺くことはできないと思うでヤンス」
「パッケージ!!」
「浅葱さんの能力が弱点を見抜くものだとすれば、焼きそばパンが焼きそばドッグの弱点である可能性は極めて高いということで間違いないのではないでしょうか?」
「ア、ナール」
「なるほど、一理ありますね」
「パッケージ、パッケージ。ホールド」
「風紀委員としてこの事態を放置するわけにはいきません、私は焼きそばパンを目指します。皆さんはどうされますか?」
「アナル!!」
「オイラはオヤビンの為に焼きそばパンを持ち帰るでヤンス、たとえこの身がどうなっても」
「みらいは…私も賛成です」
「僕も、この状況を放置はできません」
「では、えーと問題ないということで」
「アナル!!」

そこで一斉に皆が叫んだ。

「「「何言ってんだかわっかんねーよ!!!」」」

コミュニケーションが取れないという点で彼は死んだようなものだったのだ。

「アー、ナールホールド」

~~~10、蝿の王の殺し方~~~
黒天 真言
『Get Midheaven-- ルーカー、僕に救いを --』蝿の召喚。蠅化。
~~~~~~

黒天はポケットの中のコインを握り締めた、あと…2枚。
一枚は既に使ってしまった。
彼には焼きそばパンを手に入れなければならない理由がある。

「先ほど説明したように、僕は蠅を召喚し、目的地への誘導に使うことができます」
「最短距離をとって突き進むということで問題ありませんわね?」
「はい、金色の蠅に従ってください」
「アナルナルホールド」
「そのナルホドーみたいな言い方気に入りましたわね?」
「パッケージ」
「まあ悪い方ではないようですし」
「ヤンス」
「行きます… ルーカー、僕に救いを…」

実はコインを使い切れば黒天は死ぬ。
もう一枚を使えば。
だが、それでも黒天はこの事態を収集しなければならないと思った。
胸に空いた穴にコインを一枚挿入する。

ブゥゥゥン。

黄金の蠅が黒天を導くように翔ぶ。


「行きますわ!!」

カレーの壁の穴からは無数の焼きそばドッグが飛び出してきている。
黄金の蠅の誘導先はその先。

「アナール!!パッケージ!!」

先頭を走るのは怪人アナルパッケージホールド。
フィジカルの強さと脚力で敵を蹴散らす。
可憐塚みらいとヤスが脇を固め。
天雷が電撃でサポートする。

順調に進むかと思われた。
あいつが現れるまではね。

「アッ…」

目の前に見知った人物がいた場合。
それが敵でないと見抜く手段がないならば人は油断する。
アナルパッケージホールドは油断した。
フルフェイスメットの少女が生存していたことを素直に喜んだ。

「あはは、ダメですよお。それじゃあ。あたし専用の肉穴にしてやる、いや…なれ!!」」
「アナッ!?アッ…ホー…ナ」

アナルパッケージホールドの胸に腕が突き刺さる
ホスト神拳の中でも他人を穴程度にしか思わぬ外道の拳がアナルパッケージホールドの胸を貫いた。

「ガフッ…栗子…ルシス…ゴンベ…すまん」

アナルパッケージホールドこと片春人はこの学校に潜入して以来初めての言葉を。
妻と子の名前をつぶやきその場に崩れ落ちた。

「安出堂メアリィ!!」

可憐塚みらいが激昴する。

「くッ、アナル(仮)さんッ!!」

黒天も戦闘の構えをとる。

「おおっと、あんたの相手はこっちでヤンスー」
「え?」

凄まじい勢いの蹴りが美少女の香りとともに黒天の頭を粉砕した。

「ふうん、そんな器用なこともできるでヤンスね」

ブゥゥン。
その瞬間、黒天の体は無数の蠅となって攻撃を避ける。

「これで、今日の終とともに僕は死にます。そういう制約ですから。でも、貴女を見逃すわけにはいきません!!」
「ヤンスッスー」

ゲヒヒとあくまで美少女としての可愛らしさは残しながら下ノ葉安里亜は笑う。

「何がおかしいのですか」
「この場で、そんな小動物になったことでヤンス!!」
「あッ!!」

無数の蠅。
それは焼きそばドッグの餌になるに等しい行為である。

「わおーん」
ムシャムシャ。

ああ、かわいそうに黒天。
先に逝った仲間と仲良くね。


~~~11、吸血鬼の殺し方~~~
可憐塚みらい
『ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュに捧ぐ』吸血鬼。
~~~~~~
吸血鬼たる可憐塚みらいは知っている。
ホストという存在を。
ホストと吸血鬼はとても近い。
夜に生きる存在であり。
女の血を好む。
かつては同じものであっただろう。
だからこそ吸血鬼はホストを憎んでいる。
しかも、コイツは三流のゲスだ。

吸血鬼のパワーはホストのそれを上回る。
手刀がホストの首を狙って振り下ろされる。
ホストは首をありえない方向に曲げて回避。

「あはは、ウオオオォー!!」

ホスト神拳『ウオオオォーッ!!』雄叫びをあげながら殴りかかる奥義。
まるで三人居るかのように残像が見えることがあるという。

「クッ」

凄まじいパワー。
並のホストではこの力はないはずである。

だが甘い、一流の貴種ホストであるならともかくその程度の攻撃では吸血鬼は倒せない。

「みらいを甘く見ないことですわ」

攻撃を受け流して噛み付く。
汚らわしいホストの血を吸うのはゴメンだが、まだ女の子であるのなら少しだけ許せる。

「このままお眠りなさい」

しかし。

「あはー、抱きとめてあげる」

少女の背中に昆虫のような翅が生える

「なッ!?」

流線型のバイザー付きフルフェイスの中の表情は読めない。
そのまま空中に飛行し一直線に落下する。

ぐちゃッ!!
飛行補助デバイス『魔女の箒』をフルスロットルにした自爆特攻。
これによりフルフェイスヘルメットの少女メリージョエルと可憐塚みらいは血だまりへと姿を変え。
直後のデバイスの爆発によって死体は焼き払われた。
吸血鬼もこれでは甦れない。

残念だったね。

~~~12、未来少女の殺し方~~~
未来少女 メリー・ジョエル
『翅』背中から翅が生える。
~~~~~~
「貴女はとても私に似ているわ」
「記憶が」
「そう…安心して、とても怖かったのでしょう」
「迷宮時計を支配しないと」
「大丈夫よ、それよりお腹がすいているのではなくて?」
「おなか?」
「そう、とても飢えているように見えるわ」

少女は少女にキスをする。

「あっ…」
「安心して、私たちはお友達になれると思う」

未来少女の体を舐めるように味わう。

「一人じゃ寂しいもの…私たちは群れなければ生きてはいけないのよ…」
「…虫もホストも…」

『 迷宮時計を支配せよ 』
メリージョエルの持つ流線型のバイザー付きヘルム綺羅星の中に流れる文字が変化する。
『――食事せよ!』

~~~13、風紀委員の殺し方~~~
天雷テスラ
『電流戦争』放電。
~~~~~~
「ハァッ!!」

天雷テスラの能力はシンプルかつ強力な放電である。

「ヤンスッスー!!」

まるで洗練された一流のスケート選手のようなトリプルアクセルで下ノ葉安里亜は電撃を回避する。

「なぜこんなことを!!」
「オヤビンに焼きそばパンを食べてもらうためでヤンス!!それ以外の理由なんて存在しないでヤンス!!」

回転しながら薔薇の花を手裏剣のように投げつける。
芳しい香りが辺りに満ちる。
電撃で飛来するバラ手裏剣を焼き払う。

「殺人を犯したものは校則違反により購入権を失うぞ!!」
「あいつらは勝手に死んだだけでヤンス!!オイラは手を下していないでヤンス!!」
「このゲスめえッ!!」
「何とでも言うでヤンス!!全てはオヤビンの為、その為ならオイラは…オイラは…どうなっても構わないでヤンスー!!」

そう言って下ノ葉安里亜は真っ直ぐに突進する。

「馬鹿だよ、お前は!!」

天雷にも、尊敬するお姉さまが居る。
だからといってこんな事をしてその人が喜ぶとは思えない。
下ノ葉安里亜はあくまで忠誠。
そこが天雷と先輩の関係との違い。
命懸けの攻撃をしてでもオヤビンを喜ばせたいと考える下ノ葉安里亜と。
自分が死んでしまえばお姉さまが悲しむと思っている天雷との違いであった。

「ハアアアアァッ!!」

天雷の最大出力の電撃。
風紀委員としての職務の範囲内とは言え殺人を辞さない覚悟。
焼きそばパンよりも下ノ葉安里亜を生かしてはおけないという判断である。
インド象ですらオブザデッド級の電撃が下ノ葉安里亜を襲う。

下ノ葉安里亜はコンドームを取り出す。
オヤブンがいつコンドームが必要になるかもわからない(もしかして、その相手は自分かも?キャッ)みたいな理由で持ち歩いていたコンドームを。
下ノ葉安里亜は人差し指にはめて前に突き出す。

「ゴムに電気は通じないでヤンスー!!」

下ノ葉安里亜の魔人能力『馬鹿は百薬の長』はプラシーボ効果を現実のものとする。
ゴムなら電気を防ぐという当たり前の事を信じれば。
それは現実になるのだ。

「なっ」
「もらったでヤンスー!!ケヒャー!!」
「甘いですわ!!」

確かに能力の相性優位は下ノ葉安里亜にあった。
が単純な戦闘能力、戦闘経験は風紀員である天雷テスラが上だったのだ。
電撃のような突きが下ノ葉安里亜の胸に突き刺さる。

「あがっ!!オヤビン!!オヤビーン!!」
「貴女の気持ち、分からないでもないわ、でも。それは許されないの」
「オヤビン…オイラはオイラは…」
「止めをさして差し上げますわ、このまま電撃で」

バシュウ…。
電撃が放たれビクンビクンと下ノ葉安里亜は痙攣する。

「おやすみなさい」

別れの挨拶を告げ天雷テスラ死体に向けて背を向けた。

「この事態を収集させなければなりませんわ」

黒天の黄金の蠅は目的を果たしたようだ。
購買部の奥に金色の輝きが見える。

背を向けて歩きだす。
背を向けていいのかなぁ~ッ!!

ザクリ。

首筋に痛みを感じ。
天雷は振り向いた。
下ノ葉安里亜が立っていた。

「な…ぜ」
「ゴムに電撃は…効かないでヤンス」

口から血を滴らせながら下ノ葉安里亜は言った。

天雷テスラの意識はそこで失われた。

~~~14、不死者の殺し方~~~
安出堂メアリ
『リターンオブザドランカー』頭を潰さない限り死なない。
~~~~~~
ずるり。
血だまりを這いずる音がする。
残った血肉をかき集めて。
可憐塚みらいの肉片やアナルパッケージホールドの肉片すらもかき集めて。
フルフェイスヘルメットの少女。
メリージョエルにして安出堂メアリは立ち上がる。

「あはは、焼きそばパンは渡せませんね」

「ヤンスー」
「ここまでは協力関係、でもここからは争奪戦です」
「勝てると思うでヤンスか?」
「あはは、冗談でしょう。あたしの名前を言ってみてごらんなさい」
「あたしの」
「名前を」
「言ってみろォ」

フルフェイスメットで武装したホスト神拳継承者のできそこないは二丁のソードオフショットガンを体の中から取り出した。
朝、武装トラックから奪った銃器の中でもっとも自分に向いているであろう武器を。

「ホスト神拳!!銃弾のシャンパンシャワー!!」

開け放たれたシャンパンのような銃弾の雨が下ノ葉安里亜に降り注ぐ。
しかし。

「なッ、なぜ効かないィ!?」
「当然でヤンス」

と下ノ葉安里亜は胸からチェーン付きロケットを取り出す。
そこには笑顔で笑うオヤブンとヤスの写真。

銃弾は全てそこで受け止められていたのだ!!
プラシーボ効果はそこまで強力なのである。
思い出のロケットは銃弾を止めると信じれば止める。

「オヤブンとオイラの愛の勝利でヤンス!!」
「馬鹿な!!」
「クズがあッでヤンスー!!」

強烈なボディへの一撃が不死者の体にめり込んでいく。

「ぐ、ぐああああああッ!!」

その手に握られたのは十字架。
聖なるもので不死者を滅ぼす力が得られると信じれば効く!!

「馬鹿な、そんな」
「哀れなヤツでヤンス」

メリージョエルであり安出堂メアリであった不死者はここに滅んだ。
焼きそばパンは下ノ葉安里亜の手に渡ったのだ。

~~~15、強化能力者の殺し方~~~
下ノ葉安里亜
『馬鹿は百薬の長』プラシーボ効果を強化する。
~~~~~~
「おおっヤス!!無事だったのか?」
「オヤビーン」

校庭のはずれで最後まで下ノ葉安里亜の無事を案じていたオヤビンこと緒山文歌は安堵の息を漏らした。
まるで子犬のように駆け寄ってくるヤスの笑顔に安心を覚える。

「オヤビン、オイラはオイラはやったでヤンス!!」

と焼きそばパンを差し出すヤス。
焼きそばパンを手に入れたことで焼きそばドッグ達は異界へと戻っていったようだ。

「お前、アタシの為にそんなに傷だらけに…って胸に穴があいてるじゃねえかー」

がびーん。
あまりのスプラッタっぷりに一瞬気を失いそうになるオヤビン。

「こんなの薬を付けてれば治るでヤンスー」
「そ、そうか。たしかにお前怪我の治りは早い方だったな」
「いつもの事でヤンス、オイラはオヤビンの為ならなんだってするでヤンス」
「ヤス!!」

バキ!!ヤスを殴り飛ばすオヤビン。

「ハヒィ~!?」

ドグシャー!!吹っ飛ぶヤス。

「ど、どうしたでヤンス。はッ、焼きそばパンだけじゃやっぱりダメでヤンスか?ジャムパ…いやアンパンも」
「違うぞヤス!!」

バキ!!ドグシャー!!

「アヒィ!!え?」

殴ったヤス、いや下ノ葉安里亜を緒山文歌は優しく抱きしめた。

「お、オヤビン…?」
「アタシの為にこんなに傷だらけになりやがって馬鹿野郎ッ」
「オヤビン…オイラはオイラは…」
「馬鹿だよ。お前は」
「ああ、オヤビンッ!!オヤビン!!」
「ヤス、もう無茶はするな、これは命令だ」
「わかったでヤンス、オヤビンオヤビン」

緒山文歌は涙を流した。
下ノ葉安里亜は涙を流した。
彼女たちはこれからも親分と子分という永遠の絆で結ばれて行くのだろう。

「オヤビン…オヤビン」

ガブリ。

「オヤビンの肉…美味しい…でヤンス…」
「ヤス…お前…」

同時に倒れる二人の少女。
いくらプラシーボ効果とは言え胸に穴があいて生きていられるはずがないのさ。
下ノ葉安里亜を緒山文歌の意識はここで途切れた。

~~~エピローグ、焼きそばパンの手に入れ方~~~
安出堂メアリ
『リターンオブザドランカー』“頭”を潰さない限り死なない。
~~~~~~
夕暮れの保健室。
その少女はベッドに横になっていた。
4時間目までは授業に出ていたが、やはり体力がないのは辛い。

透き通るような肌。
色素の薄い黒髪。

「ケホ…」
「大丈夫ですかお嬢様」

執事と思わしき少女がいたわりの声をかける。

「大丈夫よ、ジノ」
「無理をなさらぬように」
「でも今日は気分外いいのよ、もうすぐ来てくれるのでしょう?」

執事の名前はジノ・ブーン。
つまり私ってわけ。
お嬢様にたいする語り部。

コンコン…保健室の扉がノックされる。

「どうぞ」

心なしか嬉しそうな声で少女は応じた。

「ただいま私」

流線型フルフェイスヘルメットを被った少女が扉を開けて入ってくる。

「おかえりなさい、私。大変だったわね流石に。メリーの体は残念だったわ」
「でもこうして私達が増えたのだから…よかったでヤンス」
「そうだな」

フルフェイスメットを被った下ノ葉安里亜と緒山文歌が焼きそばパンを差し出す。

「お金は、大丈夫だった?」
「メリーが持っていたお金を使ったからな。これなら買ったのはお金の所持者である安出堂メアリが購入したということになるんだろ」

緒山文歌が答える。

「ええ、でも買ったものをみんなでわける分には問題ないと思うの、そうでしょう?」
「ああ、それなら風紀委員としても問題ないよ」

と天雷テスラ。

「私は、私たちは到底一流のホストにはなれないですう」

と須楼望 紫苑。

「三流は群れる、群れてこその三流、でも」

と天ノ川 浅葱

「だからこそ、私たちは滅びない。クズにはクズの生き様があるのです」

と久留米杜莉子

彼女たちはホストである。
新しいホスト。
でも、一流には程遠い三流のホスト。
なり立てのホスト。

三流のホストは噛むことによって感染する、といえば冗談に聞こえるだろうか。
メリージョエルは数日前にメアリ本人に。
下ノ葉安里亜は焼きそばドッグ出現時にメリーによって噛まれホスト化していたのだ。

「私達の中から、いずれ一流のホストが生まれるのかしら」

ベッドに横たわる少女、安出堂メアリは呟く。

「でも、それまでは、今日のこの日の出会いを大切にいたしましょう」

“頭”を潰さない限り。
三流ホストは死なない。
ホストという群れは増え続けるのだ。

「焼きそばパン、みんなでわけて食べましょう、少し少ないけれど」

「大丈夫さ」
「肉は沢山ある」

ホスト達は一斉に校舎を指差した。
そうだ、今日の惨事で死んでいった生徒たちのお肉…。
まだまだ新鮮だろう。

ささやかな焼きそばパンパーティーのあとには、お肉パーティーと洒落こんでも良いかもしれない。
可愛い女の子ならホストに迎え入れても良いだろう。

結局一歩も保健室を出ることなく焼きそばパンを手に入れた“頭”安出堂メアリ。
それを持ってきたのパシリに慣れた下ノ葉安里亜だった。

彼女たちは精神的には一人のホストである。
人を食い物程度にしか考えていない三流の。
でも彼女たちは幸せだった。
彼女たちには永遠の繋がりができたのだから。